日本語でわかる最新の海外医学論文|page:684

3つの小児頭部外傷ルール、診断精度が高いのはどれ?/Lancet

 頭部外傷の小児において、CT検査の適応を臨床的に判断する3つのルール(PECARN、CATCH、CHALICE)は、デザインされたとおりに使用された場合の感度は高いことが、オーストラリア・王立小児病院のFranz E Babl氏らが行った前向きコホート研究(APHIRST)による検証の結果、明らかになった。これら3つのルールは、CT検査を行うべき頭部外傷患児の同定に役立つが、これまで外部検証や多施設大規模比較試験は行われていなかった。著者は、「今回の結果は、ルールの導入を検討している医師にとって、重要な出発点となる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年4月11日号掲載の報告。

ウラリチド、急性心不全における心血管死の減少示せず/NEJM

 ナトリウム利尿ペプチドのularitideは急性心不全患者において、心筋トロポニン値に影響を及ぼすことなくBNP低下など好ましい生理的作用を示したが、短期間の治療では臨床的な複合エンドポイントや長期の心血管死亡率を減少させることはなかった。米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らが、急性心不全患者に対するularitide早期投与の長期的な心血管リスクへの影響を検証したTRUE-AHF試験の結果を報告した。急性心不全に対してはこれまで、心筋壁応力(cardiac-wall stress)と潜在的な心筋傷害を軽減し、長期予後を改善するための治療として、血管拡張薬静脈投与による早期介入が提唱されていた。NEJM誌オンライン版2017年4月12日号掲載の報告。

低心機能合併の開心術に予防的強心薬投与がイベントを減らすか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-670

冠動脈バイパス術や弁膜症の開心術は術前の心機能が低下している例があり、人工心肺による侵襲ともあわせて、周術期に低心拍出量症候群で難渋することがある。ドブタミンをはじめとしたカテコラミンはほぼルーチンでそのような場合に使用されているが、必ずしも心筋保護という観点で良いものとは考えられていない。カテコラミンの心筋に対する好ましくない作用というのは、その強心作用が心筋酸素消費量の増大を常に伴うという点にあると考えられている。また、静注強心薬では不足で、機械的補助循環を余儀なくされるものもあり、低心拍出量症候群を効果的に回避しうる手段が待たれて久しい。そこで、心筋の酸素消費量を増大させずに強心作用を有する薬剤というのが、以前から開発のターゲットとなってきた。その1つがこの試験で使用されたlevosimendanである。

糖尿病合併乳がんの血糖値と生命予後を改善するには

 糖尿病を合併した乳がん患者は、糖尿病非合併患者と比べ予後が不良であると言われている。そのため、乳がんの転帰を改善するための抗糖尿病薬の評価が行われるようになった。メトホルミンは、主として肝臓の糖新生を抑制する抗糖尿病薬である。乳がん患者5,464人を対象とした最近のメタアナリシスでは、メトホルミン治療が、乳がん患者の全生存期間(OS)、がん特異的生存率の双方を改善することが報告されている。この研究は、HER2陽性乳がんのアジュバント患者を対象にしたラパチニブの第III相試験ALTTOのサブ解析として行われた。糖尿病合併患者の無病生存期間(DFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、OSを、メトホルミン投与の有無に分けて、糖尿病非合併患者と比較し、メトホルミンが糖尿病合併HER2陽性乳がん患者の転帰を改善するかを評価した。

抗うつ薬使用患者で注意すべきOAB、薬剤間で違いも

 これまで、抗うつ薬を使用した女性患者における過活動膀胱(OAB)について調査されていた。OABに対する抗うつ薬の影響および男女の泌尿器系生理学(解剖学、ホルモン)の相違に関して、文献の矛盾するデータに基づき、トルコ・トラキア大学のVolkan Solmaz氏らは、抗うつ薬を使用した男性患者におけるOABを調査した。International neurourology journal誌2017年3月24日号の報告。

スタチンで糖尿病患者の下肢切断リスクが低下

 主要な心血管イベントに対するスタチンの効果を裏付けるエビデンスはあるが、四肢のアウトカムにおける保護効果をみた研究はほとんどない。今回、台湾・国立陽明大学のChien-Yi Hsu氏らの観察コホート研究により、末梢動脈疾患(PAD)を有する2型糖尿病(DM)患者において、スタチン使用者では非使用者に比べて、下肢切断および心血管死のリスクが低いことがわかった。The Journal of clinical endocrinology and metabolism誌オンライン版2017年4月7日号に掲載。

上部消化管出血リスク、セレコキシブ vs.ナプロキセン/Lancet

 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)とアスピリンの併用が必要な、心血管および消化管イベントのリスクが共に高い患者に対し、セレコキシブ+プロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与は、ナプロキセン+PPI投与に比べて、上部消化管再出血リスクが半分以下に低減することが示された。中国・香港中文大学のFrancis K L Chan氏らが、514例を対象に行った無作為化二重盲検試験による結果で、Lancet誌オンライン版2017年4月11日号で発表した。著者は結果を踏まえて、「上部消化管再出血リスクを低下させるにはセレコキシブが好ましい治療である。ナプロキセンは心血管系の安全性は確認されているが、投与を回避すべきであろう」とまとめている。

糖尿病の心血管イベント、15年で大きく減少/NEJM

 スウェーデンでは1998~2014年にかけて、糖尿病患者の心血管イベント発生率が減少し、その減少率は糖尿病ではない人に比べ20~40%大きいことがわかった。致死的イベントも減少したが、その減少率については、1型糖尿病患者は糖尿病でない人と同等、2型糖尿病患者ではより小さかった。スウェーデン・ヨーテボリ大学のAidin Rawshani氏らが明らかにしたもので、NEJM誌2017年4月13日号で発表した。糖尿病患者の死亡や心血管イベントの過剰リスクについて、長期的傾向を調べた大規模な試験はなかった。

腎保護効果は見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~(解説:石上 友章 氏)-669

CKD診療のゴールは、腎保護と心血管保護の両立にある。CKD合併高血圧は、降圧による心血管イベントの抑制と、腎機能の低下の抑制を、同時に満たすことで、最善・最良の医療を提供したことになる。RA系阻害薬は、CKD合併高血圧の治療においても、ファーストラインの選択肢として位置付けられている。RA系阻害薬には、特異的な腎保護作用があると信じられていたことから、糖尿病性腎症の発症や進展にはより好ましい選択肢であるとされてきた。一方で、CKD合併高血圧症にRA系阻害薬を使用すると、血清クレアチニンが一過性に上昇することが知られており、本邦のガイドラインでは、以下のような一文が付け足してある。

統合失調症患者の性生活に対する満足度は

 統合失調症患者における主観的QOLの研究は広く行われているが、性生活の満足度については、ほとんど知られていない。英国・Newham Centre for Mental HealthのNeelam Laxhman氏らは、統合失調症患者の性生活に対する満足度を評価し、より低い満足度に関連する患者の特徴を調査した。Schizophrenia research誌オンライン版2017年3月5日号の報告。

研修と組み合わせた2つの強化インスリン療法を比較/BMJ

 1型糖尿病患者の治療において、インスリンポンプ療法に、フレキシブル強化インスリン治療に関する体系的な研修を加えても、頻回注射法(MDI)と比較して血糖コントロール、低血糖、心理社会的転帰に、教育によるベネフィットの増強は得られないことが、英国・シェフィールド大学のSimon Heller氏らが行ったREPOSE試験で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2017年3月30日号に掲載された。英国では、1型糖尿病のインスリンポンプ療法は、これ以外の方法では日常生活に支障を来す低血糖を起こさずに良好な血糖コントロールが達成できない患者には価値があるとされる。より広範なインスリンポンプ療法の使用については不確実な点が多く、これまでに行われたMDIとの比較試験は症例数が少なく、試験期間が短いものしかなかったという。

ワルファリンはなぜ負け続けるのか?(解説:香坂 俊 氏)-668

心房細動に対するカテーテルアブレーションはわが国でも広く行われているが、まれに脳梗塞などの合併症を起こすことがある(1%以下だが、主治医としては絶対に避けたい合併症の1つ)。そうした塞栓系のリスクを減らすためにはアブレーション前後の抗凝固薬管理が重要となるわけだが、、、、

MRワクチン接種後に失明、偶然か必然かは不明

 予防接種後、まれに眼炎症が観察されることがあるが、ほとんどは永続的な視覚障害を生じることなく回復する。今回、近畿大学医学部眼科学教室の國吉一樹氏らは、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン、肺炎球菌結合型ワクチンならびに麻疹風疹混合(MR)ワクチン接種後に、両眼の急性失明を来した生後13ヵ月の日本人の健康な男児について報告した。後ろ向きの調査の結果、感染により滲出性網膜剥離とともに重篤な脈絡網膜炎が誘発されてリカバリンに対する自己抗体が産生され、自己抗体が急速に光受容体の機能を変化させたものと推察された。著者らは、「初期の感染はMRワクチン接種に起因した可能性がある」との見解を示したうえで、「われわれの知る限り過去に報告例はないので、ワクチン接種後の失明は偶然の一致によるものかもしれないし、ワクチン接種に関連しているのかもしれない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年3月30日号掲載の報告。

胎内で若年成人までのBMIが決まる?

 出生時体重がその後のBMIと相関するという報告があるが、遺伝もしくは胎内環境によるのかは不明である。フィンランド・ヘルシンキ大学のAline Jelenkovic氏らが、約8万人の双子のコホートデータを分析したところ、双子の出生時体重と乳児期~成人期のBMIが相関していた。このことから、少なくとも若年成人までは、各々に特有な胎内環境が出生時体重とその後のBMIの関連に重要な役割を果たすことが示唆された。International Journal of Epidemiology誌オンライン版2017年3月19日号に掲載。

世界の全死因、喫煙が占める割合は?/Lancet

 たばこ規制は、とくに「たばこの規制に関する枠組条約(FCTC)」の採択後に急速に拡大した。これは公衆衛生上の重要な成功談ではあるが、喫煙は現在も世界的に早期死亡や機能障害の主要なリスクであり続けており、それゆえ継続的な政治的取り組みが求められるという。Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study(GBD)の研究グループは、今回、GBD 2015の一環として、喫煙関連目標の達成に向けた世界および地域別・国別の進歩の評価を通じて、頑健な基盤を提示するために、喫煙率と喫煙の疾病負荷に関する系統的な解析の結果を報告した。研究の成果はLancet誌オンライン版2017年4月5日号に掲載された。

双極性うつ病に対するドパミン作動薬の効果は

 双極性うつ病のアウトカムに対するドパミン作動薬(モダフィニル、armodafinil、プラミペキソール、メチルフェニデート、アンフェタミン)の影響について、アルゼンチン・Favaloro UniversityのA G Szmulewicz氏らは、システマティックに検討を行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2017年3月3日号の報告。

にきび治療のイソトレチノイン、うつ病リスクは?

 ざ瘡(にきび)のisotretinoin治療と、うつ病リスクの増加に関連はあるのか。これまで定量分析は行われていなかったが、台湾・台北医学大学のYu-Chen Huang氏らはシステマティックレビューとメタ解析を行い、両者に関連性はなく、むしろざ瘡の治療は抑うつを改善する可能性があることを示した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年3月10日号掲載の報告。

急性脳梗塞の血管内治療、2年後も効果が持続/NEJM

 血管内治療は、急性虚血性脳卒中患者の施行後90日時の機能的転帰を改善することが、MR CLEAN試験で確認されているが、この良好な効果は2年時も保持されていることが、本試験の延長追跡評価で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された。報告を行ったオランダ・Academic Medical CenterのLucie A van den Berg氏らは、「90日時の良好な効果はいくつかの試験やメタ解析で示されているが、長期的な転帰の情報はなく、これらの結果は実地臨床に有益と考えられる」としている。