PCR拡充へ緊急提言、医師判断で迅速に実施可能な体制に/日本医師会

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/07

 

 日本医師会は8月5日付で、医師が必要と認めた場合に確実にPCR検査や抗原検査を実施できるよう、国に対しその実現について強く求める7項目の提言を公表した。背景として、複数の都道府県において過去最高の1日当たり新規感染者数を更新する中、夏季休暇などで移動の増加が予想され、全国的にさらなる感染拡大が懸念されること、行政検査の委託契約プロセスの煩雑さから、現行の枠組みを維持しながら検査能力を向上させるには限界があることを指摘している。

希望者全員への検査を求めるものではなく、あくまで医師の判断を前提

 同日行われた定例記者会見で、釜萢 敏常任理事はまず、不安を感じて検査を受けたいという人全員に実施できることを求めるものではなく、あくまで医師が必要と判断した場合に検査が適切に実施されるよう求めるものであることを強調。そのうえで、検査体制の整備状況は地域によって大きな差が出ており、厚生労働省からは行政検査の委託契約の簡素化を進める事務連絡等が発出されているが、この契約にかかる手続きの煩雑さが全国的な検査拡充の足かせになっていると指摘した。

 提言では、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)1)を活用し、陽性陰性を問わず全数報告を要件とする新たな仕組み2)により、検査にまつわる患者一部負担を公費で措置することを提案。PCR等検査時に患者一部負担は発生せず、その相当分の支払いを医療機関等が請求するには、都道府県等との委託契約が必要となる現行の仕組みを改善すべきとしている。

提言7項目の改善を強く求めていく姿勢

 中川 俊男会長は、感染は全国的に急速な広がりを見せており、必要な検査を可能なかぎり迅速に実施することが感染拡大防止につながるとし、医師が必要と判断したら、症状の有無にかかわらず検査が実施されるべきと強調した。医師の判断でスムーズに検査が実施されている地域と、制限のある地域に全国で大きな温度差があり、現行制度の枠組みを維持しながら全国的に検査能力を向上させるのは、「限界に達している」とした。

 提言の7項目を改善することで、飛躍的に検査能力を上げることができるのではないかと話し、国に対してこの改善を強く求めていく姿勢を明らかにした。

「新型コロナウイルス感染症の今後の感染拡大を見据えたPCR等検査体制の更なる拡大・充実のための緊急提言」
1.保険適用によるPCR等検査の取り扱いの明確化
 保険適用によるPCR等検査については、行政検査の委託契約締結が無くとも実施可能であることをあらためて明確化すること。
 また、当該検査の実施料、判断料に係る患者一部負担金を公費で措置すること。
2.検体輸送体制の整備
 PCR等検査実施医療機関の拡大に対応可能な検体輸送体制を人的・物的両面から整備すること。その際、検体梱包・輸送等に係る費用の補助を行うこと。
3.PCR等検査に係る検査機器の配備
 新型コロナウイルス感染症対策の緊急性に鑑み、全国各地にPCR検査機器を大幅に増設すること。
4.臨床検査技師の適切な配置
 PCR等検査の実施にあたり、検査機関に検査に対応できる臨床検査技師を適切に配置すること。
5.公的検査機関等の増設
 検査対応能力の向上のため、民間検査機関に加え、各地域に公的検査機関等を増設すること。
6.PCR等検査受検者への対応体制の整備
 検査が終了し、検査結果が出るまでの受検者の待機場所を整備すること。さらに、陽性(軽症者、無症状者)の療養場所としての施設を整備すること。
7.医療計画への新興・再興感染症対策の追加
 都道府県が策定する医療計画の5疾病5事業に新興・再興感染症対策を速やかに追加すること。

(ケアネット 遊佐 なつみ)