日本語でわかる最新の海外医学論文|page:393

残余因子に対する新たなアプローチ-evinacumabへの期待(解説:平山篤志氏)-1348

LDLコレステロール(LDL-C)低下療法により動脈硬化性疾患(ASCVD)の発症は減少しているが、最大耐用量の各種薬剤を用いてもLDL-Cが低下しない患者群がある。従来のLDL-C低下薬は、主にLDL受容体を介する機序によるものであった。angiopoietin-like 3(ANGPTL3)の遺伝的欠如で、中性脂肪(TG)、LDL-Cが低下していることが明らかになり、高脂血症マウスでANGPTL3が過剰産生されていることから、新たな治療ターゲットとしてANGPTL3が注目されるようになった。ANGPTL3はlipoprotein lipase(LPL)活性を阻害することでTGが上昇するが、LDL-Cへの作用は明らかではない。

春は他人の「くしゃみ」が気になる季節/ノバルティスファーマ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収束をみせない中で迎える花粉症の季節。花粉症の患者さんは、くしゃみや目のかゆみ、鼻水などの諸症状で、マスクを外したり、顔を不用意に触れる機会が増えそうだ。  万が一、COVID-19の感染者であった場合、周囲に感染させる恐れとなる「くしゃみ」について、ノバルティスファーマ株式会社は、「新型コロナウイルス感染症流行下における、くしゃみに対する意識・実態調査」と題し、アンケート調査を行い、その結果を発表した。  今回の調査では、人のくしゃみに対する意識や、自分自身のくしゃみに対する意識と対策について探った。

日本人双極性障害患者とうつ病患者の認知機能の比較

 国立精神・神経医療研究センターの松尾 淳子氏らは、双極性障害(BD)患者における病期別の認知機能を調査し、うつ病患者や健康対照者の認知機能との比較を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年12月27日号の報告。  BD患者139例(寛解期:55例、非寛解期:84例)、うつ病患者311例(寛解期:88例、非寛解期:223例)、健康対照者386例を対象に、ウェクスラー成人知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale-RevisedまたはWAIS-III)を実施した。対象は、日本人の非高齢者で通常推定病前知能指数(IQ)が90超であり、年齢、性別、病前IQは、グループ間で一致していた。

2型糖尿病の寛解に低炭水化物食は有効か?/BMJ

 低炭水化物食を6ヵ月間継続した2型糖尿病患者は、有害事象なく糖尿病が改善する可能性があることを、米国・テキサスA&M大学のJoshua Z. Goldenberg氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析により明らかにした。これまでのシステマティックレビューでは、低炭水化物食の定義が広く(総カロリーの45%未満)、糖尿病の寛解について評価されていなかった。ただし、今回の結果に関するエビデンスの質は低~中であり、著者は「何を糖尿病の寛解とするか、また、長期にわたる低炭水化物食の有効性、安全性および食生活の満足度について、さらなる議論が必要である」との見解を示している。BMJ誌2021年1月13日号掲載の報告。

elective PCIの抗血小板療法としてクロピドグレルとチカグレロルに差はない?(解説:上田恭敬氏)-1346

安定冠動脈疾患患者のelective PCIにおいて、周術期の虚血性合併症を減少させるために、クロピドグレルよりもチカグレロルのほうが優れているか否かを検討するための無作為化比較試験であるALPHEUS試験が、フランスとチェコの49病院が参加して実施された。対象患者はクロピドグレル群(ローディング量300~600mg、維持量75mg/日)とチカグレロル群(ローディング量180mg、維持量180mg/日)に無作為に割り付けられ、48時間以内(または退院まで)のPCI-related type 4の心筋梗塞・傷害を主要評価項目とし、同じく48時間以内(または退院まで)の出血性イベント(major bleeding)を主要安全性評価項目としている。

花粉症シーズンで新型コロナの思わぬ流行が!?これを解決するには

 いよいよ花粉症シーズンに突入する。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下で類似症状を示す花粉症の見極めは非常に難しいが、医療者が留意しておくべきことは何だろうかー。この状況に先駆け、花粉症治療の第一人者である大久保 公裕氏(日本医科大学大学院医学系研究科頭頸部感覚器科学分野 教授)と、日本感染症学会理事長で政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバーでもある舘田 一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座 教授)による意見交換会が2020年10月に実施された(主催:ノバルティス)。

Modernaの新型コロナワクチン、400万人でのアレルギー反応/CDC

 米国で2020年12月21日~2021年1月10日に初回投与されたModernaのCOVID-19ワクチン接種404万1,396回で、10例(2.5例/100万回)にアナフィラキシーが発現し、9例は15分以内、1例は45分後に発現したことを、米国疾病予防管理センター(CDC)が2021年1月22日に発表した。  米国では2021年1月10日の時点で、ModernaのCOVID-19ワクチンの1回目の投与が404万1,396人(女性246万5,411人、男性145万966人、性別不明12万5,019人)に実施され、1,266例(0.03%)に有害事象が報告された。そのうち、アナフィラキシーを含む重度のアレルギー反応の可能性がある108例を調査した。これらのうち10例(2.5例/100万回)がアナフィラキシーと判断され、うち9例はアレルギーまたはアレルギー反応の既往(薬剤6例、造影剤2例、食物1例)があり、そのうち5例はアナフィラキシーの既往があった。

アベマシクリブ+内分泌療法、高齢乳がん患者での有効性と安全性(MONARCH-2、-3)

 ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんに対する、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、第III相MONARCH-2試験(フルベストラント)およびMONARCH-3試験(アナストロゾールまたはレトロゾール)で有効性が示されている。米国・メイヨー・クリニックのMatthew P Goetz氏らは、両試験の年齢別サブグループ解析を実施。高齢患者における有効性と安全性について、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月3日号で報告した。  MONARCH-2および-3試験における探索的解析が、3つの年齢グループ(<65歳、65~74歳、および≧75歳)に対して行われた。安全性については両試験からのプールデータが用いられ、有効性についてはPFSのサブグループ解析を各試験データでそれぞれ実施した。

日本における認知症への呼称変更による家族の感情変化への影響

 認知症に対する差別やスティグマを減らすことは、国際的な問題である。日本では、2004年に「痴呆」から神経認知障害に近い「認知症」へ呼称変更を行った。筑波大学の山中 克夫氏らは、認知症患者の家族の観点から、現在の用語がうまく機能しているかを横断的に調査し、感情に影響を及ぼす因子(認知症患者の周囲の人の気持ち、家族や患者の属性)を見つけるため、検討を行った。Brain and Behavior誌オンライン版2020年12月21日号の報告。  3つの病院を受診した認知症患者に同行するその家族155人を対象に、認知症の呼称と患者の周囲の人の気持ちについて調査を行った。認知症の呼称に対する不快感の程度を分析した。探索的因子分析より抽出した感情の構成概念と属性との関係を分析するため、構造方程式モデリングを用いた。

吸入treprostinil、間質性肺疾患による肺高血圧症の運動耐容能を改善/NEJM

 間質性肺疾患による肺高血圧症患者の治療において、treprostinil吸入薬はプラセボと比較して、6分間歩行試験で評価した運動耐容能のベースラインからの改善効果が高いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAaron Waxman氏らが行った「INCREASE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年1月13日号に掲載された。肺高血圧症は、間質性肺疾患患者の最大86%で報告されており、運動耐容能の低下や酸素補給の必要性の増大、早期死亡と関連するが、間質性肺疾患患者における肺高血圧症の治療は確立されていないという。treprostinilは、プロスタサイクリンの安定的なアナログであり、肺や全身動脈の血管床の拡張を直接的に促進し、血小板の凝集を阻害する。treprostinil吸入薬は、12週の治療により第1群肺高血圧症患者の運動耐容能を改善すると報告されている。

超高齢者でもLDLコレステロール上昇は心筋梗塞、動脈硬化性疾患のリスクである(解説:平山篤志氏)-1347

LDLコレステロール(LDL-C)と動脈硬化性疾患の関連は、多くの疫学研究や大規模臨床試験で明らかにされてきた。しかし、75歳までのデータが多く、75歳以上さらに80歳以上の高齢者のデータはほぼなかった。本論文のCopenhagen General Population Study(CGPS)では動脈硬化性疾患の既往のない健康人を追跡した結果、高齢になればなるほど、心筋梗塞および動脈硬化性疾患(心筋梗塞、致死的冠動脈疾患、非致死的、致死的脳梗塞)の発生頻度が増加しかつ、LDL-C値が高くなればなるほど増加している。LDL-C 1mmol/L(ほぼ38.5mg/dL)の上昇の心血管イベント発生率に及ぼす影響は高齢になるほど大きかった。これまでは、疫学調査でも高齢者のfollow-upが十分でない、期間が短いなどの限界があったが、この研究ではほぼ100%の追跡ができている点、80~100歳が3,188人(全体の3%)、70~79歳が1万591人(全体の12%)と多数例が追跡されている点で実態を正確に反映していると考えられる。この対象にmoderate-intensity statinを使用することで、LDL-C 1mmol/Lを低下することで、5年間の心筋梗塞予防のNNTが80歳以上では80、70~79歳では145と他の年齢に比較して効果があると結論付けている。これはあくまで、これまでの介入試験でのLDL-C低下効果の結果からの類推であり、1次予防効果のエビデンスではないことに留意が必要である。ただ、わが国のエゼチミブを用いた75歳以上の高齢者を対象にしたEWTOPIA75試験でもLDL-C低下によるイベント抑制効果が示されている。超高齢化社会に突入したわが国で、高齢者、とくに超高齢者はポリファーマシー、フレイルなど多くの問題を抱えている。脂質低下療法は2次予防では、論をまたないであろうが、1次予防において積極的介入をすべきかどうかは今後明らかにする必要がある。

ALK陽性肺がん1次2次治療にブリグチニブ国内承認/武田薬品

 武田薬品工業は、2021年1月22日、ブリグチニブ(商品名:アルンブリグ)について、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌を適応とする1次および2次以降の治療薬として、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表。  今回の承認は主に、ALKチロシンキナーゼ阻害薬治療後に増悪したALK融合遺伝子陽性(ALK陽性)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)患者72例を対象とした国内臨床第II相試験であるBrigatinib-2001 (J-ALTA)およびALKチロシンキナーゼ阻害薬による治療歴のないALK陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者を対象とした海外臨床第III相試験であるAP26113-13-301(ALTA-1L)の結果に基づくもの。

非小細胞肺がん、ニボルマブ+イピリムマブ+2サイクル化学療法の1次治療の成績(CheckMate 9LA)/Lancet Oncol

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療において、ニボルマブとイピリムマブにさらに2サイクル限定の化学療法を追加することで臨床的利益がさらに高まることが先の国際学会で示されているが、その第III相試験CheckMate 9LA試験の結果が、Lancet Oncology誌に掲載された。  同試験は19ヵ国103施設で実施された。適格患者は18歳以上の未治療のStageIVまたは再発のNSCLC、ECOG PSは0〜1であった。患者はニボルマブ(360mg 3週間ごと)+イピリムマブ(1mg/kg 6週間ごと)+組織型別化学療法2サイクル(3週ごと2サイクル)群(以下、NIVO+IPI+Chemo群)と組織型別化学療法(3週ごと4サイクル)群(以下、Chemo群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、全無作為割付患者の全生存期間(OS)であった。

片頭痛に対する抗CGRP抗体ガルカネズマブの有効性~メタ解析

 片頭痛は、頭痛のいくつかのエピソードによりみられる神経学的症候群である。片頭痛の病態生理においてカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、重要な役割を果たしているといわれている。ガルカネズマブは、CGRPに特異的に結合し、CGRPの受容体への結合を阻害するモノクローナル抗体である。サウジアラビア・Alfaisal UniversityのAhmed Abu-Zaid氏らは、片頭痛のマネジメントに対するガルカネズマブ(120mgまたは240mg)の有効性を評価したすべてのランダム化プラセボ対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Cureus誌2020年11月22日号の報告。

退院1ヵ月後の統合失調症患者の健康状態に影響を及ぼす要因

 統合失調症を含む精神疾患患者の健康状態を良好に保つためには、退院から地域や家庭へなじむまでの期間が重要となる。タイ・マヒドン大学のAnantree Smithnaraseth氏らは、健康状態に影響を及ぼす患者および病院の要因を調査し、退院後30日間でどのような影響が認められるかを検討した。BMC Psychiatry誌2020年12月14日号の報告。  対象は、統合失調症患者1,255例およびタイの公立精神科病院13施設の主介護者。退院後30日間における患者および病院の要因が患者の健康状態に及ぼす影響を調査するため、ロジスティック回帰、マルチレベルロジスティック回帰を用いた。

新型コロナ、5割以上が無症状者から感染/CDC

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に、どのくらい無症状の感染者が関与しているのだろうか。米国疾病管理予防センター(CDC)のMichael A. Johansson氏らが、無症状の感染者からの感染割合について決定分析モデルを用いて検討した結果、全感染の半分以上を占めることが示唆された。JAMA Network Open誌2021年1月7日号に掲載。  CDCではこの決定分析モデルを用いて、症状が発現しないままの人からの感染割合と感染期間を変化させた複数のシナリオについて、症状発現前の人、症状が発現しないままの人、症状のある人からの感染の相対量を検討した。すべての推定において、潜伏期間はメタ解析のデータより中央値を5日間として設定した。感染期間は10日間とし、感染のピークは3〜7日で変化させた(潜伏期間中央値の-2〜+2日)。全体的なSARS-CoV-2の割合は、可能な割合で幅広く評価するために0~70%で変化させた。主要アウトカムは、症状発現前の人、症状が発現しないままの人、症状のある人からのSARS-CoV-2の感染とした。

急性虫垂炎、経口抗菌薬単独での効果は?/JAMA

 合併症のない急性虫垂炎の成人患者において、7日間の経口モキシフロキサシンによる治療(経口抗菌薬単独治療)と、2日間のertapenem静脈内投与を行い、続いて5日間のレボフロキサシンおよびメトロニダゾールを投与する治療(抗菌薬静脈内投与-経口治療)を比較した結果、両群の治療成功率はともに65%を超え、治療成功に関する経口抗菌薬単独治療の抗菌薬静脈内投与-経口治療に対する非劣性は示されなかった。フィンランド・トゥルク大学のSuvi Sippola氏らが、同国内9病院を対象に行った多施設共同非盲検無作為化非劣性試験「APPAC II試験」の結果を報告した。抗菌薬は、合併症のない急性虫垂炎の治療において手術に代わる効果的で安全な治療となっている。しかし、至適な抗菌薬レジメンは不明であった。JAMA誌オンライン版2021年1月11日号掲載の報告。

J&Jの新型コロナワクチン、 安全性と免疫原性を確認/NEJM

 開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規ワクチン候補Ad26.COV2.Sは、18~55歳および65歳以上のいずれの集団においても、良好な安全性と免疫原性プロファイルを示すことが、オランダ・Janssen Vaccines and PreventionのJerald Sadoff氏らが行ったCOV1001試験の中間解析で明らかとなった。これらの知見は、このワクチンのさらなる開発の継続を支持するものだという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年1月13日号に掲載された。Ad26.COV2.Sは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の完全長・安定化スパイク(S)蛋白質をコードする遺伝子組み換え非増殖型アデノウイルス血清型26(Ad26)ベクターで、武漢株の最初の臨床分離株に由来する。Ad26ベクターは、欧州医薬品庁(EMA)の承認を受けたエボラワクチンや、RSウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ジカウイルスのワクチン候補として使用されており、Ad26ベクターをベースとするワクチンは一般に安全で、免疫原性が高いとされる。

ミオシン活性化薬は駆出率の低下した心不全の予後を若干改善する(解説:佐田政隆氏)-1344

omecamtiv mecarbilは2011年にScience誌に動物実験の結果が発表されたミオシン活性化薬である。心筋ミオシンに選択的に結合して、ミオシン頭部とアクチン間のATPを消費して生じる滑走力を強め、強心効果が示されている。平滑筋や骨格筋のミオシンには作用しないという。今までの臨床試験でも、短期間の観察で心機能を改善することが示されており、新しい機序の心不全治療薬として期待されていた。そのomecamtiv mecarbilに関する二重盲検の第III相試験の結果である。昨年、米国心臓協会学術集会で発表され、同時にNew England Journal of Medicine誌に公開された。

新規作用機序で片頭痛発作の発症を抑制するエムガルティが承認/日本リリー・第一三共

 ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤「エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター、皮下注120mgシリンジ」(一般名:ガルカネズマブ(遺伝子組換え))について、2021年1月22日、「片頭痛発作の発症抑制」の効能又は効果で、国内製造販売承認を取得したことを日本イーライリリーと第一三共が発表した。  本剤はイーライリリー・アンド・カンパニーにより創製されたヒト化抗CGRPモノクローナル抗体で、新規作用機序を持つ片頭痛発作の発症を抑制する薬剤として開発された。