日本語でわかる最新の海外医学論文|page:487

膀胱がん、ガイドライン4年ぶりに改訂/日本泌尿器腫瘍学会

 膀胱癌診療ガイドラインが2015年から4年ぶりに改訂された。日本泌尿器腫瘍学会第5回学術集会では、パネルディスカッション形式で膀胱癌診療ガイドラインの改訂ポイントについて解説した。  聖マリアンナ医科大学の菊地 栄次氏はStage IV膀胱がんの治療について、改訂された膀胱癌診療ガイドラインの6個のCQから一部を紹介した。

ストレス関連障害、重症感染症発症と関連/BMJ

 ストレス関連障害は、その後の命に関わる感染症のリスクと関連することが、アイスランド大学のHuan Song氏らによるスウェーデンの住民を対象とした同胞・適合対照コホート研究で明らかにされた。関連性は家族的背景や身体的・精神的並存疾患を調整後に確認されている。精神的ストレスは、免疫力を低下し感染症への罹病性を増す可能性があり、ヒトおよびその他の動物における一連の実験的研究で、精神的ストレスと急性呼吸器感染症との関連性が示唆されている。しかしながら、髄膜炎や敗血症のような命に関わる重症感染症との関連についてはデータが限定的であった。BMJ誌2019年10月23日号掲載の報告。

心臓手術後の輸血、フィブリノゲン製剤はクリオ製剤に非劣性/JAMA

 心肺バイパス手術後に臨床的に重大な出血と後天性低フィブリノゲン血症を呈する患者において、フィブリノゲン製剤投与はクリオプレシピテート投与に対し、バイパス手術後24時間に輸血された血液成分単位に関して非劣性であることが示された。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのJeannie Callum氏らによる無作為化試験「FIBRES試験」の結果で、著者は「フィブリノゲン製剤は、心臓手術後に後天性の低フィブリノゲン血症を呈する患者の輸血療法において使用可能と思われる」と述べている。大量出血は心臓手術では一般的な合併症であり、出血の重大な原因として後天性の低フィブリノゲン血症(フィブリノゲン値<1.5~2.0g/L)がある。後天性低フィブリノゲン血症に対してガイドラインでは、フィブリノゲン製剤もしくはクリオプレシピテートによるフィブリノゲン補充療法が推奨されているが、両製剤には重大な違いがあることが知られており、臨床的な比較データは不足していた。JAMA誌オンライン版2019年10月21日号掲載の報告。

乾癬患者、全がんリスクが高い

 乾癬患者の発がんリスクおよびがん死リスクが明らかになった。英国・マンチェスター大学のAlex M. Trafford氏らによるメタ解析の結果、乾癬患者はいずれのリスクとも高く、さまざまな部位のがんと関連していることが認められたという。著者は、「さらなる研究を行い、特定の生活様式の因子や治療、乾癬の炎症プロセスを調べ、がんリスク増大のメカニズムを明らかにする必要がある」と述べている。乾癬患者の発がんリスクについては、重症度によるリスクの違いも不明であり、少なからぬ懸念が生じていた。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年10月16日号掲載の報告。

新抗体薬物複合体DS-7300、固形がんを対象とした臨床試験開始/第一三共

 第一三共株式会社(本社:東京都中央区)は、再発・進行性の固形がん患者を対象としたDS-7300(B7-H3を標的とした抗体薬物複合体[ADC])の第I/II臨床試験において、最初の患者への投与を開始した。  B7-H3は、肺がん、頭頸部がん、食道がん、前立腺がん、子宮内膜がん、乳がんなど様々のがん種において過剰発現しているたんぱく質の一種で、がんの進行や予後の悪化に関係していると言われているが、現在、がん治療を対象に承認されているB7-H3を標的とした治療薬はない。抗体薬物複合体であるDS-7300は、独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼI阻害剤(DXd)を抗B7-H3抗体に結合させ、1つの抗体につき約4個のDXdが結合。薬物をがん細胞内に直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えるよう設計されている。

双極性障害患者のパーキンソン病発症リスク~メタ解析

 パーキンソン病では運動症状および非運動症状を呈するが、その10年以上前から気分障害が先行して起こる可能性がある。また、双極性障害は、うつおよび躁エピソードが周期的に出現する疾患であり、病態生理にドパミンが関連している可能性が示唆されている。ポルトガル・リスボン大学のPatricia R. Faustino氏らは、双極性障害とその後の特発性パーキンソン病との関連について評価を行った。JAMA Neurology誌オンライン版2019年10月14日号の報告。

日本の大腸がん患者における悪液質の実態/日本癌治療学会

 がん悪液質は、体重減少と食欲不振を主体とする多因子の代謝異常であり、患者のQOLや生存に影響する。日本の大腸がんにおける悪液質発症頻度と発症時期についての報告は少ない。静岡県立静岡がんセンターの柴田 昌幸氏らは、同施設と久留米大学病院で1次治療の化学療法を受けた進行大腸がん患者を対象に、悪液質の発症頻度、発症時期、予後への影響を調べる後ろ向き観察研究を実施。その結果を第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

乳がん術後再発、局所vs.全身麻酔で差なし/Lancet

 乳がんの根治的切除術時の麻酔法として、局所的な麻酔/鎮痛(傍脊椎ブロックとプロポフォール)は、全身麻酔(揮発性麻酔[セボフルラン]とオピオイド)と比較して、乳がんの再発を抑制しないことが、米国・クリーブランドクリニックのDaniel I. Sessler氏らBreast Cancer Recurrence Collaborationの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年10月20日号に掲載された。手術時のストレス応答、揮発性吸入麻酔の使用、鎮痛のためのオピオイドは、がん手術の周術期因子であり、いずれも再発に対する宿主防御を減弱させるという。一方、これらの因子はすべて、局所的な麻酔/鎮痛によって改善するとされている。

承認された新薬と公的資金支援の関係は?/BMJ

 過去10年間に米国で承認された新薬の少なくとも4つに1つは、公的支援を受けた研究が開発の後期段階において重要な役割を果たしており、そのうちの4分の3が直接的に公的資金の支援を受けた研究を起源とし、残りの4分1は公的研究機関からのスピンオフ企業によって創製されたことが、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul K. Nayak氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、BMJ誌2019年10月23日号に掲載された。新薬開発の多くは、公的支援を受けた調査が、基礎科学研究において実質的な役割を担っている。1990~2007年に米国で承認された新規分子化合物の約14%は、開発の後期段階において、特許の取得が可能な研究の資金を公的部門の研究機関から得ているという。

露骨に不利な条件でもワルファリンが負けなかった訳は?(解説:後藤信哉氏)-1129

NEJMのEditorであったマーシャ・エンジェル博士は、製薬企業による情報操作の実態を著書『ビッグ・ファーマ 製薬企業の真実』に描いた。個別医師の経験よりもランダム化比較試験の結果を重視するEBMの世界は、ランダム化比較試験が「作為なく」施行されていることが前提になっている。エンジェル博士の著書にも紹介されているが、純粋に科学的な仮説検証研究とは言えないランダム化比較試験が、製薬会社主導にて多数施行されている実態がある。本論文も製薬企業が主導したことを明記したランダム化比較試験であるが、試験プロトコールはfairに設計されたとは言えない。

進行/再発乳がんへのパルボシクリブ、実臨床での有効性と安全性/日本癌治療学会

 進行/再発乳がんに対するCDK4/6阻害薬のパルボシクリブ(商品名:イブランス)の有効性と安全性を後ろ向き単施設観察研究で検討した結果、実臨床データベースにおいても、内分泌療法耐性の患者にも有効であり、内分泌療法に感受性の高い患者やフロントラインでの使用がより効果的な傾向が示唆された。がん・感染症センター都立駒込病院の岩本 奈織子氏が、第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

スタチンと認知症リスク~900万人超のメタ解析

 認知症リスク低下に対するスタチンの影響については、これまで10年間にわたり議論の対象となってきたが、決定的なエビデンスは存在しない。台湾・台北医科大学のTahmina Nasrin Poly氏らは、スタチン療法と認知症リスクとの関連性を定量化するため、これに関連する観察研究のメタ解析を実施した。Neuroepidemiology誌オンライン版2019年10月1日号の報告。  2000年1月~2018年3月までに公表された関連研究を、EMBASE、Google、Google Scholar、PubMed、Scopus、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。2人の研究者により、研究の選択、データの抽出化、バイアスリスクの評価が行われた。次に、選択した研究からデータを抽出し、変量効果モデルを用いて観察研究のメタ解析を行った。サブグループ解析および感度分析も併せて実施した。

わが国の膵臓がん悪液質、7割に発症、有害事象発現も高く/日本癌治療学会

 がん悪液質は、骨格筋の持続的な減少などを主体とする多因子性の症候群であり、膵臓がんでは高頻度で見られるとされる。国立がん研究センター東病院の光永修一氏らは、わが国の膵臓がん患者における悪液質の発症頻度と発症時期、有害事象との関係などを調査する後ろ向きコホート研究を実施。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。  対象は、2008年~2017年に膵管がんと診断され、国立がんセンター東病院で初回化学療法を受けた150例の患者。悪液質の定義は5%以上の体重減少、BMI20kg/m2未満の患者では2%を超える体重減少。初回化学療法時を起算日として、12週ごとに体重を測定し、悪液質の発症時期を調査した(以下、フォローアップ悪液質と称す)。

モノ作りに優れて戦略に劣る日本?(解説:後藤信哉氏)-1127

新薬開発企業は認可承認のために第III相試験を行う。第III相試験の結果が「エビデンス」として広く広報される。認可承認後に施行された第IV相試験の多くも製薬会社が製品の宣伝を目的として施行している。本研究は直接製薬企業によるfundを受けていない。実臨床にて使用可能なプラスグレルとチカグレロルの有効性と安全性を直接比較したオープンラベルのランダム化比較試験として臨床におけるインパクトの大きな研究である。

アルコール使用障害治療におけるAlcohol Quality of Life Scale(AQoLS)日本語版の検証

 Alcohol Quality of Life Scale(AQoLS)は、西洋において健康関連QOL(HR-QoL)に対するアルコール使用障害(AUD)の影響を評価する際に有用な尺度として用いられている。久里浜医療センターの樋口 進氏らは、AQoLS日本語版の心理測定特性について評価を行った。Quality of Life Research誌オンライン版2019年10月4日号の報告。  日本においてAUDの日常的な治療を受けている患者を対象に、3ヵ月間の観察コホート研究を実施した。HR-QoLは、AQoLS日本語版(34項目、7ディメンション)を用いて評価を行った。心理測定スケールは、相関法を用いて分析を行った。

EGFR変異陽性NSCLC、ラムシルマブ+エルロチニブでPFS延長(RELAY試験)/Lancet Oncol

 EGFR遺伝子変異陽性の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)において、EGFRおよびVEGF両経路を二重ブロックする新たなレジメンが有望であることが示された。これまでに前臨床および臨床データで支持されているが、そのアプローチはまだ広くは用いられていない。近畿大学の中川 和彦氏らは、未治療のEGFR遺伝子変異陽性の転移を有するNSCLC患者を対象に、標準治療であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)エルロチニブへのラムシルマブの併用を、エルロチニブ単剤と比較する「RELAY試験」を行い、ラムシルマブ+エルロチニブ(RELAYレジメン)はプラセボ+エルロチニブと比較して無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することを報告した。

早産児、主要併存疾患なし生存の割合は?/JAMA

 スウェーデンにおいて、1973~97年に生まれた早産児のほとんどは、成人期初期から中年期まで主要併存疾患を伴わず生存していたが、超早産児については予後不良であった。米国・マウントサイナイ医科大学のCasey Crump氏らが、スウェーデンのコホート研究の結果を報告した。早産は、成人期における心代謝疾患、呼吸器疾患および神経精神障害との関連が示唆されてきたが、主要併存疾患を有さない生存者の割合については、これまで不明であった。JAMA誌2019年10月22日号掲載の報告。

大手術時の麻酔深度、1年死亡率と関連する?/Lancet

 大手術後の合併症リスクが高い患者において、浅い全身麻酔は深い全身麻酔と比較して1年死亡率を低下しないことが示された。ニュージーランド・Auckland City HospitalのTimothy G. Short氏らによる、高齢患者を対象に検討した国際多施設共同無作為化試験「Balanced Anaesthesia Study」の結果で、著者は「今回の検討で、処理脳波モニターを用いて揮発性麻酔濃度を調節した場合、広範囲にわたる麻酔深度で麻酔は安全に施行できることが示された」とまとめている。麻酔深度の深さは、術後生存率低下と関連することがこれまでの観察研究で示されていたが、無作為化試験でのエビデンスは不足していた。Lancet誌オンライン版2019年10月20日号掲載の報告。

遠隔オリゴ転移再発乳がんの予後および予後因子/日本癌治療学会

 進行乳がん(ABC)のガイドラインの定義によるオリゴ転移がん(OMD)がNon-OMD(NOMD)と比べて有意に予後良好であり、通常の再発乳がんの予後因子である「遠隔転移巣の根治切除の有無」「転移臓器個数」「転移臓器部位」「無病期間(DFI)」「周術期の化学療法の有無」がOMDにおいても予後因子であることが示唆された。がん研有明病院/隈病院の藤島 成氏が第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。  一部の進行乳がんにおいて長期予後が得られる症例があり、そのような症例としてOMDやHER2陽性乳がんが挙げられる。ABCのガイドラインにおけるOMDの定義は、転移個数が少なくサイズが小さい腫瘍量の少ない転移疾患とされており、その転移個数は5個以下となっているが、転移臓器の個数は定義されていない。OMDの転移臓器の個数は1つにすべきというドイツのグループからの意見もあり、その定義について議論されている。今回、藤島氏らはABCのガイドラインの定義によるOMDの予後を評価し、さらにOMDの予後因子を検討した。

日本人高齢者のてんかん有病率は中年の約3倍、その原因は~久山町研究

 てんかんは小児期から老年期まで、すべての年齢層でみられる一般的な慢性神経疾患である。運転中にドライバーが発作を起こせば重大事故につながるリスクがあり、たびたび社会問題としても報じられている。米国・ロチェスターにおける研究では、てんかんの発生率が乳児と高齢者で高く、有病率が加齢と共に増加することが報告されているが、国内における人口ベースの研究はほとんどない。今回、京都府立医科大学の田中 章浩氏らが久山町研究で調べたところ、高齢者におけるてんかん有病率は中年の約3倍であり、症例の半数以上が高齢で最初の発作を経験していることがわかった。研究結果は、Epilepsia誌に掲載され、現在、神戸市で開催されている第53回日本てんかん学会でも報告された。