日本語でわかる最新の海外医学論文|page:268

LINEを使った患者報告システムを副作用マネジメントに活かす/日本癌治療学会

 薬剤の副作用は、医師の評価と患者の捉え方が大きく異なるケースが多いことは以前から報告されていた。PRO(Patient Reported Outcome)とは、医師の評価を経ず、患者自身が副作用を報告するシステムを指し、これを電子的に行うePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)取得システムが世界各地で開発され、実際の運用や効果測定のための臨床試験が行われている。  慶應義塾大学が開発した乳がん患者を対象としたePROについて、同大外科学教室の林田 哲氏が第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)上で発表した。

うつ病リスクに影響を及ぼす身体活動や睡眠時間

 うつ病リスク低下に対し、中程度~高度な身体活動(MVPA)のベネフィットは確立されてきているものの、睡眠、座位行動(SB)、軽度な身体活動(LIPA)に関するエビデンスは十分ではない。これらの行動は、行動学的および生物学的な相互関係を考慮せず検討されることも少なくない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJ. M. Blodgett氏らは、ある行動に費やした時間が、他の行動と比較し、どのようにうつ病リスクと関連しているかを調査した。その結果、あらゆる行動をMVPAに置き換えることで、うつ病リスクが低下することが明らかとなった。著者らは、「たとえ少しでも、MVPAに費やす時間の増加はうつ病の予防や軽減につながり、治療効果にプラスの影響を及ぼす可能性がある」と報告している。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年9月30日号の報告。  対象は、1970 British Cohort Study(英国の1970年出生コホート研究)より抽出した4,738例(2016年時、年齢46歳)。抑うつ状態の評価は、自己報告による受診および抗うつ薬の使用歴に基づき確認した。MVPA、LIPA、SB、睡眠の測定は、大腿部に装着した加速度計を用いて7日間連続で行った。さまざまな運動に費やされた時間構成とうつ病との関連を評価するため、コンポジショナルロジスティック回帰を用いた。

コロナ流行で糖尿病関連死が30%増加、とくに若年で顕著

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、米国における2021年および2022年の糖尿病関連の死亡が、パンデミック以前と比べて30%以上増加したことを、中国・西安交通大学のFan Lv氏らが報告した。糖尿病は新型コロナ感染症の重症化の重大なリスク因子であるとともに、新型コロナウイルス感染は血糖コントロールの悪化につながることが報告されている。同氏らは、パンデミックによって糖尿病患者の治療の提供が混乱したことから、パンデミック中の糖尿病関連の死亡の傾向を調査した。eClinicalMedicine誌9月23日掲載の報告。

futibatinib、既治療の切除不能肝内胆管がんに対しFDAの承認取得/大鵬

 大鵬薬品工業は、2022年10月3日、米国子会社の大鵬オンコロジーが、FGFR阻害薬futibatinib(開発コード:TAS-120)について、「前治療歴を有するFGFR2融合遺伝子またはその他の再構成を伴う切除不能な局所進行または転移性肝内胆管がん」の適応で米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。今回の承認は、FOENIX-CCA2試験での全奏効率(ORR)と奏効期間結果に基づくものである。  FOENIX-CCA2試験は、FGFR2遺伝子融合またはその他の再構成を有する切除不能な肝内胆管がん患者103例を対象とした第II相試験である。全身療法治療歴のある患者を対象に、病勢進行または許容できない毒性が認められるまでfutibatinib20mg/日を経口投与した。本試験の主要評価項目は全奏効率である。

TSLPを標的とした重症喘息の新たな治療選択肢

 2022年10月24日、アストラゼネカは、都内にて「テゼスパイアによる重症喘息治療への貢献」をテーマにメディアセミナーを開催した。  現在の重症喘息治療における課題は複雑な炎症経路である。ウイルスやアレルゲン、ハウスダストなど環境因子の刺激により、気道上皮から上皮サイトカインが産生され、その結果、アレルギー性炎症や好酸球性炎症、気道のリモデリングなど、複数の経路から喘息が増悪すると考えられている。上皮サイトカインのなかでも、炎症カスケードの起点となっているのが胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)である。TSLPは、喘息の重症化や呼吸機能低下だけでなく、気道のリモデリングやステロイド反応性の低下、ウイルス感染に対する過剰な2型炎症にも関与していると考えられている。

ルキソリチニブクリーム、白斑に有効/NEJM

 白斑に対するJAK阻害薬ルキソリチニブ(本邦では骨髄線維症、真性多血症の適応で承認)のクリーム製剤は、基剤クリーム(対照)よりも病変部の再色素沈着を拡大したことが示された。安全性については最も多く報告された有害事象は、塗布部におけるにきびやかゆみであった。米国・タフツ医療センターのDavid Rosmarin氏らによる、2件の第III相二重盲検溶媒対照無作為化試験の結果で、同剤については白斑成人患者を対象に行った第II相試験で、再色素沈着をもたらしたことが報告されていた。著者は今回の結果を踏まえて、「有効性および安全性について、より大規模かつ長期の試験を行い確認することが必要である」とまとめている。NEJM誌2022年10月20日号掲載の報告。  2試験は、Topical Ruxolitinib Evaluation in Vitiligo Study 1(TRuE-V 1)と2(TRuE-V 2)で、北米および欧州で、12歳以上、総体表面積の10%以下に色素脱失を有する非分節型白斑患者を対象に行われた。  患者を2対1の割合で、ルキソリチニブ1.5%クリーム群または対照群に無作為に割り付け、顔面および体幹のすべての白斑病変部に1日2回、24週間塗布した。その後は、全患者について52週までルキソリチニブ1.5%クリーム塗布を可能とした。  主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点の顔面Vitiligo Area Scoring Index(F-VASI、範囲:0~3、高スコアほど顔面の白斑面積が大きいことを示す)の低下(改善)が75%以上(F-VASI75)とした。主な副次エンドポイントは5つで、Vitiligo Noticeability Scale(VNS)の改善などが含まれた。

脳保護デバイスでTAVRの周術期脳梗塞は解決するか?(解説:上妻謙氏)

重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、低侵襲かつ有効な治療のためAS単独手術患者に関して標準的な医療となった。しかし周術期脳卒中の合併率は、最近の治療技術、デバイスの進歩によってある程度低下してきたものの依然として1~2%で発生している1)。脳卒中の合併率は外科手術と同等であるが、この脳卒中の問題が克服されればASの治療としてTAVRは外科手術に対して圧倒的に安全となる。本論文は北米、欧州、オーストラリアの51施設で行われたtransfemoral TAVR施行時の脳保護デバイス(cerebral embolic protection=CEP)の有効性を検証するメーカースポンサーの前向きランダマイズスタディである2)。3,000例のASを登録して行われたが、2,100例の登録終了時点で中間解析が行われ、脳卒中の合併率がCEP群2.2%、対照群2.4%であったため、サンプルサイズは予定された3,000例と決定された。主要エンドポイントは72時間以内の脳卒中の発生率で、CEP群2%、対照群4%の脳卒中合併率で90%の検出力で計算された。CEP群の94.4%でこのデバイス留置に成功し、デバイスに起因する合併症は1例(0.1%)のみで安全に施行できることが示された。しかし結果としては対照群2.9%に対しCEP群2.3%と残念ながら脳保護デバイスの有効性を証明することはできなかった(p=0.3)。死亡率、TIA、せん妄、急性腎障害も差がなかったが、modified Rankin Scale 2点以上の後遺症を残す脳卒中だけはCEP群0.5%、対照群1.3%と有意に脳保護デバイスを使用した群で少なくなった。サブグループ解析では人工弁のタイプや局所麻酔、前拡張や後拡張の有無などすべての要素でCEPの優位性を示す患者群を同定することができなかった。

双極性障害と心血管疾患の関連に対する性差の影響~UKバイオバンク横断分析

 心血管疾患(CVD)リスクに対して、双極性障害(BD)患者の性差による影響を検討した報告は、これまでほとんどなかった。カナダ・トロント大学のAbigail Ortiz氏らは、UKバイオバンクのデータを用いて、CVDとBDの関連性に対する性別固有の影響について検討を行った。その結果、CVDとBDの関連性に男女間で違いが認められた。このことから著者らは、CVDのリスク推定ツールに性別と精神疾患を組み込むことで、BD 患者のCVDスクリーニングや適時の治療を改善できるとしている。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年9月23日号の報告。  UKバイオバンクに登録されたBD患者293例、精神医学的に健康な対照者25万7,380例を対象に横断研究を実施した。7つのCVD(冠動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、心房細動、心不全、脳卒中、本態性高血圧)および4つの心血管バイオマーカー(動脈硬化指数、LDL、CRP、HbA1c)について男女間のオッズ比を比較した。

妊婦へのコロナワクチン接種をメタ解析、NICU入院や胎児死亡のリスク減

 妊娠中のCOVID-19ワクチン接種による周産期アウトカムへの影響について、有効性と安全性を評価するため、筑波大学附属病院 病院総合内科の渡邊 淳之氏ら日米研究グループによりシステマティックレビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種が新生児集中治療室(NICU)入院、子宮内胎児死亡、母親のSARS-CoV-2感染などのリスク低下と関連することや、在胎不当過小(SGA)、Apgarスコア低値、帝王切開分娩、産後出血、絨毛膜羊膜炎などといった分娩前後の有害事象のリスク上昇との関連がないことが示された。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年10月3日号に掲載の報告。

オミクロン感染7日目、3割が抗原検査陽性

 米国疾病対策予防センター(CDC)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染時の隔離期間について症状の有無にかかわらず5日間を推奨している。また日本では、症状のある人は発症日から7日間隔離、症状がない人は検査陽性となった日から7日間隔離で抗原検査陰性になれば5日間に短縮可能としている。今回、米国・スタンフォード大学のJessica Tsao氏らが、SARS-CoV-2陽性を示した学生スポーツ選手において、診断日から7日目の迅速抗原検査で27%が依然として陽性であったことを報告した。また、症状ありの感染者、オミクロンBA.2変異株感染者で陽性率が高かった。JAMA Network Open誌2022年10月18日号に報告。

喫煙妊婦、金銭的報奨で禁煙率が2倍以上に/BMJ

 英国の妊娠中の喫煙者では、現行の禁煙サービスに加え、妊婦の禁煙のための最大400ポンドの金銭的報奨を提供すると、禁煙率が2倍以上に向上し、重篤な有害事象は増加しなかったことが、英国・グラスゴー大学のDavid Tappin氏らが実施した無作為化試験「CPIT III試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月19日号で報告された。  CPIT III試験は、妊婦向けの禁煙支援としての金銭的な報奨の有効性の評価を目的とする実践的な単盲検無作為化第III相試験であり、2018年1月9日~2020年4月4日の期間に、スコットランド、北アイルランド、イングランドの7つの産科病院で参加者の登録が行われた(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。

医療者ほか最前線労働者、デルタ・オミクロン株へのワクチン効果は/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタおよびオミクロン変異株に感染した米国の必須(essential)/最前線(frontline)労働者では、感染前149日以内のmRNAワクチン(BNT162b2[ファイザー製]、mRNA-1273[モデルナ製])の2回または3回接種は未接種と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状は軽度で、ウイルスRNA量は少なかったことが、米国疾病予防管理センター(CDC)のMark G. Thompson氏らHEROES-RECOVERネットワークの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年10月18日号に掲載された。  本研究は、COVID-19に対するmRNAワクチンの2回または3回接種と、その症状およびSARS-CoV-2のウイルスRNA量との関連の評価を目的とする前向きコホート研究であり、2020年12月14日~2022年4月19日の期間に、米国の6州(アリゾナ、フロリダ、ミネソタ、オレゴン、テキサス、ユタ)でSARS-CoV-2に感染した患者が登録されたHEROES-RECOVERネットワークのデータが使用された(米国国立予防接種・呼吸器疾患センターなどの助成を受けた)。

COVID-19に対するモデルナ製のオミクロン株対応2価ブースターワクチン(オミクロン株対応2価ワクチン[BA.1])の安全性と免疫原性について(解説:寺田教彦氏)

本論文は、COVID-19に対するモデルナ製のオミクロン株対応2価ブースターワクチン(オミクロン株対応2価ワクチン[BA.1])の安全性と免疫原性の評価の中間解析結果を示している。新型コロナウイルスワクチンは、当初、野生株(従来株)に対して高い感染予防効果、発症予防効果、重症化予防効果が示されていた(Baden LR, et al. N Engl J Med. 2021;384:403-416.)。しかし、デルタ株が流行した時期には新型コロナウイルス感染症の感染予防効果や発症予防効果は減衰することも指摘されるようになった(Andrews N, et al. N Engl J Med. 2022;386:1532-1546.)。その後、オミクロン株の流行下では、ワクチンの効果は比較的短期間で減衰し、また効果も低下していることが示されていた。変異株に対する戦略としては、株に対応したワクチンの作成が行われ、ベータ株対応の2価ワクチンの使用では、従来のワクチンに比較して複数の変異体に対して一貫して高い中和抗体応答とスパイク結合応答を誘導することが報告されていた(Chalkias S, et al. Nat Med. 2022 Oct 6. [Epub ahead of print])。

統合失調症におけるVRを用いたソーシャルスキルトレーニングの受容性評価

 統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニング(SST)の新たな治療アプローチとして、シネマティックバーチャルリアリティー(Cine-VR)テクノロジーが注目されている。イタリア・バーリ工科大学のVito M. Manghisi氏らは、統合失調症患者に対するCine-VR介入の受容性を評価するため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するCine-VR介入の良好な受容性が確認された。Games for Health Journal誌オンライン版2022年9月8日号の報告。  研究者らは、自立生活支援のためのSSTリハビリテーションサポートシステムとしてCine-VRベースのプラットフォームを開発し、利便性、ユーザーエクスペリエンス、使用パフォーマンスの観点から、精神疾患患者への受容性を評価した。対象は、18~65歳の統合失調症スペクトラム障害(DSM-5に基づく)患者10例。中等度~重度の知的障害がなく、物質使用障害を認めない患者を対象に含めた。治療後にアンケートを実施し、関連データを自動収集するためのプラットフォームを開発した。

転移乳がんへの局所療法はescalationなのか?/日本癌治療学会

 転移乳がんに対する積極的な局所療法の追加は、がんが治癒しなくても薬剤使用量を減らすことができればescalationではなくde-escalationかもしれない。第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)において、岡山大学の枝園 忠彦氏は「転移乳がんに対する局所療法はescalationかde-escalationか?」と題した講演で、3つのクリニカルクエスチョンについて前向き試験の結果を検証し、転移乳がんにおける局所療法の意義について考察した。  転移乳がんにおいて治癒は難しいが、ある特定の患者ではきわめて長期生存する可能性があり、近年そのような症例が増えてきているという。枝園氏はその背景として、PETなどの画像検査の進歩により術後早期に微小転移の描出が可能となったこと、薬物療法が目まぐるしく進歩していること、麻酔や手術が低侵襲で安全になってきていること、SBRT(体幹部定位放射線治療)が保険適用され根治照射が可能になったことを挙げた。この状況の下、3つのクリニカルクエスチョンについて考察した。

ビタミンD欠乏で筋力低下→サルコペニア発症の可能性/長寿研ほか

 ビタミンDが欠乏することで、将来的に筋力が低下してサルコペニア罹患率が上昇する可能性を、国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部の細山 徹氏や、名古屋大学大学院医学系研究科整形外科学の水野 隆文氏らの研究グループが発表した。  先行研究において、ビタミンDは加齢性の量的変動やサルコペニアとの関連性が指摘されていたが、それらの多くが培養細胞を用いた実験や横断的な疫学研究から得られたものであり、成熟した骨格筋に対するビタミンDの作用や加齢性疾患であるサルコペニアとの関連性を示す科学的根拠は十分ではなかった。Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle誌2022年10月13日掲載の報告。

侵襲的冠動脈造影とCT、MACEリスクに性差はあるか/BMJ

 侵襲的冠動脈造影(ICA)のために紹介された、安定胸痛を有する閉塞性冠動脈疾患(CAD)の検査前確率が中程度の患者において、初期画像診断に用いるCTはICAと比較して、有害心血管イベントのリスクは同等であることがすでに報告されているが、その有効性に男性と女性で差はないことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のKlaus F. Kofoed氏ら「DISCHARGE試験」グループが報告した。CTは、CADの検査前確率が低~中程度の患者において、閉塞性CADを除外することが可能であるが、男性より女性で精度が低くなる可能性があり、CADの診断および臨床管理において、CTとICAの臨床転帰に関する有効性の男女差はこれまで不明であった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。

6ヵ月~5歳児へのモデルナワクチン、第II/III相中間解析/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNA-1273ワクチン(モデルナ製)25μgの2回接種は、生後6ヵ月~5歳の小児において安全であり、免疫原性は18~25歳の若年成人に対して非劣性であることが認められた。米国・エモリー大学医学部のEvan J. Anderson氏らが、6ヵ月~12歳未満の小児を対象に実施している第II/III相試験「KidCOVE試験」の6ヵ月~5歳児のコホートにおける中間解析結果を報告した。同試験の6~12歳未満のコホートにおける中間解析結果は、すでに報告されている。NEJM誌オンライン版2022年10月19日号掲載の報告。

1型糖尿病におけるオープンソースAID(自動インスリン送達)システムの効果(CREATE試験)(解説:小川大輔氏)

1型糖尿病の治療において、一般にインスリン頻回注射療法あるいはインスリンポンプ療法が用いられる。これまでCGM(持続血糖モニター)を用いたインスリンポンプ療法とオープンソースのAID(自動インスリン送達)システムの効果について比較した試験はなかった。今回ニュージーランドの施設において実施された、オープンソースAIDシステムとセンサー付きインスリンポンプ療法(SAPT)システムの安全性および有効性を比較する初の多施設ランダム化比較試験(CREATE試験)の結果が報告された1)。AIDシステムとは、CGMを搭載したインスリンポンプ療法(SAPT)に、インスリン送達を自動的に調整して血糖値を目標範囲内に維持するアルゴリズムを組み合わせた方法である。そして企業が開発し非公開のアルゴリズムを用いる商用AIDシステムとは異なり、糖尿病患者らが開発・公開し修正を重ねてきたアルゴリズムを用いるシステムをオープンソースAIDシステムと呼んでいる。

センチネルリンパ節転移乳がん、ALNDとRNIの必要性についての検討/日本癌治療学会

 センチネルリンパ節転移陽性乳がんにおいて、腋窩リンパ節郭清(ALND)や領域リンパ節照射(RNI)がどのような症例で必要となるのかについては議論がある。Sentinel Node Navigation Surgery研究会では、センチネルリンパ節転移陽性例において、センチネルリンパ節生検(SNB)単独群とSNB後の腋窩リンパ節郭清(ALND)群を比較する多施設共同前向きコホート研究を実施。井本 滋氏(杏林大学)が、第60回日本癌治療学会学術集会(10月20~22日)で結果を報告した。  本研究では、cT1-3N0-1M0の女性乳がん患者を対象とし、組織学的または分子生物学的診断で1~3個のセンチネルリンパ節微小転移またはマクロ転移陽性が確認された場合に、医師の裁量でSNB単独またはALNDの追加を決定した。SNB前後の化学療法は可とし、両側および遊離腫瘍細胞(ITC)の症例は除外された。