日本語でわかる最新の海外医学論文|page:730

駆出率低下心不全、自家骨髄由来の細胞療法で転帰改善/Lancet

 ixmyelocel-T細胞療法は、虚血性拡張型心筋症に起因する駆出率が低下した心不全患者の転帰を改善することが、米国・ユタ大学のAmit N Patel氏らが行ったixCELL-DCM試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年4月4日号に掲載された。ixmyelocel-Tは、選択的に増殖させた患者骨髄由来の2種の単核細胞(CD90陽性間葉系幹細胞、CD45陽性/CD14陽性/自家蛍光陽性の活性化マクロファージ)を用いた細胞療法である。初期の臨床試験において、虚血性拡張型心筋症による心不全患者に心筋内投与し、臨床、機能、症状、QOLの転帰を改善する可能性が示唆されている。

PCI後DAPTにCHADS2-VASc/HAS-BLEDは成立するか?~抗血小板剤も個別化の時代に~(解説:中野 明彦 氏)-519

PCI(ステント留置)後の、適正DAPT期間の議論が続いている。多くの、とくに新しいDESが(おそらくメーカーの思惑も手伝って)、short DAPTに舵を切るべくその安全性検証に躍起になっているが、そこに水を差したと騒がれているのが「DAPT試験」である。しかし、考えてみればナンセンスな話で、前者はステント留置直後からの検討、後者は1年間MACEや出血性合併症・TLRを免れた症例のみをエントリーしている。例えは悪いが、1次災害と2次災害に対して同じ対処法で優劣を競うようなものである。

認知症者への抗精神病薬投与の現状は

 抗精神病薬は、脳卒中や死亡リスクの増加に関する重要な安全上の懸念があるにもかかわらず、BPSDの治療に使用されている。急性期病院で治療を受ける認知症および関連する行動障害の患者数は増加している。アイルランド・コーク大学病院のP Gallagher氏らは、認知症者に対する抗精神病薬の使用に関して調査を行った。QJM誌オンライン版2016年3月14日号の報告。

心臓手術後の心房細動、心拍数調節か?洞調律維持か?/NEJM

 心臓手術後の心房細動の治療において、心拍数調節(heart-rate control)と洞調律維持(rhythm control)の効果に差はないことが、米国・クリーブランド・クリニックのA. Marc Gillinov氏らCardiothoracic Surgical Trials Network(CTSN)の検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年4月4日号に掲載された。心房細動は、心臓手術後にみられる最も頻度の高い合併症で(20~50%)、死亡や他の合併症、入院の発生を増加させることが知られている。術後心房細動の予防を目指した種々の研究が進められているが、有効な方法は確立されておらず、病態が安定した患者の初回治療では、心拍数調節と洞調律維持のどちらが優れるかの議論が続いている。

心房内左右シャント作成デバイスはHFrEFの血行動態改善に有効か?(解説:絹川 弘一郎 氏)-518

難治性の肺高血圧症(PH)に対して、バルーンによる心房中隔裂開術(BAS)という治療がある(というか、あった)。この治療は、PHによる右心不全から上昇した右房圧を左房に逃がすことで、右室負荷を軽減するのみならず左室への血流を保ち心拍出量の増加につながるため、右左シャントによる低酸素血症を勘案しても血行動態的に有益であると考えられる症例に施行されてきた。

小児に対するLAI治療、その安全性は

 長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAIA)の数は、年々増加している。しかし、小児に対するLAIA治療の安全性、有効性は確立されていない。米国・ケースメディカルセンターのStephanie Pope氏らは、ケースシリーズにより小児に対するLAIA治療を研究することで、その知見不足を補うための試みを行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年3月30日号の報告。

「リウマチ治療のブレークスルーとなりうるか」 JAK1/2阻害剤baricitinib第III相国際共同臨床試験日本人部分集団解析より

 長足の進歩を遂げてきた関節リウマチ(RA)治療であるが、それでもいまだ解決されない課題も存在する。多くの臨床医にとって頭の痛い問題は、アンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)に不耐となった場合、十分な有効性を示す治療オプションが限定されていることである。また、MTX不応となり、生物学的製剤を選択する場合、多くの生物学的製剤がMTX併用下で有用性を示しているため、MTXを併用せざるを得ないことが多く、単剤で十分な有効性を示す治療選択肢がきわめて少ないことも課題といえよう。

慢性特発性蕁麻疹へのオマリズマブ、最も有効な用法・用量は?

 慢性特発性蕁麻疹は、6週間以上持続するかゆみのある蕁麻疹、血管性浮腫、またはその両方と定義される。オマリズマブは、肥満細胞と好塩基球の機能に影響を及ぼす抗IgE抗体で、慢性特発性蕁麻疹の有望な新しい治療選択肢である。ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のZuo-Tao Zhao氏らは、慢性特発性蕁麻疹患者を対象にさまざまな用量で行われたオマリズマブの無作為化二重盲検プラセボ対照試験についてメタ解析を行い、オマリズマブの用法・用量は4週間に1回300mg投与が最も有効性が高く安全性も良好であることを示した。

慢性腰痛治療のゴールは「何ができるようになりたいか」

 慢性腰痛症に伴う疼痛に対し、2016年3月、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチン塩酸塩(商品名:サインバルタ)の適応追加が承認された。これを受けて、4月19日、本剤を販売する塩野義製薬株式会社と日本イーライリリー株式会社が、痛みのメカニズムと治療薬の適正使用をテーマにメディアセミナーを開催した。

慢性心不全、エナラプリルへのアリスキレン追加は有用か/NEJM

 慢性心不全患者に対し、エナラプリルに加えてアリスキレン(商品名:ラジレス)を投与しても、有害事象が増大するだけでベネフィットは増大しないことが、英国・グラスゴー大学のJohn J.V. McMurray氏らによる無作為化試験の結果、示された。アリスキレンのエナラプリルに対する非劣性は示されなかった。慢性心不全患者に対し、ACE阻害薬は死亡および入院の発生を減少することが知られている。しかし、それら患者に対するレニン阻害薬がどのような役割を果たすのかは不明であった。NEJM誌2016年4月21日号(オンライン版2016年4月4日号)掲載の報告。

中等度虚血性MRへのCABG+僧帽弁形成術、2年時点の結果/NEJM

 中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する冠動脈バイパス移植術(CABG)単独手術vs.CABG+僧帽弁形成の併用手術について検討したCTSN(Cardiothoracic Surgical Trial Network)による無作為化試験の、2年アウトカムの結果が米国・マウントサイナイ医科大学のR.E. Michler氏らにより発表された。左室逆リモデリングの有意差は認められず、併用群ではより多くの弁修復が認められたが、単独群と比較して生存の改善、全有害事象や再入院の減少に関する有意差は認められず、一方で神経学的合併症や上室性不整脈の早期発生リスク増大が確認された。本検討については1年時点の評価報告でも、左室収縮終末期容積係数(LVESVI)や生存率の有意差はみられず、有害事象も併用群で多かったが中等度~重度MRの有病率低下がみられ、長期アウトカムの結果における変化が期待されていた。NEJM誌オンライン版2016年4月3日号掲載の報告。

非定型うつ病を評価するT&P日本語版の信頼性は:群馬病院

 2006年、Parker氏らは、さまざまなストレス要因や病前性格スタイルに起因する非メランコリー型うつ病の特定のサブタイプを分類するための新規アプローチとして、Temperament and Personality Questionnaire(T&P)を提案した。群馬病院の工藤 由佳氏らは、T&P日本語版を開発し、その信頼性と妥当性を評価した。その結果、T&P日本語版は、日本人非メランコリー型うつ病患者の気質や性格を評価するうえで、信頼性が高く、有効な尺度であることを報告した。Journal of affective disorders誌オンライン版2016年3月26日号の報告。