日本語でわかる最新の海外医学論文|page:632

深部静脈血栓症、薬理機械的血栓溶解併用は有益か/NEJM

 急性近位深部静脈血栓症を発症した患者において、抗凝固療法に薬理機械的カテーテル血栓溶解療法(以下、薬理機械的血栓溶解療法)を追加しても、血栓後症候群のリスクは低下せず、大出血リスクは高まることが、米国・セントルイス・ワシントン大学のSuresh Vedantham氏らによる無作為化試験の結果で示された。近位深部静脈血栓症を発症した患者は、抗凝固療法を行っても血栓後症候群を呈する頻度が高い。研究グループは、薬理機械的血栓溶解療法は血栓を速やかに除去し、血栓後症候群のリスクを低減すると仮定し検証試験を行った。NEJM誌2017年12月7日号掲載の報告。

シェイクスピア答えてくれ!「IIb or not IIb, that is a question!」(中川義久 氏)-784

シェイクスピアの名文句と言えば「To be or not to be, that is a question !」です。この解釈をめぐっては議論があるようですが、一般的には「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ!」と訳されています。循環器領域でシェイクスピアの言葉通りの危機に直面しているのが、心原性ショックを伴う多枝病変AMI患者です。この最重症カテゴリーの患者706名に対して、責任病変のみにPCIを施行する責任病変単独PCI群(段階的に非責任病変の血行再建術も許容)と、責任病変と同時に非責任病変に対してもPCIを施行する多枝PCI群にランダマイズしたCULPLIT-SHOCK試験の結果が、米国のデンバーで開催されたTCT2017で報告され、同時にNEJM誌に掲載されました。

人口当たりの医師数が最も少ない県は? 依然大きい地域偏在

 厚生労働省がこのほど取りまとめた2016(平成28)年の「医師・歯科医師・薬剤師調査」の結果によると、医療施設に従事する医師は、総数の95.4%に当たる30万4,759人であった。これを都道府県別に人口10万人当たりの医師数でみると、全国平均では240.1人で、前回の14年調査に比べ6.5人増となったものの、最も多かった徳島県(315.9人)と最も少なかった埼玉県(160.1人)では倍近い開きがあることがわかった。  本調査は、医師や歯科医師、それに薬剤師が厚生労働大臣に届け出た各届出票に基づき、厚生労働省が2年に1度実施するもの。

眼科医は若手のほうが患者の苦情を受けやすい

 患者の苦情(unsolicited patient complaint)が、医師の年齢によってどのように分布しているかを理解することは、患者が抱く不安の特性を知る手がかりとなる。患者の不満に関するこれまでの研究の多くは、苦情や危険な治療および訴訟と関与する可能性がある、医師の年齢や診療環境、専門性などの特性との関連について言及していなかった。米国・ヴァンダービルト大学のCherie A. Fathy氏らは、それらを評価する後ろ向きコホート研究を行い、若い眼科医のほうが高年齢の眼科医よりも患者の苦情を受けやすい傾向があることを明らかにした。著者は、研究デザインに、結論の解釈に影響を及ぼす限界があるとしたうえで、「検討の結果は患者の安全性、臨床教育および臨床実践において、実際に役立つと思われる」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年11月30日号掲載の報告。

腰椎穿刺後の合併症リスク、非外傷性針 vs.従来針/Lancet

 腰椎穿刺を非外傷性針で受けた患者は、従来針で受けた患者と比べて、穿刺後の頭痛の発生率が低く、追加治療のための入院の必要性が少なく、有効性については同等であるとの結果が、カナダ・マックマスター大学のSiddharth Nath氏らによるシステマティックレビューとメタ解析で示された。非外傷性針は、腰椎穿刺後の合併症低減のために提案されたが、依然として臨床での採用は低調なままであるとの調査結果が示されている。Lancet誌オンライン版2017年12月6日号で発表された。

プロバイオティクス・カプセル、アトピー性皮膚炎を改善

 新たな剤形で複数成分を含むプロバイオティクス・カプセル製剤は、小児・若年者におけるアトピー性皮膚炎(AD)の経過を改善する可能性が、スペイン・Hospital Universitario VinalopoのVicente Navarro-Lopez氏らによる無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、示された。アトピー性皮膚炎疾患重症度評価(SCORAD)スコアが低下し、局所ステロイドの使用も減少したという。JAMA Dermatology誌オンライン版2017年11月8日号掲載の報告。

米国における認知症者のホスピスケアに関するコホート研究

 ホスピスケアを利用する認知症者の割合が増加している。しかし、認知症者をケアしているホスピスのタイプやホスピスの使用パターン、また認知症の有無にかかわらず、ホスピスを退所するタイミングについては、よくわかっていない。米国・マウントサイナイ医科大学のAline De Vleminck氏らは、認知症者をケアしているホスピスの特徴、認知症の有無によるホスピスの退所パターン比較、ホスピスの退所に関連する認知症者およびホスピスレベルの特徴を評価するため、検討を行った。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2017年11月16日号の報告。

ctDNA変異解析サービス、国内でも提供開始

 シスメックス株式会社(本社:神戸市、代表取締役会長兼社長:家次 恒)は、Digital PCR技術とフローサイトメトリー技術を融合させた遺伝子解析手法BEAMing技術(Bead Emulsion Amplification and Magnetics)を用いて血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の変異を解析する「OncoBEAM受託アッセイサービス(研究用)」について、従来のドイツ、アメリカに加えて、新たに神戸医療産業都市(ポートアイランド)内「シスメックス IMPラボラトリー」における提供を開始すると発表した。

薬剤溶出ステント 生分解性vs.耐久性/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けるあらゆる成人集団を対象とした大規模無作為化試験において、シロリムス溶出生分解性ポリマーステント(MiStent)は、エベロリムス溶出耐久性ポリマーステント(Xience)に対し、12ヵ月時点のデバイス指向の複合臨床エンドポイントに関して非劣性であることが示された。オランダ・アムステルダム・大学医療センターのRobbert J de Winter氏らが行った第III相多施設無作為化単盲検試験「DESSOLVE III」の結果で、Lancet誌オンライン版2017年12月1日号で発表された。MiStentは、現行使用されている非晶質シロリムス溶出耐久性ポリマーステントの限界を克服するために開発されたが、その臨床的効果を耐久性ポリマーステントと比較した、あらゆる成人集団を対象とした大規模な無作為化試験は行われていなかった。

学歴はアルツハイマー病リスクと関連/BMJ

 従来の観察研究では、教育歴はアルツハイマー病のリスクと関連することが示されている。スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C Larsson氏らは、今回、修正可能なリスク因子の代替指標として遺伝学的変量を用いたメンデル無作為化試験を行い、学歴が高いとアルツハイマー病のリスクが低いことを明らかにした。研究の成果はBMJ誌2017年12月6日号に掲載された。アルツハイマー病との関連が示唆される修正可能なリスク因子のデータは、主に観察研究によるものであるため、交絡への脆弱性や逆因果バイアスの可能性があり、より頑健なエビデンスが求められている。

EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん治療にオシメルチニブをどう用いるのか?(解説:小林 英夫 氏)-781

切除不能な非小細胞肺がんの治療は近年大きく進歩し、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の変異を示す肺がんの治療にEGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の有効性が確立された。本邦では、4薬のEGFR-TKIが肺がんに使用可能である。その中でオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)は第3世代に位置付けられ、以前のEGFR-TKIに耐性であるEGFR T790変異を呈す肺がんにも効果があることを特徴とする。日本での保険適用はこのEGFR T790変異を確認した症例だけであり、2017年12月時点では1次(初回)治療の適応は取得していない。

うつ病診断後の小児および青年における12ヵ月間の治療経過の変化

 小児期や青年期のうつ病は、均一ではない。その治療パターンは、しばしば集団として試験されるが、個々の治療経過には変動がある。この変動を理解することは、青少年のうつ病における治療のギャップを特定することに役立つ。米国・ハーバード大学医学大学院のNina R. Joyce氏らは、うつ病の若者に対する精神療法と抗うつ薬治療の12ヵ月間の経過における不均一性の特徴について検討を行った。JAMA pediatrics誌オンライン版2017年11月20日号の報告。

日本人2型糖尿病のCHD発症、肉摂取量に関連

 健康成人における心血管疾患の主な原因として食肉の過剰摂取が研究されているが、アジア人の糖尿病患者における研究はわずかである。今回、The Japan Diabetes Complications Study(JDCS)グループが日本人2型糖尿病患者で調査したところ、食肉の高摂取が冠動脈疾患(CHD)発症率上昇に関連することがわかった。European journal of nutrition誌オンライン版2017年12月8日号に掲載。

日本人肺がんの悪液質に対するanamorelin二重盲検試験の結果(ONO-7643-04)

 進行がん患者では、除脂肪体重を主体とする体重減少と食欲不振といった形で表れる悪液質がよくみられる。悪液質を有する日本のがん患者において、新たな選択的グレリン受容体アゴニストであるanamorelin(ONO-7643)の有効性と安全性を検討したONO-7643-04試験の結果が、先端医療センター研究所 片上 信之氏らによりCancer誌に発表された。

ホルモン避妊法、乳がんリスクが2割増/NEJM

 現代のホルモン避妊法をこれまで一度も使用したことがない女性と比較し、現在使用中または最近まで使用していた女性において、乳がんのリスクが高く、しかも使用期間が長いほどそのリスクは増加することが明らかとなった。デンマーク・コペンハーゲン大学のLina S. Morch氏らが、同国の女性を対象とした前向きコホート研究の結果を報告した。これまでに、エストロゲンは乳がんの発生を促進し、一方でプロゲスチンの役割はより複雑であることが示唆されていたが、現代のホルモン避妊法と乳がんリスクとの関連はほとんど知られていなかった。NEJM誌2017年12月7日号掲載の報告。

2型糖尿病、集中的食事療法による減量で46%が寛解/Lancet

 減量により12ヵ月で、試験に参加した2型糖尿病患者の約半数が糖尿病治療薬から離脱し、非糖尿病状態すなわち寛解(remission)に達したことが、英国・グラスゴー大学のMichael EJ Lean氏らが行ったプライマリケアでの集中的な体重管理の効果を検証した非盲検クラスター無作為化試験「DiRECT試験」の1年目の結果で示された。2型糖尿病は生涯にわたり治療を要する慢性疾患とされる。これまでの研究で、罹患期間が短い2型糖尿病患者は10~15kgの減量により血糖値が正常化することが示されていたが、食事療法による糖尿病の持続的な寛解を評価したものはなかった。結果を踏まえて著者は、「2型糖尿病の寛解は、プラリマリケアのプラクティカルな目標である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年12月5日号掲載の報告。

破裂性腹部大動脈瘤の血管内治療は死亡率・コストでも有利/「IMPROVE試験」3年評価(解説:中澤達氏)-782

英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究グループが破裂性腹部大動脈瘤患者の治療戦略について、血管内治療と開腹手術の臨床的効果および費用対効果の無作為化試験「IMPROVE試験」の3年評価を発表した。結果は、血管内治療群が開腹手術群よりも生存期間を延長し、質調整生存年(QALY)の獲得が大きく、再手術率は同程度であり、コストは低く、費用対効果に優れることが示された。