日本語でわかる最新の海外医学論文|page:695

市販後調査にお金をかけるくらいなら薬代を安くしてもらいたい(解説:折笠 秀樹 氏)-646

ドイツでの新薬の市販後調査(PMS)558研究を対象にした、2008~10年まで3年間の調査結果である。医師へ支払われた謝金は、中央値として患者1人当たり2万4,000円であった。558研究にかけられた総費用は260億円だから、1研究当たり平均4,700万円かかっていた。これだけのお金をかけて成果はほぼゼロ。新規の副作用は発見されなかったし、研究結果を論文にしたのはわずか1%。しかも、こうした研究データは何ひとつパブリックドメインになっていない。260億円ものお金を市販後調査に費やすなら、薬価を安くするなど、患者さんに還元してもらいたい。

認知症発症予測に歩行速度や嗅覚テスト

 軽度認知障害(MCI)、認知症、死亡率における、老化に伴う危険因子の性質および共通性は、よくわかっていない。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のDarren M Lipnicki氏らは、認知機能が正常な多くの人々を含む6年間のシングルコホート研究で潜在的な危険因子を同時に調査した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2016年12月31日号の報告。

コーヒーと悪性黒色腫リスク~50万人の前向き研究

 コーヒーや紅茶の活性成分が悪性黒色腫の発症抑制作用を有することがin vitroおよび動物実験で示唆されているが、疫学的なエビデンスは少ない。今回、大規模コホート研究であるEuropean Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC)においてコーヒー(全体、カフェイン入り、カフェイン抜き)および紅茶の摂取量と悪性黒色腫のリスクとの関係を調べた。その結果、カフェイン入りコーヒーの摂取が男性における悪性黒色腫リスクと逆相関することが認められた。International journal of cancer誌オンライン版2017年2月20日号に掲載。

抗IL-6抗体sirukumab、治療抵抗性RAに効果/Lancet

 抗TNF製剤に治療抵抗性または不耐容の活動性関節リウマチ(RA)患者において、ヒト型抗インターロイキン(IL)-6モノクローナル抗体製剤sirukumabの50mg/4週投与または100mg/2週投与は、プラセボと比較していずれも忍容性は良好で、RAの症状を有意に改善することが示された。オーストリア・ウィーン大学のDaniel Aletaha氏らが、RAに対するsirukumabの有効性と安全性を評価した第III相試験の1つSIRROUND-T試験の結果を報告した。sirukumabは、2016年9月に欧州および米国で、10月には本邦でも、抗リウマチ薬として製造承認申請が行われている。Lancet誌オンライン版2017年2月15日号掲載の報告。

4種配合降圧薬Quadpill、初回治療で有効性示す/Lancet

 4種の降圧薬(イルベサルタン、アムロジピン、ヒドロクロロチアジド、アテノロール)を標準用量の4分の1ずつ、1つのカプセルに配合したQuadpillによる降圧療法は、降圧薬のクラスを超えて相加的な効果を発揮し、臨床的に重要な血圧の低下をもたらす可能性があることが明らかとなった。オーストラリア・シドニー大学のClara K Chow氏らが、有効性と安全性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験(Quadpill試験)の結果を報告した。世界的に高血圧治療はほとんど単剤で行われているが、コントロール率は低く、単剤療法では平均してわずか9/5mmHg程度しか低下しない。そのため、新たな血圧コントロール戦略の開発が喫緊の課題となっている。低用量での併用療法は、副作用は少なく効果は維持されることが示唆されていたが、超低用量での有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2017年2月9日号掲載の報告。

ランダム化試験としては不十分、実用化にはさらなる検討が必要(解説:桑島 巖 氏)-645

近年の高血圧治療の傾向として、降圧目標値が低くなっており、その達成のためには多剤併用は避けられなくなっている。そこで、RAS阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬、β遮断薬の標準用量の4分の1ずつを4剤組み合わせたQuadpillという薬剤を作り、その降圧効果をプラセボと二重盲検法で比較したのがこの論文である。

抗精神病薬の高用量投与は悪か

 統合失調症に対する抗精神病薬の高用量投与について、良好な症状改善との関連および有害事象や神経認知機能に対する影響を、ギリシャ・テッサロニキ・アリストテレス大学のKonstantinos N Fountoulakis氏らが、小規模パイロット自然主義横断研究により評価を行った。Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry誌オンライン版2017年1月28日号の報告。

糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

 活動期潰瘍性大腸炎における強化注入法にて行うマルチドナー糞便移植は、臨床的寛解および内視鏡的寛解をもたらすことが、無作為化試験の結果、示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のSudarshan Paramsothy氏らによる検討で、「移植によって腸内細菌叢が多彩なものに変化し、そのことがアウトカムに関与していた。糞便移植は、潰瘍性大腸炎の新たな治療オプションとして有望であることが示された」とまとめている。これまで、潰瘍性大腸炎に対する糞便移植の効果は不明であった。Lancet誌オンライン版2017年2月14日号掲載の報告。

舌下免疫療法、継続2年では効果みられず/JAMA

 中等度~重度の季節性アレルギー性鼻炎患者に対する舌下免疫療法の継続治療期間について、2年間の効果について検討した結果、フォローアップ3年目(治療中止後1年時点)の鼻アレルギー反応の改善に関してプラセボとの有意差は示されなかった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのGuy W Scadding氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。舌下免疫療法および皮下免疫療法は、季節性アレルギー性鼻炎に効果的であり、3年間継続治療を行うと、治療中止後2年間は症状の改善が認められていた。研究グループは、治療期間を2年とした場合の効果について調べる検討を行った。JAMA誌2017年2月14日号掲載の報告。

飲酒行動と喫煙行動、同じ遺伝子多型が影響?

 アルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2;rs671、Glu504Lys)およびアルコールデヒドロゲナーゼ1B(ADH1B;rs1229984、His47Arg)の遺伝子多型は、飲酒行動に強く影響することが知られている。愛知県がんセンターの正岡寛之氏らは、喫煙行動と飲酒行動が関連するというエビデンスから、ALDH2とADH1Bの遺伝子多型が喫煙開始とも関連する可能性を検証するために大規模な横断研究を行った。その結果、飲酒量や頻度のほか、これらの遺伝子多型の組み合わせにより、喫煙開始を予測しうることが示唆された。Drug and alcohol dependence誌オンライン版2017年2月1日号に掲載。

NOAC登場で変わる世界の心房細動の脳卒中予防

 心房細動(AF)は世界中で最もよく遭遇する不整脈で、脳卒中のリスクが5倍に高まる危険性がある。抗凝固薬、とりわけビタミンK拮抗薬が長い間、心房細動患者の基礎であり、過去の臨床試験において、コントロール群やプラセボと比較して、虚血性脳卒中を64%、全死亡率を26%減少させることが明らかになっている。Gloria-AF(Global Registry on Long Term Oral Antithrombotic Treatment in Patients with AF)は、脳卒中のリスクがあり、新規に診断された非弁膜症性心房細動に対する前向きのグローバルレジストリである。オランダのHuisman氏らは、このレジストリを用いて、ダビガトラン登場前後における世界全体での抗凝固療法の種類と割合を比較、検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年2月号の掲載。

閉経前の子宮摘出、卵巣温存で全死亡抑制/BMJ

 閉経前女性の子宮摘出術時に卵巣を温存すると、2つの卵巣を切除した場合に比べ、全死因死亡が抑制され、虚血性心疾患やがんによる死亡も低減するとの研究結果が、BMJ誌2017年2月6日号に掲載された。研究を行った英国・バーミンガム大学病院NHSファウンデーション・トラストのJemma Mytton氏らは、「閉経前女性には、卵巣を2つとも切除すれば卵巣がんを予防できるが、卵巣がんより発症率の高いがんを含め、これらのリスクが増加することを伝えるべきである」と指摘している。

脳トレーニングで認知症予防、認知機能低下リスクが20~30%減

 精神的な刺激となる活動への取り組みと、軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病のオッズ低下との、横断的な関連が報告されている。しかし、70歳以上の高齢者による精神的な刺激となる活動がMCI発症を予測するかについての縦断的アウトカムは、ほとんど知られていない。米国・メイヨー・クリニックのJanina Krell-Roesch氏らは、高齢者における精神的な刺激となる活動とMCI発症リスクとの関連を仮説検証し、アポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型の影響を評価した。JAMA neurology誌オンライン版2017年1月30日号の報告。

EPA、DHAは加齢黄斑変性の予防に効果的

 エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取量は、加齢黄斑変性(AMD)と関連しているのか。看護師健康調査(Nurses' Health Study)および医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)を基に、米国・ハーバード公衆衛生大学院のJuan Wu氏らが行った検討の結果、EPAやDHAを多く摂取することは中期AMDの発症を予防または遅延させる可能性があることが示唆された。ただし、進行期AMDとの関連は認められなかったという。EPAおよびDHAの摂取量が進行期AMDにどのように関連するかは、現在のところ一致したエビデンスは得られていない。Ophthalmology誌オンライン版2017年1月30日号掲載の報告。

スタチンはがん死亡リスクを下げるか~日本のコホート研究

 スタチンのがん発症やがん死亡に対する予防効果については結論が出ていない。今回、山梨大学の横道洋司氏らがバイオバンク・ジャパン・プロジェクトのデータから脂質異常症患者4万1,930例を調査したところ、スタチン単独療法が全死亡およびがん死亡に対して影響し、とくに大腸がんによる死亡に予防効果を示す可能性が示唆された。Journal of Epidemiology誌オンライン版2017年2月11日号に掲載。

胆汁性胆管炎の皮膚そう痒、画期的新薬が有望/Lancet

 原発性胆汁性胆管炎では、患者の最大70%に皮膚そう痒が発現する。開発中の回腸型胆汁酸トランスポータ(IBAT)阻害薬GSK2330672は、皮膚そう痒の重症度を軽減し、重篤な有害事象の発現もなく耐用可能との研究結果が、Lancet誌オンライン版2017年2月7日号に掲載された。報告を行った英国・ニューカッスル大学のVinod S Hegade氏らの研究グループは、「本薬は原発性胆汁性胆管炎患者の皮膚そう痒の治療における画期的新薬(first-in-class)であり、新たな重要な進歩となる可能性があるが、下痢の頻度が高いため、長期投与には限界があるかもしれない」と指摘している。