日本語でわかる最新の海外医学論文|page:395

うつ症状が心血管疾患発症と関連/JAMA

 22コホート・参加者56万3,255例のデータを包含したプール解析において、ベースラインのうつ症状は心血管疾患(CVD)と関連していることを、英国・ケンブリッジ大学のEric L. Harshfield氏らEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)研究グループが明らかにした。ただし、症状レベルは大うつ病性障害を示す閾値よりも低く、関連の程度はわずかであった。これまで、うつ症状が独立してCVD発症と関連するかどうかは不明であった。JAMA誌2020年12月15日号掲載の報告。

コロナ病床は簡単には増やせない、医療壊滅を防ぐために/日医

 感染者数の増加が続き、各地で医療体制のひっ迫が叫ばれる中、日本の医療体制の在り方についても様々な意見が報道・発信されている。1月13日の日本医師会定例記者会見において、中川 俊男会長は改めて国民に対し協力を要請するとともに、日本の医療提供体制の現状を説明し、日医として引き続き行っていく働きかけ、施策について説明した。  公立・公的等病院の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)受け入れ割合が約70~80%である一方、民間病院が約20%というデータに対し、より多くの民間病院が新型コロナ患者を受け入れるべきという意見がある。

ベンゾジアゼピン依存症自己申告アンケート日本語版を用いた睡眠薬使用障害の現状調査

 ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬は、不眠症治療において頻繁に用いられるが、長期使用は推奨されていない。適切な薬物療法を行うためには、BZD依存に関する現状や背景を明らかにする必要がある。東京女子医科大学の山本 舞氏らは、BZD依存症自己申告アンケート日本語版(Bendep-SRQ-J)を開発し、BZD使用障害に関する研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年12月1日号の報告。  開発元の許可を得てBendep-SRQ-Jを作成した。対象は、2012~13年にBZD治療を行った入院および外来患者。Bendep-SRQ-Jスコア、睡眠障害、身体的併存疾患、向精神薬、ライフスタイルに関するデータを収集した。症状重症度に関連する因子を特定するため、ロジスティック分析を行った。

AIで早期大腸がんをリアルタイムに発見/国立がん研究センター

 国立がん研究センターと日本電気が共同で開発した人工知能(AI)を用いた早期大腸がんおよび前がん病変を内視鏡検査時にリアルタイムに発見するソフトウェアが2020年11月30日に日本で医療機器として承認された。また、欧州においても同年12月24日に医療機器製品の基準となるCEマークの要件に適合した。  同ソフトウェアは、国立がん研究センター中央病院内視鏡科に蓄積された画像でトレーニングされたAIを用い、大腸内視鏡検査時に大腸前がん病変および早期大腸がんをリアルタイムに自動検出することができる。

診療所の新型コロナ感染対策、Web問診サービスを1年無償で提供/Ubie

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を受け、Ubie株式会社は「AI問診ユビー for クリニック」を、全国のクリニックに向けて利用料1年分(12万円相当)無償で緊急提供することをプレスリリースで発表した。2021年1月8日~2月26日までの契約開始を条件に、利用開始日から1年間の無償期間を設ける。  なお、内科系・整形外科・一般外科系のクリニックが対象とされ、タブレット導入費、電子カルテ連携費、通信費などの実費は、医療機関による負担となる。

同種移植後の急性GVHD、シタグリプチンの併用で減少/NEJM

 DPP-4阻害薬シタグリプチンをタクロリムスおよびシロリムスと併用することにより、骨髄破壊的同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後100日目までのGradeII~IVの急性移植片対宿主病(GVHD)の発生が減少することが明らかとなった。米国・インディアナ大学のSherif S. Farag氏らが、医師主導の非無作為化第II相臨床試験の結果を報告した。DPP-4はT細胞に発現する膜貫通型受容体で、CD26としても知られ、T細胞活性化における共刺激分子としての役割を有している。マウスモデルでは、CD26の発現低下によりGVHDが予防され移植片対腫瘍効果が維持されることが示されているが、シタグリプチンによるDPP-4阻害により、allo-HSCT後の急性GVHDが予防されるかどうかは不明であった。NEJM誌2021年1月7日号掲載の報告。

住宅の断熱改修で居住者の入院率低下/BMJ

 住宅を改修し断熱を高めることで入院が減少し、その効果は呼吸器疾患に関してより顕著であることが明らかにされた。ニュージーランド・オタゴ大学ウェリントン校のCaroline Fyfe氏らが、住宅の断熱改修が感冒に関連する入院率を低下させるかを調査する目的で行った、国の改修補助プログラムの評価に関するデータを用いた準実験的後ろ向きコホート研究の結果を報告した。冬季の超過死亡および罹患は、寒冷な気候の国よりも比較的温暖な気候の国のほうが高いことが多い。この矛盾は、温暖な国では住宅の熱効率が悪く室温が低くなりやすく、湿気やカビが生じやすい環境を作り出していることと関連しているとされる。一方、これまで複数の介入研究で、熱効率を改善することにより、感冒関連疾患の症状が改善することが示されていた。BMJ誌2020年12月29日号掲載の報告。

「時間軸を考えた急性心不全治療」でも病態の把握は必要である(解説:原田 和昌 氏)-1343

わが国の代表的な登録研究である、東京都CCUネットワーク登録において急性心不全患者(平均77歳)の院内死亡率は約8%と依然として高く、いくつかの心不全登録研究における30日の再入院率も5~6%で近年まったく改善していない。ガイドラインでは、中用量の利尿薬、早期の硝酸薬開始、必要なら非侵襲的陽圧呼吸(NPPV)、増悪因子(ACS、AF、感染など)の探索と治療を推奨している。ELISABETH試験は、Mebazaa氏がフランスの15施設にて行った、クラスター(施設などの一つのまとまり)レベルで介入時期をランダム化し、順番に観察期から介入期に移行(介入の導入時期をずらして順次適用)し、介入の優越性を検定する非盲検のデザインの試験である。救急入院した高齢者急性心不全患者の予後を、(投与時間も規定されている)推奨の治療セットが改善するかを調べたが、事前規定の治療セット群と、担当医に治療を任せた群とで、生存日数、30日の再入院率に差はなかった。

日本人男性における周産期うつ病有病率~メタ解析

 周産期うつ病は、女性のみならず男性においても発症する精神疾患である。父親の周産期うつ病の有病率に関するこれまでの国際的なメタ解析では、異文化または社会経済的環境が父親のうつ病に影響を及ぼす可能性があることを示唆している。しかし、これらのデータが、日本人男性においても当てはまるかどうかは明らかでなく、日本人男性を対象とした報告は少ない。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人男性における周産期うつ病の有病率を推定するため、検討を行った。Annals of General Psychiatry誌2020年11月18日号の報告。

30歳以下の早期乳がんの予後、高齢患者と比較

 30歳以下で乳がんと診断された患者のデータを後ろ向きに収集し、高齢患者を対照として症例対照研究を実施したところ、若年患者は高齢患者よりも無病生存期間(DFS)が短い傾向にあったことを、台湾・National Cheng Kung UniversityのWei-Pang Chung氏らが報告した。全生存期間(OS)には差がみられなかった。Medicine(Baltimore)誌2021年1月8日号に掲載。  本研究は、手術方法・病期・サブタイプをマッチさせた、症例(若年患者)と対照(高齢患者)が1:3の症例対照研究。主要評価項目はDFS、副次評価項目はOSで、単変量および多変量解析で予後因子を検討した。分析対象は若年群(年齢中央値:28.5歳)18例と高齢者群(同:71歳)54例。

高齢者では1日の歩数が睡眠効率と正の相関―大分大学

 高齢化社会において加齢に伴う運動不足と睡眠障害は大きな問題である。身体活動が睡眠の質に関連しているというエビデンスが出ているが、歩数と睡眠の関連については明らかになっていない。大分大学医学部神経内科の木村 成志氏らは、大分県臼杵市に居住する65歳以上の855例を対象に、毎日の歩数と睡眠の関連を調査した。  2015年8月~2016年3月までに855例が登録され、参加者は期間中3ヵ月ごとに平均7~8日のあいだ腕時計型センサーによって歩数を測定し、重回帰分析で1日の歩数と睡眠(総睡眠時間、睡眠効率、中途覚醒時間[WASO]、中途覚醒回数、昼寝時間)との関連を調べた。

COVID-19の家庭内感染のリスク因子~54研究のメタ解析

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の家庭(同居世帯)内の感染リスクは、他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV)より2~4倍高く、「初発患者が症状あり」「接触者が18歳以上」「初発患者の配偶者」「家庭内の接触人数が1人」がリスク因子であることが、米国・フロリダ大学のZachary J. Madewell氏らのメタ解析で示された。JAMA Network Open誌2020年12月14日号に掲載。

高齢COVID-19患者、72時間以内の回復期血漿投与で重症化半減/NEJM

 重症化リスクの高い65歳以上の軽症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、発症後早期の高力価回復期血漿療法により、COVID-19の重症化が抑制されることが明らかとなった。アルゼンチン・Fundacion INFANTのRomina Libster氏らが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)特異的IgG抗体価の高い回復期血漿の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。COVID-19の進行を抑える治療はまだ見つかっておらず、これまで入院患者への回復期血漿の投与は成功していない。研究グループは、抗体は疾患の経過の早期に投与される必要があるのではと考え、軽度の症状発症後72時間以内に回復期血漿療法を開始する検討を行った。NEJM誌オンライン版2021年1月6日号掲載の報告。

COPD急性増悪、入院患者の約6%が肺塞栓症/JAMA

 呼吸器症状の急性増悪で入院した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、あらかじめ定めた診断アルゴリズムを用いると、5.9%の患者に肺塞栓症が検出された。フランス・Centre Hospitalo-Universitaire de BrestのFrancis Couturaud氏らが、同国内の病院7施設で実施した前向き多施設共同横断研究「prevalence of symptomatic Pulmonary Embolism in Patients With an Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease study:PEP研究」の結果を報告した。COPDで呼吸器症状が急性増悪した患者における肺塞栓症の有病率はこれまで明らかになっておらず、COPDの急性増悪で入院した患者に対していつどのように肺塞栓症のスクリーニングをするかが課題であった。JAMA誌2021年1月5日号掲載の報告。

若手研究者に国際的がん教育を「国際がん研究シンポジウム」開催/近畿大学

 近畿大学医学部を主幹とする「7大学連携個別化がん医療実践者養成プラン」は、2021年1月18日~2月17日、オンラインにて「第4回国際がん研究シンポジウム」を開催する。同シンポジウムは、2013年3月に「第2期がんプロ」の取組の中で開催し、これまでに8回の開催実績がある。  国際がん研究シンポジウムは「教育講演」と「一般演題」の2部構成。「教育講演」では国内外の著名な研究者が各分野の最新の話題をわかりやすく伝える。「一般演題」では若手研究者がそれぞれのデータを持ち寄り発表すると共に、各分野の精鋭コメンテーターからの質問が待ち受ける。

BRCA1/2変異女性の乳がんリスク、60歳以降は?

 BRCA1もしくはBRCA2変異キャリアの60~80歳の乳がんリスクについて、カナダ・Toronto-Sunnybrook Regional Cancer CenterのNeda Stjepanovic氏らの遺伝性乳がん臨床研究グループが大規模前向き研究を実施した結果、どちらの変異キャリアにおいても60歳以降も乳がん発症リスクは高いままであることが示された。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月10日号に掲載。  本研究の被験者は、60歳時にがん既往歴がなく両側とも乳房の手術をしていない女性699人。乳がんの診断、予防的な両側乳房切除術、もしくは死亡するまで追跡し、60~80歳における乳がん(浸潤性およびin situ)の年発生率と累積発生率を計算した。また、ホルモン補充療法、乳がん家族歴、両側卵巣摘出術と乳がんリスクとの関連を評価した。

新型コロナ、再入院しやすい患者の特徴は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初発感染で入退院した患者のうち、9%が退院後2ヵ月以内に同じ病院に再入院していたことが明らかになった。また、複数の病院で患者の1.6%が再入院していた。再入院の危険因子には、65歳以上、特定の慢性疾患の既往、COVID-19による初回入院以前の3ヵ月以内の入院、高度看護施設(SNF:skilled nursing facility)への退院または在宅医療への切り替えが含まれていた。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)11月13日号での報告。  CDC研究班は、Premier Healthcare Database の電子健康記録と管理データを使用し、退院、再入院のパターン、およびCOVID-19による初回入退院後の再入院に関連する人口統計学的および臨床的特徴を評価した。

食習慣と若年性認知症発症リスク~イタリアでの調査

 若年性認知症のリスクは、環境要因や食生活を含むライフスタイルによって変化する可能性がある。イタリア・モデナ・レッジョ・エミリア大学のTommaso Filippini氏らは、食生活と若年性認知症リスクとの関連を調査した。Nutrients誌2020年11月29日号の報告。  イタリア北部のモデナの新規若年性認知症患者54例および対照群として介護者54人を対象とした。食事の頻度に関する質問票により食生活を調査し、食物摂取と食事パターンのアドヒアランスについて評価を行った。食事の要因とリスクとの関係をモデル化するため、制限3次スプライン回帰分析を用いた。

肺がん放射線、左前下行枝照射量と心臓有害事象の関係/JAMA Oncol

 放射線療法が冠動脈疾患(CHD)のリスクを高めることは知られているが、胸部への照射が避けられない肺がんではどうすべきか。米国・ダナ・ファーバーがん研究所およびブリガム&ウィメンズ病院のKatelyn M. Atkins氏らは、最適な心臓線量の制限がCHDの既往の有無で異なる可能性があることを明らかにした。著者は、「心臓リスクの層別化と積極的なリスク軽減戦略を改善するために、今回示された制限についてさらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2020年12月17日号掲載の報告。

母の子宮頸がん細胞が子に移行、国立がん研究センターが発表/NEJM

 国立がん研究センター中央病院の荒川 歩氏らは、小児の肺がん2例について、腫瘍組織と正常組織のペアサンプルを用いたルーチン次世代シークエンスで偶然にも、肺がん発症は子宮頸がんの母子移行が原因であることを特定したと発表した。移行したがん細胞の存在は同種の免疫応答によって示され、1例目(生後23ヵ月・男児)では病変の自然退縮が、2例目(6歳・男児)では腫瘍の成長速度が遅いことがみられたという。また、1例目は、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブを投与することで、残存するがん細胞の消失に結び付いたことも報告された。腫瘍組織と正常組織のペアサンプルを用いたルーチン次世代シークエンスは、わが国の進行がん患者を対象とした前向き遺伝子プロファイリング試験「TOP-GEAR」の一環として行われた解析で、114のがん関連遺伝子の変異を検出することを目的とする。1例目の患児に対するニボルマブ(3mg/kg体重を2週ごと)投与は、再発または難治固形がんを有する日本人患児を対象としたニボルマブの第I相試験で行われたものであった。症例の詳細は、NEJM誌2021年1月7日号で報告されている。