日本語でわかる最新の海外医学論文|page:798

ヒトとペット類の花粉症、類似点と相違点

 オーストリア・ウィーン大学のErika Jensen-Jarolim氏らは、ヒト、イヌ、ネコおよびウマのアレルギーに関する論文についてレビューし、これらにおけるトランスレーショナル研究が動物のアレルギーの治療に役立つと同時に、ヒトに関連する知識の収集にも役立つことを報告した。著者は、「自然発症アレルギーを有するイヌ、ネコおよびウマはトランスレーショナル研究の魅力的なモデル患者であることが示唆された」とまとめている。Clinical and Translational Allergy誌オンライン版2015年4月7日号の掲載報告。

身長とCADリスクとの関連が大規模研究で判明/NEJM

 遺伝的に低身長であることと冠動脈疾患(CAD)リスク増大との関連が、英国・レスター大学のChristopher P Nelson氏らによる大規模な調査の結果、明らかにされた。これまで、身長とCADリスクに負の相関があることは知られていたが、メカニズムについては不明であった。なお、関連の一部は低身長と脂質プロファイル異常との関連で説明されることも示され、著者は、成人身長と動脈硬化の進展プロセスを調べることで、関連の一部を説明できるのではないかと述べている。NEJM誌オンライン版2015年4月8日号掲載の報告より。

巨大児出産、分娩誘発のほうが安全?/Lancet

 巨大児出産が疑われる場合には、自然分娩よりも分娩誘発を行うほうが肩甲難産や関連疾患のリスクを低下することが、スイス・ジュネーブ大学のMichel Boulvain氏による無作為化試験の結果、示された。分娩誘発は、帝王切開となるリスクを増大することなく自然経腟分娩の尤度を改善することも示されたという。結果を踏まえて著者は、「早期分娩誘発の影響とバランスをみながら検討すべきである」とまとめている。巨大児については、肩甲難産のリスクが高いことが知られている。Lancet誌オンライン版2015年4月8日号掲載の報告より。

クローン病に対する経口SMAD7(モンジャーセン)の有用性(第II相試験)(解説:上村 直実 氏)-353

 クローン病は原因不明で根治的治療が確立していない炎症性腸疾患であり、わが国では医療費補助の対象である特定疾患に指定されている。抗菌薬、サリチル酸製剤、ステロイドや、従来型免疫抑制剤および腸管を安静に保つ栄養療法がわが国における治療の主体であったが、最近、顆粒球除去療法や生物学的製剤である抗TNF-α抗体が新たな治療法として注目されている。一方、クローン病の患者では、免疫抑制サイトカインであるトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)のシグナル伝達を阻害する SMAD7 の発現量が増加することでTGF-β1の活性が低下して炎症が惹起されることが知られている。

葉酸補充で、脳卒中が減る-臨床試験デザインの重要さを、あらためて教えてくれたCSPPT試験(解説:石上 友章 氏)-352

 疫学や遺伝学研究から、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子多型や高ホモシステイン血症が、心血管疾患の発症リスクになることが知られていたが、葉酸やビタミンB12を使った介入試験によって、予後の改善やnutrientの有効性が証明されることはなかった。

精神障害を伴う難治性てんかん患者への術前ビデオ脳波は禁忌なのか

 てんかん患者に精神障害(PD)が高頻度に認められることを受け、これらの患者、とくに手術適応となる難治性内側側頭葉硬化を伴う側頭葉てんかん(TLE-MTS)患者に対する精神的評価の必要性を示す研究がこれまでに行われてきた。近年のエビデンスは、TLE-MTS やPDの評価手段であるビデオ脳波(VEEG)の安全性を強調している。しかし、てんかんセンターの中には、PDがある場合は、陰性行動イベントのリスクがあることを主な理由として、VEEGによる術前評価を禁忌としているところが依然としてある。ブラジル・Faculdade de Medicina de Sao Jose do Rio Preto(FAMERP)のGerardo Maria de Araujo Filho氏らは、精神障害を認める難治性てんかん患者において、PDの評価として施行する術前のVEEGが禁忌となりうるのかを明らかにするため、後ろ向きコホート研究を行った。Epilepsy & Behavior誌4月号(オンライン版2015年3月20日号)の掲載報告。

BRCA遺伝子、変異型・部位の違いで乳がん・卵巣がんリスク異なる/JAMA

 BRCA遺伝子の変異型とヌクレオチド配列部位によって、乳がんや卵巣がんリスクが異なることが明らかにされた。米国・ペンシルベニア大学のTimothy R. Rebbeck氏らが、33ヵ国のBRCA1/2変異を持つ女性について行った観察研究の結果、報告した。これまで同遺伝子キャリアに関するがんリスクについては、限定的であり、研究グループは大規模な検討を行い、特有のがんリスクの特定を試みた。今回の結果を踏まえて著者は、「確証が得られれば、BRCA1/2変異のキャリアに対してリスク評価とがん予防への意思決定に寄与する知見となるだろう」とまとめている。JAMA誌2015年4月7日号掲載の報告より。

市中肺炎へのβラクタム系抗菌薬、単独療法でも有効/NEJM

 成人市中肺炎疑い患者へのβラクタム系抗菌薬単独療法は、マクロライド系抗菌薬との併用療法やフルオロキノロン系抗菌薬単独療法に比べ、90日死亡率に関して非劣性であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのDouwe F. Postma氏らが、3群で約2,300例の患者を対象に行った試験の結果、報告した。NEJM誌2015年4月2日号掲載の報告より。

血栓吸引療法に何を求めるのか(解説:上田 恭敬 氏)-351

 本論文は、以前に行われた多施設、前向き、オープンラベル、無作為化比較対照試験のThrombus Aspiration in ST-Elevation Myocardial Infarction in Scandinavia (TASTE)trialの後に行われた、新たな多施設、前向き、オープンラベル、無作為化比較対照試験であるThe Trial of Routine Aspiration Thrombectomy with PCI versus PCI Alone in Patients with STEMI(TOTAL)trialの結果を報告したものである。

うつ病治療の助けとなるか、うつ病認知再評価ツール

 うつ病について、セルフガイドのWebベース介入は有望な結果を示すが、脱落率が高く、使用者との結び付きが低い。オンライン・ピア・サポート・ネットワークは、結び付きは強いが、さまざまな結果を示し、根拠に基づくコンテンツが不足している。米国・マサチューセッツ工科大学のRobert R Morris氏らは、Webベースのピア・ツー・ピアのうつ病認知再評価プラットホームを開発し、有効性の評価を行った。結果、同プラットホォームは、うつ病患者のうち、とくに自身で再評価テクニックを十分に活用できない人に有用であることが示されたという。検討の結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、長期的な有効性を調べ、また多様な集団が使用できるよう普遍化できないかを検討する必要がある」とまとめている。Journal of Medical Internet Researchオンライン版2015年3月号の掲載報告。

切除不能大腸がん、CAPOX-B後の維持療法でPFS延長/Lancet

 切除不能大腸がんの1次治療において、カペシタビン+オキサリプラチン+ベバシズマブ(CAPOX-B)による導入療法に加えカペシタビン+ベバシズマブによる維持療法を行うと予後が改善することが、オランダ・アムステルダム大学のLieke H J Simkens氏らオランダ大腸がん研究グループ(DCCG)が実施したCAIRO3試験で示された。切除不能大腸がんに対する化学療法薬の間欠投与は持続投与に比べて生存期間が劣らず、OPTIMOX1試験ではフルオロウラシル+ロイコボリンの継続投与下にオキサリプラチンを休薬し、病勢進行(PD)後に再投与しても生存期間は持続投与と同等であることが報告されている。一方、分子標的薬であるベバシズマブは、PD後も継続的に投与することで予後の改善をもたらすことが示唆されている。Lancet誌オンライン版2015年4月7日掲載の報告より。

抗精神病薬間で虚血性脳卒中リスクに違いはあるか

 従来抗精神病薬(CAP)と非定型抗精神病薬(AAP)で、虚血性脳卒中のリスクに違いがあるのか。韓国医薬品安全性・リスク管理研究所のJu-Young Shin氏らは、高齢者を対象にCAPとAAPの虚血性脳卒中リスクを比較した。その結果、CAPであるクロルプロマジンおよびハロペリドールの虚血性脳卒中リスクが高いことが示された。CAPとAAPにおける虚血性脳卒中リスクの差に対する関心が高まっているが、今回示された結果を受けて著者は、「所見は、AAPに伴う重篤な有害事象を考慮してCAPを高齢者に処方する場合、とくに注意を払う必要性があることを示すものであった」とまとめている。PLoS Oneオンライン版2015年3月19日号の掲載報告。

プロ野球投手の上肢血流量、シーズン中は顕著に低下?

 これまで、プロ野球選手における投球腕の血流量を調査した研究はなかった。米国・イリノイ州立大学のKevin Laudnerらは、超音波を用いた血流量の測定を行い、投手の肩外転時の上腕動脈血流量が、1年間で有意に減少することを示した。今回の結果について著者は、「プロ野球投手の上肢血流が、シーズン中に損なわれている可能性が示唆された」とまとめている。Journal of Shoulder and Elbow Surgery誌オンライン版2015年4月1日号の掲載報告。

心臓手術の輸血、赤血球保存期間の違いで転帰は?/NEJM

 輸血用赤血球の保存期間と多臓器機能障害スコア(MODS)変化に、関連はないことが示された。米国・ミネソタ大学フェアビューメディカルセンターのM.E. Steiner氏らが、12歳以上の高難度の心臓手術を受ける患者を対象に行った多施設共同無作為化試験の結果、報告した。10日以下vs. 21日以上を検討したが差はみられなかったという。これまで一部の観察研究で、保存期間が2~3週を超えると、ときに致死的となる重大な有害転帰と関連するとの報告があった。NEJM誌2015年4月9日号掲載の報告より。

LDL-コレステロール低下で心血管イベントをどこまで減少させられるか?(解説:平山 篤志 氏)-350

 2013年のAHA/ACCから発表された脂質異常症に関する治療ガイドラインで、LDL-コレステロールの値ではなく、Atherosclerotic Cardiovascular Disease(ASCVD)のリスクのある患者には強力なスタチンを投与せよという、Fire and Forgetの概念が提唱され大きな話題となった。

乳腺疾患における生検、病理医による診断の精度は?(解説:廣中 愛 氏/吉田 正行 氏)-349

 乳腺疾患の治療方針の決定にあたり、針生検または切除生検の病理組織診断の果たす役割はきわめて大きい。生検で得られた標本には、悪性(浸潤がん、非浸潤がん)から良性病変、ないし正常組織まで含まれ、良性であっても異型を伴うものが存在する。マンモグラフィや検診が普及した今日では、良悪性の鑑別が困難な病変が針生検に提出される機会が増加しており、たとえばlow grade ductal carcinoma in situ(DCIS)とatypical ductal hyperplasia(ADH)では、診断者間での一致率が不良であることはしばしば指摘されている。また、良性病変でも異型を伴う病変の一部は、将来的に乳がん発生のリスクになると考えられるため、適切に診断することが求められている。しかし、これらの診断が、日常の病理診断で現在、どの程度の精度で行われているかは、十分に把握されていなかった。