急性心原性肺水腫への非侵襲的換気療法、死亡率は改善せず

急性心原性肺水腫患者に対して、気管切開・挿管によらない非侵襲的換気療法(持続気道陽圧換気療法:CPAP、または非侵襲的間欠陽圧換気療法:NIPPV)は有効で、死亡率を低下させる可能性があるとされる。そこで、英国エジンバラ王立病院のAlasdair Gray氏らThree Interventions in Cardiogenic Pulmonary Oedema:3CPOの研究グループは、気管挿管による標準酸素療法とCPAP、NIPPVを比較検討した。NEJM誌2008年7月10日号より。
患者1,069例を3療法に割り付け7日間の転帰を比較
非侵襲的換気療法が死亡率を低下させるかどうか、CPAPとNIPPVの転帰に重大な違いがあるかどうかを見極めるため、多施設共同公開前向き無作為化試験を行った。
患者合計1,069例(平均年齢±SD:77.7±9.7歳、女性56.9%)を、標準酸素療法367例、CPAP(5~15cm H2O)346例、NIPPV(吸気圧:8~20cm H2O、呼気圧:4~10cm H2O)356例に、それぞれ割り付けた。
非侵襲的換気療法と標準酸素療法を比較する主要エンドポイントは処置後7日以内の死亡。NIPPVとCPAPを比較する主要エンドポイントは同7日以内の死亡または挿管実施とした。
呼吸困難と代謝障害は急速に改善するが
7日後の死亡率では、標準酸素療法群(9.8%)と非侵襲的換気療法群(9.5%)に有意差はなかった(P=0.87)。
非侵襲的換気療法の7日以内の死亡または挿管実施の複合エンドポイントは、CPAP(11.7%)とNIPPV(11.1%)の間に有意差はなかった(P=0.81)。
非侵襲的換気療法は標準酸素療法と比較して、患者自身の申告による呼吸困難(療法差:1~10の視覚アナログスケールで0.7、95%信頼区間:0.2~1.3、P=0.008)、心拍数(療法差:毎分4拍、95%信頼区間:1~6、P=0.004)、アシドーシス(療法差:pH 0.03、95%信頼区間:0.02~0.04、P<0.001)、高二酸化炭素血症(療法差:0.7kPaCO2(5.2 mmHg)、95%信頼区間:0.4~0.9、P<0.001)の平均値が、処置開始から1時間で大きく改善した。処置に関連した有害事象はみられていない。
以上の結果を踏まえ「急性心原性肺水腫患者において、非侵襲的換気療法は標準酸素療法より急速に呼吸困難と代謝障害を改善する。しかし短期死亡率には影響が及ばない」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)
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