日本語でわかる最新の海外医学論文|page:990

学校でのワクチン接種プログラムに対し、多くの開業医が自院経営面への影響を懸念

米国・CDC公衆衛生予防サービス部門のMcCormick EV氏らは、学校で行われる青年期ワクチン(思春期ワクチン)およびインフルエンザワクチンの接種に対する医師の考え方について調査を行った。コロラド州の開業医1,337人を対象とした調査の結果、大半の医師が学校でのワクチン接種を支持する一方で、診療所経営への影響について懸念を抱いていることが明らかとなった。著者は、「医師の民間保険加入者への接種に対する支持が少なく、受診児の減少と収入への影響が障壁となっていることが示されたが、さらなる調査が必要である」とまとめている。Pediatrics誌オンライン版2012年10月1日号の掲載報告。

自家造血幹細胞移植患者の血小板減少症、出血時に行う治療的輸血が有効

 自家造血幹細胞移植患者にみられる血小板減少症の治療では、従来の予防的血小板輸血よりも、出血発生時に行う治療的血小板輸血が有効なことが、ドイツ・Klinikum NurembergのHannes Wandt氏らの検討で示された。欧米では、血小板産生能低下に起因する重度の血小板減少症の標準治療は、毎朝の血小板数の測定値に基づくルーチンの予防的血小板輸血とされる。一方、治療的血小板輸血が新たな治療戦略として有望なことを示唆するパイロット試験の結果が知られているという。Lancet誌2012年10月13日号(オンライン版2012年8月7日号)掲載の報告。

フィブリン-3濃度、胸膜中皮腫の新たなバイオマーカーとして有効

 血漿中フィブリン-3濃度は、胸膜中皮腫のバイオマーカーとして有用であることが示された。胸膜中皮腫を早期に発見し個々の治療戦略を立てるため、新たなバイオマーカーが必要とされているが、米国・ニューヨーク大学Langone Medical CenterのHarvey I. Pass氏らが、血漿中と胸水中のフィブリン-3濃度を測定し、胸膜中皮腫の有無による違いなどについて調べ明らかにした。中皮腫のないアスベスト曝露者と胸膜中皮腫患者の識別が可能であったという。NEJM誌2012年10月11日号掲載より。

口腔粘膜の固定薬疹、鑑別診断で考慮すべきことは?

 口腔粘膜の固定薬疹(FDE)の特性については、ほとんど知られていない。トルコ・イスタンブール大学のOzkaya E氏は、臨床的に注目すべきポイントおよび鑑別診断を提示するため後ろ向き断面研究を行った。その結果、主要所見として口腔内局所のアフタ性病変や重度の水疱性/びらん性病変と、残存性色素沈着の欠如は、鑑別診断を難しくする可能性があると述べた。そのうえで、女性患者における月経困難に関連した非ステロイド性抗炎症薬による口腔内FDEと、月経が引き起こす単純ヘルペス感染症によるもの、およびベーチェット病由来の局所のorogenitalなアフタFDAとを区別することが、とくに疾患頻度の高い国では不適切な治療を避けるために重要であると結論した。J Am Acad Dermatol誌オンライン版2012年10月5日号の掲載報告。

認知症患者における「せん妄診断」有用な診断ツールは…

せん妄は、高齢者入院患者の50%に出現するといわれており、さまざまな悪影響を及ぼすため、対応方法の確立が急がれる。せん妄の診断ツールはいくつか開発されており、数々の報告がなされている。Morandi氏らは認知症患者にみられるせん妄の診断において、それぞれの診断ツールが有用であるかをシステマティックレビューにより解析した。J Am Geriatr Soc誌オンライン版2012年10月5日号の報告。

子どもの問題行動に対する行動予防モデルSWPBISの影響

SWPBIS(School-Wide Positive Behavioral Interventions and Supports)は、学校全体の積極的な介入と支援により、子どもの問題行動を予防するモデルである。教員の応対の変化や子どもの行動のニーズを満たすシステムや支援の開発によって、問題行動を減らすことを目的としており、現在アメリカ全域の16,000校を超える学校で実施されている。Bradshaw CP氏らは、SWPBIS有効性試験に基づき、子どもの問題行動と適応に対する介入の影響について報告した。Pediatrics誌 オンライン版2012年10月15日掲載報告。

過体重・肥満の青少年にノンカロリー飲料宅配、体重減少への効果は?

 過体重で肥満の青少年(学校に通う9~10年生、15歳前後)に、ノンカロリー飲料の宅配を行い砂糖入り飲料の摂取量を減らす介入を行ったところ、1年時点では介入群のほうがBMIの増加が低く効果がみられたが、主要転帰とした2年時点では有意差はみられなかったことが報告された。ただし、ヒスパニック系の被験者では、試験開始2年時点でも介入効果が認められたという。米国・New Balance Foundation Obesity Prevention CenterのCara B. Ebbeling氏らが、200人超について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2012年10月11日号(オンライン版2012年9月21日号)で発表した。砂糖入り飲料の摂取は過剰な体重増加の原因になっている可能性がある。本研究では、ノンカロリー飲料提供が体重増加にどのような影響をもたらすかを調べた。

血中プロニューロテンシン値、生活習慣病発症・死亡リスクと関連

 血中プロニューロテンシンが、生活習慣病に関するバイオマーカーとして期待できるのか、スウェーデン・ランド大学のOlle Melander氏らが検討した結果、空腹時血中プロニューロテンシン値が、糖尿病、心血管疾患、乳がんの発症、および全死亡率、心血管死亡率と有意に関連することが示されたと報告した。主に中枢神経系や消化管で発現する13-アミノ酸ペプチドのニューロテンシンは、実験的試験で満腹感や乳がん細胞の増殖を制御することが知られるが、乳がんや心血管代謝疾患の発症における役割、有用性についてはほとんどわかっていなかった。JAMA誌2012年10月10日号掲載報告より。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(29)〕 抗血栓薬やスタチン薬時代においてβ遮断薬の有用性は証明されず

 心筋梗塞後の症例に対するβ遮断薬処方は、すでに標準治療として定着している。これは多数のエビデンスに基づいているが、その多くはすでに10年以上以前のものである。はたして、今日のようにPCIが一般的になり、かつスタチン薬や抗血小板薬治療などが普及した今日においてもなお、β遮断薬の有用性はあるのであろうか。またβ遮断薬は、冠動脈疾患症例や高リスク症例に対しても有用と思われがちだが、その有用性は必ずしも証明されている訳ではない。それが本論文におけるメタ解析のアンチテーゼである。

統合失調症の症状悪化に関連?「喫煙」「肥満」の影響

 これまで多くの研究者が、統合失調症などの精神疾患患者における不規則な生活がその後の症状や治療と関連しているかどうかを検討している。Cerimele氏らは統合失調症や双極性障害患者における健康リスク行動(health risk behaviors)が、その後の症状や機能レベルに関連づけられるかを検証するため、システマティックレビューを行った。Gen Hosp Psychiatry誌オンライン版2012年10月5日号の報告。

アピキサバンのリスク・ベネフィットバランスは?

すでにアピキサバンは、AVERROES試験により、心房細動患者に対し、アスピリンよりも脳卒中発症を減少させることが明らかになっている。この度、出血パターンや出血リスクを明らかにすることを目的としたAVERROES試験のサブ解析が発表された。その結果、アピキサバンは、アスピリンに比べ、ベースの脳卒中リスクによらず、リスクとベネフィットのバランスにおいて期待できることが明らかとなった。Flaker GC氏らによる報告(Stroke誌オンライン版2012年10月2日号掲載)。

てんかん治療の術前評価/切除が標準化、一方で困難な患者が増大

術前評価と手術はてんかん治療の標準となりつつある。ドイツ・ボン大学医療センターのBien氏らは、1988~2009年の単一施設での治療実績の傾向を調べた。その結果、てんかん手術は、とくに明確に定義された局所病変を有する患者において効果が高いことが明らかになったと報告。一方で、調査をした同施設では、困難な患者が増えており、術前評価前のてんかん症状を有した期間が延びていることにも言及した。J Neurol Neurosurg Psychiatry誌オンライン版2012年10月10日号の報告。

乾癬の発生率、赤道から遠く離れるほど高い?

世界的な乾癬の発生率および有病率は、十分には明らかとなっていない。英国・マンチェスター大学のParisi R氏らは、住民ベースで検討された文献を適格としたシステマティックレビューを行った。その結果、年齢や地域によって格差があることなどが明らかとなった。著者は、乾癬の発生率と有病率を調べることで疾病負荷への理解を深めることができたと述べるとともに、さらなる乾癬疫学や時間経過に伴う発生率の傾向などの理解を深め、既存の知見とのギャップを埋める必要があると指摘している。J Invest Dermatol誌2012年9月27日号の掲載報告。

アルツハイマー病の興奮、抗精神病薬をどう使う?

アルツハイマー病患者にしばしばみられる精神症状や興奮、攻撃性に苦慮することは少なくない。このような症状に対し抗精神病薬が使用されることもあるが、使用中止による症状再発の危険性は確立されていない。Devanand氏らは、アルツハイマー病患者の精神障害や興奮に対する抗精神病薬の使用を中止した際の再発リスクを検証した。N Engl J Med誌2012年10月18日号の報告。

慢性腰痛症患者の年間医療費、非慢性腰痛症患者の倍

慢性腰痛症の治療と関連医療費について後ろ向きに検証した結果、診察費や処方薬といった直接的なコストだけでも、患者にとって相当な経済的負担があることが明らかにされた。慢性腰痛症は一般的な健康問題である。英国・ロンドン大学経済社会科学部のHong J氏らが、GPリサーチデータベース(GPRD)から、慢性腰痛症の治療に関連する12ヵ月分の医療費を分析し報告した。Spine誌オンライン版2012年10月2日号の掲載報告。

患者アウトカムの公表は医師を萎縮させる?

 患者アウトカムの公表(public reporting)は、ケアの質改善の重大なツールとなるが、一方で一部の人々からは、臨床医に高リスク患者を回避させることにつながるのではないかとの懸念がある。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のKaren E. Joynt氏らは、メディケア患者のアウトカムについて、公表している州としていない州とを比較した。検討は、心筋梗塞患者の経皮的冠動脈介入(PCI)実施率と死亡率との関連で、その結果、公表している州のほうが実施率が低い傾向が認められたという。しかし、全急性心筋梗塞の死亡率の差は認められなかったと報告した。JAMA誌2012年10月10日号掲載報告より。