日本語でわかる最新の海外医学論文|page:269

4つのステップで糖尿病治療薬を判断/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、9月5日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を発表した。  このアリゴリズムは2型糖尿病治療の適正化を目的に、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスとわが国における処方実態を勘案して作成されている。  具体的には、「Step 1」として病態に応じた薬剤選択、「Step 2」として安全性への配慮、「Step 3」としてAdditional benefitsを考慮するべき併存疾患をあげ、「Step 4」では考慮すべき患者背景をあげ、薬剤を選択するアルゴリズムになっている。

乳腺密度とサブタイプ、予後の関連~日本人女性患者の検討から

 高濃度乳房は乳がんリスクが高いというコンセンサスは得られている一方で、乳腺密度と乳がんサブタイプの関連については相反する報告がある。聖路加国際病院の山田 大輔氏らは、日本人女性の乳腺密度ごとの乳がんサブタイプの傾向を調査し、生存率を解析。Clinical breast cancer誌2022年8月号に報告した。  2007~08年にかけて,聖路加国際病院でマンモグラフィ検査を受け,病理診断を受けた浸潤性乳がんの日本人患者1,258例が対象。乳腺密度(高濃度乳房、非高濃度乳房)を初回のマンモグラフィー所見に基づいて分類し、がんのサブタイプと比較した。高濃度乳房と非高濃度乳房の患者について、それぞれ5年および10年生存率に関する情報をカルテレビューにより収集した。統計解析は、乳腺密度とがんのサブタイプについてピアソンのカイ二乗検定を用いて行った。死亡に対する乳腺密度の影響については、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて検討され、調整ハザード比が算出された。

認知症の興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性~メタ解析

 子供の主体性や尊厳を尊重する幼児教育理論であるモンテッソーリ教育を、高齢者や認知症介護に取り入れたモンテッソーリケアは、西欧諸国において興奮症状の治療に有用な非薬理学的介入であることが報告されている。しかし、アジア人を対象とした研究のほとんどはサンプルサイズが小さく一貫性が認められていないため、その結果の信頼性は制限されている。中国・The Third Hospital of QuzhouのLingyan Xu氏らは、アジア人認知症患者における認知症関連興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、アジア人認知症患者に対するモンテッソーリケアは、標準ケアと比較し、とくに身体的攻撃性による興奮症状を減少させる可能性が示唆された。しかし著者らは、本研究では、身体的非攻撃行動や言葉による攻撃行動に対する有効性が認められなかったことから、身体的攻撃性に対する効果の信頼性についても、今後のさらなる検討が求められるとしている。Medicine誌2022年8月12日号の報告。

ブースター接種、異種のほうが効果が持続する可能性

 世界的に新型コロナワクチンのブースター接種が進む中で、同種・異種ワクチンのどちらがブースター接種により適しているかを検討した研究結果が発表された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのC.Sabrina Tan氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2022年8月1日号に掲載された。  研究者らは、少なくとも6ヵ月前にBNT162b2(ファイザー製)の2回接種を完了した68例を対象に、ファイザー製とAd26.COV2.S(Johnson & Johnson製)によるブースター接種を行い、4ヵ月後の液性および細胞性免疫反応を評価した。

前十字靱帯損傷、リハビリより外科的再建術が有効/Lancet

 膝関節の不安定性による症状が持続している非急性期の前十字靱帯(ACL)損傷患者の管理法として、外科的再建術はリハビリテーションと比較して、臨床効果(KOOS4)が優れ費用対効果も良好であることが、英国・オックスフォード大学のDavid J. Beard氏らが実施した「ACL SNNAP試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年8月20日号で報告された。  ACL SNNAP試験は、膝関節の不安定性の症状が持続する非急性期のACL損傷患者において、再建手術と非外科的治療のどちらが最適な管理法であるかの検証を目的とする実践的な無作為化対照比較試験であり、2017年2月~2020年4月の期間に、英国の29ヵ所の国民保健サービス(NHS)セカンダリケア病院の整形外科で参加者の募集が行われた(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価計画の助成を受けた)。

無症状、小さな腎結石でも砕石する意義はある(解説:宮嶋哲氏)

小さな腎結石の治療方針は、自然排石を期待して経過観察が推奨されている。しかしながら、これまでの報告からすると、大きな結石が除去された時点で残存する小腎結石の約半数が、術後5年以内に他の症候性イベントを引き起こしたと報告されている。尿管または対側腎の結石を内視鏡的に砕石中に無症状の小腎結石を、38例で砕石施行し(治療群、平均結石長3mm)、35例では砕石施行しなかった(対照群、平均結石長4mm)。主要評価項目は、救急外来の受診、手術、2次結石の増大のいずれかにより評価しうる再発の有無とした。なお本研究は多施設共同無作為化比較試験である。

フォシーガ、2022年欧州心臓病学会総会にて心不全に関する新たなエビデンスを発表/AZ

 アストラゼネカは2022年9月5日のプレスリリースで、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の第III相DAPA-HF試験および第III相DELIVER試験の事前に規定された併合解析で得られた結果と、第III相DELIVER試験の結果について発表した。共に2022年欧州心臓病学会総会で発表されたものである。  第III相DAPA-HF試験および第III相DELIVER試験の事前に規定された併合解析で、フォシーガは、心不全患者において左室駆出率にかかわらず、中央値22ヵ月のフォローアップ期間で心血管死リスクを14%(p=0.01、絶対リスク減少率[ARR]:1.5%)、原因を問わない死亡リスクを10%(p=0.03、ARR:1.5%)、心不全による(初回および再)入院のリスクを29%(p<0.001、ARR:6%)、心血管死、心筋梗塞、または脳卒中の複合リスクを10%(p=0.045、ARR:1.3%)低下させることが示された。結果に関しては、Nature Medicine誌にも掲載されている。

国内での3回接種によるBA.5への有効性など追加、コロナワクチンに関する提言(第5版)修正版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、8月30日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第5版を一部変更・加筆した第5版修正版を公開した。  今回の修正版では、わが国におけるBA.5に対する3回目接種の有効性や5~11歳へのワクチンの有効性の情報を追加したほか、現時点の知見を追加している。 【1. わが国で承認されているCOVID-19ワクチン】 ・5~11歳への接種にも努力義務を課すことが決定され、臨時接種対象者すべてに努力義務が課されることになった。 ・COVID-19ワクチンは他のワクチンと13日以上の間隔をあけて接種することとされていたが、インフルエンザワクチンに関しては接種間隔に関する制約がなくなり、同時接種も可能となった。

乳幼児の新型コロナ感染、約4割が無症状

 学校や保育所において小児の新型コロナの集団感染が多発しているが、小児は感染しても無症状であることが多く、感染防止には症状のスクリーニングでは不十分であることがわかったという。ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のRuth A Karron氏らによる本研究は、JAMA Network Open誌2022年8月31日号に掲載された。  この前向きコホート研究では、2020年11月24日~2021年10月15日に、0~4歳の子供が1人以上いるメリーランド州の175世帯の690人に対して調査を実施した。登録から8ヵ月間、参加者は毎週症状に関するアンケートに回答し、PCR検査によってSARS-CoV-2感染の有無を確認した。

不安症やうつ病の心理的再発予防介入~メタ解析

 不安症またはうつ病から寛解した患者に対する介入として、抗うつ薬の継続または中止と組み合わせた、心理的再発予防介入の有効性を評価するため、オランダ・アムステルダム自由大学のEsther Krijnen-de Bruin氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、寛解期うつ病患者では、心理的再発予防介入により、再発/再燃リスクの有意な減少が確認された。PLOS ONE誌2022年8月12日号の報告。  心理的再発予防介入と通常ケアを比較したランダム化比較試験(RCT)において再発/再燃の割合や期間を臨床アウトカムとして評価した研究を、PubMed、PsycINFO、Embaseより検索した。

MTX維持療法中のolokizumab、関節リウマチの改善率は?/NEJM

 メトトレキサート(MTX)による維持療法を受けている関節リウマチ(RA)患者において、インターロイキン-6(IL-6)を直接の標的とするヒト化モノクローナル抗体であるolokizumabを併用すると、12週の時点における米国リウマチ学会基準の20%の改善(ACR20)の達成に関して、プラセボと比較して優越性を示し、ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体アダリムマブに対し非劣性であることが、オーストリア・ウィーン医科大学のJosef S. Smolen氏らが実施した「CREDO2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年8月25日号に掲載された。

統合失調症患者のメタボリックシンドロームリスクに対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬が統合失調症患者のメタボリックシンドローム(MetS)発症に影響していることが、多くの研究で示唆されている。セルビア・クラグイェバツ大学のAleksandra Koricanac氏らは、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者におけるMetSの発症リスクおよび発症しやすい患者像を明らかにするため、検討を行った。その結果、リスペリドン治療患者およびクロザピン治療患者は、アリピプラゾール治療患者よりも、MetS発症リスクが高い可能性が示唆された。また、リスペリドン治療患者は、健康対照群と比較し、TNF-αとTGF-βの値に統計学的に有意な差が認められた。Frontiers in Psychiatry誌2022年7月25日号の報告。

エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。  今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加のほか、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。

HEPAフィルター空気清浄機により新型コロナウイルス除去に成功/東大

 東京大学医科学研究所と国立国際医療研究センターは、8月23日付のプレスリリースで、河岡 義裕氏らの研究により、HEPAフィルターを搭載した空気清浄機を用いることで、エアロゾル中に存在する感染性の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を経時的に除去できることが実証されたことを発表した。なお本結果は、mSphere誌オンライン版8月10日号に掲載された。  本研究は、東京大学と進和テックの共同で行われた。本研究に用いられたHEPA(high-efficiency particulate air)フィルターは、米国環境科学技術研究所の規格(IEST-RP-CC001)で、0.3μmの試験粒子を99.97%以上捕集可能なフィルターとして定義されている。HEPAフィルターのろ過効果を検証するため、コンプレッサーネブライザーでSARS-CoV-2エアロゾルを試験チャンバー内に噴霧して満たした後、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を毎時12回換気の風量で5分間、10分間、35.5分間稼働させた。所定の稼働時間後、チャンバー内のSARS-CoV-2エアロゾルをエアサンプラーで採取し、プラークアッセイを用いて、サンプル中の感染性ウイルス力価を測定した。さらに、1価の銅化合物を主成分とし、活性酸素を発生させてフィルター面に付着したウイルスを不活性化することができる抗ウイルス剤のCufitec(R)を塗布したHEPAフィルターを用いた場合でも、同様の条件で感染性ウイルス力価を測定した。

再発性多発性硬化症の再発率をublituximabが低減/NEJM

 再発性多発性硬化症の治療において、抗CD20モノクローナル抗体ublituximabはピリミジン合成阻害薬teriflunomideと比較して、96週の期間における年間再発率を低下させ、MRI上の脳病変を減少させる一方で、障害の悪化リスクを抑制せず、インフュージョンリアクションを増加させることが、米国・スタンフォード大学のLawrence Steinman氏らが実施した「ULTIMATE I/II試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年8月25日号で報告された。  ULTIMATE I/II試験は、再発性多発性硬化症患者におけるublituximabの有効性と安全性を、teriflunomideとの比較において評価することを目的とする、同一デザインの2つの二重盲検ダブルダミー無作為化実薬対照第III相試験であり、2017年9月~2018年10月の期間に、10ヵ国の104の施設で参加者の登録が行われた(米国・TG Therapeuticsの助成による)。

人工関節置換術後のVTE予防、アスピリンvs.エノキサパリン/JAMA

 股関節または膝関節の変形性関節症で人工関節置換術を受けた患者における静脈血栓塞栓症(VTE)の予防では、アスピリンはエノキサパリンと比較して、90日以内の症候性VTEの発現率が統計学的に有意に高く、死亡や大出血、再入院、再手術の頻度には差がないことが、オーストラリア・インガム応用医学研究所のVerinder S. Sidhu氏らが実施した「CRISTAL試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年8月23日号に掲載された。  CRISTAL試験は、人工股関節置換術(THA)および人工膝関節置換術(TKA)に伴うVTEの予防における、アスピリンのエノキサパリン(低分子量ヘパリン)に対する非劣性の検証を目的とするレジストリ内クラスター無作為化クロスオーバー試験であり、2019年4月~2020年12月の期間に、オーストラリアの31の病院で参加者の登録が行われた(オーストラリア連邦政府の助成を受けた)。

インフルエンザと新型コロナ:動脈血栓の視点ではどっちが怖い?(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染症の特徴として、深部静脈血栓症・肺塞栓症などの静脈血栓症リスクの増加が注目された。静脈血栓症リスクは、新型コロナウイルス以外の感染症でもICU入院例では高かった。インフルエンザなど他のウイルス感染と比較して、新型コロナウイルスにはACE-2受容体を介して血管内皮細胞に感染するとの特徴があった。血管内皮細胞は血管内の血栓予防にて死活的に重要な役割を演じている。新型コロナウイルス感染により血管内皮細胞の機能が障害されれば、微小循環の過程にて血小板、白血球が活性化し全身循環する血液の血栓性は亢進する。静脈血栓症以外に、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈血栓リスクも新型コロナウイルス感染後に増加すると想定された。また、新型コロナウイルス感染症例の心筋梗塞、脳梗塞リスクの増加を示唆する論文も多数出版されている。

世界初の高血圧治療補助アプリが保険適用/CureApp

 CureAppの開発した治療アプリ「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」が2022年9月1日に保険適用された。高血圧領域での治療アプリの保険適用は世界初。保険診療において、治療アプリ・血圧測定・医師の指導による「三位一体の6ヵ月指導プログラム」の処方・提供が可能となり、患者ごとに行動変容を促して生活習慣を修正することが期待されている。  本アプリを用いた治療の流れは、まず医師が診察においてアプリ利用の合意を得て処方コードを発行し、患者がアプリをインストール・セットアップすることから始まる。通院と通院の間は行動目標の実践や家庭血圧などの記録をアプリがサポートし、医師はその記録情報をもとに治療の継続や見直しを行う。アプリと血圧計はBluetooth接続され、情報が医師と共有される。  患者の自己負担額は、3割負担の場合で月々2,490円(初回のみ2,910円)で、初診・再診料などの他の診察費用は別途必要となる。

COVID-19パンデミック中のスマホ依存症とその後の自殺リスク

 COVID-19パンデミックによるロックダウン中、青少年のスマートフォン依存症や自殺率の増加が認められた。しかし、スマートフォン依存症と自殺リスクとの関係、その根底にある心理的メカニズムについてはよくわかっていない。中国・四川大学のGangqin Li氏らは、ロックダウンの最初の1ヵ月間における青少年のスマートフォン依存症と、その後5ヵ月間の自殺リスクとの関連を評価した。その結果、スマートフォン依存症の青少年における自殺リスクを減少するためには、日中の眠気や抑うつ症状の改善を目的とした介入プログラムがとくに有用である可能性が示唆された。BMC Public Health誌2022年8月12日号の報告。

標準治療に不応または不耐のGISTにHSP90阻害薬ピミテスピブ発売/大鵬

 大鵬薬品工業は2022年8月30日、経口HSP(Heat Shock Protein)90阻害薬ピミテスピブ(製品名:ジェセリ)を発売したと発表した。  ピミテスピブは大鵬薬品が創製した化合物で、HSP90を阻害することによりがんの増殖や生存などに関与するKIT、PDGFRA、HER2やEGFRなどのタンパクを不安定化し、減少させることで抗腫瘍効果を示す。