日本語でわかる最新の海外医学論文|page:268

BA.1/2既感染者はBA.5の防御効果が高い?/NEJM

 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の主流となったオミクロン株BA.5については、従来株の感染既往があっても免疫逃避して再感染しやすいと認識されていた。しかし、早期にBA.5が優勢になった国の1つであるポルトガルにおいて、従来株の感染既往がある人におけるBA.5感染リスクを調査したところ、BA.1/BA.2の感染既往がある人は、ほかの変異株の感染既往よりも、BA.5に対する高い防御効果を有しているということが判明した。本結果は、ポルトガル・Instituto de Medicina Molecular Joao Lobo AntunesのJoao Malato氏らが、NEJM誌2022年9月8日号のCORRESPONDENCEで報告した。  本研究では、1,034万4,802人が登録されている全国コロナウイルスレジストリSINAVEのデータが用いられ、2022年7月4日時点の12歳以上の930万7,996人が対象となっている。このレジストリには、臨床症状を問わず、ポルトガル国内で報告されたすべての症例が記録されている。遺伝子検査により各変異株が90%以上を占める期間を特定し、優勢期として設定した。BA.1とBA.2は流行の移行が緩やかだったため優勢期が統合された。各優勢期に初めて新型コロナに感染した人を特定し、各変異株の感染既往群および未感染群のBA.5に対する感染リスクを算出した。ポルトガルでは2022年6月1日よりBA.5の優勢期となっている。なお、2022年以前に被験者の98%以上が新型コロナワクチンの初回シリーズを接種完了しているため、感染者はブレークスルー感染と見なされる。

アトピー性皮膚炎、JAK阻害薬はVTE発生と関連するか?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者、とくにJAK阻害薬による治療を受ける患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高くなるなのか。これまで明らかになっていなかったこの懸念について、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らがシステマティック・レビューとメタ解析を行い、現状で入手可能なエビデンスで、ADあるいはJAK阻害薬とVTEリスク増大の関連を示すものはないことを明らかにした。著者は、「今回の解析結果は、臨床医がAD患者にJAK阻害薬を処方する際の参考となるだろう」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。  研究グループは、ADとVTE発生の関連を調べ、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発生リスクを評価した。

乳がん周術期に新しい選択肢/リムパーザ錠適応追加

 2022年9月5日、アストラゼネカは、都内にて「早期乳がん治療におけるリムパーザの役割」をテーマにメディアセミナーを開催した。  リムパーザはBRCA1および/またはBRCA2遺伝子の変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する腫瘍細胞において、PARPを阻害し、DNAの修復を阻止することでがん細胞死を誘導する。  日本では2018年1月に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」を効能・効果として承認され、同年7月に「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」を適応として乳がん治療での使用が承認された。

血管外ICD、誘発された心室性不整脈で高い除細動成功率/NEJM

 血管外植込み型除細動器(ICD)は、主に従来の経静脈ICDの血管リスクを回避するために開発が進められている。米国・メイヨークリニックのPaul Friedman氏らは、Extravascular ICD Pivotal Studyにおいて、血管外ICD(Medtronic製)は安全に植込みが可能で、植込み時に誘発された心室性不整脈を検出してこれを高率に停止でき、重大な合併症の頻度は高くないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月28日号に掲載された。  本研究は、血管外ICDの長期的な安全性と有効性の評価を目的とする前向きの非無作為化単群市販前試験であり、2019年9月~2021年10月の期間に、17ヵ国46施設で参加者の登録が行われた(Medtronicの助成による)。

スタチンによる筋肉痛・筋肉障害は本当?(解説:後藤信哉氏)

循環器医として、しばしばスタチンを処方している。心筋梗塞発症予防効果は臨床エビデンスから明確だが頭蓋内出血などの重篤な出血イベントが起こることも事実であるアスピリンと比較して、スタチンは心筋梗塞予防効果が確実でありながら、薬効と直結する重篤な副作用は明確ではない。すなわち、心筋梗塞の再発予防にも、多分初発予防にもスタチンは有用と思われる(筆者もLDLは高くないが時々飲んでいる)。スタチンの使用を始めたころ、「横紋筋融解症」のリスクが徹底教育された。幸いにして長年循環器医をしてスタチンを多用している筆者は、本物の「横紋筋融解症」を経験したことはない。スタチン開始直後に筋肉痛の症状を訴える症例に出合うことはまれではない。副作用の説明が重視される時代に、「筋痛があればすぐ受診してください」と教育されるために筋痛が多いのか、本当に薬の副作用として筋痛が多いのか、本当のところはわからなかった。

ケレンディア、2型糖尿病を合併するCKD患者に関する最新データ発表/バイエル

 バイエル薬品の2022年8月30日付のプレスリリースによると、欧州心臓病学会(ESC)学術集会2022において、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者(CKD)の死亡率にケレンディア(一般名:フィネレノン)が及ぼす影響を示した最新データが発表された。  2型糖尿病を合併するCKD患者を対象としたフィネレノン第III相臨床試験プログラムは、FIDELIO-DKDとFIGARO-DKDの2つの試験で構成されている。この2つの試験を含むFIDELITYは2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000名以上を対象に、心腎アウトカムを検討した最大規模の第III相臨床試験プログラムである。FIDELITYの全体集団では、全死因死亡および心血管死に対するフィネレノンの効果は統計学的有意差にわずかに至らなかったものの、FIDELITYの事前規定した探索的on-treatment解析から得られた最新データによると、本集団ではフィネレノン群がプラセボ群と比べ、全死因死亡の発現率(ハザード比[HR]:0.82[95%信頼区間[CI]:0.70~0.96]、p=0.014)および心血管死の発現率(HR:0.82[95%CI:0.67~0.99]、p=0.040)を有意に減少させることが示された。追跡期間4年時点での心血管死までの時間に関するイベント確率解析では、ベースライン時点の推算糸球体濾過率(eGFR)および尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に関係なくフィネレノンの有用性は一貫しており、eGFRが60mL/min/1.73m2以上の場合、プラセボと比べフィネレノンのより顕著な効果が示された。

アベマシクリブ+アロマターゼ阻害薬、進行乳がんのOS改善傾向(MONARCH 3)/ESMO2022

 HR+/HER2-進行乳がん1次治療での非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)へのアベマシクリブの上乗せ効果を検討した国際共同第III相MONARCH 3試験では、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)はアベマシクリブ併用群が有意に延長したことがすでに報告されている。今回、副次評価項目の全生存期間(OS)の第2回中間解析を行った結果、アベマシクリブ上乗せによりITT集団、内臓転移患者ともにOS中央値が12ヵ月以上延長したことが報告された。ただし、どちらも事前に規定された統計学的有意性は示されなかった。米国・Mayo ClinicのMatthew P. Goetz氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。 ・対象:転移/局所再発のHR+HER2-乳がんの閉経後女性で、転移/局所再発後に全身療法を受けたことのない患者 493例 ・試験群(アベマシクリブ群):アベマシクリブ150mg1日2回+NSAI(アナスロトゾール1mgまたはレトロゾール2.5mg)1日1回を病勢進行するまで投与 328例 ・対照群(プラセボ群):プラセボ+NSAI 165例 ・評価項目: [主要評価項目]主治医判定によるPFS [副次評価項目]OS、奏効率、安全性

薬剤誘発性QT延長とトルサードドポアント~日本のリアルワールドデータ分析

 新規作用機序を有する薬剤が次々と開発されているが、前臨床および承認前の臨床試験において、該当医薬品がQT延長やトルサードドポアント(TdP)を誘発するかどうかを把握することは困難である。東京慈恵会医科大学のMayu Uchikawa氏らは、日本のリアルワールドデータベースを用いて、各薬剤の薬剤誘発性QT延長/TdPを評価した。その結果、抗不整脈薬、カルシウム感知受容体アゴニスト、低分子標的薬、中枢神経系用薬が、QT延長やTdPと関連する薬剤群であることが示唆された。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2022年8月22日号の報告。

新型コロナの重症度と予後を予測するバイオマーカーを発見/横浜市大、神奈川県立がんセンター

 血清ヘムオキシゲナーゼ-1(Heme oxygenase-1:HO-1)濃度が、COVID-19の重症度と生命予後予測の指標となることを、横浜市立大学大学院医学研究科の原 悠氏らと神奈川県立がんセンターの築地 淳氏らの研究グループが発見した。PLOS ONE誌オンライン版2022年8月24日掲載の報告。  HO-1は、M2マクロファージによって産生されるストレス誘導タンパク質で、可溶性CD163(sCD163)を産生する。sCD163は、COVID-19の生命予後の予測性能において有用性が期待されている。研究グループは、血清HO-1がCOVID-19患者の重症度と生命予後予測の両方を評価するバイオマーカーになりうると考え、M2マクロファージマーカーとされる血清HO-1とsCD163の有用性を検証した。  解析対象は、入院治療を必要としたCOVID-19患者64例(軽症11例、中等症38例、重症15例)であった。入院時に血清HO-1とsCD163の血清濃度を測定し、臨床パラメーターおよび治療経過との関連性を解析した。

左室駆出率の軽度低下または保持心不全、ダパグリフロジンが有効/NEJM

 左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)または保持された心不全(HFpEF)患者の治療において、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬であるダパグリフロジンはプラセボと比較して、心不全の悪化または死亡のリスクを有意に低減させるとともに、症状の負担を軽減し、有害事象の発現状況は同程度であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のScott D. Solomon氏らが実施した「DELIVER試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月27日号で報告された。  DELIVER試験は、左室駆出率が軽度低下または保持された心不全患者の治療における、ダパグリフロジンの有効性と安全性の評価を目的とするイベント主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年8月~2020年12月の期間に、日本を含む20ヵ国353施設で参加者のスクリーニングが行われた(AstraZenecaの助成による)。

スタチン投与時の筋症状、9割以上が関連なし/Lancet

 スタチンは動脈硬化性心血管疾患の予防に有効で、広く処方されているが、筋肉痛や筋力低下を引き起こす可能性が高いとの懸念が消えない。英国・オックスフォード大学のChristina Reith氏らCholesterol Treatment Trialists’(CTT)Collaborationは、大規模臨床試験の有害事象データを用いてスタチンの筋肉への影響について検討し、スタチン治療はプラセボと比較して、ほとんどが軽度の筋症状がわずかに増加したものの、スタチン治療を受けた患者で報告された筋症状の90%以上はスタチンに起因するものではなく、スタチンによる筋症状のリスクは心血管に対する既知の利益に比べればはるかに小さいことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年8月26日号に掲載された。

日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。

コロナ潜伏期間は変異株ごとに短縮、年齢による違いも~メタ解析

 新型コロナウイルスの変異株の進化に伴い、アルファ株からオミクロン株へ、その潜伏期間が徐々に短縮していることが示唆された。また、小児および高齢患者で潜伏期間が長い傾向がみられている。中国・北京大学のYu Wu氏らは、それぞれの変異株によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の潜伏期間を体系的に評価することを目的にシステマティックレビューとメタ解析を実施。JAMA Network Open誌オンライン版2022年8月22日号に報告した。  2019年12月1日~2022年2月10日に、PubMed、EMBASE、ScienceDirectが検索され、PRISMAガイドラインに基づきレビュー担当者が適格な研究からデータを個別に抽出した。パラメータ等は、変量効果モデルによるメタ解析から明らかにされた。潜伏期間は感染から徴候や症状の発症までの時間と定義され、主要評価項目はSARS-CoV-2株ごとの潜伏期間の平均推定値とされた。  主な結果は以下のとおり。

冠動脈の中等度狭窄、FFRガイド下PCI vs IVUSガイド下PCI/NEJM

 虚血性心疾患が疑われる中等度狭窄患者において、冠血流予備量比(FFR)ガイド下での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は血管内超音波法(IVUS)ガイド下と比較し、24ヵ月時点での死亡・心筋梗塞・再血行再建術の複合イベントの発生に関して非劣性であることが示された。韓国・ソウル大学病院のBon-Kwon Koo氏らが、韓国および中国の18施設で実施した無作為化非盲検試験「Fractional Flow Reserve and Intravascular Ultrasound-Guided Intervention Strategy for Clinical Outcomes in Patients with Intermediate Stenosis trial:FLAVOUR試験」の結果を報告した。冠動脈疾患患者のPCI評価において、血行再建術およびステント留置の決定にFFRまたはIVUSによるガイドを用いることができるが、両目的のためにどちらか一方のガイドを用いた場合の臨床アウトカムの差異は不明であった。NEJM誌2022年9月1日号掲載の報告。

鼻腔拭い液のコロナ検査、自己採取と医療者で結果は異なるか/JAMA

 4~14歳の小児が簡単な説明資材を視聴した後に自己採取した鼻腔拭い液からの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出率は、医療従事者が採取した鼻腔拭い液での検出率とほぼ一致したことが、米国・エモリー大学のJesse J. Waggoner氏らが実施した横断研究の結果、示された。SARS-CoV-2の検査が拡大しているが、小児の自己採取が検査の精度に及ぼす影響が不明であるため、14歳未満の自己採取による鼻腔拭い液を用いた検査は緊急使用許可(EUA)が得られていなかった。JAMA誌オンライン版2022年8月26日号掲載の報告。

ワルファリンは揺るぎない経口抗凝固薬の本流!(解説:後藤信哉氏)

 抗凝固薬の重篤な出血合併症は怖い。ワルファリンの有効性は確実であるが、重篤な出血合併症が怖いため血栓イベントリスクの高い症例に絞って使用してきた。経口のトロンビン、Xa阻害薬ではワルファリンに勝る有効性は期待できない。ワルファリンの至適PT-INRを2~3と高めに設定して、辛うじて非弁膜症性心房細動にて適応を取得した。リウマチ性の僧帽弁狭窄症など、血栓リスクの高い症例の血栓イベントは単一の凝固因子の選択的阻害薬ではとても予防できないと想定されていた。高齢社会にて非弁膜症性心房細動の数は多い。経口のトロンビン、Xa阻害薬をごっちゃにしてNOAC/DOACなどの軽い名前のイメージで特許期間内に売りまくった。

青年期の学力向上と抑うつ症状との関連

 シンガポール国立大学のRyan Y. Hong氏らは、青年期の学力向上と抑うつ症状との長期的な関連性を調査した。その結果、学力構築の維持を目的とした介入が、抑うつ症状の悪化を予防する可能性が示唆された。Development and Psychopathology誌オンライン版2022年8月12日号の報告。  対象は、シンガポールの青年741人。学業成績と抑うつ症状に関する過去の研究を拡張し、1学年度にわたる3-wave縦断的研究を行い、学力低下仮説(学力構築における過去の問題がその後の抑うつ症状に影響を及ぼす)および適応浸食仮説(過去の抑うつ症状がその後の能力構築に悪影響を及ぼす)の2つの競合する仮説を検証した。高次能力構築因子(複数の構成要素の動機付け変数を用いて操作可能)と抑うつ症状との関連性を評価するため、ランダムインターセプトとクロス遅延パネルモデルを用いた。

リウマチ性心疾患AF、ビタミンK拮抗薬がリバーロキサバンより有効/NEJM

 リウマチ性心疾患のAF(心房細動)患者において、ビタミンK拮抗薬治療はリバーロキサバン治療よりも、心血管イベントまたは死亡の複合発生率が低く、出血の発生率は両群で有意差はないことが、カナダ・マックマスター大学のStuart J. Connolly氏らによる4,565例を対象とした非盲検無作為化試験の結果、示された。リウマチ性心疾患の心房細動患者における心血管イベントの予防について、第Xa因子阻害薬の試験は限られていた。NEJM誌オンライン版2022年8月28日号掲載の報告。  研究グループは、心エコーでリウマチ性心疾患が確認された心房細動で、CHA2DS2VAScスコアが2以上(スコア範囲0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高い)、僧帽弁口面積2cm2以下、左心房もやもやエコー、左房血栓のいずれかが認められた患者を登録し試験を行った。

SGLT-2阻害薬、全心不全患者の心血管死・入院を抑制/Lancet

 心不全患者に対するSGLT-2阻害薬は、駆出率や治療施設の違いにかかわらず、心血管死または心不全による入院リスクを有意に低減することが示された。米国・ハーバード・メディカル・スクールのMuthiah Vaduganathan氏らが、駆出率が軽度低下または駆出率が保持された心不全をそれぞれ対象にした大規模試験「DELIVER試験」「EMPEROR-Preserved試験」を含む計5試験、被験者総数2万1,947例を対象にメタ解析を行い明らかにした。SGLT-2阻害薬は、駆出率が低下した心不全患者の治療についてはガイドラインで強く推奨されている。しかし、駆出率が高い場合の臨床ベネフィットは確認されていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「SGLT-2阻害薬は、駆出率や治療施設の違いにかかわらず、すべて心不全患者の基礎的治療とみなすべきである」と述べている。Lancet誌2022年9月3日号掲載の報告。

オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰(解説:寺田教彦氏)

ニルマトレルビルは、本邦では商品名「パキロビッドパック(以下パキロビッド)」としてCOVID-19重症化予防薬として用いられている。「パキロビッド」はニルマトレルビルをリトナビルでブーストした薬剤であり、効果的な経口抗ウイルス薬である。ただし、リトナビル成分のため、併用禁忌や併用注意の薬剤が多いことが知られており、投薬時には投薬歴を確認する必要がある。同薬剤は、症状を伴うCOVID-19に罹患した、重症化リスクの高いワクチン未接種の成人を対象とした試験(EPIC-HR試験)においてプラセボと比較して、入院または死亡のリスクを88%低減させ、高い有効性を示した