日本語でわかる最新の海外医学論文|page:269

マイナ保険証への対応、他の医院はどうしてる?/1,000人アンケート

 2022年10月から、マイナンバーカードを健康保険証として利用するシステム「マイナ保険証」が本格導入され、2024年を目処に現行の保険証を廃止するという方針も打ち出された。ケアネットでは10月17日、診療所を経営、勤務する会員医師1,000人を対象に、マイナ保険証への対応についてのアンケートを行った。  「自身はマイナンバーカード取得と保険証機能への連携をしているか」を聞いた設問では、「取得・連携済み」が32.5%、「取得済みでこれから連携予定」が26.2%と合わせて約6割を占めた一方で、「マイナンバーカード自体を未取得」と答えた人も3割近くいた。

レビー小体病の睡眠障害~システマティックレビュー

 レビー小体病(LBD)は、レビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン病型認知症(PDD)の両方を含む疾患である。LBDでは、睡眠の質の低下、日中の過度な眠気(EDS)、急速眼球運動行動障害(RBD)などの睡眠障害が高頻度で認められるにもかかわらず、他の認知症との比較研究は十分に行われていない。英国・ノーザンブリア大学のGreg J. Elder氏らは、LBDの睡眠障害の特性を調査し、睡眠障害に対する治療研究の効果、将来の研究に必要な具体性および方向性を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、LBD患者は、高頻度に睡眠障害を合併しており、主観的な睡眠の質の低下、EDS、RBDなどが他の認知症患者よりも多く、より重度であることを報告した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2022年10月号の報告。

妊娠高血圧症候群、出生児は全死因死亡リスクが26%高い/BMJ

 妊娠高血圧症候群(HDP)、とくに子癇および重症妊娠高血圧腎症の母親から生まれた児は、最長41年間(中央値19.4年)の追跡期間における全死亡、ならびに消化器疾患、周産期に起因する疾患、内分泌・栄養・代謝疾患および心血管疾患による原因別死亡のリスクが高いことが、中国・復旦大学のChen Huang氏らによるデンマークの国民健康登録を用いたコホート研究の結果、示された。HDPは、母体および胎児の発病や死亡の主な原因の1つであるが、母親のHDPが児の出生から青年期以降の長期にわたる死亡に及ぼす影響については明らかになっていなかった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。

ブースター接種後もコロナ重症化リスクが高い人は? /Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの2回接種のみと比較して、初回ブースター接種により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院/死亡(重症COVID-19)のリスクは低下するが、高齢者、複数の疾患あるいは特定の基礎疾患を有する人は、初回ブースター接種完了後でも、重症COVID-19のリスクは高いという。英国・セント・アンドルーズ大学のUtkarsh Agrawal氏らが、前向きコホート研究の結果を報告した。

日本人女性における妊娠中のペットとの暮らしと産後1年までの精神症状~JECS研究

 これまで、ペットとの暮らしとメンタルヘルスとの関連についてさまざまな集団で調査されてきたが、精神症状に対する脆弱性が高まる出産前後の女性を対象とした研究は、あまり行われていなかった。富山大学の松村 健太氏らは、出産前後の女性におけるペットとの暮らしとメンタルヘルスとの関連について、調査を行った。その結果、周産期および産後の母親のメンタルヘルスに対し犬との暮らしは予防的に働き、猫との暮らしはリスク因子になることが示唆された。Social Science & Medicine誌2022年9月号の報告。

小児アトピー性皮膚炎と神経発達に関連はあるか?

 2歳以前にアトピー性皮膚炎(AD)を発症した子供は、6歳時の発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが報告された。Allergology International誌オンライン版2022年9月1日号掲載の報告。  小児におけるADと認知機能障害との関連を報告した研究はほとんどない。韓国・翰林大学校のJu Hee Kim氏らは、小児におけるADと神経発達障害との関連を評価した。  2008~12年に韓国で生まれた239万5,966例の小児を分析した。すべてのデータは、韓国国民健康保険制度のデータベースより用いられた。ADは、生後24ヵ月までに5つ以上の診断を受けたものと定義した。アウトカムは、6歳時の韓国乳幼児発達スクリーニングテストの粗大運動能力、微細運動能力、認知、言語、社会性、セルフケア領域における神経発達障害の疑いであった。陽性対照アウトカムは、注意欠陥多動性障害(ADHD)とした。喘息とアレルギー性鼻炎を調整した順序ロジスティック回帰を用いて関連性を評価した。

内視鏡での大腸がん検診、がんリスクを減らせるか/NEJM

 大腸がんのスクリーニングとして大腸内視鏡検査を勧められた集団は、スクリーニングを受けなかった集団と比較して、10年後の大腸がんによる死亡リスクには大きな差はなかったが、大腸がんの発症リスクが18%低下したことが、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが実施した「NordICC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年10月9日号で報告された。  NordICC試験は、大腸内視鏡によるスクリーニング検査が大腸がんのリスクを改善するかの検証を目的とする実践的な多施設共同無作為化試験であり、2009年6月~2014年6月の期間に、4ヵ国(ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダ)で参加者が募集された(ノルウェー研究評議会[RCN]などの助成を受けた)。この報告では、オランダを除く3ヵ国のデータの解析結果が示された。

HER2低発現乳がんに対するNACの効果/日本癌治療学会

 乳がんのHER2発現は免疫染色法で0~3+に分類され、0、1+、2+で遺伝子増幅がない場合はHER2陰性として治療方針が決定されるが、近年、HER2低発現例は術前化学療法(NAC)の有効性からHER2非発現例とは異なるグループであることが示唆されている。甲南医療センター乳腺外科(前兵庫県立がんセンター)の高尾 信太郎氏は、HER2低発現乳がんとHER2非発現乳がんにおけるNAC施行後の有効性と予後の違いを比較検討し、第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)で発表した。

統合失調症や双極性障害患者における強迫症状の有症率

 強迫症状(OCS)は、精神疾患患者において高頻度でみられる症状であるにもかかわらず、認識および治療が不十分である。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDeborah Ahn Robins氏らは、統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害の患者におけるOCSおよび強迫症(OCD)の有病率を推定し、OCSの要因となる臨床的特徴を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、OCSおよびOCDは、精神疾患患者で頻繁に認められており、より重篤な精神医学的な臨床的特徴と関連している可能性が示唆された。また、著者らは、自動化された情報抽出ツールを用いることで、精神疾患に合併するOCS/OCDの認識や治療を改善できる可能性があることを報告した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2022年9月28日号の報告。

円板状エリテマトーデスから重症SLE進行へのリスク因子は?

 フランス・ソルボンヌ大学のLisa Fredeau氏らは、円板状エリテマトーデス(DLE)が重症の全身性エリテマトーデス(SLE)へと進行するリスク因子を特定する、初となる検討を行った。164例を対象としたレジストリベースの後ろ向きコホート研究の結果、DLE診断時年齢が25歳未満、phototype V-VI、抗核抗体(ANA)抗体価≧1:320が、重症SLE発症のリスク因子であることを明らかにした。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2022年9月22日号掲載の報告。  研究グループは、孤立性DLEを有する患者または軽度の生物学的異常を有するSLE関連患者について、重症SLE(入院と特定の治療が必要と定義)への進行のリスク因子を特定し、予測スコアを生成するため、レジストリベースのコホート研究を行った。

毎日の抗原検査vs.自主隔離、感染を広げないのは?

 迅速抗原検査キットを使用した毎日の陰性確認は、新型コロナウイルス感染症拡大を最小限に抑えるため、自主隔離の代替手段となりうるのか? 英国・健康安全保障局のNicola K. Love氏らは、COVID-19接触者追跡システムで特定された成人接触者を対象とした無作為化非劣性比較試験を実施。Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2022年10月10日号に結果を報告した。  英国では本試験期間中(2021年4~7月)、COVID-19感染者と接触した人には10日間の自主隔離が求められていた。接触者追跡システムで特定された成人接触者のうち同意が得られた参加者は、自主隔離群(1日目のPCR検査、10日間の隔離)または毎日の抗原検査(DCT)群(1日目および最終日のPCR検査、7日間連続のラテラルフローデバイス[LFD]による抗原検査、LFDで陰性の場合は24時間隔離免除)に無作為に割り付けられた。

発症6h以降の脳底動脈閉塞、血栓除去術で脳出血が増加か/NEJM

 脳底動脈閉塞に起因する脳梗塞の症状発現から6~24時間が経過した患者では、血栓除去術は内科的治療と比較して、90日時の機能状態が良好な患者の割合が高かったが、手技に伴う合併症と関連し、脳出血を増加させたことが、中国・首都医科大学宣武医院のTudor G. Jovin氏らが実施した「BAOCHE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年10月13日号に掲載された。  BAOCHE試験は、中国の医師主導非盲検無作為化対照比較試験であり、アウトカムの評価は盲検下に行われた(中国科学技術部の助成を受けた)。参加者は、2016年8月~2021年6月の期間に登録された。

超加工食品の利便性と有害性はもろ刃の剣であり、摂取過剰は男性の遠位大腸がん発生の危険性を高めるため超加工食品の摂取には注意!―(解説:島田俊夫氏)

大腸がんの発生は国により多少の差はあるが世界中で日増しに大きな問題となっており、その原因として超加工食品を大きく取り上げている。超加工食品の分類には、ブラジル・サンパウロ大学の公衆衛生メンバーが提唱したNOVA分類(1~4)が通常用いられている。食品加工に伴う加熱処理、保存性の向上のための塩、砂糖やその他食品添加物、加工処理に伴う有害生成物、自然食品に含まれる抗酸化物質等の喪失等が発がん機序に深く関与していると推測されているが、十分に解明されているとはいえない。

コロナ・インフル同時流行の際の注意点/日本感染症学会

 今冬は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に加え、季節性インフルエンザの同時流行が危惧されている。発熱や倦怠感など症状を同じくするものもあり、外来などでの鑑別で混乱を来すことが予想されている。そこで、日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、10月20日に同学会のホームページで 「この冬のCOVID-19とインフルエンザ同時流行の際の注意点を発表した。  本稿では、緊急避難的な措置の一例として「COVID-19、インフルエンザ同時流行となった場合の外来診療フローチャート」を示すとともに、外来診療フローチャートについて6つのポイントを説明している。

認知症患者に対する入院前後の抗コリン薬使用

 抗コリン薬は、コリン作動性を遮断することで主要な治療効果や二次的な作用を発現する薬剤である。認知症患者に対する抗コリン薬の使用は、中枢作用に対しとくに敏感である可能性が示唆されている。また、抗コリン薬は、認知症治療で主に用いられるコリンエステラーゼ阻害薬の作用にも拮抗するため、注意が必要である。英国・カーディフ大学のAnnabelle Hook氏らは、英国の急性期病院における認知症患者に対する入院前後の抗コリン薬の使用状況を調査するため、横断的多施設共同研究を実施した。その結果、コリンエステラーゼ阻害薬治療を行っている場合でも、認知症患者に抗コリン薬が使用されており、入院時よりも退院時において抗コリン薬負荷が有意に高いことが明らかとなった。BMC Geriatrics誌2022年10月6日号の報告。

コロナ治療薬モルヌピラビル、早期投与で回復までの期間短縮に期待/MSD

 MSDは10月19日、一般流通を9月16日に開始した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)について、承認後の最新情報として特定使用成績調査の中間報告などをメディアセミナーにて発表した。調査の結果、添付文書の改訂が必要になるような大きな安全性事象は認められなかったことや、外来患者に使用した際の転帰として死亡はなく、人工呼吸器の使用も低く抑えることができたとして、本剤の有効性が提示された。  同社代表取締役社長のKyle Tattle氏によると、本剤は国内にて2021年12月24日に特例承認を取得し、これまでに60万人以上に使用されたという。本剤は、承認当初は供給量が限られていたため、厚生労働省が所有したうえで、重症化リスクのある患者に、決められた流通網を通して医療機関や薬局に配分が行われていたが、供給量が増加したことで、2022年8月18日に薬価基準収載となり、9月16日には一般流通を開始した。

コロナ罹患後症状、120万人のプール解析/JAMA

 2020年および2021年に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した症候性患者において、Long COVID(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]の罹患後症状、いわゆる後遺症)の主要な症状クラスター(身体的痛みや気分変動を伴う持続性疲労、認知に関する問題、持続する呼吸器症状)のいずれかを有する割合は全体で6.2%と推定され、女性および入院を要したSARS-CoV-2初感染者で高いことが、米国・ワシントン大学のSarah Wulf Hanson氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Disease)Long COVID Collaboratorsの解析で明らかとなった。2021年10月、世界保健機関(WHO)は、SARS-CoV-2感染から3ヵ月経過後も認められる、少なくとも2ヵ月以上持続し他の診断では説明がつかない症状として、「post COVID-19 condition」の定義を発表。しばしば「Long COVID」と呼ばれるこれらの症状について、これまでの研究では個々の症状や症状数に関する報告が最も多く、症状の持続期間や重症度、重複症状に関する報告は少なかった。JAMA誌オンライン版2022年10月10日号掲載の報告。

脳底動脈閉塞の予後改善、発症12時間以内の血栓除去術vs.薬物療法/NEJM

 中国人の脳底動脈閉塞患者において、脳梗塞発症後12時間以内の静脈内血栓溶解療法を含む血管内血栓除去術は、静脈内血栓溶解療法を含む最善の内科的治療と比較して90日時点の機能予後を改善したが、手技に関連する合併症および脳内出血と関連することが、中国科学技術大学のChunrong Tao氏らが中国の36施設で実施した医師主導の評価者盲検無作為化比較試験の結果、示された。脳底動脈閉塞による脳梗塞に対する血管内血栓除去術の有効性とリスクを検討した臨床試験のデータは限られていた。NEJM誌2022年10月13日号掲載の報告。

1人より2人〜DPNPに対する併用療法という選択肢〜(解説:永井聡氏)

糖尿病患者の4人に1人に合併しうる糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)は、QOLに大きな影響を及ぼし、海外の多くのガイドラインでは、アミトリプチリン(A)、デュロキセチン(D)、プレガバリン(P)、ガバペンチン(G)が第一選択となっており、日本においても同様である。これらの推奨は、システマティックレビューからのエビデンスの強さでなされ、単剤としてデュロキセチンが中等度の推奨、アミトリプチリンおよびプレガバリンが低い推奨とされている。ただし、最適な薬剤あるいは併用すべきかについてのある程度の規模の比較試験は行われていなかった。そのような背景の中、DPNPに対する単剤および併用療法の有効性について、多施設共同無作為化二重盲検クロスオーバー試験、OPTION-DMが報告され、検討されたどの治療方針でも鎮痛効果は同等であり、併用療法の鎮痛効果は単剤療法を継続した患者より大きいことが示された。

双極性障害の精神症状と転帰への影響~システマティックレビュー

 双極性障害(BD)患者の半数以上に認められる精神症状は、疾患経過、転帰、治療に対して悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、さまざまな研究が行われているにもかかわらず、精神症状がBDに及ぼす影響は解明されておらず、システマティックレビューはほとんど行われていなかった。インド・Postgraduate Institute of Medical Education and ResearchのSubho Chakrabarti氏らは、BD患者の精神症状の程度とBDのさまざまな側面への影響を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、精神症状は、BD患者において一般的に認められるが、それが疾患経過や治療転帰に悪影響を及ぼすとは限らないことを報告した。World Journal of Psychiatry誌2022年9月19日号の報告。