ネガティブ感情は心疾患イベントに関連:Whitehall IIスタディ

心疾患イベントのリスク増加に心理的因子(不安、敵意/怒り、うつ)が関わっていることを示す研究がいくつかあるが、ポジティブな感情、ネガティブな感情それぞれを独立因子とし、二次的な冠動脈性心疾患イベントとの関連(影響およびリスク)を検討する研究が報告された。イギリスでのWhitehall IIスタディからの報告。同スタディは1985年にセットされ追跡調査されている、健康と疾患の社会経済的傾向を探るための経時的研究である。BMJ誌2008年6月30日号掲載より。
1万308人を12年以上追跡調査
追跡期間12年以上の前向きコホート研究としてデザインされた試験には、ロンドンに本部事務所を置く20の行政機関に属する1万308人(1985年登録時35~55歳)が参加した。
主要転帰項目は、致死性冠動脈性心疾患、非致死性心筋梗塞、狭心症(n=619、追跡期間12.5年)。
年齢、性、民族性、社会経済的位置づけで調整したコックス回帰分析の結果、ポジティブ感情と、バランスがとれた感情(バランス・スコアに着目した指標で評価した感情)は、冠動脈性心疾患との関連は見出せなかった。ハザード比はそれぞれ1.01(95%信頼区間:0.82~1.24)、0.89(0.73~1.09)。
ポジティブ感情、バランスのとれた感情との関連は見られなかったが
さらに行動のリスク因子(喫煙、飲酒、1日の果物と野菜摂取量、運動、BMI)、生物学的リスク因子(高血圧、血中コレステロール、糖尿病)、仕事による精神的ストレスの因子で補正をしても、結果は変わらなかった。
しかし、ネガティブ感情を有する区分に分類された参加者には、冠動脈性心疾患イベント増が見られた(ハザード比:1.32、95%信頼区間:1.09~1.60)。この相関は、複数の交絡因子の調整後も変わらなかった。
この結果を踏まえ、「ポジティブ感情と、バランスのとれた感情は、男女ともスタディ加入時に冠動脈性心疾患と診断されなかった場合、将来的な発症を予測する因子とはならないようだ。ネガティブ感情には弱い相関が見られる。さらなるスタディで確認する必要があるだろう」と結論している。
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