乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/12/24

 

 乳房温存手術では、腫瘍摘出術後の加速乳房部分照射(APBI)は全乳房照射と比較して、同側乳房腫瘍再発(IBTR)のコントロールにおいて同等性の判定基準を満たさないことが、米国・NRG OncologyのFrank A. Vicini氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月14日号に掲載された。早期乳がんに対する乳房温存手術後の全乳房照射はIBTRを抑制し、乳房全切除術と同等の結果をもたらす。一方、腫瘍のある四分円にのみ照射するAPBIは治療期間の短縮をもたらすが、その効果が乳房全切除術と同等かは知られていない。

4ヵ国で行われた無作為化同等性試験
 本研究は、4ヵ国(米国、カナダ、アイルランド、イスラエル)の154施設が参加した無作為化第III相同等性試験(NSABP B-39/RTOG 0413)であり、2005年3月21日~2013年4月16日の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上の女性で、早期(Stage 0/I/II、遠隔転移はないが最大3個の腋窩リンパ節が転移陽性)の乳がん(腫瘍径≦3cm、すべての組織型、多病巣性乳がん)が認められ、腫瘍摘出術後の切除断端が陰性(がん細胞が検出されない)の患者であった。

 被験者は、APBIまたは全乳房照射を受ける群に無作為に割り付けられた。APBIは、8日以内に5治療日で、小線源治療(34Gy)または外照射療法(38.5Gy)を行った。全乳房照射は、外照射療法により総線量50Gyを25日に分けて5週間で照射した(腫瘍床への追加照射の有無にかかわらず)。患者、担当医、統計解析者には治療割り付け情報がマスクされた。

 主要アウトカムは、初回の浸潤性または非浸潤性IBTRとし、脱落例を除くintention-to-treat集団で解析が行われた。同等性の検定は、相対リスクのマージンの50%増加とし、ハザード比(HR)の90%信頼区間(CI)が0.667~1.5の範囲内の場合に同等と判定した。

10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満
 4,216例(APBI群2,107例、全乳房照射群2,109例)が登録され、4,125例(2,089例、2,036例)が主要アウトカムの解析に含まれた。追跡期間中央値は10.2年(IQR:7.5~11.5)。

 ベースラインの全体の年齢中央値は54歳(IQR:47~64)、2,587例(61%)が閉経後、3,788例(90%)が白人で、3,185例(76%)が浸潤性乳がん、1,031例(24%)が非浸潤性乳管がん(DCIS)であり、浸潤性のうち2,518例(79%)とDCISの908例(88%)がホルモン受容体(ER、PgR)陽性であった。

 IBTRの発生率は、APBI群が4%(90/2,089例)、全乳房照射群は3%(71/2,036例)であった。HRは1.22(90%CI:0.94~1.58)であり、APBI群の同等性の判定基準は満たされなかった。10年累積IBTR発生率は、APBI群が4.6%(95%CI:3.7~5.7)、全乳房照射群は3.9%(3.1~5.0)であり、両群間の絶対差はわずか0.7%であった。

 10年無再発生存率(APBI群91.8%、全乳房照射群93.4%、HR:1.33、95%CI:1.04~1.69、p=0.02)は全乳房照射群で良好であったが、10年無遠隔病変生存率(96.7%、97.1%、1.31、0.91~1.91、p=0.15)、10年生存率(90.6%、91.3%、1.10、0.90~1.35、p=0.35)、10年無病生存率(78.1%、79.7%、1.12、0.98~1.29、p=0.10)は両群間に差はなかった。乳がんの再発による死亡率は、APBI群が2%(49例)、全乳房照射群も2%(44例)だった。

 サブグループ解析(探索的事後解析)では、腫瘍径≦10mmの浸潤性乳がんで、APBI群の10年IBTR発生率が良好な傾向が認められた(APBI群2.0%、全乳房照射群3.9%、HR:0.58、95%CI:0.27~1.22、交互作用のp=0.01)。

 APBI群で、最も高い毒性のグレードが1の患者は40%、2は44%、3は10%、全乳房照射群ではそれぞれ31%、59%、7%であり、Grade4/5は10例(<1%)および6例(<1%)で発現した。1つ以上の2次原発がん(APBI群9%[192例]、全乳房照射群10%[200例]、HR:0.93、95%CI:0.76~1.13、p=0.46)の頻度は両群間で類似しており、このうち対側乳がんと同側の乳房肉腫は、APBI群が33%(63例)、全乳房照射群は36%(72例)で認められた(0.83、0.59~1.17、p=0.29)。治療関連死はみられなかった。

 著者は、「これらの知見は、乳房温存手術における腫瘍摘出術後の全乳房照射を支持するものだが、10年累積IBTR発生率の絶対差は1%未満であり、一部の女性ではAPBIが許容可能な代替法となる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 岩瀬 俊明( いわせ としあき ) 氏

千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科学教室

MD Anderson Cancer Center, Breast Medical Oncology, Postdoctoral fellow