日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1135

オリンピックレベルの選手の突然死を防ぐために

心血管異常を見つけ突然死や症状悪化を防ぐために、スポーツ選手への事前スクリーニングは有効だとされる一方、ここ数十年にわたり臨床有用性が議論されてもいる。米国心臓協会は不支持の態度を示しているが、ヨーロッパ心臓病学会と国際オリンピック委員会は、イタリアで25年以上前から行われていることに注目し、若いアスリートへの事前スクリーニングは必要であるとの態度を表明した。本論は、イタリア・フィレンツェにあるスポーツ医学研究所のデータをフローレンス大学血栓治療センターFrancesco Sofiらが分析・検討した結果で、臨床有用性はあると報告された。BMJ誌2008年7月3日号より。

腎細胞癌に対する自己腫瘍由来ワクチンによる術補助療法の有効性示せず

腎細胞癌に対する腎摘出術後の自己腫瘍由来熱ショック蛋白ワクチン(HSPPC-96、vitespen)療法は無再発生存率を改善しないことが、米国M D Anderson癌センターのChristopher Wood氏が行った無作為化第III相試験で明らかとなった。限局性腎細胞癌の標準治療は局所あるいは根治的な腎摘出術であるが、有効な補助療法がないため患者は実質的に再発のリスクに晒されているという。Lancet誌2008年7月12日号(オンライン版2008年7月3日号)掲載の報告。

手術の世界的な年間施行数はどれくらい?

 世界全体では毎年、膨大な数の手術が行われ、大手術(major surgery)の手技に起因する高い死亡率および合併症発生率ゆえに、いまや手術の安全性は国際的な公衆衛生学の実質的な懸案事項とすべきことが、「WHO患者安全プログラム」の一環として実施された調査で明らかとなった。手術のニーズは工業化に伴う疾病パターンの転換に伴って医療資源の多寡にかかわらず急激に増加した。この、いわゆる「疫学的な過渡期」ゆえに公衆衛生における手術の役割も増大してきたが、その安全性の改善やサービスの不足を補うためにも、手術的介入の総数、配分状況を把握する必要があるという。米国Harvard大学公衆衛生学部のThomas G Weiser氏がLancet誌2008年7月12日号(オンライン版2008年6月24日号)で報告した。

急性心原性肺水腫への非侵襲的換気療法、死亡率は改善せず

急性心原性肺水腫患者に対して、気管切開・挿管によらない非侵襲的換気療法(持続気道陽圧換気療法:CPAP、または非侵襲的間欠陽圧換気療法:NIPPV)は有効で、死亡率を低下させる可能性があるとされる。そこで、英国エジンバラ王立病院のAlasdair Gray氏らThree Interventions in Cardiogenic Pulmonary Oedema:3CPOの研究グループは、気管挿管による標準酸素療法とCPAP、NIPPVを比較検討した。NEJM誌2008年7月10日号より。

HIV-1の母乳感染減少に抗レトロウイルス薬の長期予防的投与が効果的

授乳によるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の母子感染を減らす効果的な対策が、貧困国で緊急に求められている。米国・ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のNewton I. Kumwenda氏らは、乳児に対する抗レトロウイルス薬の予防的投与の効果を検証した結果、ネビラピン(商品名:ビラミューン)またはネビラピン+ジドブジン(商品名:コンビビル、レトロビルカプセル)の長期投与によって、乳児のHIV-1感染症を有意に減らすことができると報告した。NEJM誌2008年7月10日号(オンライン版2008年6月4日号)より。

ABIは心血管イベントリスク予測にFraminghamリスクスコアより有効

健常者の心血管疾患のハイリスクを識別する予測モデルの精度は限られている。英国のABI共同研究チーム(Ankle Brachial Index Collaboration)は、アテローム性動脈硬化症の指標とされる足関節上腕血圧比(ABI)をFraminghamリスクスコア(FRS)と組み合わせることで、心血管疾患のリスク予測を改善できる可能性があると報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。

アンドロゲン枯渇療法は局所前立腺癌の生存率を改善しない

データが不十分にもかかわらず、手術や放射線、従来治療に替わる局所前立腺癌の治療として、一次的アンドロゲン枯渇療法(PADT)を受ける患者が増えている。ロバート・ウッド・ジョンソン医科大学(米国ニュージャージー州)のGrace L. Lu-Yao氏らには、局所前立腺癌の高齢男性におけるPADTと生存率との関連を評価。「従来治療と比べ生存率を改善しない」と報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。

抗悪性腫瘍剤「アービタックス」、製造販売を承認

ブリストル・マイヤーズ株式会社は、メルクセローノ株式会社およびイムクロン社(NASDAQ:IMCL)と共同開発を行ってきたアービタックス注射液100mg(セツキシマブ製剤)が、7月16日(水)、厚生労働省より「EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の治療薬として、製造販売承認されたと発表した。

「子どもとママの紫外線対策」意識調査-「日焼け止め」は8割の子どもが使用、でも塗る基準は日ざしの強弱?

ロート製薬株式会社が関東圏、関西圏の1歳~9歳の子どもを持つママ300人に対して行った調査によると、9割以上のママが子どもに紫外線対策を行い、内容としては「帽子をかぶる」(約9割)と同じように「日焼け止めを塗る」が8割となり、紫外線対策のスタンダードになっていることが明らかになった。

複数ワクチン接種と健康不良は無関係

1991年の湾岸戦争時も話題になった、複数ワクチン接種と健康不良との関連。本報告は、2003年以降イラク戦争に従軍したイギリス軍兵士を対象にしたもので、ロンドン大学Dominic Murphy氏らによるもの。複数のワクチン接種と健康不良との関係を、ワクチン接種の事実に関する自己申告群と、診療録で確認できた群とで、それぞれ検証した。結果、複数ワクチン接種は健康不良とは無関係と報告している。BMJ誌2008年6月30日号掲載より。

ネガティブ感情は心疾患イベントに関連:Whitehall IIスタディ

心疾患イベントのリスク増加に心理的因子(不安、敵意/怒り、うつ)が関わっていることを示す研究がいくつかあるが、ポジティブな感情、ネガティブな感情それぞれを独立因子とし、二次的な冠動脈性心疾患イベントとの関連(影響およびリスク)を検討する研究が報告された。イギリスでのWhitehall IIスタディからの報告。同スタディは1985年にセットされ追跡調査されている、健康と疾患の社会経済的傾向を探るための経時的研究である。BMJ誌2008年6月30日号掲載より。

癌患者の大うつ病管理に有効な介入法が開発された

“Depression Care for People with Cancer”と呼ばれる複合的な介入法は、専門的な医療サービスを受けている癌患者における大うつ病管理のモデルとなることが、スコットランドで実施された無作為化試験(SMaRT oncology 1)で示された。大うつ病は癌などの疾患に罹患した患者のQOLを著しく損なうが、その管理の指針となるエビデンスは少ないという。イギリスEdinburgh大学癌研究センターのVanessa Strong氏がLancet誌2008年7月5日号で報告した。

rivaroxaban長期投与が有効、人工股関節全置換術後の静脈血栓塞栓症予防

新たな経口第Xa因子阻害薬rivaroxabanの長期投与は、人工股関節全置換術(THA)を施行後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防において低分子ヘパリンであるエノキサパリン(商品名:クレキサン)の短期投与よりも有効なことが、21ヵ国が参加した大規模臨床試験(RECORD 2)で確認された。周術期のヘパリンベースの血栓予防療法は致死的肺塞栓症を減少させるが、THA後のVTEのリスクは退院後も持続するため、簡便な長期的抗血栓療法の探索が進められてきた。イギリスBarts and the London医科歯科大学のAjay K Kakkar氏が、Lancet誌2008年7月5日号(オンライン版2008年6月24日号)で報告した。

心停止時のアドレナリン+vasopressin併用の効果は認められず

心停止への二次心肺蘇生(ACLS)で近年、アドレナリン(エピネフリン)とvasopressinの併用投与が行われている。それぞれを単独投与するより効果的だとされているからだが、臨床推奨にはエビデンスが乏しい。日本の119番に相当する、フランスの救急医療システムSAMUが多施設共同研究を行った結果は、「併用投与の転帰とアドレナリン単独投与の転帰とに差はない」と報告された。NEJM誌2008年7月3日号より。

急性腎障害に対して治療集中度では効果に差はない

重症の急性腎障害に対して、腎代替療法をどの程度行うべきかについては論議が続いている。米国退役軍人ヘルスケアシステムと国立衛生研究所(VA/NIH)の急性腎不全調査チームは比較検討を行い、「集中的な腎機能補助療法を行っても、効果に有意差は見られない」と報告した。NEJM誌2008年7月3日号(オンライン版2008年5月20日号)より。

HIV抗体陽転から5年間の死亡リスクは一般と同等

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の死亡率は、良好な治療を受ける機会に恵まれた先進国では劇的に減少し、現在では非感染者集団の死亡率に近づいている可能性がある。HIVに関するEUの大規模国際共同研究(CASCADE)グループは、HIV抗体陽転後の感染者と非感染者(一般)の死亡率の比較について、多剤併用抗レトロウイルス療法(HAART)導入前後の変化を評価。HAART導入後は5年死亡率が一般死亡率とほぼ変わらないほど改善されていると報告した。JAMA誌2008年7月2日号より。

DNAメチル化は年齢とともに変化し家系的に類似

DNA配列がメチル化など非遺伝的要因で修飾されたことを記す、いわゆる「エピジェネティック・マーク」は、がんなどの後発性疾患を説明できるのではないかと注目されている。米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部のHans T. Bjornsson氏らは、個々人のDNAメチル化の経時変化について調べた。JAMA誌2008年6月25日号より。