日本語でわかる最新の海外医学論文|page:740

処方率上位を伝えるレター、不要な抗菌薬処方削減に効果/Lancet

 英国一般医(GP)の不要な抗菌薬処方を減らす方法として、処方率の高い上位20%のGPに対し、英国主席医務官(England's Chief Medical Officer)名で、上位に位置していることを知らせるレター送付が有効であることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMichael Hallsworth氏らが、プラグマティックな試験を行い報告した。著者は、「低コストで全国規模の抗菌薬処方の削減が可能であり、抗菌薬管理プログラムに追加する価値があるものだ」と結論している。Lancet誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。

0.01%アトロピンによる近視治療、白人でも忍容性と有効性を確認

 近視の進行を予防する最も有効な治療はアトロピンとされているが、調節麻痺作用と散瞳作用のため二重焦点眼鏡の使用が必要となり、現実的な選択肢とはなっていない。また、アトロピンの効果には、色素が濃いアジア人種の眼と白色人種の眼とで違いがあることがよく知られている。アイルランド・Dublin Institute of TechnologyのJames Loughman氏らは、白色人種における低用量アトロピンの安全性について評価した。

血清尿酸値と心血管疾患死亡率の関係はJ字型

 アジア人における血清尿酸値と心血管疾患との関係を調査するために、大阪大学のWen Zhang氏らはEvidence for Cardiovascular Prevention from Observational Cohorts in Japan(EPOCH-JAPAN研究)のデータを用いて、日本における大規模なプール解析を実施した。その結果、血清尿酸値と心血管疾患死亡率との間にJあるいはU字型の関係が示唆された。また、日本人男女とも、血清尿酸値の最高五分位で心血管疾患の死亡率増加と関連していた。Journal of atherosclerosis and thrombosis誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。

スタチンは心臓手術後の急性腎障害を予防するか/JAMA

 スタチン未治療、既治療を問わず、心臓手術を受ける患者への周術期の高用量アトルバスタチン(商品名:リピトールほか)投与は、術後の急性腎障害(AKI)リスクを低減しないことが判明した。米国・ヴァンダービルト大学のFrederic T. Billings IV氏らが、二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、明らかにした。全体では有意差はないものの、投与群でリスクの増大が認められ、スタチン未治療患者では開始により有意なリスク増大が示された。スタチンについては、AKI発症機序に影響を及ぼす可能性が示されており、最近のいくつかの観察研究の解析報告で、スタチン既治療患者で心臓手術後のAKIリスク低減が報告されていた。ただし、それらの解析は検証が十分なものではなかった。JAMA誌2016年3月1日号掲載の報告より。

双極性障害治療、10年間の変遷は

 過去10年間メンタルヘルスケアにおいて、双極性障害と診断された患者の処方パターンや変化を明らかにするため、デンマーク・コペンハーゲン精神医学センターのLars Vedel Kessing氏らは、集団ベースおよび全国データを用いて検討した。さらに、国際的ガイドラインからの勧告と調査結果との関係も検討した。Bipolar disorders誌オンライン版2016年2月18日号の報告。

がんは最善の死に方なのか~中高年者の意識調査

 がんは転帰が改善しているにもかかわらず、依然として広く恐れられている。他の主な死亡原因である心疾患が早急な死と関連しているのとは対照的に、多くの場合、死亡までの期間が長いと思われているためである。それゆえ、BMJ誌の元編集長であるRichard Smith氏の“がんは最善の死に方(cancer is the best way to die)”という見解は多くの批判を集めた。今回、英国ロンドン大学のCharlotte Vrinten氏らは、中・高年者に対してこの見解に同意するかどうかを調査し、“良い死(good death)”かどうかという観点で、がんによる死と心疾患による死に対する考えを比較した。その結果、中・高年者の4割ががんを“最善の死に方”と見なし、がん死のほうが心疾患死より良いと評価した。著者らは、「2人に1人ががんと診断されることを考えると、がんによる良い死についての会話が、がんへの恐怖を少し軽減するかもしれない」と記している。European journal of cancer誌2016年3月号に掲載。

卵巣がんへの週1回パクリタキセル、生存期間を延長するか/NEJM

 進行卵巣がんに対するパクリタキセル+カルボプラチン併用療法では、投与間隔を1週ごとに短縮した投与法(dose-dense療法)を行っても、通常の3週ごとの投与法に比べ予後は改善しないことが、米国・Sutterがん研究所のJohn K Chan氏らが行ったGOG-0262試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年2月25日号に掲載された。投与の間隔を狭めて頻度を高めたdose-dense療法は、血管新生を阻害し、アポトーシスを促進するため、薬剤の抗腫瘍効果を増強する可能性があるという。パクリタキセルの毎週投与法は乳がん患者の生存期間を延長することが示され、卵巣がんでは日本の研究(JGOG 3016試験)でdose-dense療法の有望な結果が報告されている。

脳梗塞急性期には血栓除去術が有益/Lancet

 患者特性などを問わず大半の脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中患者にベネフィットをもたらす脳血管内治療は、血栓除去術であることが明らかにされた。カナダ・カルガリー大学のMayank Goyal氏らHERMES共同研究グループが、5つの無作為化試験に参加した全被験者データをメタ解析した結果で、Lancet誌オンライン版2016年2月18日号で発表した。著者は、「この結果は、脳主幹動脈梗塞による急性虚血性脳卒中患者へのタイムリーな治療を提供するケアシステム構築において大きな意味を持つだろう」と述べている。

妊娠とメトホルミン-本当に「禁忌」なのか?-(解説:住谷 哲 氏)-492

肥満人口の増加とともに、耐糖能異常を合併した妊婦の数も増加している。耐糖能異常合併妊娠は、妊娠前糖尿病、妊娠糖尿病に分類されるが、その管理目標は母児の周産期合併症を予防することにある。妊娠中の血糖管理の基礎は食事療法であるが、血糖降下薬を必要とする場合は少なくない。

性差という個体の特徴の意義~女性は心房細動の予後規定因子なのか~(解説:西垣 和彦 氏)-491

歴史的に医学は成人男性を標準個体とし、その病態や臨床経過・予後、診断から治療に至るまでを確立してきた。しかし近年、危険因子や薬剤の効果においても性差があることが明らかになるにつれ、性差の存在がクローズ・アップされるようになった。

日本人高齢者、運動でアルツハイマー病リスク軽減:九州大学

 九州大学の岸本 裕歩氏らは、日本人高齢者における認知症リスクに対する身体活動の長期的な影響を調査した。その結果、身体的な活動が日本人の認知症のリスク、とくにアルツハイマー病のリスクを軽減することを報告した。European journal of epidemiology誌オンライン版2016年2月8日号の報告。

冠動脈手術前のアスピリンは中止すべきか?/NEJM

 冠動脈手術前のアスピリン術前投与は、死亡および血栓性合併症のリスクを低下させることはなく、出血リスクも増加しない。オーストラリア・アルフレッド病院のPaul S. Myles氏らが、冠動脈手術を受ける高リスク患者においてアスピリンが死亡率や血栓性合併症の発症率を減らすかどうかを評価する目的で行ったATACAS試験の結果、明らかとなった。ほとんどの冠動脈疾患患者は、心筋梗塞・脳卒中・死亡の1次または2次予防のためにアスピリンを投与されている。アスピリンは、出血リスクを高めるが、冠動脈手術前に中止すべきかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2016年2月25日号掲載の報告。

頸動脈狭窄へのステント留置 vs.内膜切除の10年転帰:CREST試験/NEJM

 頸動脈狭窄に対する頸動脈内膜切除術(CEA)と頸動脈ステント留置術(CAS)を比較したCREST試験の10年追跡結果を、米国・メイヨークリニックのThomas G. Brott氏らが報告した。主要複合エンドポイント(周術期脳卒中・心筋梗塞・全死亡および周術期以降の同側性脳卒中)の10年発生率に両群で有意差は認められず、周術期以降の同側性脳卒中のみでも両群間で有意差はなかった。CREST試験では、これまで主要複合エンドポイントの4年発生率について、両群で差はないことが報告されていたが、さらなる長期追跡の解析結果が待たれていた。NEJM誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。

試みない後悔よりも、試みる勇気を持て、高齢者へのPCI(解説:中川 義久 氏)-490

「後悔」とは、「ああすれば良かった、こうすれば良かった」と後から物事を悔いることで、皆ができれば避けたいと思っている感情の1つである。恋愛でも、仕事でも、対人関係でもそういう機会は多い。「あの時、勇気を出して告白すれば彼女の気持ちは変わったんじゃないか?」など、ギクシャクしたりした後で後悔の念は強まるものだ。“後悔先に立たず”というが、後悔しても取り戻せないとわかっていても執着心が勝ってしまうのが人間である。これはPCI施行医においても同様である。

治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのか

 治療抵抗性統合失調症では、クロザピンが標準治療として考えられている。しかし、クロザピンの使用は、多くの副作用により制限がある。また、他の抗精神病薬との無作為化比較試験の数も増加している。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMyrto T Samara氏らは、ネットワークメタ解析により、治療抵抗性統合失調症に使用可能な抗精神病薬によるすべての無作為化試験を統合し分析した。JAMA psychiatry誌2016年3月号の報告。

長時間労働とがんリスク

 長時間労働は心血管疾患リスクの増加と関連しているが、がんとの関連は不明である。英国London School of Hygiene & Tropical MedicineのKatriina Heikkila氏らのマルチコホート研究により、長時間労働は、がん全体、肺がん、大腸がん、前立腺がんのリスクに関連がないことが示唆された。一方、乳がんリスクとの関連については「さらなる研究が必要とされる」と記している。British Journal of Cancer誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。