日本語でわかる最新の海外医学論文|page:432

CABGの10年転帰、橈骨動脈vs.伏在静脈グラフト/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)を行う際、橈骨動脈グラフトの使用は伏在静脈グラフトに比べ、複合心血管アウトカムの発生リスクは低いことを、米国・Weill Cornell MedicineのMario Gaudino氏らが、5件の無作為化比較試験(被験者総数1,036例、追跡期間中央値10年)についてメタ解析を行い明らかにした。これまで、観察試験では、橈骨動脈グラフト使用のほうが伏在静脈グラフト使用よりも、臨床的アウトカムを改善する可能性が示唆されていたが、無作為化試験では確認されていなかった。JAMA誌2020年7月14日号掲載の報告。

新型コロナワクチン、米の第I相試験で全例が抗体獲得/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とModerna(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)が共同で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチン「mRNA-1273」の、第I相臨床試験の結果が発表された。全例で中和抗体が検出され、試験中止について事前に規定した安全性に関する懸念は発生しなかった。米国・カイザーパーマネンテ(Kaiser Permanente Washington Health Research Institute)のLisa A. Jackson氏らmRNA-1273 Study Groupによる報告で、著者は「結果は、本ワクチンのさらなる開発を支持するものであった」とまとめている。NEJM誌オンライン版2020年7月14日号掲載の報告。

小児精神疾患における80種の向精神薬の安全性~メタ解析

 精神疾患は、小児期や青年期にしばしば発症する。小児精神疾患の治療に適応を有する向精神薬はさまざまあり、適応外での使用が往々にして行われる。しかし、これら向精神薬の副作用については、発達途上期間中であることを踏まえ、とくに注意が必要である。イタリア・パドヴァ大学のMarco Solmi氏らは、小児および青年の精神疾患に対する抗うつ薬、抗精神病薬、注意欠如多動症(ADHD)治療薬、気分安定薬を含む19カテゴリ、80種の向精神薬における78の有害事象を報告したランダム化比較試験(RCT)のネットワークメタ解析およびメタ解析、個別のRCT、コホート研究をシステマティックに検索し、メタ解析を行った。World Psychiatry誌2020年6月号の報告。

COVID-19、1割が軽症でも嗅覚・味覚異常が1ヵ月継続

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状として、嗅覚や味覚の異常が多く報告されている。またCOVID-19を巡っては、回復後1~2ヵ月もなお諸症状がしつこく残るケースが多いことも、これまでの研究で明らかになっている。本研究は、イタリア・パドヴァ大学のPaolo Boscolo-Rizzo氏ら研究グループが、2020年3月19日~22日、同国Treviso Regional HospitalにおいてRT-PCR 検査でSARS-CoV-2陽性と診断された18歳以上の軽症患者202例を対象に、嗅覚・味覚障害の経過を連続的に評価したもの。JAMA otolaryngology-head & neck surgery誌オンライン版2020年7月2日号での掲載。

糖尿病患者にエクササイズ動画を配信/ノボ ノルディスク ファーマ

 新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱える患者の診療の手控えに加え、不要不急の外出への遠慮から外での運動機会も減少している。とくに糖尿病では、運動療法は患者にとって食事療法・薬物療法と並ぶ治療の3本柱の1つであり、運動不足により血糖値のコントロール不良が憂慮されている。  ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は、こうした状況に鑑み、糖尿病患者の健康維持を目的とした「自宅で簡単にできるエクササイズ動画」を制作し、7月より配信を開始した。  糖尿病患者向けエクササイズ動画は、日本糖尿病協会(理事長:清野 裕)の監修のもと、自身も1型糖尿病である元エアロビクス世界チャンピオンの大村 詠一氏がエクササイズ内容を考案し、自ら動画で実演しているもの。

精神科入院患者のリハビリテーション、マインドフルネスグループの導入効果

 精神科リハビリテーションサービスを受けている患者は、複雑な長期にわたる問題を抱えており、しばしば治療抵抗性といわれる。このような患者では、統合失調症などのメンタルヘルス診断と合わせて、複雑なトラウマ歴、アルコール依存や薬物乱用、認知障害が頻繁にみられる。治療抵抗性統合失調症の治療では、クロザピン療法以外の効果的な治療法は知られていないが、マインドフルネスがストレス体験に対処する能力を向上させることが予備的エビデンスで示されている。英国・エディンバラ大学のAudrey Millar氏らは、マインドフルネスプラクティスグループが、入院患者のリハビリ環境下で許容できる治療介入であるかについて検討を行った。また、ウェルビーイングのモニタリングも実施した。BMC Psychiatry誌2020年6月20日号の報告。

ダウン症候群とアルツハイマー型認知症の深い関係(解説:岡村毅氏)-1262

ダウン症候群の人(通常は2本ある21番染色体を3本持っている人)は比較的早期からアルツハイマー型認知症になりやすいことは昔から知られていた。アルツハイマー型認知症の病理の中核にある「アミロイドβ」の前駆体の遺伝子は、まさに21番染色体に存在するので、理論上も合致する。家族性アルツハイマー型認知症も21番染色体に連鎖することが知られている。ダウン症候群とアルツハイマー型認知症は、21番染色体が鍵という点でつながっている。この論文では、多数のダウン症候群の人に詳細な認知機能検査を行うと同時に、さまざまなバイオマーカー(血液、脳脊髄液、脳機能画像、脳構造画像)を測定し、ダウン症候群の人々におけるアルツハイマー型認知症の病理の進展を分析したものである。

COVID-19、31ヵ国716例にみる皮膚科症状の特徴は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、特徴的な皮膚科症状が認められると伝えられている。米国・ハーバード大学医学大学院/マサチューセッツ総合病院皮膚科部門のEsther E. Freeman氏らは、それらの皮膚科症状を特徴付け、根底にある病態生理の解明を促進する目的で、国際レジストリの症例集積研究を行った。その結果、多くの症状は非特異的であったが、COVID-19の病態生理における潜在的な免疫や炎症性反応の解明に役立つ可能性がある知見が得られたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年7月2日号掲載の報告。  研究グループは、米国皮膚科学会および国際皮膚科学会連盟の国際レジストリを用いて症例集積研究を行い、COVID-19が確認または疑われ、新規発症の皮膚科症状が認められた患者のデータを分析した。

子供の教育費と親のうつ病との関係

 韓国では、社会文化的背景の影響により高等教育(higher education)が急速に成長しており、子供の教育には、世帯収入の大部分が費やされている。学習塾や予備校などの私教育(private education)は、子供の心理や行動に影響を与えると考えられてきた。しかし、これらの費用を支払う両親を対象とした研究は、これまで行われていなかった。世帯収入や教育レベルは、社会経済的地位(SES)を決定する重要な因子であり、教育費の捻出は、抑うつ症状の発症に影響を及ぼす可能性がある。韓国・延世大学校のByeong Cheol Oh氏らは、韓国における私教育費と両親のうつ病との関係について調査を行った。BMC Public Health誌2020年6月20日号の報告。

緩和ケアは非がん患者の救急受診と入院を減らす?/BMJ

 緩和ケア(palliative care)は、非がん患者においても潜在的ベネフィットがあることが、カナダ・トロント大学のKieran L. Quinn氏らによる住民ベースの適合コホート試験で示された。人生の終末期(end of life:EOL)が近い患者の多くは、救急部門の受診および入院の頻度が高く、それが人生の質を低下するといわれていれる。緩和ケアは、がん患者についてはEOLの質を改善することが示されているが、非がん患者に関するエビデンスは不足していた。今回の結果を踏まえて著者は、「EOLは、医師のトレーニングへの持続的な投資とチーム医療で行う緩和ケアの現行モデルの利用を増やすことで改善可能であり、医療政策に重大な影響を与える可能性があるだろう」と述べている。BMJ誌2020年7月6日号掲載の報告。

バロキサビル、インフルエンザの家族間感染予防に有効/NEJM

 インフルエンザの家族間感染予防に、バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ、以下バロキサビル)の単回投与が顕著な効果を示したことが報告された。リチェルカクリニカの池松 秀之氏らによる多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年7月8日号で発表された。バロキサビルは、ポリメラーゼ酸性タンパク質(PA)エンドヌクレアーゼ阻害作用を有し、合併症リスクの高い外来患者などを含む合併症のないインフルエンザの治療効果が認められている。しかし、バロキサビルの家庭内での曝露後予防効果については、明らかになっていなかった。

COVID-19感染拡大予防に対するフィジカルディスタンスの有効性をグローバルな観点から統計学的に証明(解説:桑島巌氏)-1261

最近、WHOは“ソーシャルディスタンス”を“フィジカルディスタンス”に言い換えた。“社会的距離”では、心理面も含めた距離を含むと誤解されやすいので、単に“物理的”な接触を避けるという適切な用語の変更であろう。そのフィジカルディスタンスが新型コロナ感染拡大を本当に予防できるのかを統計学的に分析したのがこの論文である。「そんなこと当たり前だろう」と誰もが思っていることはしばしば実は違っていたというのはままあるので、そこは科学発祥の地、英国である。武漢や香港などでの局地的な調査報告はあったが、今回はグローバルに149ヵ国でのPD政策とcovid-19抑制効果との関連をoxford covid-19 government response tracker(OxCGRT)のデータを元に統計学的に検証した成績である。

セクキヌマブ、体軸性脊椎関節炎にFDA承認 /ノバルティス

 ノバルティス ファーマ株式会社は、同社が製造販売するセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)が、X線基準を満たさない活動性の体軸性脊椎関節炎(以下「nr-axSpA」という)の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の効能追加承認を取得したと発表した。  体軸性脊椎関節炎(以下「axSpA」という)は、慢性炎症性背部痛を特徴とする慢性炎症性疾患。axSpAの疾患スペクトラムには、X線基準により仙腸関節の損傷が確認される強直性脊椎炎(以下「AS」という)と、X線基準により明らかな関節損傷が認められないnr-axSpAが含まれる。axSpAによる身体的な制限は、患者のADLやQOLに重大な影響を与える疾患である。

ASCO作成COVID-19流行下のがん治療の指針、和訳版を公開/日本癌治療学会

 日本癌治療学会は7月9日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が作成した「ASCOスペシャルレポート:COVID-19の世界的流行下におけるがん治療の実施に関する指針」をホームページ上で公開した。この指針は、COVID-19 の世界的大流行への対応を継続する中で患者および医療スタッフの安全性を保護するため、がん診療で実施可能な即時および短期の措置についてASCOが世界的視野に立ち作成、5月19日に発表されたもの。  和訳版は全22ページからなり、下記20項目について知見がまとめられている

双極性障害の薬理学的マネジメント~日本の専門医のコンセンサス

 慶應義塾大学の櫻井 準氏らは、双極I型障害および双極II型障害の精神薬理学的治療に関する日本臨床精神神経薬理学会が認定する専門医によるコンセンサスガイドラインを作成することを目的に本研究を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2020年6月17日号の報告。  日本臨床精神神経薬理学会が認定する専門医を対象に、双極性障害治療における19の臨床状況について、9段階のリッカート尺度(同意しない「1」~同意する「9」)を用いて、治療オプションの評価を依頼した。119件の回答が得られた。治療オプションを、1次、2次、3次治療に分類した。

アトピーのそう痒、nemolizumab+外用薬で改善/NEJM

 アトピー性皮膚炎の治療において、nemolizumabと外用薬の併用は、プラセボと外用薬の併用に比べそう痒が大幅に減少し、湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアや皮膚科学的生活の質指数(DLQI)も良好であるが、注射部位反応の発現率はnemolizumabで高いことが、京都大学の椛島 健治氏らが実施した「Nemolizumab-JP01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年7月9日号に掲載された。nemolizumabは、アトピー性皮膚炎のそう痒と炎症に関与するインターロイキン(IL)-31受容体Aのヒト化モノクローナル抗体であり、投与は皮下注射で行われる。本薬は、第II相試験でアトピー性皮膚炎の重症度を軽減すると報告されている。  本研究は、アトピー性皮膚炎と中等度~重度のそう痒がみられ、外用薬に対する反応が不十分な日本人患者を対象とする16週間の二重盲検無作為化第III相試験で、2017年10月に開始され、2019年2月にデータ解析が行われた(マルホの助成による)。

COVID-19死亡例、肺病理所見の特徴は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行における主な死因は進行性呼吸不全であるが、死亡例の末梢肺の形態学的・分子的変化はほとんど知られていないという。ドイツ・ヴィッテン・ヘアデッケ大学のMaximilian Ackermann氏らは、COVID-19で死亡した患者の肺組織の病理所見を調べ、インフルエンザで死亡した患者の肺と比較した。その結果、COVID-19患者の肺で顕著な特徴として、重度の細胞膜破壊を伴う血管内皮傷害がみられ、肺胞毛細血管内の微小血栓の有病率が高く、新生血管の量が多いことを確認した。NEJM誌2020年7月9日号掲載の報告。  研究グループは、COVID-19で死亡した患者の剖検時に得られた肺の形態学的・分子的特徴を、インフルエンザで死亡した患者の肺および年齢をマッチさせた非感染対照肺と比較した(米国国立衛生研究所[NIH]など助成による)。

進行胃がんに対する薬物療法が大きく変わる―免疫チェックポイント阻害薬と抗体薬物複合体(解説:上村直実氏)-1260

本論文では既治療に対して抵抗性のHER2陽性進行胃がんを対象として、抗HER2抗体であるトラスツズマブに新規トポイソメラーゼI阻害薬のデルクステカンを結合させた抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカンの有効性が示されている。すなわち、抗体薬物複合体により薬物の抗腫瘍効果を大きく引き上げることが証明された研究成果は特筆される。最近、わが国における手術不能の進行胃がんに対する薬物療法が大きく変化している。TS-1を用いる1次治療の効果が少ない患者に対して行う、第2次・第3次治療におけるニボルマブ(商品名:オプジーボ)などの免疫チェックポイント阻害薬と抗体薬物複合体の登場により、従来と大きく異なる成果すなわち生存率の延長や完全寛解を示す患者を認めるようになっている。

ISCHEMIA-CKD試験における血行再建術の有用性検討について(解説:上田恭敬氏)-1259

中等度から高度の心筋虚血所見を認める重症CKD合併安定狭心症患者に対して、薬物療法に加えて血行再建術(PCIまたはCABG)を施行する(invasive strategy)か否か(conservative strategy)で2群に無作為に割り付けたRCTであるISCHEMIA-CKD試験からの報告で、invasive strategyの症状軽減効果について解析した結果である。3ヵ月の時点ではinvasive strategyで症状軽減効果が示されたが、3年後にはその差は消失した。また、試験登録時の症状出現頻度が低いほど、その有効性は小さかった。著者らはconservative strategyに比してinvasive strategyに有用性はないと結論している。

無症状者でも唾液を用いたPCR検査が可能に/厚労省

 新型コロナウイルスへの感染を調べる検査について、厚生労働省は7月17日より、無症状者に対しても、唾液を用いたPCR検査(LAMP法含む)および抗原定量検査を活用可能とすることを発表した。ただし、簡易キットによる抗原検査については今後研究を進める予定で、現状唾液検体の活用は認められていない。これまで、PCR検査、抗原定量検査ともに唾液検体については、発症から9日目以内の有症状者のみ活用が認められていた。  今回の決定は、都内で無症状者を対象に、唾液を用いたPCR検査および抗原定量検査と、鼻咽頭拭い液PCR検査結果を比較し、高い一致率を確認したことを受け、7月15日開催の第44回厚生科学審議会感染症部会の審議を経て、活用可能と判断されたことに基づく。