日本語でわかる最新の海外医学論文|page:708

前糖尿病状態は心血管疾患リスクと関連/BMJ

 前糖尿病状態(耐糖能異常、空腹時血糖異常、HbA1c高値)は心血管疾患のリスク増加と関連しており、空腹時血糖値5.6mmol/L(=100.8mg/dL)以上またはHbA1c 39mmol/mol(NGSP 5.7%)以上で健康リスクが高まる可能性があることを、中国・第一人民病院のYuli Huang氏らが、前向きコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。前糖尿病状態の患者は世界的に増えているが、前糖尿病状態を定義する空腹時血糖異常やHbA1cのカットオフ値はガイドラインで異なっている。また、全死因死亡および心血管イベントとの関連性に関する報告も一貫していなかった。BMJ誌2016年11月23日号掲載の報告。

LDL-C低下によるプラークの退縮はどこまで可能か?(解説:平山 篤志 氏)-624

今回の米国心臓病学会のLate Braking Clinical Trialの目玉の1つである、GLAGOV試験の結果が発表された。試験のデザインは、冠動脈疾患患者にスタチンが投与されていてLDL-C値が80mg/dLを超える患者を対象に、スタチン治療のみを継続する群(プラセボ群)と、スタチン治療に抗PCSK9抗体であるエボロクマブを追加投与する群(エボロクマブ群)で、LDL-C値の低下の違いにより血管内超音波で測定したプラーク体積(percent atheroma volume)の変化の差を検討するものであった。

セロトニンの役割、生産性向上のために

 セロトニンは行動調整の多くの部分に関与している。セロトニンの複数の役割を統合する理論的な試みにおいて、セロトニンが遅延や処罰などの行動選択に与える負担(行動コスト)を調整していることが提議されている。フランス・ピエール・エ・マリー・キュリー大学のFlorent Meyniel氏らは、セロトニンがそれらとは違うタイプの行動コスト、たとえば努力(effort)なども行動調整しているのかについて検討した。eLife誌2016年11月8日号の報告。

4割が偽造医薬品!インターネット上に流通するED薬の実態

 国内でED(勃起不全)治療薬を製造・販売している製薬企業が合同で、インターネットから入手したED治療薬の調査を実施し、その結果を11月24日に都内で発表した。今回入手した医薬品を調査・分析した結果、4割が偽造医薬品であることが判明した。また、成分を分析した結果、有効成分の含量が150%含まれているものや、有効成分がほとんど含まれていないものがあった。また、正規品には存在しない規格の製品もみられたという。

飽和脂肪酸の多量摂取、冠動脈性心疾患リスクを増大/BMJ

 主要な飽和脂肪酸(SFA)の多量摂取は、冠動脈性心疾患リスクを増大することが、大規模コホート試験で確認された。また、摂取SFAのうち大半を占めるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の摂取エネルギーを、不飽和脂肪酸や植物性タンパク質などに置き換えると、同発症リスクは有意に低下し、なかでもパルミチン酸の置き換え低減効果が大きいことも示された。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のGeng Zong氏らが、医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)と看護師健康調査(Nurses’ Health Study)の男女2つの大規模コホートについて分析し明らかにしたもので、これまで大規模コホート試験で、個別の飽和脂肪酸と冠動脈性心疾患の関連を示した研究結果はほとんどなかったという。BMJ誌2016年11月23日号掲載の報告。

軽症喘息への低用量吸入ステロイドは?/Lancet

 症状発現頻度が週に0~2日の軽症喘息患者に対する低用量吸入コルチコステロイド(ICS)の投与は、症状増悪リスクを減らし、肺機能低下の予防効果もあることが示された。オーストラリア・シドニー大学のHelen K. Reddel氏らが、7,000例超の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験「START」の、事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2016年11月29日号で発表した。ICSは、喘息増悪と死亡率の低下に非常に有効であるが、症状発現頻度の低い喘息患者は、投与の対象に含まれていない。一方で、週に2日超の患者への投与は推奨されているが、そこを基準とするエビデンスは乏しかった。

科学的検証の重要性(解説:岡 慎一氏)-622

妊婦、とくに母子感染予防に関するランダム化比較試験(RCT)は、なかなかやりにくいというのが定説であった。事実、HIV母子感染予防に関しても、AZT単剤の時代およびAZT+3TC+LPV/rが広く使われてきた時代においても、RCTのエビデンスに基づく結果からは少なく、主としてアフリカでの使用経験からの推奨であった。

日本人統合失調症、外来と入院でメタボ率が高いのは:新潟大

 統合失調症患者は、一般よりも平均余命が有意に短く、肥満やメタボリックシンドロームにつながる可能性のある不健全な生活習慣の問題にしばしば直面する。統合失調症患者におけるメタボリックシンドロームの構成要素である肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病の有病率を明確にする必要があるが、日本における大規模調査は不十分であったことから、新潟大学の須貝 拓朗氏らが調査を行った。PLOS ONE誌2016年11月17日号の報告。

視神経乳頭出血と緑内障発症の新たな関連

 視神経乳頭出血は、高眼圧患者における原発開放隅角緑内障(POAG)発症の独立した予測因子である。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のDonald L Budenz氏らが、前向きコホート研究Ocular Hypertension Treatment Study(OHTS)の参加者を対象とした検討において明らかにした。さらに、視神経乳頭出血の予測因子は、高眼圧患者におけるPOAGの予測因子と非常に類似していたことも示された。

早期診断が重症化を遅らせるゴーシェ病

 11月29日、サノフィ株式会社は、都内において「ゴーシェ病」に関するメディアセミナーを開催した。セミナーでは、疾患の概要ならびに成人ゴーシェ病患者の症例報告が行われた。ゴーシェ病とは、ライソゾーム病の1つで、先天性脂質代謝に異常を起こすまれな疾患である。小児から成人まで、あらゆる年齢で発症する可能性があり、肝脾腫、貧血、出血傾向、進行性の骨疾患など重篤な全身性の症状を引き起こす。

9価HPVワクチン、9~14歳への2回接種は男女とも有効/JAMA

 9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(メルク社製)の免疫原性について、9~14歳の男女児への2回投与(6または12ヵ月間隔で)は16~26歳の若年女性への3回投与(6ヵ月間で)に対し非劣性であることが、ノルウェー・ベルゲン大学のOle-Erik Iversen氏らによる非盲検非劣性免疫原性比較試験の結果、報告された。HPV感染は性器・肛門がん、疣贅を引き起こす。9価HPVワクチンは、子宮頸がんの90%に関与する高リスクの7つの型、および疣贅の90%に関与する2つの型のHPVに予防効果を示し、従来の2価および4価のHPVワクチンよりもカバー範囲が広い。JAMA誌オンライン版2016年11月21日号掲載の報告。

電子処方箋によって処方薬受け取り率が向上?

 処方薬の過小使用は臨床転帰不良と関連しており、米国では過小使用の多くは1次ノンアドヒアランス、すなわち、患者が処方薬を受け取っていないことが原因であるという。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のAdewole S. Adamson氏らは、医療の協調性を高めエラーを減少させると評価されている電子処方箋に着目し、1次ノンアドヒアランスへの影響について、後ろ向き研究で調べた。

医師の退職時期は? 早期退職の理由は?

 医師の退職計画と時期は、患者・病院・医療システムにとって重要である。無計画な早期の退職や遅い退職は、患者の安全性と人員配置の両方で悲惨な結果を招く。カナダ・トロント大学のMichelle Pannor Silver氏らは、医師の退職時期やプロセスにおける以下の4つの問い、(1)医師はいつ退職するのか?(2)なぜ早期退職するのか?(3)なぜ退職を遅らすのか?(4)どのような戦略が医師の定着や退職計画を促進するのか?について、既報の系統的レビューによって調査した。Human resources for health誌2016年11月号に掲載。

腎移植後のステロイド早期離脱は可能か/Lancet

 腎移植後のステロイド投与からの早期離脱のための、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(Rabbit-ATG、商品名:サイモグロブリン)またはバシリキシマブ(商品名:シムレクト)による抗体療法の、有効性と安全性に関する検討結果が報告された。免疫学的リスクが低い患者を対象に、移植後1年間の抗体療法後のステロイド早期中断を評価した結果、急性拒絶反応の予防効果はRabbit-ATGとバシリキシマブで同等であり、抗体療法後のステロイド早期中断は免疫抑制効果を低下せず、移植後糖尿病の発症に関する優位性が示された。ドイツ・アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクのOliver Thomusch氏らが、615例を対象に行った非盲検多施設共同無作為化対照試験の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2016年11月18日号掲載の報告。

新しい戦略に基づく認知症新薬開発ものがたり(解説:岡村 毅 氏)-621

臨床神経学の新しい時代の幕開けを告げる論文かもしれない。もっとも筆者は精神科医であり、神経学者からみれば素人みたいなものだ。東大にいると優秀な神経学者と親しく交流する機会が多く、彼らの頭脳明晰さには舌を巻く。きちんと解説できるだろうか…。一方で、万人に対してわかりやすく書くことは私の得意とする部分だと思い引き受けた。読み返すとやや劇画調だがご容赦いただきたい。