日本語でわかる最新の海外医学論文|page:643

高血糖を指摘されても4割以上が再検査せず

 MSD株式会社は、2型糖尿病の疑いのある人や高血糖を指摘された人、治療を中断している人など、糖尿病の発症・進行リスクがあると考えられる40歳以上の男女4,700人(各都道府県100名ずつ:男性70人、女性30人)に、糖尿病に関する意識や行動に関するインターネット調査を2017年6月に実施した。調査結果から、糖尿病の発症や進行のリスクを持つ人の43.2%が、リスクを指摘されながらも再検査を受診していないことがわかった。また、44.1%が自身の糖尿病の発症や進行のリスクについて「低い」と答えた。薬物療法については、57.5%が抵抗感を感じているが、服用頻度によって心理的負担が軽減される傾向があった。

DOAC、静脈血栓塞栓症でワルファリンと同等の安全性/BMJ

 静脈血栓塞栓症を呈した患者に対する直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与は、ワルファリン投与に比べ、治療開始90日以内の大出血リスクや全死因死亡リスクを増大しないことが示された。カナダ・カルガリー大学のMin Jun氏らが、6万人弱を対象に行った大規模コホート試験で明らかにしたもので、BMJ誌2017年10月17日号で発表した。これまでに、無作為化試験でDOACのワルファリンに対する非劣性は示されていたものの、臨床試験の被験者は高度に選択的であるため、実際の臨床現場におけるルーチン投与の状況を反映したものなのか疑問の余地があった。

トファシチニブは乾癬性関節炎にも有益か/NEJM

 腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬の効果が不十分だったコントロール不良の乾癬性関節炎の患者に対し、トファシチニブはプラセボと比較して、3ヵ月後のACR20改善率が向上するなど、疾患活動性の低下に有効であることが示された。有害事象の頻度は、トファシチニブがプラセボよりも高かった。カナダ・トロント大学のDafna Gladman氏らが、395例を対象に行った試験の結果で、NEJM誌2017年10月19日号で発表した。トファシチニブは、経口ヤヌスキナーゼ阻害薬で、乾癬性関節炎の治療薬として検討されていた。

lorlatinibのALK/ROS1陽性NSCLCにおける成績発表/WCLC2017

 lorlatinibは、高い選択性と強力な活性を持ち、良好な脳浸透性を示す次世代ALK/ROS1-TKIである。とくにALKキナーゼ領域の変異に対する活性が知られており、第1世代、第2世代ALK-TKI後に発現するG1202Rなどの耐性変異に対し、最も広いスペクトラムを有する。横浜で開催された第18回世界肺がん学会(WCLC)では、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのBenjamin J Solomon氏が、lorlatinibの第Ⅱ相試験の主要な結果について発表した。

日本人男性、ストレスでがんリスクが増加~JPHC研究

 がん発症リスク因子としてのストレスについての報告は一貫していない。今回、1990~94年に40~69歳の10万1,708人を登録したJPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)のデータから、知覚されたストレスレベルが高いと男性のがん罹患率が増加する可能性が示唆された。Scientific Reports誌2017年10月11日号に掲載。

うつ病リスクが低下する日本人に適切な魚類の摂取量は

 魚類の消費やイコサペント酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)レベルがうつ病のリスク低下と関連していることが、観察研究のシステマティックレビューにより明らかとなっている。また、n-3PUFAの逆J字型効果が示唆されている。しかし、魚類の消費量の多い集団からのエビデンスは限られており、うつ病の標準的な精神医学的ベースの診断を用いた研究はない。国立がん研究センターの松岡 豊氏らは、日本人における魚類、n-3PUFA、n-6PUFAの消費とうつ病リスクとの関連を、集団ベースのプロスペクティブ研究にて調査を行った。Translational psychiatry誌2017年9月26日号の報告。

エボラウイルスは生存者精液中に長期残存/NEJM

 エボラウイルス病(EVD)の男性生存者では、エボラウイルスRNAが精液中に長期に残存し、時間が経過するに従って徐々に減少することが、シエラレオネ保健衛生省のGibrilla F. Deen氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年10月12日号に最終報告として掲載された。西アフリカのエボラ流行を根本的にコントロールするには、EVD生存者におけるエボラウイルス排出の期間を理解し、さらなる感染を予防することが不可欠とされる。すでに本研究の準備報告に基づき、世界保健機関(WHO)と米国疾病管理予防センター(CDC)、中国CDCが、被災3国(シエラレオネ、ギニア、リベリア)の保健省との協働で精液検査プログラムと予防的行動カウンセリングを確立し、実行に移している。

既存の抗アレルギー薬が多発性硬化症の慢性脱髄病変を回復させるかもしれない(解説:森本悟氏)-752

多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は若年成人に発症し、重篤な神経障害を来す中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患である。何らかの機序を介した炎症により脱髄が起こり、軸索変性が進行する。急性炎症による脱髄病変には一部再髄鞘化が起こるが、再髄鞘化がうまくいかないと慢性的な脱髄病変となり、不可逆的な障害につながる。現在MSの治療は急性炎症の抑制、病態進行抑制が中心であり、慢性脱髄病変を回復させる治療はない。これまでの研究で、第一世代の抗ヒスタミン薬であるクレマスチンフマル酸(clemastine fumarate:CF)が、前駆細胞(oligodendrocyte precursor cell:OPC)からオリゴデンドロサイトへの分化促進、髄鞘膜の伸展、マイクロピラーの被覆、を介した再髄鞘化効果を有することが、疾患動物モデルにより証明されている。

緑内障進行の早期発見、OCT vs.視野検査

 緑内障の進行を早期に発見するためには、光干渉断層法(OCT)と視野検査のどちらが有用だろうか。米国・オレゴン健康科学大学のXinbo Zhang氏らは、Advanced Imaging for Glaucoma Studyに登録された患者について解析し、初期緑内障の進行を検出する感度は視野検査よりOCTが良好であることを示した。特に、乳頭周囲網膜神経線維層(NFL)厚は進行した緑内障で減少するのに対して、神経節細胞複合体層(GCC)厚は初期から進行期にわたって緑内障の進行を検出するのに役立つことも示した。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年9月27日号掲載の報告。

BRCA1レベルに基づくNSCLCアジュバントは生存率を上昇させたか(SCAT)/WCLC2017

 Stage II~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)切除患者では、プラチナベースの術後補助化学療法が標準治療である。しかし、他レジメンとの直接比較研究はない。一方、BRCA1は、二本鎖DNA切断を修復する作用を有し、またその発現レベルにより予後および効果予測因子ともなる。SCAT研究は、BRCA1発現レベルに基づき個別化した術後補助化学療法が上記患者の生存率を改善するかを評価したSpanish Lung Cancer Cooperative Groupの試験。横浜市で開催された第18回世界肺癌会議(WCLC)において、スペイン・Alicante University HospitalのBartomeu Massuti氏が結果を発表した。

双極性障害に対するアリピプラゾールの評価~メタ解析

 双極性障害(BD)に対するアリピプラゾールによる治療については多くの研究が行われている。台湾・高雄医学大学のDian-Jeng Li氏らは、BD治療におけるアリピプラゾールの有効性および安全性プロファイルを調査するため、総合的なメタ解析を実施した。Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry誌2017年10月3日号の報告。

5~19歳のBMI値の世界的動向は?/Lancet

 1975~2016年の未成年者(5~19歳)のBMI値の世界的な動向について、成人の動向と比較分析した結果、多くの高所得国では高止まりの傾向がみられるが、アジアの一部で高値ではないが加速度的な上昇がみられ、成人の動向とは相関していないことなどが明らかになった。世界200ヵ国の非感染性疾患(NCD)について調査を行っている科学者ネットワーク「NCD Risk Factor Collaboration」(NCD-RisC)が、住民ベース試験2,416件のデータをプール解析し、Lancet誌オンライン版2017年10月10日号で発表した。

血小板機能検査に基づく抗血小板療法の調節は意味がない?(解説:上田恭敬氏)-751

本試験(TROPICAL-ACS)は、急性冠症候群(ACS)に対してPCIを施行した症例(2,610症例)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の2剤目の薬剤を、プラスグレル(添付文書およびガイドラインに従って10mgまたは5mg/日)12ヵ月間とする対照群(control group)と、プラスグレル1週間、その後クロピドグレル(75mg/日)1週間、さらにその後は血小板機能検査の結果に基づいてプラスグレルかクロピドグレルを選択する調節群(PFT-guided de-escalation group)に無作為に割り付け、12ヵ月間の心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、BARC分類class 2以上の出血を主要評価項目として比較して、調節群の非劣性を検討している多施設試験である。

総コレステロールは晩年に低下する~10万人のコホート研究

 疫学研究では、総コレステロール(TC)が低いほど死亡率が高いことが示唆されている。今回、英国・ロンドン大学のJudith Charlton氏らが、80歳超のTCと死亡率との関連について死亡前のTCの低下で説明できるかを約10万人のコホート研究で検討したところ、TCは晩年に終末期の衰退を示すことがわかった。著者らは「逆の因果関係が、非無作為化研究での低TCと高死亡率の関連をもたらしているかもしれない」と考察している。The Journals of Gerontology誌オンライン版2017年9月27日号に掲載。

ドネペジル+コーヒーで治療効果が高まる可能性

 アルツハイマー型認知症(AD)に一般的に用いられる塩酸ドネペジルは、アセチルコリンエステラーゼおよびブチリルコリンエステラーゼ活性に対する阻害作用を示し、認知機能を高める。ヒドロキシケイ皮酸のカフェイン酸(Caffeic acid)成分は、ヒトの食生活に広く存在する。ナイジェリア・Federal University of TechnologyのOdunayo Michael Agunloye氏らは、ドネペジルのアセチルコリンエステラーゼおよびブチリルコリンエステラーゼ阻害活性に及ぼすカフェイン酸の影響についてin vitroでの検討を行った。Journal of complementary & integrative medicine誌オンライン版2017年9月22日号の報告。

メラノーマ画像診断、皮膚科医 vs.ディープラーニング

 ディープラーニング・コンピュータ画像認識システムは、メラノーマのダーモスコピー画像を正確に分類し、すべてではないが皮膚科医の精度を上回ることが、ISIC(International Skin Imaging Collaboration)主催の国際コンテスト「ISBI(International Symposium on Biomedical Imaging)チャレンジ2016」で示された。ただし著者は、「今回の研究デザインで得られた結果は、臨床診療に外挿することはできない限定的なものである」としている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年9月29日号掲載の報告。

手術後アウトカムに執刀医の性差はあるのか/BMJ

 患者、外科医、病院の特性で調整後、男性外科医の執刀を受けた患者と比べて女性外科医の執刀を受けた患者のほうが、30日以内の死亡がわずかだが有意に少なく、手術アウトカム(入院期間、合併症、再入院率)は同等であることが、カナダ・トロント大学のChristopher JD Wallis氏らが行った住民ベース適合コホート研究の結果で示された。ただし著者は、「今回示された結果は、臨床における男女どちらかの外科医の優先的な選択を支持するものではない」とし、「伝統的に男性優位の職業における、性の同等性と多様性を支持するという点で、重要な意味のある所見であった」と述べている。BMJ誌2017年10月10日号掲載の報告。

若年1型糖尿病にポンプ療法 vs.注射療法、安全なのは?/JAMA

 平均年齢14.1歳の1型糖尿病患者3万579例を対象とした検討において、インスリンポンプ療法はインスリン注射療法と比べて、重症低血糖症、糖尿病性ケトアシドーシスの発現リスクは低く、直近の血糖コントロールもより良好であることが示された。ドイツ・アーヘン工科大学のBeate Karges氏らによる住民ベースコホート研究の結果で、著者は「示された結果は、1型糖尿病の小児、青少年、若年成人において、インスリンポンプ療法はインスリン注射療法と比べて、臨床的アウトカムの改善と関係するとのエビデンスを提示するものである」とまとめている。インスリンポンプ療法は、若い1型糖尿病患者の代謝コントロールを改善することが示唆される一方で、短期的な糖尿病性合併症との関連が明らかになっていなかった。JAMA誌2017年10月10日号掲載の報告。