日本語でわかる最新の海外医学論文|page:349

若年発症2型DM、青年期の各合併症の発症率は?/NEJM

 若年発症の2型糖尿病患者では、細小血管合併症などの合併症のリスクが経時的に着実に増加し、多くの患者が若年成人に達するまでに何らかの合併症を発症していることが、米国・コロラド大学のPetter Bjornstad氏らTODAY試験グループが実施した「TODAY2追跡試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年7月29日号に掲載された。米国では、若年者における2型糖尿病の有病率は増加を続けているが、青年から成人への移行期における関連合併症の発生状況はほとんど知られていないという。

ブレークスルー感染も、ワクチンが変異株の重症化を抑制か/CDC

 新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株は感染性が高く、このほど米国でワクチン接種完了者によるブレークスルー感染が報告された。しかし、この報告からワクチンの効果がないと言えるのだろうかー。  CDC COVID-19 Response TeamのCatherine M. Brown氏らによると、マサチューセッツ州バーンスタブル群で発生した大規模クラスターの74%はファイザー製ワクチン接種完了者であったことが明らかになった。ただし、入院患者の割合は1.2%と、ワクチンが普及する前の既存株による重症化率と比較すると少ない傾向であることも示された。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)8月6日号での報告。

認知症に対するロボットケア介入の有効性~メタ解析

 認知症ケアへの利用に期待が高まるロボット介入。認知症に対するロボット介入の研究は進んでいるものの、その効果はどの程度なのだろうか。台湾・高雄医学大学のIta Daryanti Saragih氏らは、認知症患者におけるロボット介入の有効性を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Clinical Nursing誌オンライン版2021年5月26日号の報告。  各種データベース(Academic Search Complete、CINAHL、Cochrane Library、MEDLINE、PubMed、SocINDEX、UpToDate[OVID]、Web of Science)よりシステマティックに検索した。適格基準は、認知症患者、ランダム化比較試験、英語での出版とした。対象研究の方法論的質を評価するため、PEDroスケールを用いた。ロボット介入のプールされた効果を算出するため、固定効果モデルを用いて、メタ解析を実施した。統計分析には、STATA 16.0を用いた。PRISMAガイドラインに従って結果報告を行った。

ペムブロリズマブ併用、PD-L1陽性進行TN乳がんでOS改善/MSD

 MSDは2021年7月27日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者を対象として抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法との併用療法を評価する第III相KEYNOTE-355試験において、全生存期間(OS)の改善が認められたことを発表した。  同試験の最終解析の結果、PD-L1陽性(CPS≧10)のmTNBC患者に対する一次治療として、ペムブロリズマブと化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチン)との併用療法は、化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるOSの改善が認められた。なお、米国ではFDAが承認した検査で腫瘍にPD-L1の発現が認められる(CPS≧10)切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がんを適応症として、化学療法との併用療法が承認されている。今回のOSの結果は今後主要な学会で発表され、規制当局に提出される予定。

第2世代抗精神病薬による体重増加と治療中断

 第2世代抗精神病薬(SGA)で治療を行った統合失調症および双極I型障害患者における臨床的に有意な体重増加や治療中断は、死亡リスクに影響を及ぼす可能性のある重大な問題である。米国・AlkermesのMichael J. Doane氏らは、第2世代抗精神病薬による体重増加と治療中断への影響について評価を行った。CNS Spectrums誌2021年4月号の報告。  中~高度の体重増加リスクを有する経口SGAで治療を開始した患者(12ヵ月間、第1世代抗精神病薬での治療なし)を対象に、レセプトデータ(OM1 Data Cloud:2013年1月~2020年2月)を用いて、体重増加および治療中断に関するデータを収集した。臨床的に有意な体重増加は、ベースライン時の体重より7%以上増加と定義した。治療中断は、体重増加リスクの低いSGAや長時間作用型注射剤SGAへ切り替えた場合および30日以上SGAが使用されていなかった場合と定義した。臨床的に有意な体重増加と治療中断が認められた患者の割合およびこれらのアウトカムまでの期間中央値の算出には、記述統計を用いた。

コロナワクチン、1回目でアレルギー出現も2回目接種できる?

 海外では新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチン接種後のアレルギー反応は2%も報告され、アナフィラキシーは1万人あたり最大2.5人に発生している。国内に目を向けると、厚生労働省の最新情報によれば、アナフィラキシー報告はファイザー製で289件(100万回接種あたり7件)、モデルナ製で1件(100万回接種あたり1.0件)と非常に稀ではあるが、初回投与後に反応があった場合に2回目の接種をどうするかは、まだまだ議論の余地がある。  今回、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのMatthew S Krantz氏らは、ファイザー製またモデルナ製ワクチンの初回接種時にアナフィラキシーまたは遅発性のアレルギー反応を経験した被接種者において、2回目接種の安全性を検証するため投与耐性について調査を行った。その結果、2回目の接種を受けた患者の20%で軽度の症状が報告されたが、2回目接種を受けたすべての患者が安全に一連のワクチン接種を完了したことを明らかにした。また、必要に応じて将来も新型コロナのmRNAワクチンを使用できることも示唆した。JAMA Network Open誌2021年7月26日号のリサーチレターでの報告。

HFrEFの質改善プログラムの介入効果、通常ケアと差なし/JAMA

 症状を有する左室駆出率40%以下の心不全(HFrEF)で入院した患者において、院内および退院後のさまざまな質の改善を目的とした介入を行っても、通常ケアと比較して、初発の心不全再入院または全死因死亡までの期間、ならびに複合心不全ケアの質スコアの変化に有意差は認められなかった。米国・デューク大学医学部のAdam D. DeVore氏らが5,746例を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果、示された。心不全患者に対するガイドラインに基づく治療の採択にはばらつきがあり、ガイドラインに基づく治療を改善する介入は、目標とする評価基準を一貫して達成できておらず、心不全のケアの質を改善するための取り組みに役立つデータは限られていた。JAMA誌2021年7月27日号掲載の報告。

閉経後乳がん術後内分泌療法の延長、5年vs.2年/NEJM

 術後内分泌療法を5年間受けた閉経後ホルモン受容体陽性乳がん女性において、アロマターゼ阻害薬を5年間延長しても2年間延長と比較して有益性はなく、骨折リスクが増加することが示された。オーストリア・Medical University of ViennaのMichael Gnant氏らが、5年間の術後内分泌療法終了後のアナストロゾールの2年または5年追加の有効性および安全性を比較した第III相臨床試験「Secondary Adjuvant Long-Term Study with Arimidex[anastrozole]:SALSA試験」の結果を報告した。閉経後ホルモン受容体陽性乳がん女性において、アロマターゼ阻害薬による術後内分泌療法の最も有効な治療期間については明らかではなかった。NEJM誌2021年7月29日号掲載の報告。

地域によっては宿泊療養強化が効率的、中等症も医師判断で入院を/日医

 8月2日、政府から感染急増地域における入院の対象を重症者や重症化リスクの高い者に重点化し、それ以外は自宅療養を基本とする方針が示されたことについて、日本医師会の中川 俊男会長は8月4日の定例会見で、入院の判断は医師によって適切に行われるべきであり、宿泊療養を強化するほうが効率的な地域もあるとの見解を示した。  中等症II(呼吸不全あり:SpO2≦93%)はもちろん、中等症I(呼吸不全なし:93%<SpO2<96%)についても、現場の医師が重症化リスクが高いと判断した場合は、入院の対象とすべきとの考えを強調。8月3日に行われた政府との意見交換会においてこの見解を伝え、菅首相および田村厚生労働大臣からは、「重症化する患者さんに必要な医療が提供できることが大変重要であり、医師の判断の元に対応いただきたい」との明確な回答を得ているとした。

新たな薬物療法などを収載、「胃癌治療ガイドライン」が3年ぶりの改訂

 2021年7月下旬、「胃癌治療ガイドライン 第6版」が発行された。胃癌治療ガイドラインとしては前版(2017年11月発行、2018年1月改訂)から3年ぶりの改訂となる。前版で採用された構成(教科書形式による解説+CQ)を踏襲しつつ、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017を参考とした作成方法を採用し、新たな薬剤や治療法の解説・推奨が追加された。  前版からの主な改訂点は以下のとおり。 1)外科・内視鏡治療、化学療法、緩和的治療に関するCQを前版の26項目から32項目に増加(新たに設けられたCQには免疫チェックポイント阻害薬、ゲノム検査に関するものが含まれる)。 2)日本胃癌学会と日本食道学会の実施した前向き研究結果に基づき、cT2-T4の食道胃接合部癌に対する手術アプローチとリンパ節郭清のアルゴリズムを示した。また食道胃接合部癌に関する3つのCQを作成し推奨を示した。 3)腹腔鏡下手術およびロボット支援下手術について、最新の研究状況を踏まえた推奨を示した。 4)切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法のレジメンは、「推奨されるレジメン」、「条件付きで推奨されるレジメン」として、「治療法」の章のアルゴリズムに列記した。治療選択肢は増す一方、個々のレジメントを比較したエビデンスは十分でないため、優先順位は付けず、エビデンスレベルも記載しなかった。 5)免疫チェックポイント阻害薬の最新の研究成果をCQにて解説した。

固形燃料による家庭内大気汚染がうつ病に及ぼす影響

 家庭内大気汚染は、脳卒中や心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺がんなどを引き起こすことが知られており、世界では毎年数百万人が大気汚染に起因する疾患で早期に死亡している。この長期的な家庭内大気汚染がメンタルヘルスに及ぼす影響を検討したエビデンスは限られている。中国・華中科技大学のChenshuang Li氏らは、固形燃料の使用による長期的な家庭内大気汚染とうつ病との関連を調査するため、中国の代表的なフォローアップデータセットを用いて検討を行った。Environmental Pollution誌2021年8月15日号の報告。

ファイザー製とシノバック製ワクチン、中和抗体価に差はあるのか

 中国・シノバック製の新型コロナワクチンの有効性について、ファイザー製やモデルナ製のmRNAワクチンより低いとする報告が多いが、免疫原性に違いはあるのか。今回、香港の医療従事者を対象に、ファイザー製のBNT162b2ワクチンまたはシノバック製の不活化ウイルス(vero細胞)ワクチンを2回接種し中和抗体価を測定したところ、ファイザー製ワクチンのほうが大幅に上昇していた。WHO協力センターである中国・香港大学のWey Wen Lim氏らが、Lancet Microbe誌オンライン版2021年7月16日号で報告した。

コロナのブレークスルー感染、感染前の中和抗体価と関連か/NEJM

 BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)を完全接種した健康な医療従事者1,497例のうち、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)へのブレークスルー感染が認められたのは39例で、いずれの感染者も非感染者に比べて、感染前(SARS-CoV-2検出前1週間以内)の中和抗体価が低いことが、イスラエル・Sheba Medical Center Tel HashomerのMoriah Bergwerk氏らによる検討で示された。また、ブレークスルー感染者のほとんどが軽症か無症状だったが、持続的な症状を呈するという。BNT162b2 mRNAワクチンはSARS-CoV-2に対する高い有効性にもかかわらず、まれなブレークスルー感染が報告されている。研究グループは、これらの感染を特徴付け、ブレークスルーと感染性の相関関係を調べた。NEJM誌オンライン版2021年7月28日号掲載の報告。

グルココルチコイド抵抗性の慢性GVHD、ルキソリチニブが有効/NEJM

 中等度~重度グルココルチコイド抵抗性/依存性の慢性移植片対宿主病(GVHD)に対し、JAK1-JAK2阻害薬ルキソリチニブの24週時点の全奏効割合は49.7%と、従来の治療法の25.6%に比べ有意に高率で、治療成功生存期間の中央値も18.6ヵ月vs.5.7ヵ月と大幅に延長し、症状改善の割合も有意に高率(オッズ比[OR]:2.62)だった。ドイツ・フライブルク大学のRobert Zeiser氏らが、329例を対象に行った第III相非盲検無作為化試験の結果、明らかにされた。安全性については、ルキソリチニブ群で血小板減少と貧血の発現頻度が高率だった。慢性GVHDは同種造血幹細胞移植の主要な合併症で、患者の約50%でグルココルチコイド抵抗性/依存性を示す。これまでに、慢性GVHDの2次治療を評価した第III相無作為化試験の確固たるデータは不足しているが、後ろ向きサーベイで、同患者に対してルキソリチニブが有効である可能性が示されていた。NEJM誌2021年7月15日号掲載の報告。

子宮内膜がんに対するペムブロリズマブ+レンバチニブをFDAが承認/メルク・エーザイ

 メルクとエーザイは、2021年7月22日、治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応なMSI-Highを有さない進行子宮内膜がんに対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬レンバチニブの併用療法の適応について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。  今回の承認は、第III相臨床試験 (KEYNOTE-775 試験/309 試験)の結果に基づいたもの。同試験において、対照薬の化学療法(治験医師選択によるドキソルビシンまたはパクリタキセル)と比較して、同併用療法は全生存期間(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p=0.0001)、無増悪生存期間(HR:0.60、95%CI:0.50-0.72、p<0.0001)共に有意に延長した。さらに奏効率は30%で、対照群の15%に比べ有意な改善を示した。

電カルデータとEDCを連携、治験の負荷軽減と迅速化狙う/NTTデータ・ファイザー・国がん東

 臨床研究において、医療施設データの臨床データ収集システム(EDC:Electronic Data Capture)へのタイムリーな入力は国際的な課題である。NTTデータとファイザーR&Dは、国立がん研究センター東病院と臨床研究における臨床データの収集およびデータ品質点検の効率化に向けた共同研究を2021年7月から開始する。  臨床研究では、新薬等の効果と安全性を検証するためにALCOA(Attributable:帰属性、Legible:判読性、Contemporaneous:同時性、Original:原本性、Accurate:正確性)が担保された臨床データの収集が不可欠である。また、一般的に臨床データは、電子カルテを含む複数の原資料から収集される。

1日6杯以上のコーヒーと認知症リスクが関連

 コーヒーは、中枢神経を刺激するカフェインを含有する世界で人気の飲料である。南オーストラリア大学のKitty Pham氏らは、習慣的なコーヒーの摂取が脳容積の違いや認知症および脳卒中の発症に関連しているかについて検討を行った。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2021年6月24日号の報告。  UK Biobankに参加した39万8,646人(37~73歳)を対象に、習慣的なコーヒーの消費量をプロスペクティブに分析した。MRIの情報は、対象者のうち1万7,702人より得られた。脳容積との関連は、共変量調整線形回帰を用い、認知症(4,333例)および脳卒中(6,181例)のオッズ比(OR)との関連は、ロジスティック回帰を用いて分析した。  主な結果は以下のとおり。

HIV-1の2次治療、NRTI耐性患者でドルテグラビル+NRTI有効/NEJM

 HIV-1感染症の2次治療について、ドルテグラビルと逆転写酵素阻害薬(NRTI)の併用投与は、NRTIの活性が予測されない患者を含む広範なNRTI耐性患者において有効であることが、シンガポール国立大学のNicholas I. Paton氏らによる検討で示された。また、2つのNRTIについて、テノホビルはジドブジンに対して非劣性であることも示された。世界保健機関(WHO)はHIV-1感染症の2次治療について、ドルテグラビルと2つのNRTIとの併用投与を推奨しているが、薬剤耐性によりNRTIの活性が予測されない場合や、NRTIのテノホビルからジドブジンへの切り替え推奨に関するエビデンスは限定的であった。NEJM誌2021年7月22日号掲載の報告。

認知症による幻覚妄想に何を処方するべきか(解説:岡村毅氏)

認知症がある方のサイコーシス(幻覚・妄想)は、本人や介護者にとっては過酷な状況である。本研究は、海外ではパーキンソン病認知症によるサイコーシスに使われているpimavanserinを、アルツハイマー型、前頭側頭型、血管性の認知症によるサイコーシスにも広げる試みだ。この第III相試験で良好な結果が得られたので、将来われわれが手にする可能性も高いと思われる。認知症がある方のサイコーシスに対する医学的な対応はここ数十年で大きく変貌した。かつては抗精神病薬が安易に処方されることが多かった。これらは、強弱はあるがドパミン遮断薬でもあるのだから、パーキンソン症状のリスクが大きく、誤嚥や転倒につながる。さらにレビー小体病やパーキンソン病認知症といった新たなカテゴリーが出現し、このカテゴリーでは当然ながらドパミン遮断薬は禁忌である。

CGPを提供するリキッドバイオプシーを国内で初めて発売/中外製薬

 中外製薬は、固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリング(CGP)を提供するリキッドバイオプシー検査である「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」について、8月1日より保険償還が開始され、21021年8月2日、発売したと発表。あわせてエスアールアエルによる検査の受託も開始される。  FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイルは、血液検体を用いた固形がんに対するCGPと、国内承認済の複数のがん治療薬に対するコンパニオン診断機能を持ったがん遺伝子パネル検査で、本年3月22日に厚生労働省より承認されている。