日本語でわかる最新の海外医学論文|page:52

レナカパビル筋注、年1回でHIV予防の可能性/Lancet

 年1回筋肉内投与の2種類のレナカパビル製剤は血漿中濃度の中央値に関して、年2回皮下投与の第III相試験において有効性と関連した血漿中濃度を、少なくとも56週間にわたり上回った。2種類の製剤はどちらも安全で忍容性も良好であった。米国・Gilead SciencesのVamshi Jogiraju氏らが、年1回筋肉内投与の2種類のレナカパビル製剤の、第I相非盲検試験の結果を報告した。著者は、「今回示されたデータは、年1回の投与間隔で生物医学的にHIVの予防が可能であることを示唆するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年3月11日号掲載の報告。  研究グループは、18~55歳のHIV非感染者を対象に、2種類のレナカパビル遊離酸製剤(製剤1:エタノール5%w/w、製剤2:エタノール10%w/w)を、腹側臀部筋肉内注射として単回5,000mg投与し、薬物動態、安全性および忍容性を評価した。

2050年、世界の成人の半分が過体重と肥満に/Lancet

 1990~2021年にかけて世界のあらゆる地域と国で成人の過体重と肥満が増加しており、この傾向が続くと2050年までに世界の推定成人人口の半数超を過体重と肥満が占めると予測されることが、米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2021 Adult BMI Collaboratorsの解析で示された。成人の過体重および肥満の増加率を抑制できた国は現在までのところない。著者は、「即時かつ効果的な介入が行われなければ、過体重と肥満は世界中で増加し続け、とくにアジアとアフリカでは人口増加により過体重と肥満が大幅に増加すると予測された。肥満は、現在および将来にわたって最も回避可能な健康リスクの1つであり、地域、国、および世界レベルで疾患の早期発症や死亡の脅威をもたらす。この危機に対処するには、より強力な対策が必要である」とまとめている。Lancet誌2025年3月8日号掲載の報告。

プロテインSの遺伝子型、 表現型と血栓症リスクの関係(解説:後藤信哉氏)

日本で若年の静脈血栓症に遭遇すると、プロテインS、プロテインCの関与を第一に考える。本研究ではUK BiobankとUS NIHのHAUデータを用いて、血栓症とプロテインSの関係を検討した。病気の発症には遺伝因子、環境因子などが複雑に寄与する。個別症例の未来の臨床イベント発症予測には遺伝子型、個人の生活習慣、生活習慣曝露によるバイオマーカーの変化などが複雑に寄与する。個別症例の未来の臨床イベントを精密に予測するために、遺伝子から疾病発症に至る大規模な情報リソースを作成しようというのが、UK Biobankなどのバイオバンク作成を支える哲学である。

緑茶の認知機能予防効果、アジアと欧州で違いあり

 世界中で広く消費されているお茶に関する複数の研究において、緑茶には認知機能低下に対する潜在的な保護効果があることが示唆されている。この効果は、緑茶に含まれるポリフェノールと神経保護特性に起因すると考えられている。Shiyao Zhou氏らは、緑茶の摂取と認知機能低下リスクとの関連に関する最近の観察研究をシステマティックにレビューし、メタ解析を行った。Neuroepidemiology誌オンライン版2025年2月13日号の報告。  2004年9月〜2024年9月に公表された観察研究を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryよりシステマティックに検索した。緑茶の摂取と認知機能低下との関連について、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。さらに、サブグループ解析、異質性評価、出版バイアス評価、感度分析を行った。

再発/難治性多発性骨髄腫に対するテクリスタマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年3月19日、再発/難治性の多発性骨髄腫の治療薬として、B細胞成熟抗原(BCMA)およびCD3を標的とする二重特異性抗体テクリスタマブ(遺伝子組換え)(商品名:テクベイリ皮下注)を発売したことを発表した。本剤は、2024年12月27日に「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能又は効果として承認され、2025年3月19日に薬価収載された。

進行食道がんへのニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ+化学療法の日本人長期追跡データ(CheckMate 648)/日本臨床腫瘍学会

 CheckMate 648試験は、未治療の根治切除不能・進行再発食道扁平上皮がんを対象に、シスプラチン+5-FUの化学療法を対照として、ニボルマブ+化学療法、ニボルマブ+イピリムマブの優越性を報告した試験である。この試験の結果をもって両レジメンは「食道癌診療ガイドライン 2022年版」においてエビデンスレベルAで推奨されている。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)のPresidential Sessionでは、虎の門病院の上野 正紀氏が、本試験の日本人サブグループにおける45ヵ月の長期フォローアップデータを報告した。 ・試験デザイン:国際共同ランダム化第III相試験 ・対象:未治療の進行再発または転移食道扁平上皮がん(ESCC)、ECOG PS 0~1 ・試験群: 1)ニボ+イピ群:ニボルマブ(3mg/kg)+イピリムマブ(1mg/kg) 2)ニボ+ケモ群:ニボルマブ(240mg)+化学療法(シスプラチン+5-FU) ニボルマブおよびイピリムマブは最長2年間投与 3)ケモ群:化学療法単独(シスプラチン+5-FU) [主要評価項目]PD-L1(TPS)≧1%の患者における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全体集団のOS・PFS、奏効率(ORR)

胸腺がんにおけるアテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性(MARBLE):多施設共同単群第II相試験/Lancet Oncol

 胸腺がん(TC)は年間0.15例/10万人とされる胸腺上皮性腫瘍のうちの15%とさらにまれな疾患である。進行TCの1次治療は、カルボプラチン+パクリタキセルなどのプラチナ併用化学療法である。しかし、奏効割合(ORR)は30%、無増悪生存期間(PFS)の中央値は約5.0~7.6ヵ月である。既治療の進行TCに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤の試験でもORRは0〜22.5%に留まる。一方、ICI+化学療法の有効性を検討した試験はない。そのような中、順天堂大学の宿谷 威仁氏らは未治療の進行TCに対するICI+化学療法の国内15施設によるオープンラベル単群第II相試験を行った。

レブリキズマブ、日本人アトピー患者におけるリアルワールドでの有効性・安全性

 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者に対する治療薬として、2024年5月に発売された抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブについて、日本の実臨床における良好な有効性と安全性が示された。日本医科大学千葉北総病院の萩野 哲平氏らによるDermatitis誌オンライン版2月20日号への報告より。  本研究は2施設の共同研究であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者126例が対象。患者はレブリキズマブに外用コルチコステロイド薬を併用する16週間の治療を受けた。治療期間中に、以下の各指標が評価された:Eczema Area and Severity Index(EASI)/Investigator's Global Assessment(IGA)/Peak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)/睡眠障害NRS/Atopic Dermatitis Control Tool(ADCT)/Dermatology Life Quality Index(DLQI)/Patient Oriented Eczema Measure(POEM)/IgE抗体/Thymus and Activation-Regulated Chemokine(TARC)/乳酸脱水素酵素(LDH)/末梢血好酸球数(TEC)

お酒をやめるとLDL-Cが上昇?~日本人6万人のデータ

 飲酒による健康への悪影響が広く報告されているが、飲酒を始めたときや禁酒したときにコレステロール値がどう変化するかはわかっていない。今回、聖路加国際病院の鈴木 隆宏氏らが日本人約6万人のコホート研究で評価した結果、飲酒者が禁酒するとLDLコレステロール(LDL-C)値が上昇し、HDL-コレステロール(HDL-C)値が低下することが明らかになった。逆に、非飲酒者が飲酒を開始したときはLDL-C 値の低下と HDL-C 値の上昇がみられた。これらの変化はどちらも飲酒量が多いほど顕著だったという。JAMA Network Open誌2025年3月12日号に掲載。

NVAFによる脳卒中リスクを低減、Amulet左心耳閉鎖システム発売/アボット

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に行われる経皮的左心耳閉鎖術(LAAC)に有効なデバイス「Amulet(アミュレット)左心耳閉鎖システム」が2025年3月11日にアボットジャパンより発売された。  本システムは独自の2層構造によって、さまざまな形状・サイズの左心耳に対応できる特徴を持っていることから、既存製品では閉塞が困難とされていた左心耳に対しても、閉塞術を行うことが可能となる。また、左心耳の入口部を密閉することで術後のリークを防ぐことも可能となる。また、既存デバイス(WATCHMAN)を対象とした海外のAmulet IDE試験において、有意に高い左心耳閉鎖率が示され、術後3年時の抗凝固薬中止率も96.2%と有意に高い傾向が示された。

細菌性膣症、男性パートナーの治療で再発予防/NEJM

 細菌性膣症は生殖可能年齢の女性の約3分の1に認められ、再発は一般的である。細菌性膣症の原因菌のパートナー間での感染エビデンスは、半面で男性パートナーへの治療が治癒を高めることも示唆することから、オーストラリア・モナシュ大学のLenka A. Vodstrcil氏らStepUp Teamは、一夫一婦関係にあるカップルを対象とした非盲検無作為化比較試験を行い、細菌性膣症の女性への治療に加えて、男性パートナーに対して経口および局所抗菌薬治療を行うことにより、12週間以内の細菌性膣症の再発率が標準治療と比べて低下したことを報告した。NEJM誌2025年3月6日号掲載の報告。

口腔疾患、過去30年間の有病率と負荷の変化/Lancet

 世界保健機関(WHO)の「口腔保健に関する世界戦略および行動計画(Global Oral Health Action Plan)2023-2030」では、2030年までに口腔疾患の有病率を10%減らすという包括的な世界目標を設定している。この目標に向けた進捗状況をモニタリングするためには、口腔疾患の世界的な負荷に関する確実性の高い最新の情報が最も重要になる。英国・Royal London Dental HospitalのEduardo Bernabe氏らGBD 2021 Oral Disorders Collaboratorsは、1990~2021年の30年間の世界的な口腔疾患の負荷状況をシステマティック解析とメタ解析にて調べ、負荷状況の変化はわずかで、口腔疾患制御のための過去および現行の取り組みは成功しておらず、新たなアプローチが求められていることを示した。著者は、「多くの国が、口腔疾患の新たな症例の発生制御と口腔保健に対する膨大な満たされないニーズに取り組むという、2つの課題に直面している」と述べている。Lancet誌2025年3月15日号掲載の報告。

抗凝固薬―長期投与は減量でよい?(解説:後藤信哉氏)

深部静脈血栓症の症例への予防的抗凝固薬の投与期間は確定されていない。さじ加減を重視する日本の臨床家として「長期投与するなら減量で!」と考える医師は多いと思う。一般に血栓症の再発リスクは時間とともに低減するから、減量して長期投与することは正しそうに思う。それでもランダム化比較試験にて自分の直感を検証したいと考える欧米人が、本研究を施行した。欧米のDOACはアピキサバンとリバーロキサバンが標準なのでアピキサバン (2.5mg twice daily) と リバーロキサバン(10mg once daily)を比較した。静脈血栓症の発症から1~2年経過すれば血栓イベントリスクは十分に低下している。減量しても静脈血栓症の再発リスクは増えなかった(ハザード比[HR]:1.32、95%信頼区間[CI]:0.67~2.60)。重篤な出血リスクは減少した(HR:0.61、95%CI:0.48~0.79)。仮説検証試験として結論が出たわけではないが、医師の直感的判断を支持する試験結果であった。

高齢乳がん患者へのアベマシクリブ、リアルワールドでの治療実態/日本臨床腫瘍学会

 日本においてアベマシクリブによる治療を受けた、転移を有するHR+/HER2-乳がん患者の全体集団および高齢者集団(65歳以上)の患者特性、治療パターン、転帰をレトロスペクティブに解析した結果、両集団の治療開始から中止までの期間(TTD)や減量が必要となった割合は同等であり、高齢者でも適切な用量であればアベマシクリブによる治療は実施可能であることを、国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

固形がん患者における初回治療時CGP検査実施の有用性(UPFRONT)/日本臨床腫瘍学会

 本邦における包括的ゲノムプロファイリング検査(CGP)は、「標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった(見込みを含む)」固形がん患者に対して生涯一度に限り保険適用となる。米国では、StageIII以上の固形がんでのFDA承認CGPに対し、治療ラインに制限なく全国的な保険償還がなされており、開発中の新薬や治験へのアクセスを考慮すると、早期に遺伝子情報を把握する意義は今後さらに増大すると考えられる。本邦の固形がん患者を対象に、コンパニオン診断薬(CDx)に加えて全身治療前にCGPを実施する実現性と有用性を評価することを目的に実施された、多施設共同単群非盲検医師主導臨床試験(NCCH1908、UPFRONT試験)の結果を、国立がん研究センター中央病院/慶應義塾大学の水野 孝昭氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

医学生/初期研修医時代に戻れるなら「直美」に進みたい?/医師1,000人アンケート

 初期研修を終えてすぐ、保険診療を経験せずに自由診療である美容医療業界に直接進む「直美(ちょくび)」の医師が増えている。診療科の医師偏在や医局の人材獲得が課題となっているなか、保険診療の医師は「直美」をどのように考えているのかを調査するため、CareNet.comでは会員医師1,024人を対象に「直美」に関するアンケートを行った(実施:2025年2月12日)。  Q1では、「直美」の増加を日本の医療における問題と考えているかどうかを聞いた(単一回答)。全体では、「非常に問題と考えている」が35.4%、「どちらかというと問題と考えている」が43.2%、「どちらかというと問題とは考えていない」が13.9%、「まったく問題とは考えていない」が7.5%であり、大多数の医師は問題と捉えていた。

CAR-T naive再発・難治性B細胞リンパ腫におけるエプコリタマブの有効性(EPCORE NHL-1)/日本臨床腫瘍学会

 抗CD3xCD20二重特異性抗体エプコリタマブは第II相EPCORE NHL-1試験で、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(R/R LBCL)患者に対する深く持続的な効果と管理可能な安全性を示している。同試験では、すでにCAR-T治療歴がある患者における有効性が示されている(全奏効割合[ORR]54%、完全奏効[CR]割合34%)。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)では、CAR-T未使用(CAR-T naive)集団のサブ分析をミシガン大学のYasmin H. Karini氏が報告した。

幼少期の好奇心が成人期のうつ病と強く関連

 うつ病は世界的な公衆衛生上の大きな問題であるが、これまでの研究で、幼少期の性格が成人期のうつ病に及ぼす影響については、ほとんど調査されていない。中国・吉林大学のChengbin Zheng氏らは、成人による自己評価の観点から、幼少期の好奇心が成人期のうつ病に及ぼす影響およびそのメカニズムの性差について調査した。Journal of Psychiatric Research誌2025年3月号の報告。  2020年の中国家庭追跡調査(China Family Panel Study)より抽出した成人1万7,162人のデータを用い、幼少期の好奇心、将来に対する自信、主観的な社会的地位、成人期のうつ病を評価した。PROCESS 4.1ソフトウエアプログラムを用いて、調整済み仲介モデルを分析した。

慢性リンパ性白血病、原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫に対してザヌブルチニブ発売/BeiGene Japan

 BeiGene Japanは、2025年3月19日、未治療および再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、未治療および再発・難治性の原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫に対して、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬ザヌブルチニブ(商品名:ブルキンザ)を発売したと発表した。  本剤は、未治療の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)患者を対象としたSEQUOIA試験、再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)患者を対象としたALPINE試験、未治療および再発・難治性の原発性マクログロブリン血症およびリンパ形質細胞リンパ腫患者を対象としたASPEN試験の3つの主要な第III相試験に基づき、2024年12月27日に承認されている。

ランダム化試験より個別最適化医療の論理が必要?(解説:後藤信哉氏)

心房細動の脳梗塞予防には抗凝固薬が広く使用されるようになった。しかし、脳内出血の既往のある症例に抗凝固薬を使用するのは躊躇する。本研究は過去に頭蓋内出血の既往のある症例を対象として、心房細動症例における抗凝固薬介入の有効性と安全性の検証を目指した。319例をDOAC群と抗凝固薬なし群に割り付けて中央値1.4年観察したところ、DOAC群の虚血性脳卒中は0.83(95%信頼区間[CI]:0.14~2.57)/100人年、抗凝固薬なし群では8.60(同:5.43~12.80)/100人年と差がついた。しかし、頭蓋内出血イベントはDOAC群が5.00(95%CI:2.68~8.39)/人年、抗凝固薬なし群では0.82(同:0.14~2.53)/人年であった。