日本語でわかる最新の海外医学論文|page:267

ガイドライン改訂ーアナフィラキシーによる悲劇をなくそう

 アナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂され、主に「1.定義と診断基準」が変更になった。そこで、この改訂における背景やアナフィラキシー対応における院内での注意点についてAnaphylaxis対策委員会の委員長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)に話を聞いた。  改訂となった診断基準では世界アレルギー機構(WAO)が提唱する項目として3つから2つへ集約された。アナフィラキシーの定義は『重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。重症のアナフィラキシーは、致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある』としている。海老澤氏は「基準はまず皮膚症状の有無で区分されており皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面では血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状のいずれかを発症していれば診断可能」と説明した。

イベルメクチン、軽~中等症コロナ患者の回復に寄与せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、イベルメクチン400μg/kgの1日1回3日間投与はプラセボと比較し回復までの期間を改善しないことが、米国・デューク大学のSusanna Naggie氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果、示された。著者は、「軽症~中等症のCOVID-19患者に対して、イベルメクチンの使用は支持されない」とまとめている。JAMA誌2022年10月25日号掲載の報告。  ACTIV-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた、進行中の完全遠隔法による分散型臨床試験である。

バイスタンダー心肺蘇生実施率に人種/民族差/NEJM

 米国において、バイスタンダー(現場に居合わせた人)によって自宅や公共の場で心肺蘇生(CPR)を受けた院外心停止者は、心停止が起きた地域の人種/民族構成や所得レベルに関係なく、黒人・ヒスパニック系が白人と比べて少なかった。米国・ミズーリ大学カンザスシティ校のR. Angel Garcia氏らが、院外心停止者の前向き多施設登録「Cardiac Arrest Registry to Enhance Survival:CARES」のデータを用いた解析の結果を報告した。院外心停止では、バイスタンダーCPRの実施率の差が、生存率の差に寄与することが知られており、その実施率が院外心停止者の人種/民族間で差があるかを理解することは、対策を検討するうえで非常に重要とされていた。NEJM誌2022年10月27日号掲載の報告。

モデルナのBA.4/5対応2価ワクチンを特例承認/厚労省

 厚生労働省は11月1日、モデルナのオミクロン株BA.4/5に対応した新型コロナウイルス2価ワクチン「スパイクバックス筋注」(2価:起源株/オミクロン株BA.4/5)について、承認事項の一部変更の特例承認をしたことを発表した。  一部変更申請の概要として、起源株およびオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードする mRNAを含む2価ワクチンが追加された。有効成分のエラソメランはSARS-CoV-2の起源株を、イムエラソメランはオミクロン株BA.1を、ダベソメランはオミクロン株BA.4/5のスパイクタンパク質をコードするmRNAだとしている。

世帯所得が低い2型DMの男性は食物繊維が不足気味?

 世帯所得は日本人2型糖尿病(T2DM)患者の男性において、食物繊維摂取量および食事性酸負荷と関連することが報告された。Nutrients誌2022年8月7日号掲載の報告。  世界中で、T2DM患者の人口は増え続けている。教育レベル、職業、生活状況、世帯所得からなる社会経済的地位は、T2DMの有病率に影響を及ぼすことが知られている。京都府立医科大学の高橋 芙由子氏らはT2DM患者における世帯所得と習慣的な食事摂取、とくに食物繊維の摂取と食事性酸負荷との関連について調査した。

認知症患者のインフルエンザワクチン接種の抗体反応に対する光曝露の影響

 認知症受け入れ施設の照明条件を改善すると、患者の睡眠、概日リズム、健康状態の改善がみられる。スイス・Ecole Polytechnique Federale de LausanneのMirjam Munch氏らは、日中に明るい光を浴びると、認知症患者のインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答がサポートされる可能性について報告を行った。この結果は、毎日より多くの光を浴びることで、認知症患者の免疫応答が上昇することを示唆しており、今後の研究において、定期的な光曝露がヒトの免疫系に対し直接的または安定した概日睡眠覚醒リズムを介して良い影響を及ぼすかが明らかになることが期待される。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年9月20日号の報告。

切除不能局所進行NSCLC、CRT後デュルバルマブのリアルワールドデータ(PACIFIC-R)/JTO

 切除不能なStage III 非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、1,000例を超える症例のリアルワールドデータでも有効性が示された。  同治療は第III相PACIFIC試験で有用性が証明され、標準療法として確立されている。一方、実臨床での有用性についての検討が望まれていた。そのような中、リアルワールドの無増悪生存期間 (rwPFS) を評価したPACIFIC-R観察研究の結果がJournal of Thoracic Oncology誌で発表された。

放射線ファーマシスト、健康・食品への不安に寄り添う/日本薬剤師会学術大会

 福島県薬剤師会副会長の松下 敦氏は第55回日本薬剤師会学術大会の分科会「災害時の薬剤師の役割」で、同県薬剤師会が2013年から開始した「放射線ファーマシスト」の活動を紹介。過去6年間の相談実績では、放射線ファーマシストの説明内容への市民の納得度は90%超に上ると報告した。  2011年の東日本大震災では福島県双葉郡双葉町と同郡大熊町にまたがる東京電力・福島第一原子力発電所で電源喪失に伴う過酷事故が発生。同原発から半径20km圏内は災害対策基本法に基づく「警戒区域」に定められたほか、その圏外で放射線量が高い地域を原子力災害対策特別措置法に基づく「計画的避難区域」や「緊急時避難準備区域」とし、これら地域で約14~15万人が避難を強いられた。避難区域はその後再編され、避難指示が解除された地域もあるものの、現時点でも原則住民が帰宅できない「帰還困難区域」は、名古屋市の面積とほぼ同じで同県面積の約2.4%を占めている。なお、福島第一原発に関しては現在も廃炉作業は継続中である。

既感染によるBA.4/5感染予防効果、半年で5割低下/NEJM

 現在、COVID-19感染の主流となっているオミクロン株BA.4およびBA.5について、既感染による再感染予防効果は時間経過と共に急速に減退する可能性がある。カタール・ドーハのWeill Cornell MedicineのHeba N. Altarawneh氏らによる検討がNEJM誌2022年10月27日号のCORRESPONDENCEに掲載された。  研究者らは、SARS-CoV-2の検査結果、臨床経過、ワクチン接種、人口統計学的データ、カタールの医療施設で実施されたPCRおよび迅速抗原検査の全結果のデータを、全国SARS-CoV-2データベースから抽出した。感染リスクの違いをコントロールするため、性別、年齢、国籍、併存疾患数、検査した週、検査方法、検査理由によって、試験群と対照群をマッチングさせた。

院外心停止後、目標SpO2として90~94%は有効か/JAMA

 院外心停止後、自発循環を回復した意識不明の成人に対する、集中治療室(ICU)入室までの酸素飽和度90~94%をターゲットとした酸素療法は、98~100%をターゲットにした場合と比べ、生存退院率を有意に改善しなかった。ICU入室までの低酸素イベント発生率も、90~94%ターゲット群で有意に高率だった。オーストラリア・Ambulance VictoriaのStephen A. Bernard氏らが、425例を対象に行った無作為化比較試験「EXACT試験」の結果で、「試験はCOVID-19パンデミックにより早期中断となったが、試験結果は、心停止後の循環回復後における院外での酸素飽和度90~94%をターゲットした酸素療法を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2022年10月26日号掲載の報告。

ワクチン回数と感染歴、オミクロン感染予防効果の高い組み合わせは?/NEJM

 米国・スタンフォード大学のElizabeth T. Chin氏らは、感染ハイリスク集団である刑務所の収容者とスタッフ合計約7万6,000例を対象に行った後ろ向きコホート試験で、COVID-19のmRNAワクチン接種および既感染は、SARS-CoV-2のB.1.617.2(デルタ)変異株優勢前の感染予防効果は低かったが、B.1.1.529(オミクロン)変異株に対しては感染予防効果を有していたことを明らかにした。また、既感染者も含め、ワクチン3回接種が2回接種よりも感染保護効果が顕著に大きかったことも示されたという。NEJM誌オンライン版2022年10月26日号掲載の報告。

再発リスクの高い腎細胞がん術後患者においてアテゾリズマブ補助療法は有効性を見出せず(解説:宮嶋哲氏)

転移性腎細胞がんに対する標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬やチロシンキナーゼ阻害薬の併用療法である。抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブもまた、その有効性が期待される薬剤であるが、本研究は28ヵ国215施設において、外科的切除後に再発リスクの高い腎細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ補助療法の有効性を検討した第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験である(IMmotion010試験)。主要評価項目はDFS。

ガーダントヘルスジャパン、Guardant360 CDxでエスアールエルと業務提携

 ガーダントヘルスジャパンとエスアールエルは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー検査Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(Guardant360CDx)のサービス提供のために業務提携契約を締結した。  ガーダントヘルスジャパンは、今回の業務提携によりSRLの遺伝子検査領域におけるロジスティックスならびにネットワーク、サービスを活用することが可能となる。SRLが医療機関から検体を受理してから14日を目途に、国立がん研究センター、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)およびGuardant360 CDxがん遺伝子パネル検査ポータルに解析結果を提供する。

家族性大腸腺腫症への新たな治療戦略を日本で開発(J-FAPP Study III)

 京都府立医科大学の石川 秀樹氏らが大腸がんの超高危険群である家族性大腸腺腫症(FAP)患者に対し、予防のための内視鏡的積極的摘除術を世界で初めて開発したことがEndoscopy誌2022年10月10日号オンライン版に掲載された。  結腸全摘は、FAPの標準治療であるにもかかわらず、若年層のFAP患者が手術を延期したり、手術を拒否したりするケースもあるという。そこで、同氏らはFAP にきわめて多発する大腸ポリープのダウンステージングを目的とする積極的な内視鏡的摘除(IDP)の有効性を評価することを目的に内視鏡的積極的摘除術の多施設共同介入試験(J-FAPP Study III)を実施した。本試験は22施設で実施した単群介入研究で、参加者は2012年11月24日~2014年9月25日の間に登録。結腸切除術を受けていない、または結腸切除術を受けたが大腸が10cm以上残っている16歳以上で、100個のポリープがあったFAP患者を対象とした。IDPでは、10mm以上の大腸ポリープが摘除され、続いて5mm以上のポリープが摘除された。主要評価項目は5年間の介入期間中の結腸切除術の有無、副次評価項目は内視鏡による穿孔/出血、結腸直腸がんの発生、内視鏡治療に適さない腫瘍の発生、結腸直腸がんおよびその他の原因による死亡だった。

直近1年のオンライン診療利用患者は2%未満、利用意向も低い

 9,000人超を対象としたアンケート調査で、直近1年のオンライン診療利用者は2%未満であり、利用経験者における今後の利用意向は高いものの、全体の利用意向は非利用意向よりも低いことが明らかになった。マイボイスコム株式会社は、「オンラインでの医療相談・診察」に関するインターネット調査を行い、その結果を2022年10月28日に公表した。 ・直近1年間のオンライン診療利用経験は1.8%であった。10代・20代では約6%、30代では約3%であった。 ・オンライン診療を知っているが利用したことはない人は75.3%で、オンライン診療を知らない人は20.7%であった。 ・オンライン診療を受けたきっかけや理由は、「かかりつけ医がオンラインでの診療や相談を実施していた」が41.0%で最も多く、「発熱・咳など新型コロナ感染の疑いがあった」21.3%、「待ち時間・通院時間をかけたくない」20.2%、「遠方の医師の診察を受けるため」18.0%、「新型コロナ予防のため医療機関へ行くのを控えたい」16.3%と続いた。 ・オンライン診療を受けた医療機関の探し方は、「かかりつけの医療機関がオンライン診療をしていた」が57.3%で最も多く、「インターネットでの検索」22.%、「保健所や自治体などの紹介」10.7%、「インターネット広告」8.4%、「自治体のHP、広報誌など」6.7%と続いた。

慢性期統合失調症における抗精神病薬の減量・中止後の再発リスク因子~メタ解析

 精神疾患の再発予防に抗精神病薬による維持療法は有効だが、高用量での使用はリカバリーを妨げる可能性がある。そのため、慢性期統合失調症患者では、抗精神病薬の減量または中止が検討される。オランダ・Mental Health Services RivierduinenのJan P. A. M. Bogers氏らは、抗精神病薬の減量に伴う精神疾患再発のリスク因子を特定しようと試みた。その結果、慢性期統合失調症患者における抗精神病薬の減量では、精神疾患再発のリスク因子を考慮する必要があること、抗精神病薬の比較的急激な減量を行う場合でもハロペリドール換算3~5mgを最低用量とすることなどが報告された。また、著者らは、抗精神病薬の漸減は投与中止に伴う再発を回避し、必要最低用量を達成できる可能性があるとしている。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年10月6日号の報告。

ニボルマブ+イピリムマブによるNSCLC1次治療、CheckMate227試験5年追跡結果/JCO

 CheckMate 227 Part1の5年間の結果がJournal of Clinical Oncology誌2022年10月12日号で発表された。ニボルマブとイピリムマブの併用は、PD-L1の状態にかかわらず、転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の5年生存(OS)率を改善していた。  最低追跡期間61.3ヵ月の解析で、PD-L1≧1%集団の5年OS率はニボルマブ+イピリムマブ群の24%に対し、化学療法群では14%であった。PD-L1<1%集団では、ニボルマブ+イピリムマブ群の19%に対し、化学療法群では7%であった。

老後の一人暮らしと認知症リスク

 米国・イリノイ大学シカゴ校のBenjamin A. Shaw氏らは、老後の一人暮らしと認知症発症との関連性を調査した。これまでの多くの研究では、単一の時点で得られた一人暮らしに関するデータを利用して検証されていたが、著者らは、高齢者の一人暮らしの状況を長期的に測定し、一人暮らしの期間が長いほど認知症発症リスクが高いかどうかを評価した。その結果、老後の一人暮らしは認知症の重大なリスク因子であるが、この影響はすぐに現れるわけではなく、時間とともに上昇する可能性があることが示唆された。The Journals of Gerontology誌オンライン版2022年9月30日号の報告。

コロナ軽症でも、高頻度に罹患後症状を発症/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症の急性期後6~12ヵ月の時期における、患者の自己申告による罹患後症状(いわゆる後遺症、とくに疲労や神経認知障害)は、たとえ急性期の症状が軽症だった若年・中年の成人であってもかなりの負担となっており、全体的な健康状態や労働の作業能力への影響が大きいことが、ドイツ・ウルム大学のRaphael S. Peter氏らが実施した「EPILOC試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月13日号に掲載された。  EPILOC試験は、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州の4つの地域(人口計約270万人)で行われた住民ベースの研究で、2020年10月1日~2021年4月1日にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でSARS-CoV-2陽性と判定された18~65歳の集団が解析の対象となった(バーデン・ビュルテンベルク州Ministry of Science and Artの助成を受けた)。

GRADE試験―比較効果研究(comparative effectiveness research)により示されたGLP-1受容体作動薬の優位性(解説:景山茂氏)

GRADE試験は著者らが述べているように比較効果研究(comparative effectiveness research)である。糖尿病治療薬については2008年の米国FDAのrecommendation以来、新規に開発される薬物については治験段階から心血管イベントに対する影響が検討されている。これらの成果として、近年はGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の臓器保護効果が検証された。しかし、これらはプラセボを対照とした試験が多く、必ずしも数多くある治療薬の中でどれがよいかを示すものではなく、また、それを目的として行われたわけでもない。