がんの痛みは言葉で知らせて、麻薬で緩和を

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/03/31

 

 がん治療につきまとう「痛み」の問題。3月17日に都内で開かれたメディア向けセミナー(塩野義製薬株式会社主催)において、がんの疼痛治療を臨床と教育の両面から研究を進めている服部 政治氏(がん研究会有明病院 がん疼痛治療科 部長)が、疼痛治療の現状や、医療用麻薬をめぐる医療者と患者の認識のギャップをテーマにした講演を行った。このなかで服部氏は、「痛みを我慢するのは決して美学ではない。言葉で訴える必要性を患者に理解してもらい、医療用麻薬への不必要な恐怖を取り除くことが重要」と述べた。

痛みをめぐる認識のギャップ
 服部氏によると、がん患者が直面する痛みの発現度を表す有痛率は、根治的治療期が約2割であるのに対し、末期になると約7割にまで増加するのだという。ところが、この痛みをめぐって治療医と患者との間には注意しなければならない認識のギャップがあることが明らかになった。
 塩野義製薬が、今年2月に、がん治療医203人とがん患者1,346人を対象に行ったインターネット調査によると、「身体の痛みについて何らかの対処をしている/してくれる」かどうかについて、医師の84.2%が「そう思う/ややそう思う」と回答したのに対し、同様に答えた患者は55.5%で、両者には28.7%のギャップがみられた。また、「身体の痛みがないかどうかを聞いている/聞いてくれる」かどうかについては、医師の78.3%が「そう思う/ややそう思う」と回答したのに対し、同様に答えた患者は51.7%で、両者には26.6%のギャップがみられた。これは、疼痛に対して医師が行った対処が、患者にとっては不十分であると受け止められている表れではないだろうか。

医療用麻薬は「最後の手段」?
 しかし、医師の対処にすべての問題があるとはいえない現状がある。前述のアンケート調査で、疼痛緩和のための医療用麻薬に対するイメージについて尋ねたところ、「正しく使用すれば安全だ」「正しく使用すればがんの痛みに効果的だ」という項目で、医療者と患者の認識にそれぞれ約30%の開きがあった(医師96.1% vs.患者64.9%、同97.5% vs.同68.4%)。いずれも医師の割合が高く、患者の割合が低いためにギャップが生じているが、逆のパターンで大きなギャップが生じている項目もあり、「最後の手段だ」(医師11.8% vs.患者44.3%)「麻薬という言葉が含まれていて怖い」(同11.3% vs.同35.1%)などがそうである。
 医療用麻薬は、末期だけでなくがん治療スタート時からあらゆる形で使われており、適切なタイミングと用量で、患者の心身の負担軽減や治療の効率化につながるが、メディアなどを通じて植え付けられた「麻薬」という言葉への誤解や歪んだイメージが、患者の躊躇につながっていると服部氏は語る。

がん治療を進めるために必要なコミュニケーションとは
 こうした状況を解決するためのカギは、医療者と患者の双方が握っている。まず、医療者側に求められるのは、コミュニケーションの工夫だ。服部氏が臨床で実践しているのは、「早い段階で医療用麻薬の使用を提案する」こと。がん治療の初期段階で「麻薬」というワードを持ち出すと、患者本人も家族も非常に驚くという。しかし、その驚きこそが医療用麻薬に対する誤った認識に基づくものであるということや、医療用麻薬による疼痛緩和が治療にもたらすメリットを丁寧に説明するのだ。インパクトの強い情報も、きちんと理解して納得がいけば、その後はスムーズな治療が望めると服部氏は語る。また、痛みの度合いに応じて1日10mg から20mgに、さらに40mgにと薬剤を増やす際、「実際の増加量を視覚的に示すことで、非常に微々たるものだということが患者にわかってもらえると同時に、数字が単純に2倍、4倍になるということへの恐怖が和らぐ」という。

 一方、患者側には抱える痛みをはっきりと医療者に伝えてもらうことが肝要だ。痛みを我慢することで不眠や抑うつ状態、免疫力の低下を引き起こし、結果的にがん治療の継続ができなくなる可能性もあるということを理解してもらわなければならない。
 しかし、患者の痛みの訴えを引き出すのもまた、医療者と良好なコミュニケーションがあってこそ。服部氏は、「痛みへのケアや、オピオイドや医療用麻薬の使用については、医療者側からの問いかけときっかけづくりが重要だ」と述べた。

(ケアネット 田上 優子)