認知症治療、薬物療法にどの程度期待してよいのか

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 認知症は治癒が望めない疾患であり、治癒または回復に向かわせる治療法は存在しない。現在の治療は、認知または機能的アウトカムの改善を目的としたものである。米国・ブラウン大学のJacob S. Buckley氏らは、認知症および軽度認知障害(MCI)の治療に関する研究をレビューし、治療のベネフィットとリスクを評価した。その結果、コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)によるベネフィットは小さく、経過とともに効果が減弱すること、用量依存的に有害事象が増加すること、またメマンチン単剤療法はベネフィット、リスクともに小さいことが明らかになったと報告した。Drugs & Aging誌オンライン版2015年5月5日号の掲載報告。

 研究グループは、認知症に対する薬理学的治療の基礎をレビューし、認知症治療のベネフィットとリスクについてまとめた。2014年11月における、認知症およびMCIの治療に関する英語で記載された試験および観察研究について、MEDLINEを用いて系統的に文献検索を行った。その他の参考文献は関連する出版物のビブリオグラフィーの検索により特定した。可能な限り、メタ解析あるいはシステマティックレビューによる併合データを入手した。レビューの対象は、認知症またはMCIを対象とした無作為化試験または観察研究で、治療に伴う有効性アウトカムまたは有害アウトカムを評価している試験とした。FDAの承認を受けていない治療について評価している試験、認知症およびMCI以外の障害に対する治療を評価している試験は除外した。

 主な結果は以下のとおり。

・文献検索により540件の試験がレビュー対象の候補となり、そのうち257件がシステマティックレビューに組み込まれた。
・試験の併合データにより、軽度から中等度のアルツハイマー病とレビー小体型認知症において、ChEIは認知、機能、および全般的ベネフィットをやや改善することが示された。ただし、これらの効果における臨床的意義は明らかでない。
・血管性認知症に対する、有意なベネフィットは認められていないことが判明した。
・ ChEIは、治療開始1年後に有効性のベネフィットが最小となり、経過に伴い減弱すると思われた。
・進行例あるいは85歳以上の患者にベネフィットを示したエビデンスはなかった。
・有害事象は、ChEIの使用により用量依存的に有意に増加した。コリン作動性刺激に関連して消化器系、神経系および心血管系の副作用に対するリスクは2~5倍となり、重大な副作用として体重減少、衰弱、失神などが認められた。
・85歳を超えた患者の有害事象リスクは若年患者の2倍であった。
・メマンチン単剤療法は、中等度から重度のアルツハイマー病および血管性認知症の認知機能に何らかのベネフィットをもたらす可能性があった。しかし、そのベネフィットは小さく、数ヵ月の経過において減弱する可能性があった。
・メマンチンは、軽度認知症あるいはレビー小体型認知症において、またChElへの追加治療として、有意なベネフィットは示されていなかった。
・少なくとも管理下にある試験という状況において、メマンチンの副作用プロファイルは比較的良好であった。

 結果を踏まえ、著者らは「ChEIは軽度から中等度の認知症に対し、短期的に、わずかな認知機能の改善をもたらすが、これは臨床的に意味のある効果とはいえない。重症例、長期治療患者、高齢者においては、わずかなベネフィットしか認められない。体重減少、衰弱、失神などのコリン作動性の副作用は臨床的に重要であり、とくに虚弱な高齢患者において弊害をもたらし、治療によるリスクがベネフィットを上回る結果となっている。メマンチン単剤療法の中等度~重度認知症に対するベネフィットは最低限であった。有害事象も同程度に小さいと考えられた」とまとめている。

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