虚血性脳卒中の血栓除去術前のtenecteplase、至適用量は/JAMA

脳主幹動脈閉塞を有する虚血性脳卒中患者では、tenecteplaseの0.40mg/kg投与は0.25mg/kgと比較して、血管内血栓除去術施行前の脳血管再灌流の達成を改善しないことが、オーストラリア・メルボルン大学のBruce C.V. Campbell氏らの検討「EXTEND-IA TNK Part 2試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年4月7日号に掲載された。EXTEND-IA TNK試験では、tenecteplase 0.25mg/kgによる静脈内血栓溶解療法は、アルテプラーゼに比べ血管内血栓除去術施行前の脳血管再灌流および臨床アウトカムの改善効果が優れると報告されている。一方、tenecteplaseの最も規模の大きい臨床試験「NOR-TEST試験」では、0.40mg/kgはアルテプラーゼに比べ安全性および有効性が優れないことが示され、ガイドラインによって推奨用量が異なる事態が生じているという。
至適用量を決定する無作為化試験
研究グループは、虚血性脳卒中患者における、血管内血栓除去術施行前のtenecteplaseの至適用量を明確にする目的で、医師主導型の非盲検無作為化試験を実施した(オーストラリア国立保健医療研究審議会などの助成による)。対象は、発症後4.5時間以内、CT血管造影で内頸動脈、中大脳動脈、脳底動脈のいずれかの閉塞による虚血性脳卒中が認められる成人患者であった。被験者は、血管内血栓除去術施行前にtenecteplase 0.40mg/kg(上限40mg)または0.25mg/kg(上限25mg)をボーラス投与する群に無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは、血栓除去術施行前の虚血領域の50%超での再灌流とし、盲検化された2人の神経放射線科医の合意によって評価された。
主な副次アウトカムにも有意差はない
2017年12月~2019年7月の期間に、オーストラリアの27施設とニュージーランドの1施設で300例(平均年齢72.7歳、女性141例[47%])が登録され、0.40mg/kg群に150例、0.25mg/kg群にも150例が割り付けられ、全例が試験を完遂した。虚血領域の50%超の再灌流を達成した患者は、0.40mg/kg群が150例中29例(19.3%)、0.25mg/kg群も150例中29例(19.3%)であり、両群間に有意差は認められなかった(補正前リスク差:0.0%、95%信頼区間[CI]:-8.9~-8.9、補正後リスク比:1.03、95%CI:0.66~1.61、p=0.89)。
次の6つの副次アウトカムにも有意な差はみられなかった。90日の時点での修正Rankinスケール(mRS)のスコア中央値(0.40mg/kg群2点vs.0.25mg/kg群2点)、機能的独立(mRS 0~2点またはベースラインから90日まで変化なし:59% vs.56%)、障害なし(mRS 0~1点:49% vs.49%)、神経障害の実質的な早期改善(NIHSSスコア[0~42点、点数が高いほど神経障害が重度]のベースラインから3日までの8点以上の低下または3日の時点での0~1点の達成:68% vs.62%)、全死因死亡(17% vs.15%)、症候性頭蓋内出血(4.7% vs.1.3%)。
著者は、「0.40mg/kgに、0.25mg/kgを上回る有益性はないと示唆される」としている。
(医学ライター 菅野 守)
関連記事

急性期脳梗塞に対する神経保護薬nerinetideの有効性と安全性/Lancet(解説:中川原譲二氏)-1212
CLEAR!ジャーナル四天王(2020/04/10)

脳梗塞へのtenecteplase、投与量で改善の違いは?/JAMA
ジャーナル四天王(2020/03/06)

灌流画像を用いた血栓溶解療法は、発症後9時間までの脳梗塞と睡眠中に発症した脳梗塞にまで治療時間枠を拡大できる:個別患者データのメタ解析(解説:内山真一郎氏)-1072
CLEAR!ジャーナル四天王(2019/07/08)
[ 最新ニュース ]

ウパダシチニブ、体軸性脊椎関節炎の症状を改善/Lancet(2022/08/16)

痛風発作、心血管イベントの一過性の増加と関連/JAMA(2022/08/16)

中等度スタチン+エゼチミブ併用は高用量スタチンに比べて、心血管疾患再発予防に非劣性で、かつ有害事象は少ない:ただしわが国とスタチン用量が異なる点は注意が必要(解説:桑島巖氏)(2022/08/16)

HER2変異非小細胞肺がんへのトラスツズマブ デルクステカン、FDAが迅速承認(2022/08/16)

埼玉県の熱中症リスクを把握する(2022/08/16)

統合失調症の抗精神病薬治療、持続性注射剤と経口剤による臨床アウトカムの比較(2022/08/16)

乳がんの予後、右側と左側で異なる?(2022/08/16)

COVID-19の後遺症を発症しやすい人とは?(2022/08/16)
専門家はこう見る
脳内大血管閉塞に対するtenecteplaseの至適用量は?(解説:内山真一郎氏)-1227
コメンテーター : 内山 真一郎( うちやま しんいちろう ) 氏
国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授 山王メディカルセンター脳血管センター長
J-CLEAR評議員