うつ病にEPAやDHAは有用なのか

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 大うつ病性障害(MDD)に対するn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFAs;オメガ3脂肪酸としても知られる)の有効性のエビデンスは、現時点では不明であるとする報告が、英国・ボーンマス大学のAppleton KM氏らにより発表された。プラセボを対照とした24件の試験および抗うつ薬治療を対照とした1件の試験、計25件の試験をレビューした結果、プラセボと比べうつ症状に対して低度~中等度のベネフィットがあること、抗うつ薬と同様の効果が得られることを示したが、いずれもエビデンスの質は非常に低いものであった。著者は、「今後さらなる検討が必要である」と指摘している。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年11月5日号の掲載報告。

 MDDへのn-3PUFAsの役割を示唆するエビデンスは、さまざまに報告されているが確定的なものはない。その中で、より重症のうつ症状を呈する患者を対象とした試験ではベネフィットが得られる可能性が示されていた。そこで研究グループは、成人MDDに対するn-3PUFAsと対照(プラセボ、抗うつ薬治療、標準治療、無治療、治療待機対照)の有効性を比較検討した。2015年5月時点で、Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Review Group's Specialised Registers(CCDANCTR)、国際臨床試験登録(International Trial Registries)を検索。また、2013年9月までの、データベースCINAHLの記録を検索した。主要アウトカムは、うつ症状(有効な評定尺度を使用して連続データを収集)および有害事象。副次アウトカムはうつ症状(寛解および反応に関する二分データ)、QOL、試験の非完遂とした。

 主な結果は以下のとおり。

・検索により26件を特定した。25件(1,438例)はn-3PUFA補給 vs.プラセボ、1件(40例)はn-3PUFA補給 vs.抗うつ薬治療の検討であった。
・n-3PUFA補給はプラセボに比べ、うつ症状に対して低~中等度のベネフィットを示した(標準化平均差[SMD]:-0.32、95%信頼区間[CI]:-0.12~-0.52、25試験・1,373例、エビデンスの質は非常に低い)。ただし、この効果は臨床的意義につながる可能性は低かった。SMDの0.32はHDRS(17項目)のスコアにしておよそ2.2ポイント(95%CI:0.8~3.6)の差を示した。
・信頼区間には、臨床的に重要な効果を示すものとわずかな効果の可能性のみに留まるものの両方が認められ、試験間に重大な不均質性も認められた。
・介入群とプラセボ群で有害事象を経験した被験者数は同程度であった(オッズ比[OR]:1.24、95%CI:0.95~1.62、19試験・1,207例、非常に低い)。信頼区間は、n-3PUFAsに関して有害事象の有意な増加を示し、減少の可能性はほとんど認められなかった。
・寛解率、反応率、QOL、非完遂率はいずれも群間で同程度であったが、信頼区間に関してはやはりばらつきが大きかった。
・これらの結果を基盤とするエビデンスは、非常に限定的である。
・解析に使用した試験は、すべて今回の研究課題に直接関連するものであったが、すべてのアウトカムのエビデンスに関し、質は低から非常に低いと評価した。
・解析に使用した試験の数および被験者数が少なく、大半が小規模の試験であったため、複数の評価項目で高いバイアスリスクが認められた。
・今回の解析は、3つの大規模試験の影響を大きく受けた可能性が高かった。これら試験についてバイアスリスクは低いと判断しているものの、それらはデータの26.9~82%を網羅していた。
・今回算出したエフェクトサイズの推定値も正確といえないものであった。ファンネルプロットの非対称性および感度解析(固定効果モデルを使用、選択バイアス、パフォーマンス・バイアス、アトリションバイアスのリスクが低い試験のみを使用)では、n-3PUFAs に対するポジティブな所見のバイアス傾向が示された。
・主要アウトカムであるうつ症状の解析においても重大な不均質性が存在した。この不均質性は併存疾患の有無、あるいは補助療法の有無により説明されなかった。
・抗うつ薬との比較試験では、うつ症状(平均差[MD]:-0.70、95%CI:-5.88~4.48)、治療反応率、試験の非完遂における差異は認められなかった。また、有害事象については解析に適した形での報告はなされておらず、うつ寛解率およびQOLに関する報告はなかった。
・以上より、現時点ではMDDの治療法としてn-3PUFAsの効果を判断する質の高いエビデンスが十分にない状況といえた。
・今回の初回解析は、プラセボと比較してn-3PUFAsのうつ症状に対する低度~中等度の非臨床的なベネフィットを示している。しかし、この結果の基となっているエビデンスの質は低いあるいは非常に低いと判定されており、この予測は正確なものとはいえなかった。
・感度解析、ファンネルプロット解析、そして適切に実施された大規模試験の結果と今回得た結果との比較により、今回の効果予測がn-3PUFAsに対するポジティブな所見のバイアス傾向が示され、実際の効果はさらに小さいものであることが示唆された。
・今回のデータでは、n-3PUFA群とプラセボ群において同様の有害事象発現率、試験非完遂例数も示されているが、これも決して正確なものとはいえない。レビューの中でn-3PUFAsと抗うつ薬を直接比較した唯一の試験では、両群に同等のベネフィットが認められた。n-3PUFAsのMDDに対するポジティブおよびネガティブな影響に関する、より多くのエビデンス、そしてより完全なエビデンスが必要である。

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