日本語でわかる最新の海外医学論文|page:729

眼科医への企業からの報酬に有意な男女差

 企業との関与がある眼科医の中で、女性眼科医は少数派であり、また男性眼科医よりも平均すると報酬が少ないことが、米国・ジョンズホプキンス大学のAshvini K. Reddy氏らによる後ろ向き観察研究の結果、明らかとなった。ただし、その違いの理由は調べられていない。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年4月21日号の掲載報告。

左室駆出率低下の心不全、年齢・性別問わずβ遮断薬が有効/BMJ

 左室駆出分画(LVEF)が0.45未満の心不全患者に対するβ遮断薬は、年齢や性別を問わず、死亡リスクや心不全による入院リスクをいずれも低下する効果があることが、11の無作為化比較試験を対象に行ったメタ解析の結果、明らかになった。英国・バーミンガム大学のDipak Kotecha氏らが行った試験で明らかにしたもので、BMJ誌オンライン版2016年4月20日号で発表した。同服薬について、現状では高齢や女性の患者において、効果が実証された用量よりも少ない量を服用している場合が少なくないという。結果を踏まえて著者は、「年齢、性別を問わず、低LVEFの心不全患者はβ遮断薬を投与されるべきである」とまとめている。

冠動脈バイパス術が長期生命予後改善効果を有することが22年ぶりに報告された(解説:大野 貴之 氏)-524

虚血性心筋症(EF35%以下の低心機能を伴った安定冠動脈疾患)に対する治療として、薬物治療群(602例)とCABG群(610例)を比較したランダム化試験がSTICH試験である。2011年に追跡期間5年の結果が報告されたが、心臓血管死に関してはぎりぎり有意差を検出したが、全死亡に関して有意差は検出されなかった。今回、追跡10年間の結果が報告された。その結果、全死亡は薬物群66.1%に対してCABG群58.9%(p=0.02)、心臓血管死は49.3%対して40.5%(p=0.006)であった。

pembrolizumab、進行性悪性黒色腫に有望/JAMA

 進行性悪性黒色腫の治療において、免疫チェックポイント阻害薬pembrolizumabは、高い有効性と良好な安全性を発揮することが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAntoni Ribas氏らが行ったKEYNOTE-001試験の長期データの解析で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年4月19日号に掲載された。pembrolizumabは、プログラム細胞死1(PD-1)に対するヒト型モノクローナルIgG4-κ抗体であり、同試験の悪性黒色腫の拡大コホート奏効例のフォローアップ期間中央値11ヵ月時の解析では、投与スケジュールの違いやイピリムマブ投与歴の有無により25~52%の客観的奏効率が報告されている。

TIA後の心血管系イベントリスク、従来より低下/NEJM

 一過性脳虚血発作(TIA)発症後の心血管系イベントリスクは先行研究報告よりも低いことを、フランス・Bichat HospitalのPierre Amarenco氏らTIAregistry.org研究グループが、21ヵ国4,789例の患者を対象とした国際多施設共同前向き観察試験の結果、明らかにした。1997~2003年に行われた研究では、TIAまたは軽症脳卒中の発症後3ヵ月間の脳卒中または急性冠症候群発症のリスクは12~20%と推定されていた。その後、TIA治療は大きく変化したが、最近の患者の予後やリスクスコアシステムの有用性については明らかになっていない。研究グループによるTIAregistry.orgプロジェクトは、脳卒中専門医が緊急性を評価するようになった現行医療体制下で治療を受けた、TIAまたは軽症脳卒中患者の最新のプロファイル、再発等のリスク因子、そしてアウトカムを明らかにするようデザインされた研究であった。NEJM誌2016年4月21日号掲載の報告。

GAUSS-3試験:PCSK9抗体による新たなコレステロール低下療法の可能性―心血管イベント抑制につながるのか?(解説:平山 篤志 氏)-523

冠危険因子としてのLDL-コレステロール(LDL-C)をスタチンにより低下させることによって、冠動脈疾患の1次予防、2次予防が有効になされることは、多くの大規模臨床試験で示されてきた。しかし、スタチンの服用により、筋肉痛あるいは無痛性の筋肉障害があることが知られている。その頻度は、1~5%、時には20%くらいあるといわれている。このようにスタチンで筋肉症状を訴える患者のコレステロール治療としては、吸収阻害薬であるエゼチミブが用いられていた。一方、LDL-Cと結合したLDL-C受容体は、血中のPCSK9が結合すると細胞内で壊され再利用ができなくなる。PCSK9を阻害する抗体であるエボロクマブにより、スタチン服用患者でもLDL-Cが60%以上減少することが示されている。

FDAの承認が抗精神病薬の適応外処方に与える影響

 FDAによる承認後、多くの薬剤が適応外で処方されている。適応外の使用における有効性や安全性をサポートする明確なエビデンスが存在する場合には、医薬品承認事項変更申請(sNDAs)を通じて、正式にFDAの承認を申請することができる。米国・ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のBo Wang氏らは、小児に対し抗精神病薬を処方するうえで、小児使用に関するsNDAsのFDA決定への影響を評価した。PloS one誌オンライン版2016年3月31日号の報告。

リノール酸はヘルシーとは言えない?/BMJ

 リノール酸を多く含む食事により冠動脈疾患または全死亡のリスクが低下する、という伝統的な仮説に否定的な見解が示された。リノール酸を多く含む食事は飽和脂肪酸を多く含む食事と比較して、血清コレステロール値を低下させるが、その低下が大きすぎるとむしろ死亡リスクは高まり、これまで飽和脂肪酸を植物性脂肪に置き換える効果が過大評価されてきた可能性があるという。米国立衛生研究所(NIH)のChristopher E Ramsden氏らが、Minnesota Coronary Experiment(MCE)研究の未発表文書を発見し、生データを再解析するとともに、類似の無作為化比較試験も含めてシステマティックレビューならびにメタ解析を行った結果、報告した。BMJ誌オンライン版2016年4月12日号掲載の報告。

ICUでのチェックリスト等の介入で院内死亡率は改善するか/JAMA

 集中治療室(ICU)の重症患者に対するケアの質を改善するため、毎日のチェックリスト・目標設定・臨床医の指示による多面的な介入を行っても、院内死亡率は減少しない。ブラジル・HCor病院のAlexandre B. Cavalcanti氏らが、観察研究とクラスター無作為化比較試験から成るCHECKLIST-ICU研究の結果、報告した。ICUでのチェックリスト等の導入による多面的質改善介入の有効性に関する研究は、これまですべて高所得国で実施されたものであり、無作為化試験によるエビデンスはなく、ブラジルのような低~中所得国での有効性は不明であった。JAMA誌2016年4月12日号掲載の報告。

収縮能が保持された心不全(HFpEF)に対する心房間シャントデバイスの効果は?(解説:佐田 政隆 氏)-522

心不全症状が認められるものの、左室収縮能が保持された心不全(HFpEF)が、循環器診療において、現在、非常に問題になっている。HFpEFは心不全患者の約半数を占め、その予後は不良といわれている。左室収縮能が低下した心不全(HFrEF)に対しては、レニン・アンジオテンシン系阻害薬やβ遮断薬、利尿薬が有効であることが確立している。HFpEFに対しても、これらの薬物を用いて大規模臨床研究がいくつも行われてきたが、有効性を示すエビデンスは得られていない。

閾値下うつ病に対する効果的なプログラム:広島大

 青年期にみられる閾値下うつ病の主な行動特性は、環境中の報酬知覚の頻度が低い。そのため、単純な介入が短いセッションで行われており、積極的な補強活動を増加させることに焦点を当てることは、報酬の可能性を高めるうえで有効であると考えられる。広島大学の高垣 耕企氏らは、毎週60分間のセッションを5週間実施した行動活性化プログラムの有効性を調べるため、ランダム化比較試験を実施した。European child & adolescent psychiatry誌オンライン版2016年3月22日号の報告。

認知症者はどの程度活動性が落ちているか

 認知症高齢者が活動的でないことは、自己報告データで示されている。オランダ・フローニンゲン大学医療センターのHelena J M van Alphen氏らは、地域在住および施設入居の認知症者の歩行可能な認知症者の身体活動(PA)レベルを客観的に評価し、認知機能が正常な高齢者のPAレベルと比較した。本研究は、施設の認知症者だけでなく、地域在住認知症者のPAレベルを客観的に調査し、認知症者の非活動性を明らかにした最初の研究である。PLOS ONE誌オンライン版2016年3月31日号の報告。

糖尿病網膜症の発症、血清リポ蛋白(a)値と関連

 リポ蛋白(a)(Lp(a))は、主に心血管疾患発症の予測因子と考えられている。先行研究では、Lp(a)と糖尿病性細小血管合併症は関連している可能性が示された。韓国カトリック大学のJae-Seung Yun氏らは、2型糖尿病患者を対象とした前向きコホート研究を行い、糖尿病網膜症は血清Lp(a)値と関連していることを明らかにした。Journal of Clinical Lipidology誌2016年3・4月号(オンライン版2016年1月7日号)の掲載報告。

急性腎障害、低所得国ほど市中感染が原因に/Lancet

 急性腎障害(AKI)は、その約6割が市中感染で、低所得国や低中所得国ではその割合は8割と高いことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRavindra L. Mehta氏らによる、世界72ヵ国、約4,000例のデータを対象に前向きに収集して行った国際横断研究「International Society of Nephrology Global Snapshot」の結果、明らかになった。治療7日目の死亡率は、低所得国・低中所得国では12%と、高所得国や高中所得国より高率だったという。Lancet誌オンライン版2016年4月13日号掲載の報告より。

17歳前後の肥満、成人後の心血管死リスクが3.5倍/NEJM

 青年期BMIが50パーセンタイル以上において、成人での心血管疾患死のリスクが増大することが明らかにされた。BMIが50~74パーセンタイルの、いわゆる“許容範囲”と考えられている群でも同リスクの増加が認められ、95パーセンタイル以上群では5~24パーセンタイル群に比べて、心血管疾患死のリスクが3.5倍に増大したという。イスラエル・Sheba Medical CenterのGilad Twig氏らが、平均年齢17.3歳の青年男女230万人について約40年間追跡を行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2016年4月13日号で発表した。

いま一度ガイドラインの功罪を考える(解説:野間 重孝 氏)-521

エピネフリンは、強烈かつ即効的なα・β刺激作用により、強力な陽性変時作用、陽性変力作用に加え血管収縮作用を有する薬剤であり、何十年にもわたって心肺蘇生になくてはならない薬剤として使用されてきた。米国心臓協会が、初めて心肺蘇生についてのガイドラインを発表したときも(1974年)、本剤は当然のようにそのラインナップに加わっていた。しかし、一方でその使用根拠、使用法については議論が分かれるところであり、最新のAHAガイドラインにおいては、ショックに陥っていない不整脈患者においては3~5分おきに、ショックリズム(つまりVT、vf)患者に対しては2回目の除細動後3~5分後から使用を開始すべきだとしている。その表現も“it is reasonable to consider”という、遠回しというか歯切れの悪い表現でなされている。

神経性過食症と境界性パーソナリティ障害との関連

 小児期のトラウマ歴に基づく神経性過食症患者の発症の誘因の調査や、臨床に関連する外部検証ツールを用いた境界性パーソナリティ障害の精神病理との比較のため、米国・ファーゴ神経精神研究所のLinsey M Utzinger氏らは経験的手法にて検討した。The International journal of eating disorders誌オンライン版2016年4月1日号の報告。