日本語でわかる最新の海外医学論文|page:738

関節リウマチへのリツキシマブ、TNF阻害薬に非劣性/Lancet

 関節リウマチ(RA)治療の生物学的製剤導入療法として、TNF阻害薬とリツキシマブを比較する、初となる無作為化比較試験が、英国・グラスゴー大学のDuncan Porter氏らにより行われた。有効性、安全性、費用対効果について調べた結果、リツキシマブのTNF阻害薬に対する非劣性が認められたという。Lancet誌オンライン版2016年5月16日号掲載の報告より。

サブプライムローンとEBMの類似性(解説:後藤 信哉 氏)-537

日本語と異なり、英語は決定論的、論理的言語である。日本語で考えるわれわれ日本人は、英語で考える米英人の発想法を完全には理解できない。サブプライムローンを販売した米国の金融会社は、「将来経済は成長する」という前提が正しい限り「サブプライムローンは破綻しない」と人々を説得し、その説得には論理性があったので、多くの人は自分の今の収入以上のローンを抱えた。確かに、100年の視点でみれば「経済は成長する」のかもしれないが、数年の規模では成長したり衰退したりすることを、われわれは感覚的に実感している。日本語の論理性は英語ほど精緻ではないので、日本人であれば自分の収入に見合わない借金は「なんか怖い」と感じる人が多いだろう。日本語は論理性では英語に劣るが、その分、日本語で考えるわれわれは米英人より直感力が優れている。

抗精神病薬の血漿中濃度とEPS発現

 抗精神病薬は、錐体外路系副作用(EPS)など、さまざまな望ましくない運動反応を誘発することがある。広く認識されているEPSの根底にある薬理学的メカニズムとして、線条体のD2受容体占有率がある。しかし、EPSの薬物動態の背景についてはわかっていない。ドイツ・アーヘン工科大学のGeorgios Schoretsanitis氏らは、リスペリドン(RIS)を処方され、EPSのためにビペリデンを用いた患者の薬物動態パターンをin vivoで分析した。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2016年5月10日号の報告。

急性呼吸促迫症候群、アスピリン早期投与で予防できるか/JAMA

 急性呼吸促迫症候群(ARDS)の発症に、アスピリンの早期投与は効果があるのか、米国・メイヨークリニック大学のDaryl J. Kor氏らが、第II相の多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行い検討した。救急部門(ED)に出現した高リスク患者390例を対象に検証した結果、7日時点のARDS発症に有意差は認められなかったという。ARDS治療は支持療法が主である。一方で、早期介入の発症予防効果は明らかになっていなかった。研究グループは、アスピリンを用いた早期介入の有効性と安全性を検証したが、試験の結果を踏まえて、「より大規模な第III相試験の実施を支持するデータが得られなかった」と結論している。JAMA誌オンライン版2016年5月15日号掲載の報告より。

合成性ホルモン・ダナゾールでテロメア伸長を確認/NEJM

 テロメア疾患患者に対し、合成性ホルモンのダナゾールの経口投与による治療によって、テロメア伸長がもたらされたことが示された。米国立心肺血液研究所(NHLBI)のDanielle M. Townsley氏らが同疾患患者を集めて行った第I-II相前向き試験の結果で、NEJM誌2016年5月19日号にて発表された。テロメア維持・修復の遺伝子異常は、骨髄不全、肝硬変、肺線維症を引き起こすこと、またがんに対する感受性を高めることが知られている。歴史的に、骨髄不全症候群の治療としてアンドロゲンが有用とされてきたが、組織培養と動物モデルにおける検討で、性ホルモンがテロメラーゼ遺伝子発現を調節することが確認されていた。

統合失調症患者への抗精神病薬と気分安定薬併用、注意すべきポイントは

 統合失調症患者は心血管疾患リスクが高く、全死亡率は一般集団と比較して高い。抗精神病薬の代謝系副作用は広く研究されているが、抗精神病薬にリチウムやバルプロ酸など従来の気分安定薬を併用した場合の、代謝系リスクへの影響という観点からの評価はない。米国・マサチューセッツ総合病院のBrenda Vincenzi氏らは、第2世代抗精神病薬とリチウムまたはバルプロ酸との併用治療が、併用しない場合と比較し、代謝アウトカムの不良と関連しているかを検討した。Journal of psychiatric practice誌2016年5月号の報告。

増悪リスクの高いCOPD、LABA/LAMAの位置付けは?/NEJM

 インダカテロール(長時間作用性β2刺激薬[LABA])/グリコピロニウム(長時間作用性抗コリン薬[LAMA])は、過去1年間に増悪歴のある慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、サルメテロール(LABA)/フルチカゾン(吸入ステロイド[ICS])と比較し、COPD増悪抑制効果が優れることが認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJadwiga A. Wedzicha氏らが、両薬剤を直接比較する多施設共同無作為化二重盲検第III相試験(FLAME試験)の結果、報告した。大半のガイドラインにおいて、増悪リスクの高いCOPD患者の治療には、第1選択としてLABA/ICSまたはLABA/LAMAが推奨されているが、LABA/LAMAの位置付けは明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年5月15日号掲載の報告。

脳梗塞/TIA再発予防にアスピリン早期投与が有効/Lancet

 一過性脳虚血発作(TIA)または軽度虚血性脳卒中(脳梗塞)後の早期再発リスクは、薬物療法によって低下し、とくにアスピリンが鍵となるとの結果を、英・オックスフォード大学のPeter M Rothwell氏らが、アスピリンの無作為化比較試験を統合し経時的解析を行い報告した。アスピリンは、脳梗塞の長期再発リスクを13%減少することが示され、TIAまたは脳梗塞の2次予防として推奨されている。しかしながら、重大な脳梗塞の再発リスクは急性期に高い。これまで、観察研究では早期から薬物療法を開始するほうが有用性は大きいことが示されていたが、アスピリンの効果は過小評価されていた。結果を踏まえて著者は、「従来考えられていたよりも、アスピリンを早期から開始することは有効であり、TIAが疑われる症状が現れた場合は自らアスピリンを服用するよう公衆衛生教育をしたほうがよい」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年5月18日号掲載の報告。

統合失調症へのSSRI投与の必要性は?

 統合失調症の精神病理的な治療(たとえば、陰性症状やうつ症状)は、いまだに非定型抗精神病薬のわずかな有効性により行われている。臨床現場では、統合失調症の陰性症状やうつ症状を改善するために、抗精神病薬とSSRIの併用が行われているが、陰性症状、うつ症状、強迫症状に対する有効性のデータは対照的である。イタリア・ミラノ大学のMassimiliano Buoli氏らは、統合失調症に対するSSRIの使用および有効性の概要を得るため、メインデータベースを用いた検討を行った。Expert opinion on pharmacotherapy誌オンライン版2016年5月5日号の報告。

持続性AFへのアブレーション、標準法に軍配

 持続性心房細動(AF)に対するアブレーションの成績は発作性AFと比べて劣る。近年、AFがローター(rotor:旋回)と呼ばれる渦巻きによって維持されるという理論に基づき、そのローターの部位を特定し焼灼するFIRM(focal impulse and rotor modulation)ガイド下アブレーションが注目されているが、最近その有効性を疑問視する報告が相次いでいる。今回、持続性AFに対してFIRMアブレーションと肺静脈隔離術や従来の標準的アブレーションとを比較した前向き無作為化試験の結果が、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2016年4月28日号に掲載された。