日本語でわかる最新の海外医学論文|page:697

救急退院後の早期死亡、入院率や疾患との関連は?/BMJ

 米国では、救急診療部を受診したメディケア受給者の多くが、致死的疾患の既往の記録がないにもかかわらず、退院後早期に死亡していることが、ハーバード大学医学大学院のZiad Obermeyer氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年2月1日号に掲載された。米国の救急診療部受診者は毎年20%近くも増加し、その結果として毎日、膨大な数の入院/退院の決定がなされている。また、入院率は病院によってかなりのばらつきがみられるが、その患者転帰との関連は不明だという。

もしかしたら、食生活の改善でADHD発症を予防できるかも

 注意欠如・多動症(ADHD)は、栄養不足や不健全な食事と関連しているが、地中海式ダイエット食との関連を調査した報告は、これまでにない。スペイン・サン・ジョアン・デウ病院のAlejandra Rios-Hernandez氏らは、地中海式ダイエット食の低アドヒアランスとADHD診断の増加に正の相関があるかを検証した。Pediatrics誌オンライン版2017年2月号の報告。

肺炎球菌ワクチン定期接種化で薬剤感受性への影響は?

 肺炎球菌ワクチンは小児および成人の肺炎球菌感染を減少させたが、ワクチンに含まれない血清型(non-vaccine serotype:NVT)の有病率が相対的に増加していることが報告されている。今回、東京医科大学の宮崎治子氏らの調査から、肺炎球菌ワクチンの急速な影響および血清型置換の進行が示唆された。ペニシリン非感受性のNVTによる有病率の増加が懸念され、著者らは「最適な予防戦略を立てるために肺炎球菌血清型と薬剤感受性の継続的なモニタリングが必要」と指摘している。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2017年2月1日号に掲載。

アセタゾラミド術前投与で緑内障眼の白内障術後における眼圧上昇を抑制

 経口アセタゾラミド内服による、緑内障眼の白内障術後の眼圧上昇予防効果は認められるのか。福岡県・林眼科病院の林研氏らが、その有効性と適切な投与時期について無作為化試験にて検討した。その結果、原発開放隅角緑内障(POAG)眼では水晶体超音波乳化吸引術後3~7時間に眼圧上昇が認められ、手術1時間前のアセタゾラミド経口投与は非投与および手術3時間後投与と比較して、眼圧上昇を抑制することを明らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2017年1月19日号掲載の報告。

レトロゾールが無排卵性不妊の1次治療に最良か/BMJ

 WHOグループII無排卵女性の治療として、アロマターゼ阻害薬レトロゾールは、ほかの治療に比べ生児出産率が高く、妊娠率や排卵誘発率も良好で、多胎妊娠率は低いことが、オーストラリア・アデレード大学のRui Wang氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年1月31日号に掲載された。英国のNICEガイダンス(2013年)によれば、7組の男女に1組の割合で不妊がみられ、その4分の1が排卵障害に起因する。無排卵性不妊の多くが性腺刺激正常無排卵(WHOグループII無排卵)で、ほとんどが多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)によって引き起こされる。現行ガイドラインの多くが選択的エストロゲン受容体調節薬クロミフェンを標準的1次治療としているが、最も有効性が高い治療法は必ずしも明確ではないという。

ストレス対策は新たな循環器疾患の予防戦略となりうるか?(解説:有馬 久富 氏)-643

以前より、慢性的なストレスが循環器疾患のリスクを増大させうることが知られていたが、そのメカニズムは長い間不明であった。今回、マサチューセッツ総合病院でFDG-PET検査を受けた293例を平均3.7年間追跡した成績から、慢性ストレスが、扁桃体の活性化、骨髄由来前駆細胞の放出、動脈壁の炎症を経て、循環器疾患のリスクを増大させる可能性が示唆されたとLancet誌に報告された。ストレスから循環器疾患に至るメカニズムが明らかになったことにより、ストレス対策およびストレスから動脈硬化へ至るプロセスへの対策が、循環器疾患の予防戦略となりうることが示唆された。

うつ病の治療抵抗性と寛解を予測する因子とは

 うつ病に対する抗うつ薬使用は、汎用されている治療にもかかわらず、大うつ病患者の約3分の1には十分な効果を発揮しない。オーストリア・ウィーン大学のAlexander Kautzky氏らは、治療アウトカムのための臨床的、社会的、心理社会学的な48の予測因子による新たな洞察を、治療抵抗性の研究グループのデータと機械学習を利用し、検討を行った。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2017年1月3日号の報告。

「病院を撃つな!」キャンペーン署名活動のお知らせ―国境なき医師団日本

中東各国の紛争地で病院が標的となる爆撃が相次ぎ、患者や現地で支援活動に当たっている医療関係者が命を落としている事態を受け、特定非営利活動法人 国境なき医師団(MSF)は、より一層の安全確保に努めるよう日本政府に働きかけを行うための署名を募っている。

繰り返す肺炎、危険因子となる薬剤は?

 日本や高齢化が急速に進行する社会において、繰り返す肺炎(recurrent pneumonia:RP)は大きな臨床的問題である。全国成人肺炎研究グループ(APSG-J)は、わが国のRP発症率と潜在的な危険因子を調査するために、成人肺炎の前向き研究を実施した。その結果、RPは肺炎による疾病負荷のかなりの割合を占めることが示唆され、RPの独立した危険因子として、肺炎既往歴、慢性の肺疾患、吸入ステロイドや催眠鎮静薬の使用、緑膿菌の検出が同定された。著者らは、高齢者におけるRPの影響を減らすために薬物使用に関して注意が必要としている。BMC pulmonary medicine誌2017年1月11日号に掲載。

精神的苦痛は発がんリスクを増大/BMJ

 精神的苦痛(うつ、不安の症状)が重くなるほど、大腸がんや前立腺がんのリスクが高まり、精神的苦痛は発がんの予測因子となる可能性があることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのG David Batty氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月25日号に掲載された。精神的苦痛とがんとの関連については、(1)精神的苦痛に繰り返し曝されるとナチュラルキラー細胞の機能が喪失して腫瘍細胞の増殖を招く、(2)うつ症状は視床下部-下垂体-副腎系の異常をもたらし、とくにホルモン関連がんの防御過程に不良な影響を及ぼす、(3)苦痛の症状は、喫煙、運動不足、食事の乱れ、肥満などの生活様式関連のリスク因子への好ましくない影響を介して、間接的に発がんの可能性を高めるなどの機序が提唱されている。

妊娠中の甲状腺ホルモン治療、流産・死産への影響は?/BMJ

 潜在性甲状腺機能低下症の妊婦では、甲状腺ホルモン薬の投与により妊娠喪失のリスクが低減するが、早産などのリスクは増加することが、米国・アーカンソー大学のSpyridoula Maraka氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月25日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は妊婦に有害な転帰をもたらすことが、観察研究で示唆されている。甲状腺ホルモン薬のベネフィットを支持するエビデンスは十分でないにもかかわらず、米国の現行ガイドラインではレボチロキシンが推奨されているという。

脳室内出血の血腫洗浄、アルテプラーゼ vs.生理食塩水で機能改善に有意差なし(解説:中川原 譲二 氏)-642

米国・ジョンズ・ホプキンス大学のDaniel F Hanley氏らが、世界73施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験CLEAR III(Clot Lysis:Evaluating Accelerated Resolution of Intraventricular Hemorrhage Phase III)の結果を報告し、脳室内出血に対して、脳室ドレーンを介した血栓溶解剤:アルテプラーゼによる血腫洗浄を行っても、生理食塩水での洗浄と比較して有意な機能改善は認められなかったとした。

冠動脈疾患患者における心房細動の危険因子は?

 一般集団における心房細動の危険因子は明らかだが、特定の疾患を持つ患者への影響は不明である。今回、札幌医科大学の村上 直人氏らが、冠動脈疾患(CAD)患者と非CAD患者における心房細動の危険因子を調べた結果、CADの有無により心房細動の主要な危険因子が異なることが示唆された。CAD患者では血清尿酸値高値、非CAD患者ではスタチン非使用で心房細動が発症しやすいことが示された。Open heart誌オンライン版2017年1月16日号に掲載。

乳幼児の中等度細気管支炎に、高流量酸素療法は?/Lancet

 中等度の細気管支炎に対する高流量加温加湿鼻カニューレ酸素療法(HFWHO)は、低流量鼻カニューレ酸素療法(標準酸素療法)と比較して、酸素離脱までの時間を短縮しないことが示された。オーストラリア・John Hunter小児病院のElizabeth Kepreotes氏らが、HFWHOの有用性を検証することを目的とした第IV相無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。細気管支炎は乳幼児で最も一般的な肺感染症であり、治療は呼吸困難や低酸素症の管理が中心となる。HFWHOの使用は増加しているが、これまで無作為化試験は行われていなかった。今回の結果について著者は、「中等度細気管支炎に対するHFWHOの早期使用は、基礎疾患の経過を緩和するものではないことを示唆するが、HFWHOには、費用が高額な集中治療を必要とする小児を減らす緊急処置としての役割があるかもしれない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年2月1日号掲載の報告。