慈善団体の患者支援プログラム、経済的困窮者の多くが対象外/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/08/19

 

 米国の大規模な独立慈善団体が運営する疾患別患者支援プログラム(274件)の97%が、無保険患者を対象外としており、また、プログラムがカバーしている医薬品の年間薬剤費はカバー対象外の医薬品と比べ3倍以上であることが、同国ジョンズホプキンス大学のSo-Yeon Kang氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年8月6日号に掲載された。米国の独立慈善団体による患者支援プログラムは、高額な処方薬への患者アクセスを改善するが、最近の連邦政府の調査では、薬剤費の増大や反キックバック法違反の疑いが生じている。また、これらプログラムの構成や患者の適格基準、カバーされる医薬品の詳細はほとんど知られていないという。

6つの慈善団体のプログラムの記述的横断研究
 研究グループは、米国の独立慈善団体による患者支援プログラムの適格基準と、プログラムによってカバーされている医薬品の詳細を調査する目的で、記述的横断研究を行った(Arnold Venturesの助成による)。

 調査対象は、2018年において、メディケア加入者に限定せずに患者支援プログラムを提供する、6つの大規模な独立慈善団体(CancerCare Co-Payment Assistance Foundation、Good Days、The HealthWell Foundation、The PAN Foundation、The Patient Advocate Foundation Co-Pay Relief、Patient Services Incorporated)であり、274件の疾患別の患者支援プログラムを提供していた。

 医薬品を同定するために、Medicare Part D Drug Spending Dashboardで報告されるあらゆる使用医薬品と、2016年のメディケア受給者1人当たりの支出額が1万ドル超であったあらゆる特許切れ先発医薬品についてサブグループ解析を行った。

 主要アウトカムは、患者支援プログラムの特性(支援のタイプ[支払金の補助、健康保険料補助]、健康保険要件の有無、所得の適格条件など)とした。副次アウトカムは、患者支援プログラムがカバーしている医薬品のコスト(薬剤費)、およびカバーしている高額な特許切れ先発医薬品vs.代用可能な後発医薬品の比較などであった。

プログラム対象医薬品の年間薬剤費中央値は1,157ドル、対象外医薬品は367ドル
 解析に含まれた6つの独立慈善団体の2017年の収入総額は、2,400万~5億3,200万ドルであった。また、患者支援プログラムの支出総額は2,400万~3億5,300万ドルであり、収入に占める支出の割合は平均86%であった。

 これらの団体によって提供された274件の患者支援プログラムのうち、168件(61%)が支払金補助の提供のみを、9件(3%)が健康保険料補助の提供のみを行っており、90件(33%)はいずれか一方を選択可能であった。また、最も多かった保障対象の治療領域はがんまたはがん治療関連症状(113件[41%])と、遺伝性疾患/希少疾患(93件[34%])であった。

 267件(97%)のプログラムが、適格基準として保険加入を求めていた(無保険の患者は対象外)。また、259件(94%)のプログラムが、所得(年収)要件として連邦貧困水準の400%(119件[43%]、個人の場合は4万8,560ドル、4人家族では10万400ドル)または500%(140件[51%]、6万700ドル、12万5,500ドル)を設けていた。

 プログラム(123件)がカバーしている医薬品の年間受益者当たり薬事費の中央値は1,157ドル(IQR:247~5,609)と、カバー対象外の同薬剤費367ドル(100~1,500)の315%に相当し、高額であった。

 特許切れの先発医薬品(薬剤費>1万ドル)は、平均3.1(SD 2.0)件の患者支援プログラムでカバーされていたのに対し、後発医薬品をカバーするプログラムは平均1.2(1.0)件であった。たとえば、ボルテゾミブの先発品をカバーするプログラムは8件であったのに対し、その後発品をカバーするプログラムは1件のみだった。

 著者は「これらの知見により、プログラムのいくつかの特徴が、経済的に困窮した患者への有益性を制限し、高額な薬剤の使用を強化している可能性が示唆される」としている。

(医学ライター 菅野 守)