日本語でわかる最新の海外医学論文|page:641

ニーマンピック病C1型へのHPβCDの可能性/Lancet

 ニーマンピック病C1型の患者に対し、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)を髄腔内投与は、病状進行を遅らせる可能性があるようだ。またその安全性については、中間~高周波の聴力損失が認められたほかは、重篤な有害事象は認められなかった。米国・ワシントン大学のDaniel S. Ory氏らが行った、第I-IIa相の非盲検用量漸増試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月10日号で発表した。ニーマンピック病C1型は進行性の神経変性によって特徴づけられるライソゾーム病に含まれる先天性代謝異常症の一種。HPβCDはマウスとネコモデルを用いた前臨床試験で、小脳のプルキンエ細胞消失を顕著に遅らせ、神経症状の進行を遅らせて寿命を延伸させたことが示されていた。

SSRI治療抵抗性うつ病への効果的な増強療法

 うつ病女性において標準的な治療では十分な効果が得られないことがある。クレアチン水和物や5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)による従来の抗うつ薬治療の増強療法は、女性のうつ病に関連するセロトニン産生や脳の生物学的因子の欠損を補正し、相乗的な効果をもたらす。米国・ユタ大学のBrent M. Kious氏らは、SSRIまたはSNRI単独療法で効果不十分なうつ病女性に対する、5-HTPおよびクレアチン増強療法に関するオープンラベル試験を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌オンライン版2017年8月5日号の報告。

がん発症後、動脈血栓塞栓症リスクが2倍以上に

 がん患者の動脈血栓塞栓症リスクの疫学的な関連をより明確にするため、がんステージの影響を含めて、米国Weill Cornell MedicineのBabak B. Navi氏らが検討したところ、新規がん発症患者において、動脈血栓塞栓症リスクが短期的に大幅な増加を示すことがわかった。Journal of the American College of Cardiology誌2017年8月22日号に掲載。

大腿静脈カテーテル、望ましい穿刺位置と肢位は?

 大腿静脈カテーテル挿入は、血管の断面積(CSA)が大きな部位で行うと合併症リスクが減少する可能性がある。今回、ポーランド・Maria Sklodowska-Curie Memorial Cancer CenterのDorota Czyzewska氏らが、3つの肢位で2部位の右大腿静脈のCSAを調べたところ、肢位は開排位において最大であり、部位については性別で異なることが示された。PLOS ONE誌2017年8月14日号に掲載。

ROS1肺がん治療薬と診断薬の承認にLC-SCRUM-Japanの研究成果

 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)は2017年8月18日、同センター東病院での多施設共同研究全国肺がん遺伝子診断ネットワークLC-SCRUM-Japan(研究代表者:同東病院、呼吸器内科長後藤功一氏)の成果および治療開発への貢献により、ROS1融合遺伝子陽性の切除不能進行・再発非小細胞肺がん(ROS1肺がん)に対する治療薬として、分子標的薬クリゾチニブの適応拡大が承認されたと発表。あわせて、ROS1融合遺伝子検出の体外診断用医薬品(ROS1融合遺伝子検出キット)が、この治療におけるコンパニオン診断薬として承認された。

悪性脳腫瘍に対するテモゾロミド療法の役割は?/Lancet

 新たに診断された1p/19q非欠失の退形成星細胞腫患者において、テモゾロミドアジュバント療法により、顕著な生存ベネフィットを得られることが、第III相無作為化非盲検試験「CATNON(EORTC study 26053-22054)」の中間解析として報告された。オランダ・エラスムスMCがん研究所のMartin J van den Bent氏らが、Lancet誌オンライン版2017年8月8日号で発表した。同患者に対するテモゾロミドによる化学療法は、1p/19q欠失の退形成星細胞腫よりも有効性は低く予後は不良とされているが、その役割は明確にはなっていなかった。

世界の老眼人口、35歳以上で約11億人

 世界的に、失明/視力障害の年齢調整罹患率は減少しつつあるものの、人口増加と高齢化により失明/視力障害者数は著明に増加しており、加えて未矯正の老眼を有する人も非常に多いことが明らかとなった。英国・アングリア・ラスキン大学のRupert R A Bourne氏らによるメタ解析の結果で、「世界、地域、国、すべてのレベルで、視力障害を軽減する取り組みを拡大する必要がある」とまとめている。Lancet Global Health誌オンライン版2017年8月2日号掲載の報告。

PM2.5が高いと高濃度乳房になりやすい?

 マンモグラフィ乳腺密度は乳がんの強力な危険因子であるが、都市部と農村部の乳腺密度の違いにおける環境の影響についてはほとんどわかっていない。米国・フロリダ大学のLusine Yaghjyan氏らが集団ベースの大規模レジストリで調査したところ、きわめて高濃度乳房の女性は脂肪性乳房の女性に比べてPM2.5の曝露が多く、オゾンの曝露は少なかった。本研究から、PM2.5やオゾンへの曝露の違いでマンモグラフィ乳腺密度の地域差を部分的に説明できることが示唆された。Breast cancer research誌2017年4月6日号に掲載。

自閉症スペクトラム障害児に即興音楽療法は有用か/JAMA

 自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児の治療では、強化標準治療に即興音楽療法を追加しても症状の重症度は改善しないことが、ノルウェー・Uni ResearchのLucja Bieleninik氏らが行ったTIME-A試験で明らかとなった。研究の成果はJAMA誌2017年8月8日号に掲載された。音楽療法は、ASD患者の社会的相互作用(social interaction)、共同注意(joint attention)、親子関係を改善することが無作為化試験で示されている。即興音楽療法は、患児と訓練を受けた音楽療法士が自発的に歌ったり、演奏したり、体を動かすことで音楽を創造する患児中心のアプローチで、音楽療法士は患児の関心や行動、好奇心に着目してこれに従うことで社会コミュニケーション技法の発達を促す。

同種HSCT後の気流低下、アジスロマイシンで抑制できるか/JAMA

 造血器腫瘍のため同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者において、アジスロマイシンの早期投与はプラセボ投与と比較して、気流低下(airflow decline)のない生存の達成は不良であったことが、多施設共同無作為化試験「ALLOZITHRO」の結果、示された。フランス・サン・ルイ病院のAnne Bergeron氏らがJAMA誌2017年8月8日号で報告した。同種HSCT後の閉塞性細気管支炎症候群は、罹患率および死亡率の増大と関連している。先行研究で、アジスロマイシンが、肺移植後の閉塞性細気管支炎症候群を減少する可能性が示唆されていた。

抗凝固薬の中和薬:マッチポンプと言われないためには…(解説:後藤 信哉 氏)-715

手術などの侵襲的介入時におけるヘパリンの抗凝固効果はプロタミンにより中和可能であり、経口抗凝固薬は外来通院中の症例が使用しているので、ワルファリンの抗凝固効果は新鮮凍結血漿により即座に、ビタミンKの追加により緩除に中和できることを知っていても、中和薬の必要性を強く感じる場合は少なかった。止血と血栓は裏腹の関係にあるので、急性期の血栓、止血の両者を管理する必要のある症例の多くは入院症例であり、その多くは調節可能な経静脈的抗凝固療法を受けていた。

ベルソムラによる「せん妄予防」

 順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学の八田耕太郎氏らは、高齢救急患者における、就寝前に不眠症治療薬「ベルソムラ(一般名:スボレキサント)」投与によって、安全にせん妄を予防できることをJournal of Clinical Psychiatry誌に発表した。研究者らは本結果について、今まで実効性がなかったせん妄の療法に、薬物療法による新たなせん妄予防の道を拓いたもので、せん妄診療を治療から予防にパラダイムシフトさせる意義があるものとしている。

抗PD-1/PD-L1抗体治療で白髪もよみがえる?

 スペインの研究グループが、抗PD-1/PD-L1抗体による皮膚有害事象の研究中に毛髪再色素化の現象を発見し、JAMA Dermatology誌2017年7月12日号で報告した。免疫チェックポイント阻害薬による発疹、白斑、そう痒症などの皮膚関連事象発生は報告されているが、毛髪再色素化の報告は初めて。また、メラノーマ治療で報告されている皮膚や毛髪の脱色(白斑様)とは相反する作用である。

認知スペクトラム障害、入院患者の有病率と死亡率

 入院中の高齢者では、さまざまな認知機能障害が一般的にみられるが、これまでの研究では高度に選択された群の単一条件に焦点を当てており、アウトカムとの関連性を調査することはまれであった。英国・スターリング大学のEmma L. Reynish氏らは、65歳以上の救急入院患者を対象とした大規模で非選択的なコホート研究において、認知機能障害の有病率およびアウトカムを調査した。BMC medicine誌2017年7月27日号の報告。

米、インフルエンザ弱毒生ワクチン非推奨の理由/NEJM

 2016-17年の米国インフルエンザシーズンでは、予防接種に弱毒生インフルエンザワクチンを使用しないよう米国予防接種諮問委員会(ACIP)が中間勧告を出したが、そこに至る経緯を報告したGroup Health Research Institute(現カイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所)のMichael L. Jackson氏らによる論文が、NEJM誌2017年8月10日号で発表された。これは、Jackson氏らInfluenza Vaccine Effectiveness Network(Flu VE Network)が、2013-14年流行期に、4価弱毒化ワクチンが小児におけるA(H1N1)pdm09ウイルスに対して効果不十分であったと明らかにしたことに端を発する。

46ヵ国の喘息死亡動向、2006年以降変化なし/Lancet

 WHO死亡データベースから、46ヵ国における1993~2012年の喘息死亡の動向について、ニュージーランド・Medical Research InstituteのStefan Ebmeier氏らが分析し、結果を発表した。同死亡率は1980年代後半から減少傾向がみられるが、2006年以降5~34歳の同死亡率の明らかな変化はみられないという。結果を踏まえて著者は、「推奨ガイドライン適用で喘息死亡の約半数は回避可能だが、それには確立されたマネジメント戦略のより良好な実施が必要である。一方で、喘息死亡のさらなる実質的な減少には、新たな戦略も必要かもしれない」と述べている。Lancet誌オンライン版2017年8月7日号掲載の報告。