日本語でわかる最新の海外医学論文|page:829

コレステロール流出能と心血管イベントは逆相関/NEJM

 アテローム硬化性心血管疾患の新たなバイオマーカーとして、コレステロール流出能(cholesterol efflux capacity)が有望であることが、米国・テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターのAnand Rohatgi氏らによる検討の結果、明らかにされた。一般健康集団(心血管疾患のない)を対象とした検討において、コレステロール流出能とイベント発生が逆相関の関連性を有することが示され、同関連性は伝統的な心血管リスク因子、HDLコレステロール(HDL-C)値、HDL粒子数で補正後も維持されたことが示された。NEJM誌オンライン版2014年11月18日号掲載の報告より。

腎移植後のBKウイルス尿症、キノロンで予防できるか/JAMA

 腎移植後レシピエントの重大合併症であるBKウイルス感染症に対して、移植後早期開始のレボフロキサシン(商品名:クラビットほか)療法(3ヵ月間投与)は、BKウイルス尿症発症を予防しなかったことが、カナダ・オタワ大学のGreg A. Knoll氏らによる、前向き二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、判明した。BKウイルスの一般集団保有率は60~80%であり、移植後免疫療法は同ウイルスを再活性化することが知られる。ウイルス尿症に始まり、ウイルス血症、最終的にウイルス腎症に至る感染症の進行は、レシピエントの移植失敗に結びつくこと(10~100%)から問題視されている。今のところ同感染症に対する有効な治療戦略はないが、後ろ向き検討において、キノロン系抗菌薬の抗ウイルス効果が示されたことから、前向き試験による予防的投与の効果を検討する本試験が行われた。JAMA誌2014年11月26日号掲載の報告。

ALK陽性肺がんに対する標準治療を確立した重要な試験(解説:倉原 優 氏)-285

 このPROFILE 1014試験は、未治療のALK陽性進行非扁平上皮非小細胞肺がんの患者343例を、クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)250mg1日2回(3週間1サイクル)投与する群(172例)と標準化学療法を行う群(171例)にランダムに割り付けたものである。標準化学療法群は、3週間おきにペメトレキセド500mg/m2、シスプラチン75mg/m2あるいはカルボプラチンAUC5~6を最長6サイクルまで投与している。重要な点は、両群とも増悪後にクロスオーバーが認められている点である。プライマリエンドポイントは無増悪生存期間(PFS)、セカンダリエンドポイントは奏効率、全生存期間(OS)などである。

抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか

 一般的に、抗精神病薬の長期使用は死亡率、とくに心血管死のリスクを増加させるといわれているが、この知見を実証する明確なデータは存在しない。フィンランド・国立健康福祉センターのMinna Torniainen氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象に、抗精神病薬曝露と死亡率との関係を検討した。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2014年11月24日号の報告。

気管支喘息、スピリーバ レスピマットへの期待

 2014年12月3日、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社によるスピリーバ レスピマット喘息適応追加記者発表会が都内にて行われた。当日は足立 満氏(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター山王病院アレルギー内科)が「喘息治療の現状とスピリーバ レスピマットへの期待」と題し講演した。

1型糖尿病、コントロール良でも死亡リスク2倍/NEJM

 血糖コントロール(糖化ヘモグロビン値)6.9%以下であった1型糖尿病患者の全死因死亡/心血管系の原因による死亡は、適合一般集団の2倍であることが、スウェーデン・NU-Hospital OrganizationのMarcus Lind氏らによる検討の結果、明らかにされた。同国で1998年1月1日以降に登録された1型糖尿病患者(罹病期間 20.4年)を対象とした8.0年追跡した観察研究の結果で、同リスクは血糖コントロールが不良であったほど高く、9.7%以上の患者では全死因死亡は8.51倍、心血管系死亡は10.46倍であったという。これまで、1型糖尿病患者のレベル別血糖コントロールと全死因死亡/心血管系死亡との関連は明らかになっていなかった。NEJM誌2014年11月20日号掲載の報告より。

院外心停止時の機械的心肺蘇生、生存率改善せず/Lancet

 院外心停止時の心臓マッサージについて、機械的心肺蘇生(CPR)vs.徒手的CPRのアウトカムを比較した結果、両群の30日生存率は同等であったことが、英国・ウォーリック大学のGavin D Perkins氏らによる検討の結果、示された。心マは質の高い胸骨圧迫を維持したCPRが求められることから、機器使用のほうが有効ではないかとして普及が進んでいる。しかし、有効性のエビデンスはほとんど示されておらず、先行研究でもアウトカムを改善しないと報告されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「先行研究の報告とも合わせて、機械的CPR法を普及させても、生存は改善しないことが示された」と述べ、「本研究により、機械的CPRが優位である点は認められないこと、および救急医療についての訓練および実践の難しさを強調するものとなった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年11月16日号掲載の報告より。

自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か

 さまざまな精神疾患患者を対象に、自殺念慮とその後の自殺との関連性を調べた結果、統合失調症スペクトラム患者での関連性が気分障害患者よりも強いことが示された。オーストラリア・Prince of Wales HospitalのC. L. Chapman氏らがメタ解析の結果、報告した。なお著者は結果について、試験間の不均一性や、自殺念慮と自殺の関連を誇張するような手法の試験も含まれている点を考慮して、慎重に解釈すべきと述べている。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2014年10月31日号の掲載報告。

骨粗鬆症に好ましい注射製剤は?

 近年、数ヵ月~1年に1回の投与で治療が行える注射用骨粗鬆症治療薬が登場し、その有効性と利便性から人気が高まっている。米国・ロヨラ大学のKellen C. Sheedy氏らは、デノスマブ(商品名:プラリア)とゾレドロン酸(Reclast、国内未承認)の有効性および忍容性についてレトロスペクティブに調査を行った。

早期経鼻栄養、感染症・死亡リスク低下せず/NEJM

 急性膵炎で合併症リスクの高い患者に対し、早期に経鼻栄養チューブによる経腸栄養を始めても、救急受診から72時間後に経口摂取を始め必要に応じて経管栄養を行う場合と比べ、主要な感染症や死亡リスクの低下に結び付かないことが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのO.J.Bakker氏らが、208例の患者について行った多施設共同無作為化試験の結果、報告した。重症急性膵炎の患者に対しては、腸管からの感染症予防を目的として、早期に経鼻腸管栄養を開始することが多い。しかし、この戦略を支持するエビデンスは限定的だった。NEJM誌2014年11月20日号掲載の報告より。

低用量アスピリンで心血管イベント一次予防せず~高リスク日本人高齢者/JAMA

 アテローム性動脈硬化症のリスク因子を持つ日本人高齢者への、1日1回低用量アスピリン投与について、心血管イベントの一次予防効果は認められないことが示された。早稲田大学特命教授の池田康夫氏らが、約1万5,000例について行った非盲検無作為化比較試験「JPPP試験」の結果、明らかになった。試験は、追跡期間中央値約5年の時点で中止されている。JAMA誌2014年11月17日号掲載の報告。

PRIZE試験:早期関節リウマチにおけるエタネルセプト減量による寛解維持(解説:金子 開知 氏)-284

 関節リウマチ (RA) 治療は、メトトレキサート (MTX) や生物学的製剤をはじめとする強力な治療薬によりパラダイムシフトをもたらした。生物学的製剤は、優れた寛解率や関節破壊抑制効果を持つが、高薬価であり、寛解後はいつまで継続すべきであるかという課題がある。

ケタミンは難治性うつ病に使えるのか

 難治性うつ病患者において、NMDA受容体拮抗薬ケタミンは迅速な抗うつ効果を示すが、認知機能への有害作用については十分な検討が行われていなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のJames W Murrough氏らは、難治性うつ病患者に対するケタミンの使用に関する検討の結果、有害認知作用は治療後7日時点で消失し、ベースラインでの処理速度が緩徐である患者ほどうつ症状の改善効果は大きいことを報告した。結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、臨床検体におけるケタミンの認知プロファイルを明らかにし、また臨床的に有用な治療反応モジュレータ―を特定することが求められる」とまとめている。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2014年11月6日号の掲載報告。

25歳以上AGA男性は毛包に注意?

 日本人の男性型脱毛症(AGA)の薄毛プロセスは、毛髪の濃さよりも毛包が小さくなることが寄与していることが、資生堂研究センターのA. Ishino氏らによる検討の結果、報告された。25歳以上でAGAを有している人ではその傾向が明らかだという。British Journal of Dermatology誌2014年11月号(オンライン版2014年10月19日号)の掲載報告。

冠動脈バイパス術に僧帽弁形成術併用は有用か/NEJM

 中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症について、冠動脈バイパス移植術(CABG)単独手術群とCABG+僧帽弁形成術の併用手術群を比較した結果、僧帽弁形成術の併用処置を行っても高度の左室逆リモデリングに至らなかったことが、米国・マウントサイナイ医科大学のPeter K. Smith氏らによる検討の結果、示された。むしろ併用手術により、有害イベントが有意に増大することも判明した。NEJM誌オンライン版2014年11月18日号掲載の報告より。