SGLT2阻害薬のさらなる安全使用に必要なこと

提供元:ケアネット

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公開日:2015/02/19

 

 2月9日、「糖尿病薬物治療の現状と課題」と題し、生命科学フォーラム主催のセミナーが加来 浩平氏(川崎医科大学 内科学 特任教授)を講師に迎え、東京都内で開催された。

患者は増加しているものの予備軍は減少

 はじめにわが国の糖尿病における患者数の推移や発症機序の説明が行われた。

 最近の調査では、メタボ健診などによる予防策が功を奏し、糖尿病予備軍は減少した。しかし、患者数は増加し、若年化、肥満化傾向を示し、それは運動不足や日常生活での活動量不足が原因と考えられる。また、30~40代の働き盛りの患者の増加と受診回避が問題となっており、早期の治療介入をいかに行うべきかが今後の課題であると述べた。

 早期治療介入に関連し、最近の研究では、糖尿病の合併症として「認知症」と「がん」がクローズアップされており、これら合併症阻止に向け、早急なエビデンスの構築が必要であると強調するとともに、DCCT/EDICスタディ、UKPDSなどのエビデンスを示し、大血管障害予防のためにも早期介入が求められ、とくに治療の最初の10年をいかに過ごすかが重要だと解説を行った。

SGLT2阻害薬のベネフィットを考える

 糖尿病の治療薬は、1950年代のSU薬から2014年のSGLT2阻害薬まで非常に多くの薬剤が開発され、使用されている。今回は1番新しい治療薬であるSGLT2阻害薬にとくに焦点をあて解説を行った。

 SGLT2阻害薬は、余分な糖を尿により体外に排出させ、血糖値を下げる糖尿病治療薬であり、現在わが国では6成分7製剤(うち4製剤は日本製)と幅広く使用できる。その作用機序は従来の糖尿病治療薬と異なるため、糖尿病のどの段階でも使用でき、他剤と併用ができるのも大きな特徴である。

 そして、SGLT2阻害薬の効果としては、急激な血糖降下を抑えるために低血糖が起きにくく、安全に使用できること、糖が体外へ排出されるので体重減少を来すこと、HbA1cの改善は先行のDPP-4阻害薬ほど効果は高くないが、全体的に0.7%程度下げること、また、心血管イベントの発生を予防する可能性につき、現在研究が進められていることなどが報告された。

SGLT2阻害薬の処方率は10%に届かず

 SGLT2阻害薬のリスクとしては、尿量の増加とそれに伴う頻尿、脱水のほか、糖排出による尿路感染症が報告されている。また、他剤併用(たとえばSU薬など)による低血糖の発生、皮膚障害などもある。ただ、いずれも臨床試験で予想された範囲内の副作用、有害事象であり、特段大きなリスクを伴う治療薬ではないことを強調した。

 しかしながら、昨年の発売以降SGLT2阻害薬の処方シェア率は10%に届くことがなく(参考までにDPP-4阻害薬は60%強)、臨床現場でかなり慎重に処方されていると報告した。

 その原因として、わが国ではSGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会より『SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation』が発出されたことや、65歳以上の患者処方の際の全例調査実施などが影響していると指摘した。

 その一方で海外の動きをみてみると、わが国で報告されているリスクは大きな問題となっておらず、広く処方されており、着々とエビデンスの蓄積、研究が行われている。現在の状態が続けば、さらに安全に処方するためのエビデンスなどの蓄積(たとえば、長期有効性・安全性、休薬後のリバウンドリスク、多面的作用など)ができなくなると懸念を示した。

 最後に、これからの糖尿病治療と研究の方向性について、「肥満」と「加齢」がキーワードになると示唆。具体的なターゲットとして血管病防止、認知症防止、がん防止、骨関節疾患防止のため、壮年・中年からの早期治療介入、ベネフィットとリスクを考えた治療薬剤の選択が重要となり、治療薬ではDPP-4阻害薬が今後も大きな役割を担うことになる。同時に、SGLT2阻害薬も正しい患者像を見据え、適正使用の推進による安全確保の確立のためにも、患者のベネフィットを考えた処方が望まれるとレクチャーを終了した。

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(ケアネット 稲川 進)