日本語でわかる最新の海外医学論文|page:989

高用量ビタミンD摂取、65歳以上の骨折リスクを低減

メタ解析の結果、65歳以上高齢者の高用量ビタミンD摂取(毎日≧800 IU)は、大腿骨頸部骨折およびあらゆる非椎体骨折の予防に多少ではあるが有望であることが示された。スイス・チューリッヒ大学のHeike A. Bischoff-Ferrari氏らによる解析結果で、「居住場所、年齢、性別とは独立して骨折リスクを低減する可能性があることが示された」と報告している。ビタミンD摂取と骨折の減少についてこれまでのメタ解析の結果は一貫していない。Bischoff-Ferrari氏らは、11の二重盲検無作為化比較試験の被験者を対象に解析を行った。NEJM誌2012年7月5日号掲載報告より。

CKD診断のためのGFR推定式、クレアチニン+シスタチンCが有用である可能性

慢性腎臓病(CKD)の診断指標である糸球体ろ過量(GFR)の推定について、血清クレアチニンまたはシスタチンCいずれか単独マーカーの値に基づく推定よりも、両者を組み合わせての推定が優れることが報告された。米国・タフツ医療センターのLesley A. Inker氏らCKD疫学共同研究グループの横断解析の結果で、「CKDの確認検査には複合推定式が有用かもしれない」と結論している。GFRの推定は血清クレアチニンに基づく推定式がルーチンに用いられているが、不正確でCKDの過剰診断につながる可能性が示唆されている。代替マーカーとして登場したのがシスタチンCで、Inker氏らはその有効性を検討するため、シスタチンC単独と、シスタチンCと血清クレアチニンとを組み合わせについて検証した。NEJM誌2012年7月5日号掲載報告より。

がん患者の悪夢に有効な治療法は?(大阪大学 緩和ケアチーム)

がん患者では不眠の有病率が高いことはよく知られている。また、悪夢をみることは睡眠の快適度や満足度に強い悪影響を及ぼす。大阪大学 谷向氏らはがん患者における不眠症および悪夢に対する抗うつ薬トラゾドンの治療効果を検討した。Am J Hosp Palliat Careオンライン版2012年7月9日号の報告。

慢性歯周炎の患者は乾癬の発症リスクが高い?

乾癬と慢性歯周炎(chronic periodontitis:CP)は共通して免疫異常が疾患発症の根底にあるとされているが、今日までに、小規模な横断的パイロットスタディのみでしかその可能性は研究されていない。台北医科大学のKeller氏らは台湾におけるコホートデザインと人口データベースを利用し、CPの診断後における乾癬の発症リスクについて調査を実施した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2012年7月号の報告より。

MRSA感染症、市中型も院内型も2005年以降は減少傾向

米国におけるMRSA感染症は、2005年以降は市中型・院内型ともに減少傾向にあることが報告された。MRSA起因の市中型皮膚軟部組織感染症についても、2006年以降は減少しているという。米国・San AntonioMilitary Medical CenterのMichael L. Landrum氏らが、米国国防総省の医療保険受給者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2102年7月4日号で発表した。これまでに、院内型MRSA感染症の発症率の減少傾向は報告されているものの、市中型MRSA感染症の動向については報告がなかった。

帯状疱疹ワクチン、生物製剤服用者への安全性と効果示す

関節リウマチなど自己免疫疾患で生物学的製剤を服用している患者への帯状疱疹ワクチン接種は、同発症予防に有効であることが明らかにされた。同ワクチン接種直後の帯状疱疹発症リスクについても、増大は認められなかったという。米国・アラバマ大学のJie Zhang氏らが、46万人超を対象に行った後ろ向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月4日号で発表した。抗腫瘍壊死因子(抗TNF)療法やその他の生物学的製剤を服用している患者への、帯状疱疹弱毒生ワクチンの効果や安全性は検証データが限られており明らかになっておらず、接種は禁忌とされている。

出産後のうつ病リスクは「10~15%」新スクリーニングツール期待

 先進諸国で最も頻度の高い妊娠合併症である「産後うつ病」。産後うつ病(PPD)は新たに母親になる女性の10~15%で発症する。PPDの発症が高い要因として、PPD自体に対する関心の低さや出産後の不安への対応を含むメンタルヘルスの不足が考えられる。その対策として、出産後だけでなく出産前からのメンタルヘルスが重要である。しかし、現在用いられる出産前スクリーニングツールは感度や特異性が低かった。そこで、McDonald氏らは新たなスクリーニングツールの開発を行った。Paediatr Perinat Epidemiol誌2012年7月号(オンライン版2012年5月9日号)報告。

新たな分子標的薬の登場で腎細胞がん治療はどう変わるのか?

腎細胞がん治療において、現在わが国で発売されている分子標的薬は4剤あり、日本泌尿器科学会の腎癌診療ガイドライン2011年版では、1次治療ではMSKCCリスク分類別、2次治療では前治療別に薬剤が推奨されている。そのなかで、新たな分子標的薬であるアキシチニブ(商品名:インライタ)が、2012年6月29日、根治切除不能または転移性の腎細胞がんの治療薬として承認された。今回、ファイザー株式会社によるプレスセミナーが7月11日に開催され、慶應義塾大学泌尿器科教授 大家基嗣氏と近畿大学泌尿器科教授 植村天受氏が、腎細胞がん治療における現状・課題、アキシチニブの特性や臨床成績、今後の展望などについて講演した。その内容をレポートする。

認知症予防のポイント!MCIへのアプローチ

認知症は軽度認知障害(MCI)から始まり、徐々に認知機能が低下していくため、認知症を予防するためのひとつの方法として、MCIの段階でいかに対処していくかが重要であると考えられる。Summers氏らはMCI症例に対する神経心理学的アプローチに関する検討を行った。Neuropsychology誌2012年7月号(オンライン版2012年5月21日号)の報告。

ヒマラヤ登山死、商業化で低下傾向に

ヒマラヤ登山における死亡リスクは、登山経験が豊富だからといって低減せず、従来の非商業的で探索的な登山よりも、むしろ最近の商業登山のほうが死亡リスクを改善する傾向にあることが、米国Madigan Healthcare System(ワシントン州タコマ)のJohn L Westhoff氏らの調査で明らかとなった。登山は人気が高いがきわめて危険な活動であり、ほかのほとんどの娯楽的活動よりも死亡率が高い。ヒマラヤ登山の商業化の傾向に伴い、比較的経験の浅い登山者が、自力で登るには経験不足な山頂を職業的ガイドの指導の下で目指すことが多くなったが、登山による負傷率はこの数十年、下降傾向にあるという。BMJ誌2012年6月30日号(オンライン版2012年6月13日号)掲載の報告。

3つの新規経口抗凝固薬、術後血栓塞栓症の予防に有効だが出血傾向も

3つの新規経口抗凝固薬リバーロキサバン*1、ダビガトラン*2、アピキサバンは、従来の標準治療であるエノキサパリンに比べ、全般的に術後の静脈血栓塞栓症の予防効果が高いが出血リスクも上昇傾向にあることが、スペイン医薬品・医療機器機構(マドリッド市)のAntonio Gomez-Outes氏らの検討で明らかとなった。欧米では、これら3つの新規薬剤は、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療として承認されているが、主要な臨床試験が標準治療では通常行われない下肢の静脈造影所見で評価され、出血の定義が試験によって異なるなどの理由で、臨床アウトカムや相対的な効果、安全性は明確ではないという。また、3剤を直接比較した最新の試験は行われていない。BMJ誌2012年6月30日号(オンライン版2012年6月14日号)掲載の報告。

ひざの痛みの原因と治療に対する3つの誤解とは?

科研製薬株式会社と生化学工業株式会社が共同で運営している変形性ひざ関節症の疾患啓発サイト「ひざ科学研究所」(http://www.hizaken.com)は、「ひざの痛みと対処法に関するアンケート調査」の結果を発表した。アンケートの結果から、ひざの痛みの原因や治療に関してさまざまな誤解があることが明らかになった。

統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当?

近年、統合失調症患者では骨粗鬆症の罹患率が高いことが明らかになってきているが、著しい骨密度(BMD)の減少にいたる機序や臨床的意味はまだわかっていない。慶応義塾大学の岸本氏(Zucker Hillside Hospital留学中)らは統合失調症患者における骨粗鬆症と骨折リスク、さらに抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症の骨代謝への影響について、最近の知見をもとにレビューを行った。Curr Opin Psychiatry誌オンライン版2012年6月30日付の報告。

病床規制の問題1:千葉県の病床配分と医療危機

亀田総合病院小松 秀樹 2012年7月11日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 ●はじめに 2012年3月30日の厚労省による病床規制継続宣言、千葉県による大量の病床配分と時を同じくして、千葉県最大の基幹病院である国保旭中央病院が、医師不足のため、救急受け入れ制限に追い込まれた。本稿では、病床規制と大量の病床配分が千葉県の医療に与える影響を考える。