アピキサバンのVTE再発予防 効果と安全性に加え利便性に期待

ブリストル・マイヤーズ株式会社とファイザー株式会社は2016年1月27日、プレスセミナー「静脈血栓塞栓症(VTE)治療の変遷と最新動向」を開催した。その中で、中村真潮氏(三重大学 客員教授、村瀬病院 副院長/肺塞栓・静脈血栓センター長)は下記のように述べた。
本邦における静脈血栓塞栓症(以下、VTE)は増加しており、今後もさらに増加すると予測される。しかしながら、VTEの認知度は欧米に比較して低い。さらに診断の難易度が高いこともあり、診断率も低い。
VTE治療の基本は薬物療法である。従来の標準療法は、迅速に効果を発揮する未分画へパリンを発症後から投与し、5日目からワルファリンを追加、その後ワルファリンの単独治療に移行する。しかし、薬物療法を行っても、VTEの再発は経時的に一定に起こる、とくに急性期の発現は顕著であり、それには急性期に投与する未分画ヘパリンのコントロールの難しさが一因となっている可能性もある。一方、ワルファリンの抗血栓効果は高く、投与を中止するとVTEの発症率は上昇する。長期間継続したいが、その場合、出血合併症が問題となっている。とくにアジア人の脳出血の発生率は高い。そのため、投与期間は個々の患者状態で判断しているのが現状である。このように課題が残る中、導入がシンプルで、出血が少なく長期間使える薬剤の登場が望まれてきた。
近年、NOAC(非ビタミンK阻害経口抗凝固薬)によるVTE2次予防のエビデンスが集積され、保険適応も追加されてきた。FXa阻害薬であるアピキサバン(商品名:エリキュース)も2015年12月、「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症)の治療および再発抑制」の適応が追加承認された。
アピキサバンのVTEに対する効果と安全性は、海外第III相試験「AMPLIFY」で確認されている。AMPLIFYは急性症候性VTE患者を対象に、アピキサバン単独投与群と低分子ヘパリン/ワルファリン投与群を比較した試験である。主要有効性評価項目である、症候性VTE再発またはVTE関連死については、低分子ヘパリン/ワルファリン投与群に対して非劣性を示し(2.3%対2.7%、HR:0.84、95%CI:0.60~1.18)、主要安全性評価項目である大出血発現率については、優越性を示している(0.6%対1.8%、HR:0.31、95%CI:0.17~0.55)。また、本邦で行われたAMPLIFY-J試験においても、例数は少ないながらも、主要評価項目である大出血または臨床的に重篤な非大出血発現率は、未分画ヘパリン/ワルファリン投与群と比較して少ないという結果が出ている。
中村氏はまとめとして、アピキサバンはVTE治療において、標準療法と同等の効果を示し、出血に関する安全性を向上させた。また、内服のみで治療できることから、外来症例や軽症例についても介入しやすくなるであろう、と述べた。
(ケアネット 細田 雅之)
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