日本語でわかる最新の海外医学論文|page:484

仕事のストレスと不眠症との関係

 横断的データによると、仕事のストレスと睡眠不足は密接に関連しているといわれているが、プロスペクティブデータによるエビデンスは限られている。スウェーデン・ストックホルム大学のJohanna Garefelt氏らは、認識されたストレスや仕事のストレッサー(仕事の要求、意思決定、職場の社会的支援)が不眠症に及ぼす経時的な影響について、構造方程式モデリングを用いて分析を行った。Journal of Sleep Research誌オンライン版2019年12月2日号の報告。

NSCLC維持療法、ベバシズマブ+ペメトレキセドでPFS延長(COMPASS)/JCO

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者について、初回薬物治療が奏効した後の維持療法の選択肢は何か。九州がんセンターの瀬戸 貴司氏らは、カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ併用導入療法後の維持療法におけるベバシズマブ+ペメトレキセドの有効性と安全性を評価する「COMPASS試験」(WJOG5610L)を行った。主要評価項目である全生存(OS)期間は統計学的有意差が認められなかったものの、無増悪生存(PFS)期間およびEGFR野生型患者におけるOSはベバシズマブ+ペメトレキセド併用維持療法で有意に延長することを示した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年12月27日号掲載の報告。

2月4日は「風疹の日」、風疹排除のために医療者ができること

 2月4日は日本産婦人科医会などが定めた「風疹(予防)の日」。長年、感染症対策に取り組んでいる多屋 馨子氏(国立感染症研究所 感染症疫学センター[感染研]第三室 室長)に「風疹排除のために医療者ができること」をテーマに話を聞いた。  風疹の流行は、国のワクチン接種戦略と密接に関わりあっています。風疹の定期接種が始まったのは1977年のことで、対象は女子中学生でした。妊娠中の胎児への影響、いわゆる先天性風疹症候群(CRS)予防を最大の目的としたためです。しかし、女性限定の接種では流行をコントールできず、定期接種の開始後も数年ごとに大きな流行を繰り返しました。このため、1995年4月からは1~7歳半の男女を対象にワクチン接種が行われるようになり、接種歴のない中学生男女への経過措置もとられました。こうした施策によって、長く風疹患者の多数を占めていた小児の感染は激減したのです。

不穏さ増す香港でうつ病、PTSDが急増/Lancet

 香港は2019年6月から、暴力を伴う混乱が続き社会不安が増している。中国・香港大学のMichael Y. Ni氏らは、住民を対象とした10年間の前向きコホート研究を行い、社会不安により重大なメンタルヘルス問題が起きていることを明らかにし、メンタルヘルスサービスを急増させる必要があることを報告した。現在も香港の社会不安は全地区にわたっており、略奪行為はみられないが放火や破壊行為など暴力レベルは高い状態にある。しかし直接的な身体的外傷を除くメンタルヘルスへの影響については報告されていなかった。Lancet誌オンライン版2020年1月9日号掲載の報告。

限局性前立腺がん、前立腺全摘は排尿・性機能に悪影響/JAMA

 限局性前立腺がん患者について、現行の治療法に関連する機能的変化のほとんどは5年後までに軽減するが、前立腺全摘術は他の選択肢と比較し、5年間で臨床的に尿失禁が悪化すること、高リスク患者では前立腺全摘術により、外照射放射線療法(EBRT)+アンドロゲン除去療法(ADT)併用療法と比較し5年時の性機能が悪化することが明らかにされた。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのKaren E. Hoffman氏らが、低リスクおよび高リスクの限局性前立腺がん患者に対する現行の治療法について、有害な影響を理解することは治療選択の際に役立つと考えられるとして行った前向きコホート研究の結果を、JAMA誌2020年1月14日号で発表した。

国内2例目の新型肺炎感染確認、厚労省が積極的疫学調査実施へ

 中国湖北省・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が急速に広がっている問題で、厚生労働省は24日、日本国内で2例目となる新型コロナウイルスに関連した感染症の症例が確認されたことを発表した。患者は武漢市から渡航した40代男性で、今月19日に来日。22日に発熱、咽頭痛があったため医療機関を受診したところ、肺炎像を認め、東京都内の医療機関に入院。国立感染症研究所が調べたところ、今日未明に新型肺炎の感染が確認された。

コーヒー摂取量と乳がんリスク

 コーヒーと乳がんリスクの関連については数多くの研究がなされている。今回、スペイン・ハエン大学のCristina Sanchez-Quesada氏らがSUN(Seguimiento Universidad de Navarra)前向きコホートの約1万人の女性で検討したところ、閉経後女性においてコーヒー摂取量と乳がんリスクの間に逆相関が観察された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2020年1月18日号に掲載。  本研究の対象はナバーラ大学を卒業したスペイン人女性で、ベースラインで乳がんではなかった1万812人。コーヒー摂取量は、136品目食事摂取頻度調査票(FFQ)で評価した。

フレイル施策を掲げる、国の本当の狙いとは/日本医師会

 2020年度から75歳以上の健康診査にフレイルが追加される。高齢者の低栄養に医師の介入が求められることから、国からのプライマリケア医に対する期待は大きいであろう。2019年11月28日、「人生100年時代の健康と栄養を考える-フレイル予防対策における日本型食生活の役割-」が開催(日本医師会、米穀安定供給確保支援機構主催)。本稿では飯島 勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構 教授)による基調講演の内容についてお届けする。

認知症の有病率に関するメタ解析

 認知症は、重度の神経変性疾患であり、異なる病原性によりいくつかのサブタイプに分類することができる。中国・南京医科大学のQing Cao氏らは、地理的、年齢的、性別的観点から認知症の有病率を包括的に分析した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2019年12月26日号の報告。  1985年1月~2019年8月の期間の認知症に関する文献について、PubMedおよびEMBASEより検索を行った。地理、年齢、性別で層別化を行い、分析を行った。群間の有意差検定には、メタ回帰を用いた。

潰瘍性大腸炎患者の大腸がんリスク、時間の経過で変化?/Lancet

 潰瘍性大腸炎(UC)患者は非UC者に比べて、大腸がん罹患のリスクが高く、大腸がん診断時の進行度は低いが、大腸がんによる死亡リスクは高いことが示された。一方で、それらの過剰なリスクは時間の経過とともに大幅に低下することも認められたという。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOla Olen氏らによる、UC患者9万6,447例を対象とした住民ベースのコホート試験の結果で、著者らは、「国際的なサーベイランスガイドラインを改善する余地がまだあるようだ」と述べている。Lancet誌2020年1月11日号掲載の報告。

心房細動患者、断酒の効果は有りか無しか/NEJM

 習慣的に飲酒をしている心房細動患者が断酒をすることで、不整脈の再発が減少したことが、オーストラリア・アルフレッド病院のAleksandr Voskoboinik氏らが、140例を対象とした多施設共同前向き非盲検無作為化比較試験の結果、示された。これまで、過剰な飲酒が心房細動の新規発症や有害な心房リモデリングと関連することは知られていたが、断酒による心房細動2次予防への効果は明らかにされていなかったという。NEJM誌2020年1月2日号掲載の報告。

BMI高値は、NSCLCの免疫チェックポイント阻害薬治療の予後良好因子か/JAMA Oncol

 BMI高値は、悪性黒色腫における免疫チェックポイント阻害薬のサバイバルベネフィットの独立した関連因子であるが、進行非小細胞肺がん(NSCLC)におけるその関係は明らかではない。オーストラリア・フリンダース大学のGanessan Kichenadasse氏らは、NSCLCにおけるPD-L1阻害薬アテゾリズマブのアウトカムとBMIの関連を調べるため、4つの国際的多施設臨床研究から事後解析を行った。4つの試験は、単群の第II相試験(BIRCH試験、FIR試験)と、2群の無作為化臨床試験(POPLAR試験、OAK試験)で、データ分析期間は2019年2月28日~9月30日であった。BMIと全生存期間(OS)、 無増悪生存期間(PFS)および毒性との関係についてITT解析した。研究の詳細はJAMA Oncology誌オンライン版2019年12月26日号に掲載された。

境界性パーソナリティ障害に対する薬物療法~16年間の変遷

 ドイツ・ゲッティンゲン大学のCharles Timaus氏らは、2008~12年の境界性パーソナリティ障害入院患者に対する薬理学的治療戦略を評価し、1996~2004年の薬物療法との比較を行った。BMC Psychiatry誌2019年12月12日号の報告。  2008~12年にゲッティンゲン大学医療センターで入院治療を受けた境界性パーソナリティ障害患者87例を対象に、レトロスペクティブに評価を行った。入院治療ごとに、入院および退院時の薬剤を含む向精神薬療法について調査した。2008~12年の処方と1996~2004年の処方の比較を行った。

中年期の健康的な生活様式は平均余命にどう影響?/BMJ

 中年期の健康的な生活様式の順守は、主要慢性疾患(がん、心血管疾患、2型糖尿病)のない平均余命を延長することが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYanping Li氏らによる検討の結果、示された。これまで、修正可能な生活様式因子(喫煙、身体活動、アルコール摂取、体重、食事の質)が、平均余命および慢性疾患発症の両者に影響することは知られていた。しかし、複数の生活様式因子の組み合わせと、主要な疾患(糖尿病、心血管疾患、がんなど)のない平均余命との関わりについて、包括的に検討した研究はほとんどなかったという。BMJ誌2020年1月8日号掲載の報告。

short DAPT vs.standard DAPTの新展開:黄昏るのはアスピリン?クロピドグレル?(解説:中野明彦氏)-1170

本邦でBMSが使えるようになったのは平成6年、ステント血栓症予防には抗凝固療法(ワルファリン)より抗血小板剤:DAPT(アスピリン+チクロピジン)が優れるとわかったのはさらに数年後だった。その後アスピリンの相方が第2世代のADP受容体P2Y12拮抗薬:クロピドグレルに代わり、最近ではDAPT期間短縮の議論が尽くされているが、DAPT後の単剤抗血小板薬(SAPT)の主役はずっとアスピリンだった。そして時代は令和、そのアスピリンの牙城が崩れようとしている。

マイコプラズマ市中肺炎児、皮膚粘膜疾患が有意に多い

 かつて、その流行周期から日本では「オリンピック肺炎」とも呼ばれたマイコプラズマ肺炎について、ほかの起炎菌による市中肺炎(CAP)児と比べた場合に、皮膚粘膜疾患が有意に多く認められることを、スイス・チューリッヒ大学小児病院のPatrick M. Meyer Sauteur氏らが明らかにした。現行の診断検査では、肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae)の感染と保菌を区別できないため、皮膚粘膜疾患の原因としてマイコプラズマ感染症を診断することは困難となっている。今回の検討では、M. pneumoniaeによる皮膚粘膜疾患は、全身性の炎症や罹患率および長期にわたる後遺症リスクの増大と関連していたことも示されたという。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年12月18日号掲載の報告。

慢性不眠症患者へのベンゾジアゼピン中止のための心理社会的介入~メタ解析

 ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は慢性不眠症の治療には推奨されておらず、心理社会的介入、とくに不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)がBZD中止への潜在的なオプションとして期待される。杏林大学の高江洲 義和氏らは、慢性不眠症患者に対するBZD使用を中止するために心理社会的介入が有用であるかについて、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Sleep Medicine Reviews誌2019年12月号の報告。

パウダーの会陰部使用は卵巣がんと関連?/JAMA

 米国で行われた4つの前向きコホート研究の女性被験者のデータをプール解析した結果、会陰部でのパウダー使用と卵巣がん発生に、統計的に有意な関連はなかったことを、米国・国立環境衛生科学研究所のKatie M. O’Brien氏らが報告した。ただし今回の検討では、リスクのわずかな増大を同定する検出力は不足していた可能性があるとしている。これまで会陰部でのパウダー使用と卵巣がんの関連性について、ケースコントロール試験で関連ありとの報告がなされていたが、コホート試験による検証はされていなかった。米国では最近、パウダーに含まれる鉱物のタルクに関連した訴訟およびメディア報道が高まっており、研究グループは今回の検証を行ったという。JAMA誌2020年1月7日号掲載の報告。

中国と日本の医学研究者は週末や深夜に仕事をする人が多いようだ(解説:折笠秀樹氏)-1169

2012年から2019年にかけて、BMJ/BMJ Open誌に論文が投稿された日時を調べた。加えて、同誌の査読が提出された日時も調べた。週末や深夜に提出されることも多々あり、医学研究者の仕事は9時5時とは限らない現実が明らかになった。国別に分析したところ、中国と日本はダントツで週末や深夜に仕事をする人が多かった。BMJもBMJ Openも大差がなかったので、BMJのデータを見ると、週末・祝日に論文投稿した割合は22%であった。査読提出の割合は31%であった。週末は7分の2(28%)なので、論文執筆は平日に行っているほうが多いが、週末でも22%の割合で仕事をするのはサラリーマンでは考えにくい。論文は本務に位置付けられるが、査読はそうではないので、査読のほうは時間外に行われがちなのだろう。

前糖尿病状態から糖尿病にならないために

 前糖尿病者において、肥満かどうかにかかわらず体重を増加させないことで糖尿病発症リスクを最小限にできることが、国立国際医療研究センターのHuan Hu氏らの研究で示唆された。体重を減らすことは肥満者が前糖尿病状態から正常血糖に戻るのに役立つ一方、体重を維持することは非肥満者が正常血糖に戻るのに役立つ可能性があるという。Clinical Nutrition誌オンライン版2019年12月25日号に掲載。