急性腎障害に対して治療集中度では効果に差はない

提供元:ケアネット

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公開日:2008/07/16

 

重症の急性腎障害に対して、腎代替療法をどの程度行うべきかについては論議が続いている。米国退役軍人ヘルスケアシステムと国立衛生研究所(VA/NIH)の急性腎不全調査チームは比較検討を行い、「集中的な腎機能補助療法を行っても、効果に有意差は見られない」と報告した。NEJM誌2008年7月3日号(オンライン版2008年5月20日号)より。

血液透析の頻度と血液濾過量の差で比較検討




試験は、急性腎障害と、腎以外の臓器不全が1つ以上ある、もしくは敗血症を呈する重症患者1,124例を、集中的な腎代替療法(集中治療群)、あるいは集中度の低い腎代替療法(非集中治療群)のいずれかに無作為に割り付け行われた。

両群患者のベースラインの特性は同じ。主要エンドポイントは、60日時点の全死因死亡とした。

両群とも、血行動態が安定した患者には間欠的血液透析を行い、血行動態が不安定な患者には持続的静静脈血液濾過透析または持続的低効率透析を行った。

集中的治療群は、間欠的血液透析と持続的低効率透析を週6回、および35mL/kg体重/時の持続的静静脈血液濾過透析が行われた。非集中治療群には、治療法は同様だが、頻度が週3回、20mL/kg体重/時で行われた。

死亡率、治療期間、腎機能回復率などに有意差なし




この結果、60日時点の全死因死亡率は、集中治療群で53.6%、非集中治療群は51.5%だった(オッズ比:1.09、95%信頼区間:0.86~1.40、P=0.47)。両群間には、腎代替療法の施療期間、腎機能の回復率または腎以外の臓器不全の発生率に有意差はなかった。

間欠的血液透析中に低血圧症が起きた頻度は、集中的治療群の患者のほうが多かったが、低血圧症が起きた血液透析の頻度自体は両群で同等だった。

死亡率や腎機能、腎以外の臓器不全改善は、治療の集中度では有意差は認められなかったと結論している。

(武藤まき:医療ライター)