日本語でわかる最新の海外医学論文|page:631

エイズ治療薬:横綱同士のQD本割り決戦(解説:岡慎一氏)-741

2000年以降のエイズ治療薬の進歩は著しく、いまや1日1回1錠を飲めば、HIV感染者の余命は、一般人とほぼ同じである。先進国で、この10年間の治療薬の変遷をみると、当時はプロテアーゼ阻害薬(PI)が治療の中心であった。しかし、PIは他剤との相互作用が問題になることや、副作用として脂質や糖代謝異常が起こり、それが原因での心筋梗塞が増加することが明らかになり、この数年は今回の試験薬であるインテグラーゼ阻害薬(INSTI)がよく用いられている。

ペムブロリズマブ、PD-L1陽性の胃・食道胃接合部腺がんに承認/FDA

 Merck & Co., Inc.,は2017年9月22日、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、米国食品医薬品局(FDA)がPD-L1陽性(Combined Positive Score;CPS≧1%)と判定され、2回以上の前治療後に進行した、局所進行再発・転移性胃がんまたは食道胃接合部腺がん患者の治療薬としてFDAから承認されたと発表した。この適応症は、奏効率および奏効期間のデータを基にFDAの迅速承認制度で承認された。本適応の承認継続は、検証的試験において臨床上の効果の確認が条件となる。

大手術後の血圧管理、個別的 vs.標準/JAMA

 主に腹部手術を受ける術後合併症リスクが高い成人患者において、個別的な収縮期血圧目標値の下で行う血圧管理戦略は、標準血圧管理と比べて術後臓器障害リスクを低下することが示された。フランス・クレルモン・フェラン大学病院のEmmanuel Futier氏らが、多施設共同無作為化試験の結果を報告した。周術期における低血圧症は、術後罹患や死亡の増大と関連する。しかし適切な血圧管理戦略は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2017年9月27日号掲載の報告。

敗血症の早期蘇生プロトコル戦略、開発途上国では?/JAMA

 医療資源が限られる開発途上国において、大半がHIV陽性で敗血症と低血圧症を有する成人患者への、輸液および昇圧薬投与による早期蘇生プロトコル戦略では、標準治療と比較して院内死亡が増大したことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のBen Andrews氏らがザンビア共和国で行った無作為化試験の結果で、著者は「さらなる試験を行い、異なる低中所得国の臨床設定および患者集団における、敗血症の患者への静脈内輸液と昇圧薬投与の影響を明らかにする必要がある」とまとめている。開発途上国における敗血症への早期蘇生プロトコルの効果は、これまで明らかにされていなかった。JAMA誌オンライン版2017年10月3日号掲載の報告。

乾癬患者はアルコール関連死亡リスクが高い

 乾癬と診断された人々は早期死亡のリスクが高いが、その根底にある原因はわかっていない。英国・マンチェスター大学のRosa Parisi氏らは、集団ベースのコホート研究において、乾癬を有する人々は、同じ年齢および性別の一般集団と比較し、アルコールが関連した原因により死亡するリスクが約1.6倍になることを明らかにした。このことは、早期死亡率の差の鍵を握る1つの原因であると思われ、著者は「乾癬患者に対しては、一次および二次医療のいずれにおいても、飲酒習慣スクリーニングテスト(Alcohol Use Disorders Identification Test:AUDIT-C)を用いアルコール消費および乱用についてルーティンにスクリーニングを行い、リスクの高い患者の特定と治療が必要である」と指摘している。JAMA Dermatology誌オンライン版2017年9月15日号掲載の報告。

LDL-Cが低い人でもスタチンは有用か

 LDLコレステロール(LDL-C)の管理とスタチン治療戦略に関する推奨は、ガイドラインによって異なる。国立国際医療研究センターの辻本 哲郎氏らの前向きコホート研究の結果、スタチン治療はLDL-C値が低い場合も高リスク患者の全死亡率を下げるために有効であることが示唆された。The American Journal of Cardiology誌オンライン版2017年8月30日号に掲載。

うつ病になりやすい性格

 3つの性格特性、神経症(neuroticism)の傾向、外向性(extraversion)、適度な誠実性(conscientiousnes)の相互の影響が、健常な人々の抑うつ症状を予測している。この効果が、引きこもり(withdrawal)、勤勉(industriousness)、熱意(enthusiasm)といった3つの低次特性によって引き起こされるかを、米国・Centre for Addiction and Mental HealthのTimothy A. Allen氏らが検討し、この相互の影響を臨床集団内で初めて複製した。Journal of personality誌オンライン版2017年9月16日号の報告。

脳卒中急性期にルーチンの酸素投与は有益か?/JAMA

 低酸素血症のない脳卒中(脳梗塞、脳内出血、一過性脳虚血発作)急性期の患者に対する低用量酸素の予防的投与は、3ヵ月後の死亡または障害を減少しないことが示された。英国・キール大学のChristine Roffe氏らによる、多施設共同無作為化単盲検臨床試験「SO2S試験」(The Stroke Oxygen Study)の結果で、「これらの患者では低用量酸素療法を支持しない結果が示された」と報告している。低酸素血症は、急性脳卒中発症後の最初の数日間に生じることが多く、しばしば間欠的であったり検出されないことがある。酸素投与は、低酸素症や二次的神経機能低下を予防することによって回復を促す可能性がある一方、有害事象が生じる可能性もあった。JAMA誌2017年9月26日号掲載の報告。

ARDSへの肺リクルートメント手技+PEEP最適化、その意義は?/JAMA

 中等症~重症の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者において、肺リクルートメント手技+呼気終末陽圧(PEEP)の最適化は、従来の低PEEP管理と比較し、28日死亡率が有意に増加することが明らかにされた。ブラジル・HCor Research InstituteのAlexandre Biasi Cavalcanti氏らによる多施設共同無作為化臨床試験(Alveolar Recruitment for ARDS Trial:ART)の結果で、著者は「これらの患者では肺リクルートメント手技+PEEP最適化のルーチン使用は推奨されない」と述べている。ARDS患者において、肺リクルートメント手技+PEEP最適化が臨床アウトカムに与える影響は、これまで不明であった。JAMA誌オンライン版2017年9月27日号掲載の報告。

ランジオロールの心臓手術後AF抑制作用

 ランジオロールは、心臓手術後1週間以内の心房細動(AF)発症を抑制することが、高知医科大学の田村 貴彦氏らによる研究で明らかになった。また、ランジオロール非投与群と比較して、院内死亡率および合併症発症率に有意な差は認められなかった。Journal of Clinical Anesthesia誌2017年11月号(オンライン版2017年7月21日号)の報告。

医師から情報提供あったのは約2割~遺伝性乳がん・卵巣がん

 アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役会長:マーク・デュノワイエ)は、9月最終週の「遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)啓発週間」に合わせて、乳がん・卵巣がん患者を対象にHBOC関連情報へのニーズと情報の入手状況についての調査を実施。その結果、患者の6割以上は診療時に医師からHBOCの情報を得たいと思っていたにもかかわらず、実際に情報を得ることができたと回答したのは約2割に留まっていることが明らかとなった。

小児不安症に効果的な治療は

 小児における不安症は、一般的に認められる。複数の治療オプションが存在するが、既存のガイドラインでは、どの治療を使用するかについて一貫性がない。米国・メイヨー・クリニックのZhen Wang氏らは、小児不安症に対する認知行動療法(CBT)および薬物療法の有効性および有害事象を比較し、評価を行った。JAMA pediatrics誌オンライン版2017年8月31日号の報告。

ニボルマブ、既治療胃がんに良好な効果持続(ATTRACTION-02アップデート)/ESMO2017

 2レジメン以上に抵抗性を示した進行胃・胃食道接合部(G/GEJ)がんの予後は不良である。これらのがんにおいては、ニボルマブなどのPD-1阻害薬の効果が期待される。ATTRACTION-02は、上記患者において、日本、韓国、台湾で行われたニボルマブの第III相試験である。スペイン・マドリードで行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017 Congress)では、同試験の追跡結果とPD-L1発現レベルによる有効性について、国立がん研究センター中央病院の朴成和が発表した。

米国でのCEA・CASの実施率とアウトカムの推移/JAMA

 米国で1999~2014年にかけて、頸動脈内膜剥離術(CEA)の実施率は継続的に減少した一方、頸動脈ステント留置術(CAS)の実施率は、1999~2006年にかけていったん増加し、その後2007~14年にかけて減少していたことが明らかにされた。術後アウトカムについては、血管リスク因子が増加したにもかかわらず、いずれも改善が認められた。米国・イェール大学のJudith H. Lichtman氏らが、同国のメディケア受給者の動向について調べた結果で、JAMA誌2017年9月19日号で発表した。

2型糖尿病へのエキセナチド徐放剤、心血管転帰への影響と安全性/NEJM

 2型糖尿病患者に対し、心血管疾患の病歴の有無を問わず、通常治療にエキセナチド徐放剤(商品名:ビデュリオン)を追加投与した試験において、安全性についてはプラセボに対して非劣性を示し、心血管イベントの発生リスクに対する有効性については統計上の有意差は示されなかった。英国・チャーチル病院のRury R. Holman氏らが、1万4,752例の2型糖尿病患者を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験「EXSCEL試験」の結果で、NEJM誌2017年9月14日号で発表された。

炭水化物過剰摂取は全死亡を増やすが心血管病発症に影響せず(解説:島田俊夫氏)-740

生活習慣病は文字通り生活の悪習が原因で発症する病気で、発症を抑えるためには生活習慣の改善が必要不可欠である。生活習慣の基本は食および運動習慣の改善に尽きる。その中でも、食習慣は健康維持に最も重要である。食に関しては多くの論文報告があるが、その多くが欧米のデータに基づいており、食習慣の異なる国・地域に対して、これまでの成果を短絡的に敷衍できるか不明な点も多い。とくに、欧米に比べて全食事カロリーに占める炭水化物の比率が高いアジア諸国の人々に対して、これまでの成果を適用しうるか否かは疑問の多いところである。Lancet誌の2017年8月29日号で、カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan氏らが、5大陸18ヵ国の全死亡・心血管疾患への食の影響を検討した大規模前向きコホート研究(PURE)の成果を報告した。本論文は幅広い国・地域集団をカバーするデータ解析に基づく興味深い論文であり、私見をコメントする。

統合失調症とω3脂肪酸:和歌山県立医大

 統合失調症患者の機能的アウトカムに認知機能障害は強く関連しているが、その病態生理はよくわかっていない。健常人および精神神経疾患患者の認知機能に対するω3脂肪酸の関与が注目されている。和歌山県立医科大学の里神 和美氏らは、統合失調症患者におけるω3脂肪酸と認知機能、社会的機能、精神症状との関連を調査した。Schizophrenia research誌2017年5月18日号の報告。