日本語でわかる最新の海外医学論文|page:832

腰痛に対する植物薬の実力は?

 非特異的腰痛に対する植物薬(herbal medicine)の有効性を検討する目的で、米国・ミシガン大学のHanna Oltean氏らはシステマティックレビューを行った。その結果、トウガラシはプラセボに比べ疼痛軽減に有効であることを報告した。また、デビルズクロー、セイヨウシロヤナギ、ヒレハリソウおよびラベンダー精油もプラセボより有効である可能性が示唆されたが、エビデンスの質が低~中であったという。今後、適切にデザインされた大規模試験による検討が必要だと指摘している。Cochrane Database of Systematic Reviews誌2014年12月23日号の掲載報告。

学校での自殺予防介入は有効/Lancet

 学校ベースの自殺防止プログラムにより、生徒の自殺企図や重大な自殺念慮を減らすことができたことを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のDanuta Wasserman氏らが、多施設共同集団無作為化対照試験SEYLEの結果、報告した。若者の自殺は深刻な公衆衛生問題となっており、根拠に基づく予防プログラムへの期待が高まっている。今回の結果について著者は、「学校でのユニバーサルな自殺予防介入が有益であることが実証された」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年1月8日号掲載の報告より。

心血管疾患予防の地域介入40年、その効果は?/JAMA

 40年間にわたる地域への心血管疾患予防プログラムの継続的な介入により、継続しなかった地域と比較して、同期間の入院率および死亡率が低下したことが報告された。米国・フランクリン記念病院(メイン州)のN. Burgess Record氏らによる同州低所得地域フランクリン郡への介入継続観察研究の結果、示された。総合的な心血管リスク減少プログラムは、とくに地方の低所得地域では10年以上行われている例がほとんどなく、罹患率や死亡率へのリスク因子の改善効果が不明であった。今回の結果を踏まえて著者は、「同様のプログラム効果が他の米国地域(とくに過疎の地方で)、また世界的に普遍的に認められるのかについて、さらなる検討が必要だ」とまとめている。JAMA誌2015年1月13日号掲載の報告より。

低リスクHER2陽性乳がんの術後補助化学療法(解説:笹田 伸介 氏)-306

 化学療法+トラスツズマブはHER2陽性乳がんの再発を抑制し、全生存期間を延長するが、これらの臨床試験は腫瘍径が1cmあるいは2cmを超えるものが対象となっており、1cm以下を対象としたランダム化比較試験は行われていない。そのため、「乳癌診療ガイドライン2013年版」、「NCCNガイドライン2014年版」では0.5cm以下(T1a)のN0症例には術後補助化学療法は推奨されず、0.6~1.0cm(T1b)には考慮するとされている。

抗精神病薬は脳に委縮などのダメージを与えるのか

 最近のデータで、抗精神病薬治療と統合失調症患者における皮質灰白質減少との関連が示され、抗精神病薬の脳の構造・機能への影響に関する懸念が生じている。しかし、統合失調症患者個人の皮質機能を直接測定し、抗精神病薬に関連する灰白質の減少を示した研究はこれまで行われていなかった。米国・カリフォルニア大学のTyler A. Lesh氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象としたケースコントロール横断研究を実施し、抗精神病薬が脳の構造と機能に及ぼす影響を検討した。その結果、抗精神病薬による治療を行った患者は、行わなかった患者に比べ前頭葉皮質の有意な菲薄化が認められたが、前頭葉機能の活性亢進ならびに行動パフォーマンスの上昇がみられたことを報告。有害な影響ばかりではなく認知機能の改善に働く可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。

NSAIDsは大腸がんを予防しうるか

 以前より、NSAIDsの使用が大腸がんのリスクを低減するという実質的なエビデンスがあるが、どのようなサブグループで化学的予防効果が副作用のリスクを上回るかについては特定されていない。米国・Fred Hutchinson Cancer Research CenterのXiaoliang Wang氏らは、VITAL試験のコホートを対象に、大腸がんのあらゆるリスク因子とNSAIDs使用との関連性を調べた。その結果、NSAIDsの高頻度・長期投与と大腸がんリスクとの関連性について、サブグループ間の有意差は認められなかったとしたうえで、「NSAIDsは他の因子に大きく影響されることなく、大腸がん予防において全体的に有益な役割を持つ」と結論付けた。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2015年1月22日号掲載の報告。

スタチン療法の効果に男女差はあるか?/Lancet

 同リスクであれば男女の、スタチン療法による主要血管イベントの予防効果は同等であることが明らかにされた。オーストラリア・National Health and Medical Research CouncilらによるCholesterol Treatment Trialists’(CTT)Collaboration(コレステロール治療試験に関する共同研究)が、27件の無作為化試験、被験者総数約17万4,000例を含んだメタ解析の結果、明らかにした。これまで、女性に対するスタチン療法が、男性と同程度の効果があるかどうかについては議論が分かれていた。Lancet誌オンライン版2015年1月9日号掲載の報告より。

不妊治療、体外受精を排卵誘発+膣内精子注入と比較/BMJ

 原因不明や男性側に軽度不妊があるカップルに対する体外受精2種の方法の有効性を、排卵誘発+子宮膣内精子注入法との比較で検討したが、健常児の出産率について非劣性であることが示された。多胎妊娠率についても、3群間で同等であったという。オランダ・アムステルダム大学のA J Bensdorp氏らが、カップル602組について行った無作為化比較試験の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2015年1月9日号で発表した。

抗コリン薬は高齢者の認知機能に悪影響

 高齢者、とくに認知症を有している場合は抗コリン薬の有害な影響を受けやすい。オーストラリア・ニューカッスル大学のKaren E. Mate氏らは、高齢者における抗コリン薬処方の実態とそれに関連する患者背景因子を調査した。その結果、認知症を有する例は、認知症を有していない例に比べて薬剤数が有意に多く、抗コリン薬負荷が有意に高いことを報告した。そのうえで著者は、「抗コリン薬の有害な影響を考慮すると、認知症患者に対する抗コリン薬処方について改善の余地がある」と示唆した。Drugs & Aging誌オンライン版2015年1月8日号の掲載報告。

早期乳がん、診断率や生存率は人種間で異なる/JAMA

 米国で浸潤性乳がんと診断された女性のうち、早期乳がんの診断率やStage I診断後の生存率は、人種や民族の違いによって多彩であり、これは腫瘍の生物学的悪性度の違いで説明できる可能性があることが、カナダ・Women’s College HospitalのJavaid Iqbal氏らの検討で示された。乳がん管理プログラムの目標は、Stage I乳がんの割合を相対的に多くすることで、がん死亡率を減少させることとされる。そのためには、Stage I診断の関連因子やStage Iの検出率がよくない集団を同定することが重要である。JAMA誌2015年1月13日号掲載の報告。

SSRIの薬物治療モニタリング、実施率は

 SSRIの薬物治療モニタリング(TDM)の実施について、高齢患者を対象とするものが若年患者を対象としたものと比べて非常に少ないことが、ノルウェー・オスロ大学のM. Hermann氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「TDMは高齢患者になるほど重要だとするガイドラインと対照的な状況である」と指摘している。Therapeutic Drug Monitoring誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。

HCV治療レジメン、3剤目は直接作用型が有用/Lancet

 未治療の肝硬変なしC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染患者に対しソホスブビル+レディパスビルに直接作用型抗ウイルス薬を加えた3剤併用レジメンは、6週間で高率のウイルス学的著効(SVR)が示され忍容性も良好であることが、米国立衛生研究所(NIH)のAnita Kohli氏らによる概念実証(proof-of-concept)第IIA相コホート試験の結果、報告された。ソホスブビル+レディパスビル+リバビリンの3剤併用レジメンでは、高いSVRを得るには8週間が必要なことが先行研究で示されており、著者は「直接作用型抗ウイルス薬を加えた3剤併用は、肝硬変なしHCV遺伝子型1型感染患者の治療期間を短縮可能である」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年1月12日号掲載の報告より。

高血糖の苦い記憶-DCCT/EDIC 30年の成果-(解説:住谷 哲 氏)-305

 1993年に発表されたDCCTは、厳格な血糖管理を目指した強化療法が1型糖尿病患者の細小血管合併症を減少させることを初めて明らかにした。本論文はその後の観察研究であるEDICからの報告であり、早期の6.5年間の厳格な血糖管理が治療開始27年後の総死亡を減少させることが明らかとなった。

統合失調症の慢性化に関連する遺伝子か

 米国・ピッツバーグ大学のD Arion氏らは、統合失調症患者では背外側前頭前皮質 (DLPFC)に存在する錐体細胞の活性に依存する作業記憶(ワーキングメモリー)の異常が生じていることに着目し、錐体細胞特異的な遺伝子発現の状況について検討を行った。その結果、統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的な遺伝子の発現が低下していること、これらは統合失調感情障害ではみられないことを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。

非喫煙者にも広がる電子タバコ

 電子タバコ愛用者は増えているのか。米国・ミシシッピ大学のRobert C McMillen氏らは、米国成人を対象に、電子タバコ使用の人口統計学的予測因子、および電子タバコ使用者の喫煙状況について検討した。その結果、2010年からの4年間で電子タバコが急速に普及していること、電子タバコ使用者の3分の1は非喫煙者や過去喫煙者などであり、電子タバコがニコチン摂取や再習慣化につながっている現状が明らかになった。Nicotine & tobacco research誌オンライン版2014年11月6日号の掲載報告。

小児アトピー性皮膚炎、肥満や高血圧と関連?

 アトピー性皮膚炎(AD)は全身性肥満と関連していることがこれまでに報告されているが、米国・ノースウェスタン大学のJonathan I. Silverberg氏らが行ったケースコントロール研究の結果、小児において中等度~重度のADは中心性肥満および収縮期血圧上昇と関連している可能性があることが明らかとなった。

喘息は睡眠時無呼吸の発症リスクを増大/JAMA

 喘息は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の新規発症リスク増大と関連していることが明らかにされた。米国・ウィリアム S. ミドルトン記念退役軍人病院のMihaela Teodorescu氏らが、ウィスコンシン州で行われている住民ベースの前向き疫学研究Wisconsin Sleep Cohort Studyの参加者を対象に、喘息とOSA発症との関係性を調べ報告した。OSAは喘息患者に多いことが知られている。しかしこれまで喘息とOSA発症との関連は検討されていなかったという。JAMA誌2015年1月13日号掲載の報告より。

長時間労働は多量飲酒につながる/BMJ

 労働時間が標準勧告を超えて長くなると、アルコール飲用量が健康リスクを引き起こすレベルにまで増加する可能性が高くなることが、フィンランド労働衛生研究所のMarianna Virtanen氏らの検討で示された。欧州労働時間指令の勧告では、労働時間の上限は週48時間とされる。長時間労働は、心疾患、睡眠不足、就業中のけが、精神健康問題のリスクを増大させると考えられ、危険な飲酒は常習的欠勤、仕事の非効率化や成績不振、意思決定の障害、顧客との関係悪化などの悪影響をもたらすとされるが、労働時間と危険な飲酒の関連を系統的に評価した研究はこれまでなかったという。BMJ誌オンライン版2015年1月13日号掲載の報告より。