日本語でわかる最新の海外医学論文|page:685

CAD患者、体重増加で心血管イベント増加/NEJM

 冠動脈疾患(CAD)患者では、体重の変動は従来の心血管リスク因子とは独立に、死亡や心血管イベントの発生割合を高めることが、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らが実施したTreating to New Targets(TNT)試験の事後解析で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された。体重変動は、心血管疾患(CVD)のない患者の死亡や冠動脈イベントのリスク因子であることが知られているが、CAD患者のアウトカムへの影響は不明とされていた。

短期の放射線療法+テモゾロミドは、高齢膠芽腫患者の生存を延長(解説:中川原 譲二 氏)-667

高齢者の膠芽腫は予後不良である。70歳以下の患者では、標準放射線療法(60Gy/6週間)+テモゾロミドの追加により生存期間の延長が示されていた。一方、高齢患者にはより楽な短期の放射線療法が通常用いられているが、短期の放射線療法+テモゾロミド併用の有効性は不明であった。カナダ・オデットがんセンターのJames R Perry氏らは、65歳以上の初発膠芽腫患者を対象とした第III相無作為化試験によって、高齢の膠芽腫患者に対する短期の放射線療法+テモゾロミドは、放射線療法単独と比較して生存期間を延長させることを明らかにした(NEJM誌2017年3月16日号)。

非肥満・非糖尿病でも、高インスリン血症でがん死亡増

 肥満や2 型糖尿病はがん関連死亡と関連しているが、肥満でも糖尿病でもない場合に高インスリン血症はがん死亡の危険因子となるのだろうか。国立国際医療研究センター病院の辻本 哲郎氏らの前向きコホート研究で、糖尿病ではない非肥満者において、高インスリン血症だとがん死亡リスクが高いことが示された。この結果から、肥満であるかどうかにかかわらず、高インスリン血症の改善はがん予防のための重要なアプローチとなりうる、と著者らは結論している。International journal of cancer誌オンライン版2017年4月8日号に掲載。

頭痛患者の認知症リスクは2倍

 原発性頭痛には、片頭痛、緊張型頭痛、他の原発性頭痛症候群が含まれる。片頭痛や緊張型頭痛は、患者の不快感や他疾患と関連する。台湾・三軍総医院内湖院区のNian-Sheng Tzeng氏らは、原発性頭痛と認知症発症リスクとの関連を調査し、タイプの異なる頭痛と認知症との関連を明らかにするため、検討を行った。The American journal of the medical sciences誌2017年3月号の報告。

高齢者の潜在性甲状腺機能低下症にホルモン療法は有効か?/NEJM

 潜在性甲状腺機能低下症の治療において、これまでレボチロキシンの使用は議論の的であったが、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(TRUST試験)の結果、高齢患者に対するレボチロキシンの有効性は認められなかった。英国・グラスゴー王立診療所のDavid J Stott氏らが報告した。潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン補充療法については、小規模な無作為化比較試験しかなく、治療のリスクや有効性に関するエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2017年4月3日号掲載の報告。

心血管イベントの高リスク患者の目標血圧は?/Lancet

 心血管イベントのハイリスク患者では、治療により収縮期血圧120mmHg未満達成で心筋梗塞および脳卒中を除く心血管死のリスクが増加し、拡張期血圧70mmHg未満達成ではこれらに加え心筋梗塞および心不全による入院のリスクも増加する。ハイリスク患者を対象としたONTARGET試験およびTRANSCEND試験の2次解析で、治療により血圧を過度に低下させると心血管疾患イベントのリスクが高まることが確認された。ドイツ・ザールラント大学のMichael Bohm氏らが報告した。これまでも目標血圧の妥当性が検証されてきたが、著者は今回の結果について、「逆の因果関係(併存疾患による血圧低下、死亡率上昇)の影響を除外できないものの、可能な限り血圧を低くすることは、ハイリスク患者にとっては必ずしも最適(至適)ではないことを示唆している」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年4月5日号掲載の報告。

PSA監視療法は手術、放射線治療よりも短期的にはQOLで優位(解説:榎本 裕 氏)-666

限局性前立腺がんの治療は大きく変化している。手術では、より侵襲の少ないロボット支援前立腺全摘除術(RARP)が普及している。放射線治療では、強度変調放射線照射(IMRT)によってより安全に高線量照射が可能になり、有害事象を増やすことなく治療成績が向上した。一方で、PSA監視療法(AS)は低リスク症例を中心に限局性前立腺がんの管理方法としての地位を確かなものにしている。

統合失調症の認知機能に関連する独立因子:産業医大

 アリピプラゾールは、統合失調症の認知機能にさまざまな影響を与えることが報告されている。産業医科大学の堀 輝氏らは、アリピプラゾールで治療中の統合失調症患者の認知機能に影響を及ぼす要因を特定し、生物学的マーカー、臨床データ、精神症状を評価した。International journal of molecular sciences誌2017年3月6日号の報告。

アレクチニブ、ALK肺がん1次治療に海外でも良好な結果:ALEX 試験

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役会長 CEO:永山 治)は、F. ホフマン・ラ・ロシュ社が実施した ALK 融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者を対象とした国際共同第 III 相臨床試験であるALEX 試験において、アレクチニブによる1次治療がクリゾチニブに対して主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長したと発表。国内第III相試験J-ALEX 試験の結果に続き、海外においてもアレクチニブでPFSの有意な延長が示されたことになる。

IQや社会的地位の低さは、幼少期の鉛曝露と関連/JAMA

 幼少時の鉛曝露が38歳時の認知機能や社会経済学的地位の低さと関連していることが示された。社会経済学的地位の低さの原因の約4割は、知能指数(IQ)の低さと関連していたという。米国・デューク大学のAaron Reuben氏らが、1970年代初頭生まれのニュージーランド出生コホートを前向きに追跡した試験を基に検証したもので、JAMA誌2017年3月28日号で発表した。ニュージーランドでは、1970~80年代の車の排ガス規制が低く、都市部の鉛曝露は国際基準よりも一貫して高かった。また、他のコホートと比べて鉛曝露の社会的格差による違いが観察されておらず、鉛曝露がIQや社会経済学的地位に与える影響について、より信頼性が高い結果が得られた試験だという。

生体吸収性スキャフォールド、血栓症リスクを増大/NEJM

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、エベロリムス溶出金属ステントを使用した場合と比べ、デバイス血栓症の発生リスクが約3.9倍であることが示された。一方で主要エンドポイントの標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞または血行再建術のいずれか)の発生リスクは同等だった。オランダ・アムステルダム大学のJoanna J Wykrzykowska氏らが、1,845例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年3月29日号で発表した。BVSは従来ステントの弱点を克服するために開発された新たなデバイスで、これまでの検討で、コバルトクロムステントPCIに対する非劣性が示されている。しかしその後の試験で、金属ステントよりもデバイス血栓症のリスクが高いことが示唆されていた。

統合失調症や双極性障害、心代謝合併率はなんと60%以上

 重篤な精神疾患は、心代謝合併症のリスク増加と関連している。米国・ジャッカー・ヒルサイド病院のChristoph U Correll氏らは、統合失調症または双極性障害を有する入院患者の心代謝合併症の有病率、入院アウトカムやコストとの関連を評価した。Annals of general psychiatry誌2017年2月10日号の報告。

ポンペ病は早く気付いてほしい難病

 2017年3月30日、都内においてサノフィ株式会社は、4月15日の「国際ポンペ病の日」を前に、「治療方法がありながらも診断がつきにくい希少疾患『ポンペ病』」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。セミナーでは、ポンペ病の概要についての講演のほか、患者・患者家族から「早く確定診断がなされ、治療ができる体制を望みたい」と要望が寄せられた。

AFの抗凝固療法での骨折リスク、ダビガトランは低減/JAMA

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の抗凝固療法では、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)がワルファリンに比べ骨粗鬆症による骨折のリスクが低いことが、中国・香港大学のWallis C Y Lau氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。ワルファリンは、骨折リスクの増大が確認されているが、代替薬がないとの理由で数十年もの間、当然のように使用されている。一方、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)ダビガトランは、最近の動物実験で骨体積の増加、骨梁間隔の狭小化、骨代謝回転速度の低下をもたらすことが示され、骨粗鬆症性骨折のリスクを低減する可能性が示唆されている。

境界性パーソナリティ障害、性行為とアルコールの関係

 性行為前にアルコールを摂取すると、無防備な性行為、複数の性行為相手、性感染症の可能性を高める。また、境界性パーソナリティ障害(BPD)は、物質使用障害や性的リスク行動と関連する。BPDは、情緒調節、自己イメージ、対人関係、衝動性制御における広範な不安定性を特徴とする複雑な精神障害である。しかし、米国におけるBPDと性行為前のアルコール摂取との関連についての研究は行われていない。米国・コロンビア大学のRonald G Thompson氏らは、全米の代表的な成人サンプルにおける、BPDと性行為前の定期的なアルコール摂取との関連を調査した。Drug and alcohol review誌オンライン版2017年3月20日号の報告。