日本語でわかる最新の海外医学論文|page:350

乾癬患者の肥満・糖尿病、生物学的製剤治療への影響は?

 乾癬の生物学的製剤による治療に、肥満症や糖尿病既往は、どの程度の影響を与えるのか。米国・Eastern Virginia Medical SchoolのClinton W. Enos氏らによる検討で、肥満は、PASI75およびPASI90の達成率を25~30%減少することなどが示された。乾癬は併存する全身性代謝疾患との関連が指摘されるが、結果を踏まえて著者は、「生物学的製剤の治療反応の達成率を改善するためにも、併存疾患負荷のアセスメントが重要である」と述べている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年7月10日号掲載の報告。

原発性不眠症に対する運動介入の効果~メタ解析

 運動は、身体機能や免疫力に良い影響をもたらす可能性がある。中国・四川大学のShanshan Li氏らは、原発性不眠症患者に対する運動介入の効果をシステマティックに評価し、メタ解析に基づいて、原発性不眠症患者の睡眠の質を改善するうえで役立つ運動の推奨事項を作成した。The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness誌2021年6月号の報告。  2019年10月までに公表された原発性不眠症に対する運動介入の影響を調査したランダム化比較試験をCNKI、VIP、Wanfang、Web of Science、SpringerLink、EBSCO、PubMed、Cochrane Library、Embaseより手動および電子的に検索した。バイアスリスクの評価にはCochrane Handbook 5.1.0、メタ解析にはSTATA 13.0(StataCorp LLC[米国・テキサス州カレッジステーション])を用いた。

ワクチン接種後の感染例、疫学的・ウイルス学的特徴は?/感染研

 日本国内で確認されたワクチン接種後の感染例130例について、積極的疫学調査が実施され、2回目のワクチン接種後14日以降が経過した症例でも、一部で感染性のあるウイルスが気道検体中に検出された。7月21日開催の第44回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで、国立感染症研究所感染病理部の鈴木 忠樹氏が、「新型コロナワクチン接種後に新型コロナウイルス感染症と診断された症例に関する積極的疫学調査(第一報)」について報告した。  本調査の主な目的は、1)ワクチン接種後感染の実態把握、2)ワクチンにより選択された(可能性のある)変異株の検出、3)ワクチン接種後感染者間でのクラスターの探知であり、今回の報告は2021年6月30日時点における疫学的・ウイルス学的特徴の暫定的なまとめと位置付けられている。

認知症関連精神症状、pimavanserinで再発リスク低下/NEJM

 治療中止試験において、経口5-HT2A受容体逆作動薬/拮抗薬pimavanserinへの効果が認められた認知症に関連する精神症状を呈する患者について、治療中止群と比べて継続群の再発リスクが低下したことが示された。米国・アリゾナ大学のPierre N. Tariot氏らによる「HARMONY試験」の結果で、著者は「認知症関連精神症状におけるpimavanserinの有効性を確認するため、長期・大規模の試験を行うことが必要である」とまとめている。神経変性疾患に起因する認知症患者は、認知症関連精神症状を有する可能性がある。認知症のさまざまな要因に関連する精神症状への、pimavanserinの有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌2021年7月22日号掲載の報告。

新型コロナワクチン、デルタ株への有効性は?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンであるBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)またはChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の2回接種後の有効性は、アルファ株とデルタ株で大きな差は認められなかった。ただし、初回接種後の両株に対するワクチンの有効性には顕著な差がみられ、デルタ株で低かった。英国・公衆衛生局のJamie Lopez Bernal氏らによる、診断陰性例コントロール試験の結果で、著者は結果を踏まえて、「したがって、脆弱な集団では2回のワクチン接種を最大化するよう努力する必要がある」と述べている。COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のB.1.617.2変異株(デルタ株)はインドでの感染者急増の一因で、現在、感染者の増加が顕著なイギリスを含め世界中で検出されている。この変異株に対するBNT162b2およびChAdOx1 nCoV-19ワクチンの有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2021年7月21日号掲載の報告。

中和抗体薬などについて追加、COVID-19診療の手引き/厚生労働省

 7月30日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.2版」を公開した。  今回の改訂では、以下の4点が追記・修正された。 ・「1 病原体・疫学」の「海外発生状況」の更新 ・「2 臨床像」の「合併症」に、心筋炎・心膜炎、真菌感染症について追記 ・「4 重症度分類とマネジメント」で「中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブ」を追記 ・「5 薬物療法」で「各種薬剤の項目」を一部追記  また、さかのぼること7月26日に同省は、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(3.3版)」を改訂し、公開した。

片頭痛の予防治療に関するレビュー

 米国・ハーバード大学医学大学院のRebecca Burch氏は、片頭痛の予防的治療の開始時期と選択方法、薬理学的オプション(従来からある経口剤治療およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド[CGRP]またはその受容体に対する新規モノクローナル抗体)、神経調節などの非薬理学的治療、難治性片頭痛の予防的治療などの片頭痛に対する介入について、レビューを行った。Continuum誌2021年6月1日号の報告。  主なレビューは以下のとおり。 ・片頭痛の予防的治療は、CGRPまたはその受容体を標的としたモノクローナル抗体が開発されたことにより変化した。 ・これらの治療法は、毎月または四半期ごとに皮下または静脈内投与することにより、高い有効性と良好な忍容性が臨床試験で確認された。 ・リアルワールドでの研究において、有害事象は、臨床試験よりも高率で認められた。 ・従来からある2つの予防的治療で効果不十分な場合、CGRPまたはその受容体を標的としたモノクローナル抗体の使用が推奨されている。 ・一般的に引用される米国頭痛学会、米国神経学会の頭痛予防ガイドライン2012が発表されて以来、リシノプリル、カンデサルタン、メマンチンの予防的使用を支持する臨床試験が報告されている。 ・外部三叉神経刺激法および単発経頭蓋磁気刺激法を含む神経調節デバイスによる予防的使用を支持するいくつかのエビデンスが報告されている。 ・片頭痛の予防的治療に関する米国頭痛学会、米国神経学会の頭痛予防ガイドラインは、現在アップデートされている。 ・新クラスの経口CGRP受容体アンタゴニスト(gepant)が、片頭痛の予防的治療に対し試験されている。

統合失調症に対する抗精神病薬の長期継続性

 統合失調症の治療では、抗精神病薬の長期投与が必要となることが少なくない。米国・ザッカーヒルサイド病院のJose M. Rubio氏らは、統合失調症治療における抗精神病薬の継続性、治療中断に関連する因子について、調査を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2021年6月15日号の報告。  フィンランドの初回エピソード精神疾患患者を対象とした全国コホートを最長18年間フォローアップした。初回治療との比較および本コホートで最も使用頻度の高かったオランザピンと比較した特定の抗精神病薬についての治療中止リスクを評価するため、層別Cox比例ハザード回帰を用いた。調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

がん化療中の副作用、遠隔モニタリングで症状負荷減少/BMJ

 Advanced Symptom Management System(ASyMS)を用いたがん治療中の遠隔モニタリングにより、症状の負担が有意に減少することが示された。英国・ストラスクライド大学のRoma Maguire氏が、オーストリア、ギリシャ、ノルウェー、アイルランドおよび英国のがんセンター12施設で実施した無作為化評価者盲検比較試験「eSMART試験」の結果を報告した。ASyMSは、携帯電話を用い化学療法の毒性を24時間体制でリアルタイムにモニタリングし管理するシステムである。著者は、「効果量は“中(medium)”(Cohen's d=0.5)であったことから、ASyMSは臨床的に有効と考えられる。遠隔モニタリングシステムは、将来の医療サービス、とくにCOVID-19のパンデミックで生じる混合医療提供モデルには不可欠である」とまとめている。BMJ誌2021年7月21日号掲載の報告。

8月に都内1万人超も、爆発的拡大への緊急声明/日医

 29日、国内の新型コロナ新規感染者数は初めて1万人を超え、病床逼迫が現実に発生しつつある。日本医師会は、これを踏まえ、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会の各団体と共に、「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」を取りまとめた。  東京都の新規陽性者数は、7月25日1,763人、26日1,429人、27日2,848人、28日3,177人、29日3,865人と、1週間比1.5以上で推移しており、厚労省アドバイザリーボードが28日に出した感染予測では、このまま1週間比1.4以上が続けば、8月中にも新規陽性者数は東京都だけで1万人を超えるとされている。

認知症やMCIに対する運動介入の有効性比較~メタ解析

 運動は、認知機能低下に対し有用な非薬理学的介入の1つであるが、どのような運動が最も効果的であるかはよくわかっていない。中国・北京大学のXiuxiu Huang氏らは、認知症または軽度認知障害(MCI)の患者における認知機能に対するさまざまな運動介入の有効性を比較し、認知機能低下に関連する症状に対する運動の影響を調査した。Journal of Sport and Health Science誌オンライン版2021年5月16日号の報告。  2019年9月までに公表された認知症またはMCIの患者を対象に運動介入の有効性を調査したランダム化比較試験をPubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、SPORTDiscus、PsycInfoより検索した。主要アウトカムは、全般的な認知機能、実行機能、記憶とした。副次的アウトカムは、ADL、神経精神症状、QOLとした。変量効果モデルを用いてペアワイズ解析とネットワークメタ解析を実施した。

HSCT患者、ワクチン2回目接種後に高い免疫応答示す

 造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者のCOVID-19感染症の予後は不良であるとの報告がある。318例のHSCT患者(同種造血幹細胞移植184例、自家造血幹細胞移植134例)を対象とした大規模多施設試験におけるCOVID-19感染診断後30日時点での全生存率は、同種造血幹細胞移植68%(95%CI:58~77)、自家造血幹細胞移植67%(55~78)と厳しい結果だった。免疫不全患者はmRNAワクチンの初期の治験からから除外されていたため、この集団におけるワクチンの有効性を評価する必要がある。Lancet誌2021年7月24日号CORRESPONDENCEに掲載。

カナキヌマブ、重症COVID-19入院患者の生存を改善せず/JAMA

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者の治療において、抗インターロイキン(IL)-1β抗体カナキヌマブはプラセボと比較して、29日の時点での侵襲的機械換気(IMV)を要さない生存の可能性を向上させず、COVID-19関連死を抑制しないことが、米国・テンプル大学のRoberto Caricchio氏らが実施した「CAN-COVID試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年7月20日号で報告された。  本研究は、重症COVID-19入院患者の治療におけるカナキヌマブの有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年4月30日~8月17日の期間に、欧州と米国の39施設で参加者の登録が行われた(スイス・Novartis Pharma AGの助成による)。

がん治療の中心静脈アクセスデバイス、完全埋め込み型ポートが有用/Lancet

 固形腫瘍または血液腫瘍患者の全身性抗がん薬治療(SACT)に使用する中心静脈アクセスデバイス(CVAD)では、完全埋め込み型ポート(PORT)はHickmanトンネル型中心静脈カテーテル(Hickman)や末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)と比較して、合併症の頻度がほぼ半減し、QOLや費用対効果も比較的良好である可能性があることが、英国・グラスゴー大学のJonathan G. Moss氏らが実施した「CAVA試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年7月20日号に掲載された。  研究グループは、悪性腫瘍患者に対するSACTに用いる3つのCVADについて、合併症の発生率や費用、QOLを比較し、受容性、臨床的有効性、費用対効果を評価する目的で、非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成による)。本試験では、2013年11月~2018年2月の期間に、英国の18の腫瘍科病棟で参加者が募集された。

【8月6日まで】ヘルスケアベンチャー大賞への参加者募集

 日本抗加齢協会と日本抗加齢医学会は、今秋もヘルスケアベンチャー大賞を開催する。今年で3回目を迎える同大賞は『アンチエイジングからイノベーションを!』をテーマに掲げ、アンチエイジングに資するヘルスケア分野のビジネスプランやアイデアを募集しており、7月26日までだった募集期間を8月6日に延長した。  ベンチャー企業はもちろんのこと、起業準備中の個人や企業との連携を求める個人なども応募が可能。1次審査にてファイナリスト8名(社)を選出し、10月の最終審査で受賞者が決定する。大賞・学会賞受賞者は賞金授与だけではなく、来年6月に開催予定の第22回日本抗加齢医学会総会での発表機会も与えられる。

ファイザー社コロナワクチン、3回接種で「デルタ株」抗体が大幅増強/ファイザー

 米国・ファイザー社は、7月28日に発表した第2四半期決算報告会議で、同社の新型コロナワクチンについて、3回接種により、デルタ変異株に対する中和抗体価が大幅に増強されることを示した研究データを公表した。同社は、現在推奨されている2回接種後6〜12ヵ月以内に3回目のブースター接種が必要になる可能性が高いと説明しており、8月中にも米食品医薬品局(FDA)に対し、追加接種の緊急使用許可の承認申請を行う方針だ。  ファイザー社が明らかにした研究データは、ごく少人数のコホート(18~55歳:11例、65~85歳:12例)ながら、3回目のブースター接種を受けることで、「デルタ株」への中和抗体価が2回接種と比べ、18~55歳では5倍以上、65~85歳では11倍以上に高まっていることを示した。同社では、2回接種から8ヵ月後には抗体レベルがピークアウトするため、2回目接種から6〜12ヵ月以内に3回目のブースター接種が必要になる可能性が高いとの見立てだ。本研究では、2回目接種から6ヵ月以上経過した後、保護効果が減弱し始めているときに3回目を接種することで、中和抗体価を最大100倍にまで高める可能性が推定されるとしている。

片頭痛へのフレマネズマブ、日本人対象の試験結果からみえる特徴は

 「片頭痛発作の発症抑制」を適応として、抗CGRPモノクローナル抗体薬フレマネズマブ(商品名:アジョビ)が6月23日に製造販売承認を取得した。7月12日にオンラインメディアセミナーが開催され(主催:大塚製薬)、寺山 靖夫氏(湘南慶育病院副院長・脳神経センター長)、坂井 文彦氏(埼玉精神神経センター・埼玉国際頭痛センター長)が登壇。同薬の片頭痛治療における位置づけと臨床試験結果について講演した。

不眠症とメタボリックシンドロームリスク~メタ解析

 不眠症と高血圧、高血糖、脂質異常症、肥満などのメタボリックシンドロームリスクとの関連を調査するため、中国・Third Military Medical UniversityのYuanfeng Zhang氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Clinical Neuroscience誌2021年7月号の報告。  PRISMAガイドラインに従ってメタ解析を実施した。PubMedおよびEmbaseより、不眠症とメタボリックシンドロームリスクとの関連を調査した2020年12月1日までに公表された観察研究を検索した。各研究のリスク推定値を集計し、プールされたデータのオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、ランダム効果モデルを用いた。研究の不均一性は、I2統計量を用いて評価した。

前立腺がんスクリーニング、MRI標的生検で過剰診断が低下/NEJM

 MRIで前立腺がんが示唆された男性に対するMRI標的生検は、標準生検に対して、臨床的に意義のある前立腺がんの検出に関して非劣性であることが、住民ベースの無作為化非劣性試験で明らかとなった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMartin Eklund氏らが結果を報告した。前立腺がんスクリーニングでは、過剰診断率の高さが大きな障壁となっている。MRI標的生検はこの課題を解決できる可能性が示唆されていたが、前立腺がんスクリーニングにおけるMRI標的生検の意義は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年7月9日号掲載の報告。

COVID-19入院患者、60歳未満も男性では約半数で合併症/Lancet

 COVID-19入院患者は、若年者や既往歴がない患者も含めて院内合併症の発生率が高く、神経学的合併症は退院時のセルフケア能力の低下と関連していた。英国・エディンバラ大学のThomas M. Drake氏らが、COVID-19の合併症の程度や影響を明らかにする目的で、英国の医療機関302施設にて実施した多施設共同前向きコホート研究の結果を報告した。COVID-19は多臓器疾患で、生存患者は院内合併症を発症する可能性があるとされる。著者は、「COVID-19の合併症は、今後数年間、医療および社会的サポートにおいて大きな負担となる可能性がある。今回のデータは、COVID-19による入院患者の退院後のケアを目的としたサービスの設計や提供に役立つだろう」とまとめている。Lancet誌2021年7月17日号掲載の報告。