日本語でわかる最新の海外医学論文|page:463

米国Moderna社の新型コロナワクチン、サルでの有効性確認/NEJM

 開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「mRNA-1273」は、非ヒト霊長類において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の中和活性と上気道・下気道の速やかな保護を誘導し、肺組織の病理学的変化は認められなかった。米国・ワクチン研究センターのKizzmekia S. Corbett氏らが、アカゲザルにおけるmRNA-1273の評価結果を報告した。mRNA-1273は、SARS-CoV-2の膜融合前安定化スパイクタンパク質をコードするmRNAワクチンで、第I相試験を含むいくつかの臨床試験において安全性および免疫原性が確認されているが、上気道・下気道でのSARS-CoV-2増殖に対するmRNA-1273の有効性を、ヒトと自然免疫やB細胞・T細胞レパートリーが類似している非ヒト霊長類で評価することが重要とされていた。NEJM誌オンライン版2020年7月28日号掲載の報告。

ツリウムレーザーを用いた経尿道的前立腺蒸散術:既存の経尿道的前立腺切除術とのランダム化比較試験(解説:宮嶋哲氏)-1269

現在、前立腺肥大症(BPH)に対して薬物治療抵抗性ないしは尿閉を来した症例に対する治療法として経尿道的前立腺切除術(TURP)は、ゴールドスタンダードの1つである。本研究は2014年から2016年にかけて英国の7病院においてBPHによる下部尿路症状を来した410症例を対象に、BPHに対するTURPとツリウムレーザーを用いた経尿道的前立腺蒸散術(ThuVARP)を比較検討したRCTである。主要評価項目は術後12ヵ月目における最大尿流率(Qmax)と国際前立腺症状スコア(IPSS)の改善である。TURP術後Qmax(平均23.2mL/s)はThuVARP術後Qmax(平均20.2mL/s)より優れていたが、IPSSの改善は同等な結果であった。術後在院期間は両群ともに48時間で差を認めず、合併症の頻度も同等であった。

出生前母体ステロイド治療はルーチンで行うのではなく、症例ごとに合わせた早産リスクの判断を(解説:前田裕斗氏)-1268

周産期診療における副腎皮質ステロイドの出生前投与は、前期破水や切迫早産の胎胞脱出症例など1週間以内に分娩が強く予想される症例に対して、胎児の臓器成熟を促す目的で行われる。この治療法自体は古くから行われておりデータの蓄積も多く、2017年のメタアナリシスでは妊娠34~35週未満の症例への投与により新生児呼吸窮迫症候群を有意に低減(相対リスク:0.66)するほか、脳室内出血(相対リスク:0.55)、壊死性腸炎(相対リスク:0.50)、さらには新生児死亡率(相対リスク:0.69)をも低減すると報告された。 ステロイドの出生前投与は元々妊娠34週(肺が完成するといわれる週数)未満での使用が推奨されていたが、近年は34週以降37週未満の症例への投与でも新生児における各種呼吸器合併症の発症低減などが報告されており、投与を推奨する国が出てきている。 ステロイド投与の合併症については母体でさほど目立ったものはなく、新生児の短期予後については出生後すぐの低血糖の報告がある(低中所得国での新生児死亡率上昇の報告もあるが、この原因は判然としていない)。一方長期予後については不明瞭な部分が多く、今回の論文はその1つとして神経学的予後への影響を確かめた大規模観察研究になる。

PCR拡充へ緊急提言、医師判断で迅速に実施可能な体制に/日本医師会

 日本医師会は8月5日付で、医師が必要と認めた場合に確実にPCR検査や抗原検査を実施できるよう、国に対しその実現について強く求める7項目の提言を公表した。背景として、複数の都道府県において過去最高の1日当たり新規感染者数を更新する中、夏季休暇などで移動の増加が予想され、全国的にさらなる感染拡大が懸念されること、行政検査の委託契約プロセスの煩雑さから、現行の枠組みを維持しながら検査能力を向上させるには限界があることを指摘している。

高齢者の睡眠時間と認知症発症因子はどう関連するか?

 高齢者における生活習慣因子と皮質アミロイド負荷および脳グルコース代謝の関連を調べた研究において、総睡眠時間が軽度認知障害の高齢者の脳機能と関連することを示す結果が得られた。大分大学の木村 成志氏による報告で、JAMA Network Open誌2020年7月9日号に掲載された。  本研究は2015年に開始された前向きコホート研究であり、大分県臼杵市において、認知症既往のない65歳以上の成人を対象とした。データ収集は2015年8月~2017年12月、分析は2019年6月に行われた。

レンバチニブ、切除不能胸腺がんに国内申請/エーザイ

 エーザイとMSDは、マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)について、日本において切除不能な胸腺がんに係る適応追加を申請したと発表。同剤は本年6月、当該適応で希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けている。  本申請は、国内で実施された医師主導による非盲検、単群、多施設共同臨床第II相試験(NCCH1508試験)の結果に基づくもの。この試験では、1レジメン以上のプラチナ製剤による前治療歴のある胸腺がん患者42例が登録され、レンバチニブ単剤の有効性・安全性が評価された。

精神疾患の疫学研究~大規模コホート

 中国は、ここ30年の間、過去にない経済的発展と社会的変化が起きており、政策立案者や医療専門家は、モニタリングすべき重要なポイントとして、メンタルヘルスへの注目が集まっている。中国・Guangdong Academy of Medical ScienceのWenyan Tan氏らは、過去10年間で2,000万件の実臨床フォローアップ記録を用いて、広東省における精神疾患の疫学研究を実施した。BMC Medical Informatics and Decision Making誌2020年7月9日号の報告。

血漿中P-tau217、アルツハイマー病を高精度に識別/JAMA

 血漿中P-tau217(plasma tau phosphorylated at threonine 217)は、アルツハイマー病(AD)と他の神経変性疾患を高い精度で識別できることが明らかにされた。従来の血漿中P-tau181やニューロフィラメント軽鎖(NfL)および画像診断のMRIよりもその精度は有意に高かったが、一方で脳脊髄液(CSF)・P-tau217、CSF・P-tau181やtau-PETとは有意差は示されなかった。スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らが、3つのコホート、被験者総数1,402例を対象に行った試験で明らかにしたもので、ADの診断検査について、現行のアプローチでは限界があると指摘されていることから、著者は「さらなる検討を行い、このアッセイを最適化し、非選択の多様な集団で検証を行い、臨床ケアにおける潜在的な役割を確立する必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2020年7月28日号掲載の報告。

新型コロナ感染症、ARDSの新たな機序の発見?(解説:山口佳寿博氏)-1265

本論文は、新型コロナ(SARS-CoV-2)に罹患し肺炎、ARDSを基礎とした重篤な呼吸不全のために死亡した7症例の肺組織を用いて病理・形態像(光顕、走査電顕、微小CT画像、免疫組織化学)ならびに血管増生に関与する323個の遺伝子の発現動態を解析したものである。比較として、A型インフルエンザ(AH1N1)で死亡した症例の肺(7例)と正常肺(10例、肺移植に使用されなかった肺)を用いて上記と同様の解析が施行された。SARS-CoV-2、AH1N1肺の基本病理像はDADであったが、肺重量はAH1N1で重くSARS-CoV-2肺の1.4倍であった。すなわち、AH1N1肺では血液成分の漏出に起因する肺水腫がより著明であることが示唆された。

新しく出てくるTAVI弁は使えるか?(解説:上妻謙氏)-1264

重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、その低侵襲かつ有効な治療のため世界中で急速に普及し、一般的な医療となってきた。今まで世界で市販され使用されてきた人工弁はバルーン拡張型と自己拡張型に分かれるが、新規で市販されてくる人工弁は自己拡張型ばかりである。先行するメドトロニック社のコアバルブシリーズの人工弁はsupra-annularタイプといって元々の自己弁輪部よりも大動脈の上部に新規の人工弁が存在するようになり、石灰化の強いAS患者において自己弁部の石灰化で人工弁が変形した影響を受けにくくなるメリットがある。

FDA、オシメルチニブのEGFR陽性肺がん術後補助療法をブレークスルーセラピー指定/アストラゼネカ

 2020年7月31日、米国食品医薬品局(FDA)は、第3世代EFGR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)による完全切除後の早期(Stage IB~IIIA)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)への術後補助療法をブレークスルーセラピーに指定した。  この指定は、米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表された第III相ADAURA試験のデータに基づくもの。この試験では、オシメルチニブによる術後補助療法は、統計的に有意で臨床的に意味のある無病生存率(DFS)の改善を示した(HR:0.21、95% CI:0.16~0.28; p

インフルとCOVID-19同時流行の対策提唱/日本感染症学会

 2020年8月3日、日本感染症学会は『今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて』の提言を学会ホームページ内に公開した。  新型コロナウイルスの流行を推測した研究によると、この冬、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行が予測されており、とくにインフルエンザの流行期と重なることで、重大な事態になることが危惧されている。また、インフルエンザとの混合感染は、COVID-19入院患者の4.3~49.5%に認められている。  そのため、本提言は、石田 直氏(インフルエンザ委員会委員長/倉敷中央病院)をワーキンググループ委員長に迎え、インフルエンザおよびCOVID-19の専門家、医師会の角田 徹氏(東京都医師会副会長/角田外科消化器科医院 院長)や釜萢 敏氏(日本医師会常任理事/小泉小児科医院 院長)が参加して作成された。

VTEへのリバーロキサバン、日本の実臨床での有効性(J'xactly Study)/日本循環器学会

 日本における静脈血栓塞栓症(VTE)患者は欧米ほど多くないが、増加傾向にある。VTE治療および再発抑制に対して、直接作用型第Xa因子阻害薬リバーロキサバンが2015年に承認され使用されているが、その実臨床データは十分ではない。VTE治療における日本の実臨床でのリバーロキサバンの有効性と安全性を前向きに評価したJ'xactly Studyの結果を、日本大学の奥村 恭男氏が、第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で発表した。  J'xactly Studyは、深部静脈血栓症(DVT)および肺血栓塞栓症(PE)患者を対象に、リバーロキサバンの有効性と安全性を検討した多施設共同前向き観察コホート研究。国内の152施設が参加した。

アカラブルチニブ、慢性リンパ性白血病治療薬として、EUの承認勧告取得/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2020年7月27日、欧州連合(EU)においてアカラブルチニブに対し、慢性リンパ性白血病(CLL)の成人患者の治療薬として、製造販売承認が勧告されたことを発表した。  今回の欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)の肯定的見解は、前治療歴のないCLL患者を対象にしたELEVATE TN、および再発または難治性CLL患者さんを対象にしたASCENDの2つの第III相臨床試験の結果に基づいている。  ELEVATE TN試験では、前治療歴のないCLL患者において、アカラブルチニブとオビヌツズマブの併用療法、およびアカラブルチニブ単剤療法が、標準的な化学免疫療法であるchlorambucilとオビヌツズマブとの併用療法と比較して、病勢進行または死亡のリスクをそれぞれ90%および80%低下させることが確認された。ASCEND試験では、試験対象となった再発または難治性CLL患者のうち、12ヵ月時点で生存かつ病勢進行も認められなかった患者の割合が、アカラブルチニブ投与群では88%だったのに対し、リツキシマブとidelalisibまたはベンダムスチンの併用療法群では68%であった。アカラブルチニブの安全性および忍容性は、両試験ともに既知のプロファイルと一致していまた。

COVID-19パンデミック時の不安やうつ症状の有症率とその予測因子

 COVID-19による世界的なパンデミックの効果的なマネジメントのため、厳格な移動制限の実施とソーシャルディスタンスを保つことが求められている。キプロス大学のIoulia Solomou氏らは、一般集団におけるCOVID-19パンデミックの心理社会学的影響を調査し、メンタルヘルスの変化を予測するリスク因子と保護因子の特定を試みた。また、ウイルス蔓延を阻止するための予防策の準拠についても調査を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2020年7月8日号の報告。  社会人口統計学的データ、予防策の準拠、QOL、全般性不安障害尺度(GAD-7)およびこころとからだの質問票(PHQ-9)を用いたメンタルヘルスの状態を、匿名のオンライン調査で収集した。

腹壁ヘルニア修復術、ロボット手術は入院日数短縮せず/BMJ

 腹壁ヘルニアの修復術では、ロボット手術と腹腔鏡手術で術後90日までの入院日数に差はなく、ロボット手術は手術時間が2倍近く長く、医療費が有意に高額であることが、米国・McGovern Medical School at UTHealthのOscar A. Olavarria氏らの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2020年7月14日号に掲載された。腹壁ヘルニア修復術におけるロボット手術と腹腔鏡手術を比較した、米国のデータベースを用いた後ろ向き研究では、術後の入院期間はロボット手術で短く、臨床アウトカムに差はないと報告されている。これらの知見を裏付けるために、無作為化対照比較試験の実施が望まれていた。

新規HIV感染者ゼロを目指して(解説:岡慎一氏)-1267

ワクチンのない現在、HIV感染を確実に防ぐ方法は2つある。1つは、感染者が治療を受けウイルス量を検出限界以下にすること(Undetectable equals Untransmittable:U=U)と、もう1つは感染リスクのある人が性行為の前に予防薬を飲むこと(Pre-Exposure Prophylaxis:PrEP)である。U=UとPrEPが実行されれば新規感染者はゼロになる、はずである。この論文は、PrEPに関する大規模RCTの結果である。もちろん世界のどんな地域でもHIV感染者より感染リスクのある人(非感染者)のほうが、圧倒的に人数が多い。したがって、PrEPへの注目度は、非常に高い。

ダパグリフロジン、2型DM合併問わずCKD患者に有益/AstraZeneca

 アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ)は、同社が行ったダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の第III相DAPA-CKD試験の結果を発表した。  慢性腎臓病(CKD)は、腎機能が低下することにより起こる重篤な進行性の疾患。最も一般的な原因疾患は、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎で、重篤な状態になると腎障害および腎機能低下が進行し、血液透析や腎移植を必要とする末期腎不全(ESKD)となる。全世界で約7億人の患者が推定されている。

ラメルテオンの術後せん妄予防効果~胃切除後高齢者を対象とした第II相試験

 高齢患者における胃がん症例数は増加しており、術後せん妄を予防する重要性は高まっている。静岡県立静岡がんセンターの本田 晋策氏らは、胃切除後の高齢患者における術後せん妄の予防に対するラメルテオンの有効性を評価するため、単施設プロスペクティブ第II相試験を実施した。Surgery Today誌オンライン版2020年7月8日号の報告。  対象は、75歳以上の高齢患者。手術の8日前から退院までラメルテオン8mg/日を投与した。術後せん妄の評価には、集中治療室におけるせん妄評価法(CAM-ICU)を用いた。

成人アトピーは糖尿病を引き起こす?

 アトピー性皮膚炎(AD)は糖代謝に影響を及ぼすのか。デンマーク・コペンハーゲン大学のLise Gether氏らは、ADの成人において、インスリン感受性の低下やその他の糖代謝異常が認められるかを調べるため、経口糖負荷検査(OGTT)と高インスリン正常血糖クランプ法を用いて検討した。結果として、健康成人との間に違いはなかったことが報告され、著者は、「炎症性皮膚疾患であるADは、糖代謝にほとんどあるいはまったく影響しないことが示唆される」と述べている。疫学研究では、一般集団と比較して、ADの成人における2型糖尿病の発生の増加が示されている。Diabetes Obesity and Metabolism誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。