アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし

提供元:ケアネット

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公開日:2015/10/28

 

 世界中で何百万人もの高齢者がアルツハイマー病(AD)で苦しんでいる。治療薬にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあるが、その臨床効果は限られており、早期に薬物療法を開始することが長期的に良好な予後につながるかどうかも不明である。そこで、中国・香港中文大学のKelvin K.F. Tsoi氏らは、AD患者に対する早期治療の有効性について、前向き無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、約6ヵ月早くAD治療薬の投与を開始しても投与開始が遅れた場合と比較して、認知機能、身体機能、行動問題および臨床症状に有意差は認められなかった。この結果について著者らは、「追跡期間が2年未満の早期AD患者の割合が比較的高かったためと考えられる」と指摘したうえで、「長期に追跡した場合の有効性について、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。

 研究グループは、OVIDデータベースを用いて2000年から2010年の間に発表された前向き無作為化比較試験を検索し、ADと診断された患者を早期投与開始群と投与開始遅延群(約6ヵ月間はプラセボを投与)に無作為化した試験を適格とした。主要評価項目は、認知機能(Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive Subscale:ADAS-cog)、身体機能(Alzheimer's Disease Cooperative Study Activities of Daily Living Inventory:ADCS-ADL)、問題行動(Neuropsychiatric Inventory:NPI)、および全般的な臨床症状(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC plus)、副次評価項目はあらゆる有害事象とした。

 主な結果は以下のとおり。

・10件の無作為化試験がメタ解析に組み込まれた(計3,092例、平均年齢75.8歳)。
・主要評価項目に関して、早期投与開始群が投与開始遅延群と比較して、有意な効果が認められた項目はなかった。
 認知機能;ADAS-cogの平均差(MD)=-0.49、95%信頼区間(CI):-1.67~0.69
 身体機能;ADCS-ADLのMD=0.47、95% CI:-1.44~2.39
 行動問題;NPIのMD=-0.26、95% CI:-2.70~2.18
 臨床症状;CIBIC plusのMD=0.02、95% CI:-0.23~0.27
・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、最も頻度の高い有害事象は悪心であった。
・メマンチンではプラセボと比べ、発現頻度の高い副作用はなかった。
・両薬とも、早期投与開始群と投与開始遅延群の有害事象は同等であった。

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(ケアネット)