日本語でわかる最新の海外医学論文|page:844

お米を食べるほど睡眠は良質に?

 これまでに、GI(グリセミック指数、食後血糖値の上昇度を示す指標)の高い食品が良好な睡眠の質に関連することが報告されている。金沢医科大学の米山 智子氏らは、日本人男女の集団において、GI値の異なる3種類のデンプン食(米・パン・麺類)の摂取量および食事のGI値と睡眠の質との関連を調査した。その結果、高GI食と米の高摂取が良好な睡眠の質と有意に関連する一方、パン摂取量は睡眠の質と関連せず、麺類摂取量は低い睡眠の質と関連することが示された。著者らは、これらのデンプン食と睡眠の質における関連性の違いは、各食品のGI値の違いによると推測している。PLoS One誌2014年8月15日号に掲載。

6分間歩行で統合失調症患者の身体評価

 フランス・モンペリエ第1大学のP. Bernard氏らは、統合失調症患者を対象とした研究での6分間歩行試験(6MWT)の意義について、システマティックレビューにて評価を行った。その結果、統合失調症患者が6分間に早歩きできる距離(6MWD)は健常成人と比べ概して短いこと、BMIが高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬服用、身体的な自己認識が低いことと負の関係にあることなどを報告した。そのうえで著者は、統合失調症患者の身体的健康モニタリングに6MWTが使用可能であるとし、「今後の研究において、その予測因子としての役割を検討するとともに、その測定特性の評価を継続すべきである」と述べている。Disability and Rehabilitation誌オンライン版2014年8月7日号の掲載報告。

高齢者へのインフルワクチン、高用量で効果増/NEJM

 65歳以上高齢者への高用量3価不活化インフルエンザワクチン(IIV3-HD)接種は、標準量同ワクチン(IIV3-SD)接種に比べ、インフルエンザ様疾患の予防効果が高く、抗体反応の誘導は有意に高いことが示された。米国・ピッツバーグ大学のCarlos A. DiazGranados氏らが約3万2,000例の高齢者を対象に行った第IIIb~IV相臨床試験の結果、報告した。これまでの報告で、抗体反応が向上することは報告されていた。NEJM誌8月14日号掲載の報告より。

塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM

 心血管の健康に最適なナトリウム摂取量は3~6g/日(食塩換算量:7.5~15.0g/日)であり、これより多くても少なくても、死亡や心血管イベントのリスクが高くなることが、カナダ・マックマスター大学のMartin O’Donnell氏らが行ったPURE試験で示された。世界の心血管疾患予防ガイドラインが推奨するナトリウム摂取量は1.5~2.4g/日だが、これを達成するには、ほとんどの人が食生活の根本的な変更を迫られると考えられる。ナトリウム摂取量の減少が心血管疾患リスクの低下をもたらすことを証明した大規模無作為化試験はなく、前向きコホート試験の結果からは一致した見解は得られていないという。NEJM誌2014年8月14日号掲載の報告。

暴力的なゲームが子供の心に与える影響は

 米国・UTHealth公衆衛生院のTortoleroSusan R氏らは、前思春期において、暴力的なビデオゲームを毎日することと、うつ病との関連を調べた。結果、両者間には有意な相関性があることが判明した。著者は、「さらなる検討で、この関連における因果関係を調査し、症状がどれほどの期間持続するのか、また根底にあるメカニズムと臨床的な関連性を調べる必要がある」と報告している。Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。

PSA検診は有用か:13年後の比較/Lancet

 前立腺がん(PSA)検診の有効性に関して評価するヨーロッパ前立腺がん検診の無作為化試験(ERSPC)のフォローアップ13年時点の成績が発表された。これまで検診9年後、11年後において、前立腺がん死亡の有意な減少が報告されていたが、今回もさらなる減少が確認され、大幅な有効性の増大が認められたという。オランダ・エラスムス大学医療センターのFritz H Schroder氏らERSPC研究チームが報告した。しかしながら著者は、「今回の結果にかかわらず、住民ベースのスクリーニング導入の前提条件として、さらなる検診の有害性の定量化と減少が検討されなければならない」とまとめている。9年、11年時に有効性が示された時も、過剰診断といった有害イベントを理由にスクリーニングの実施については論争の的となっていた。Lancet誌オンライン版2014年8月7日号掲載の報告より。

日本初のIFNフリー併用療法、海外第3相でも有用/Lancet

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1b型感染患者に対し、開発中のNS5A複製複合体阻害薬ダクラタスビル+NS3プロテアーゼ阻害薬アスナプレビルの経口2剤併用療法(日本では今年7月承認、海外では未承認)は、82~90%と高率の持続的ウイルス消失(SVR)を達成し、忍容性も良好であったことが示された。ドイツ・ハノーバー医科大学のMichael Manns氏らが第III相の国際マルチコホート試験の結果、報告した。所見は、未治療、前治療無効および不適格・不耐容であった患者で認められた。慢性HCV感染治療については、インターフェロンやリバビリンを用いない治療が希求されているが、著者は、「今回の結果は、肝硬変患者を含むHCV遺伝子型1b型感染患者に対して、インターフェロンやリバビリン不要の完全経口療法として、ダクラタスビル+アスナプレビルの使用を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告。

新規抗精神病薬、高TG血症が高頻度

 ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボ総合病院のBelma Sadibasic氏らは、抗精神病薬による脂質異常症の頻度を第二世代抗精神病薬と第一世代抗精神病薬で比較した。その結果、脂質異常症のなかで高トリグリセリド血症の頻度は第二世代抗精神病薬で有意に高頻度であったが、高コレステロール血症の頻度については有意差が確認されなかったことを報告した。Medicinski glasnik誌2014年8月号の掲載報告。

高齢者のうつとペットの意外な関連

 高齢者において、うつは大きな問題となる。これまでの研究では、動物と暮らす高齢者のメンタルヘルスが改善することが示されているが、逆の結果も存在する。そこで、ノルウェー・ノルトロンデラグ大学のIngela Enmarker氏らは、ペット非所有・イヌ所有・ネコ所有の高齢(本研究では65歳以上と定義)男女において、自己評価による抑うつ症状を集団研究で比較した。その結果、都会以外でイヌやネコを飼う高齢の男女において、抑うつ症状に違いが認められた。老人ホームのような環境でイヌやネコを利用する場合に、これらの集団研究のデータが使えるかもしれないという。Aging & mental health誌オンライン版2014年7月3日号に掲載。

高齢腰痛患者の7割強が受診前から鎮痛薬を服用

 高齢の腰痛患者は一般開業医(GP)を受診することが多い。その際、鎮痛薬を処方される可能性が高いが、オランダ・エラスムス大学医療センターのWendy T M Enthoven氏らによる前向きコホート研究(BACE研究)の結果、GPを受診した高齢腰痛患者の7割強は、すでに受診前から鎮痛薬を使用していることが明らかになった。

薬物依存、1回の簡易介入では効果なし/JAMA

 薬物依存症患者に対して、電話を使った1回の動機付け面接といった簡易介入(brief intervention)では、通常のケアと比べて効果は期待できないことが、無作為化比較試験の結果、明らかにされた。米国・ワシントン大学のPeter Roy-Byrne氏らが、無保険者などへのセーフティネットとして機能する公的なプライマリ・ケア機関の利用患者868例を対象に行った試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「簡易介入を、セーフティネットを活用して大規模に行う方法には注意が必要であることを示す結果だった」とまとめている。JAMA誌8月6日号で発表した。

小児BCG接種、結核感染を2割予防/BMJ

 小児へのBCG接種の予防効果について、肺結核患者への曝露後感染を19%予防できることが明らかにされた。また、結核菌感染が認められた場合も、接種者では発症予防効果が58%あることも判明した。英国・イングランド公衆衛生サービス(PHE)のA. Roy氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまでの研究結果から、小児へのBCG接種が、結核の重症症状、なかでも髄膜炎に対して予防効果(60~80%)があることは明らかにされていた。BMJ誌2014年8月5日号掲載の報告より。

過度な減塩は死亡率を増やすか? ガイドライン推奨1日6g未満に一石を投じる研究(解説:桑島 巌 氏)-232

PURE研究は、世界17ヵ国からの30~70歳までの成人約10万人を対象としてナトリウム、カリウム排泄量と血圧の関係、および心血管死の関係について詳細に調査した貴重な研究である。今回同一号に2報発表しているがその1つがO’Donnellらの論文である。

ピロリ除菌、糖尿病だと失敗リスク2倍超

 Helicobacter pylori(HP)の除菌において、糖尿病の存在が抗菌薬の有効性を低下させることが懸念されている。新潟大学の堀川 千嘉氏らは、糖尿病患者の除菌失敗リスクに及ぼす糖尿病の影響を調べるためにメタ解析を行った。その結果、糖尿病患者のHP除菌失敗リスクが非糖尿病者に比べて高いことが確認され、糖尿病患者のHP除菌での治療延長や新たな除菌レジメン開発の必要性が示唆された。Diabetes research and clinical practice誌オンライン版2014年7月23日号に掲載。

違法薬物使用への簡易介入は効果なし/JAMA

 プライマリ・ケアのスクリーニングで特定した不健全な薬物使用について、簡易介入(brief intervention)では効果がないことが明らかにされた。米国・ボストン大学公衆衛生大学院のRichard Saitz氏らが無作為化試験の結果、報告した。米国では、不健康なアルコール摂取への介入効果をエビデンスの1つとして、違法薬物使用および処方薬誤用についての大がかりなスクリーニングと簡易介入が行われているという。しかし有効性のエビデンスはなく、プライマリ・ケアでは一般的な予防サービスとしてそうした介入を推奨していなかった。JAMA誌2014年8月6日号掲載の報告。