日本語でわかる最新の海外医学論文|page:490

細菌性の市中肺炎に対する経口lefamulinとモキシフロキサシンの比較試験(解説:吉田敦氏)-1157

今回、成人の細菌性の市中肺炎を対象とした経口lefamulin 5日間投与とモキシフロキサシン7日間投与の第III相ランダム化比較試験(LEAP 2 study)の結果が発表された。lefamulinはプレウロムチリン(pleuromutilin)に近縁の抗微生物薬で、リボゾームの50Sサブユニットの23SリボゾーマルRNAに作用することで蛋白合成を阻害する。lefamulinはバイオアベイラビリティに優れ、経口、静注両方で利用可能であり、またin vitroでMSSA、MRSA、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、連鎖球菌に活性を持ち、さらにはS. pneumoniae、H. influenzae、L. pneumophila、C. pneumoniae、M. pneumoniaeといった肺炎の主な原因微生物まで非常に幅広いスペクトラムを有するという。これまで細菌性の市中肺炎を対象とし、静注で開始して経口にスイッチする方法が検討され(LEAP 1 study。モキシフロキサシン±リネゾリドを対照とするランダム化比較試験)1)、加えて、細菌性の皮膚軟部組織感染症においてバンコマイシンを対照として比較試験が行われた2)。LEAP 1 studyではPORTリスク*クラスIII相当の肺炎例が約70%含まれていたが、ITT解析による効果は両群でほぼ同等、また副作用については低カリウム血症、吐き気、不眠、注射部位の疼痛・血管炎がモキシフロキサシンに比してlefamulin群で多かった。一方、後者の皮膚軟部組織感染症の検討では、効果はバンコマイシンと同等であったものの、頭痛、吐き気、下痢といった副反応がみられ、注射部位の血管炎はバンコマイシンよりも多かった。

ペルツズマブ+トラスツズマブ+化学療法のHER2+乳がん術後療法、引き続き有用(APHINITY)/SABCS2019

 HER2陽性乳がんに対する術後療法としての、ペルツズマブとトラスツズマブと標準化学療法の併用を評価する第III相APHINITY試験の更新データが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・Institut Jules BordetのMartin Piccart氏より発表された。  APHINITY試験は、2011年11月~2013年8月に症例登録された国際共同無作為化比較試験。2017年に初回解析結果が発表され、今回は2回目の解析データの発表。2017年の発表では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)はハザード比(HR)が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.00、p=0.045)と、有意にペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法併用群(HP群)が良好な結果であった。

非扁平上皮NSCLC、KEYNOTE-189日本人延長試験の結果/日本肺癌学会

 未治療の非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)に対してペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ(シスプラチンまたはカルボプラチン)療法とペメトレキセド+プラチナ療法と比較したKEYNOTE-189試験の日本人延長試験の結果が、第60回日本肺癌学会学術集会で発表された。当試験の全集団ではペムブロリズマブ上乗せ群が全生存期間(OS)を有意に改善した(HR:0.49、95%CI:0.38~0.64、p<0.001)が、今回の日本人試験の評価項目は安全性、忍容性である。

超悪玉脂肪酸はコントロールできるのか?/日本動脈硬化学会

 超悪玉脂肪酸の別名を持つトランス脂肪酸。この摂取に対し、動脈硬化学会が警鐘を鳴らして早1年が経過したが、農林水産省や消費者庁の脂肪酸の表示義務化への姿勢は、依然変わっていないー。2019年12月3日、日本動脈硬化学会が主催するプレスセミナー「飽和脂肪酸と動脈硬化」が開催され、石田 達郎氏(動脈硬化学会評議員/神戸大学大学院医科学研究科循環器内科学)が「食事由来(外因性)の脂質を考える」について講演。脂質過多な患者と過少な患者、それぞれの対応策について語った。

男性の顔の皮膚炎、原因は身だしなみ製品にあり

 男性も「顔」に投資する時代が到来しているが、美の追求には代償が伴うようだ。米国・ミネソタ大学のErin M. Warshaw氏らは、男性の顔の皮膚炎(male facial dermatitis:MFD)の特徴、アレルゲン、原因を調べるため、1994~2016年にパッチテストを受けた北米の男性患者5万507例を対象とした後ろ向き横断分析を行った。その結果、MFD患者は1994年の5.6%から2015~16年には10.6%に増大していたこと、MFDでは若い患者が有意に多く、アレルゲンは概して防腐剤、香料、染毛剤、界面活性剤などが含まれているパーソナルケア製品にあったことを報告した。著者は「今回の研究は、男性の皮膚科患者が使用する身だしなみ製品の増大によるリスクと曝露への洞察を提供するものとなった。これにより臨床医はパッチテストの恩恵を受ける患者をより適切に識別し、治療できるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年11月27日号掲載の報告。

要支援高齢者に対するリハビリテーション専門職主導の短期集中型自立支援プログラムの効果

 医療経済研究機構の服部 真治氏らは、介護保険サービスを利用する必要がなくなり、その利用を終了(介護保険サービスから卒業)するための短期集中型自立支援プログラムの有効性を評価した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2019年10月17日号の報告。  短期集中型自立支援プログラムの構成は、一般的な通所型サービスCと同様であるが、今回のプログラムは、リハビリテーション専門職が中心となり、随時、管理栄養士、歯科衛生士も加わり、毎回20分間(状況に応じて10~30分間)の動機付け面談を実施することにより、利用者が自身の可能性に気付き、元の生活を取り戻すための日々の暮らし方を知り、意欲的に自分自身を管理できるようにすることを目的に開発されている。

院内心停止の生存率を左右する予後因子とは/BMJ

 院内心停止患者では、心停止前に悪性腫瘍や慢性腎臓病がみられたり、心停止から自己心拍再開までの蘇生時間が15分以上を要した患者は生存の確率が低いが、目撃者が存在したり、モニタリングを行った患者は生存の確率が高いことが、カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。院内心停止は生存率が低く、臨床的知識の多くは院外心停止に関する豊富な文献からの推測だという。院内心停止と関連する心停止前および心停止中の予後因子の理解は、重要な研究分野とされる。

リンパ節転移陽性の早期TN乳がん、術前にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加すると病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告されている(KEYNOTE-522試験)。12月10~14日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)では、本試験のサブグループにおけるpCR率が報告され、リンパ節転移陽性例においてもpCR率が有意に上昇したことが示された。英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表。

医療者が共有できていない、重症低血糖とその背景

 2019年10月29日、日本イーライリリー主催のプレスセミナー「糖尿病患者さんと家族の意識調査から見る、重症低血糖の実態」が開催され、山内 敏正氏(東京大学大学院医学研究科糖尿病・代謝内科 教授)が「低血糖・重症低血糖について」、岩倉 敏夫氏(神戸市立医療センター中央市民病院)が「糖尿病患者さんと家族調査結果から見える課題」と題して重症低血糖について解説した。

ベンゾジアゼピン治療と自殺リスク

 不安症および睡眠障害のマネジメントのためのガイドラインでは、抗うつ薬治療と心理療法を第1および/または第2選択治療とし、ベンゾジアゼピン(BZD)は、第3選択治療としている。米国・コロラド大学のJennifer M. Boggs氏らは、自殺による死亡とBZDガイドラインコンコーダンスとの関連について評価を行った。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2019年11月17日号の報告。  Mental Health Research Networkより、米国8州のヘルスシステムから不安症および/または睡眠障害を有する患者を対象とした、レトロスペクティブ症例対照研究として実施した。自殺による死亡症例は、年およびヘルスシステムにおいて対照とマッチさせた。

デュルバルマブの進展型小細胞肺がん、FDAの優先審査指定に/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2019年11月29日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が治療歴のない進展型小細胞肺がん(SCLC)患者に対する治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から生物製剤承認一部変更申請(sBLA)に対する優先審査指定を受けたことを発表。  このsBLAは、The Lancet誌に掲載された第III相CASPIAN試験の良好な結果に基づいて行われた。CASPIAN試験は、進展型SCLC患者さんの1次治療を対象とした、無作為化非盲検国際多施設共同第III相試験。

米国中高生にフレーバー電子タバコが蔓延/JAMA

 2019年の米国の高等学校(high school)および中学校(middle school)の生徒における電子タバコ使用者の割合は高く(それぞれ27.5%、10.5%)、特定の銘柄の電子タバコ使用者の多くがフレーバー電子タバコを使用(72.2%、59.2%)している実態が、米国食品医薬品局(FDA)タバコ製品センターのKaren A. Cullen氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2019年11月5日号に掲載された。米国の青少年における電子タバコの使用率は、2011年から2018年に、実質的に増加しているという。青少年の電子タバコや他のタバコ製品の使用率の継続的な監視は、公衆衛生学上の施策や計画立案、規制の取り組みへの情報提供として重要とされる。

ddTC療法、上皮性卵巣がんの1次治療でPFS改善せず/Lancet

 上皮性卵巣がん患者の1次治療において、毎週投与を行うdose-dense化学療法は施行可能であるが、標準的な3週ごとの化学療法に比べ無増悪生存期間を改善しないことが、英国・マンチェスター大学のAndrew R. Clamp氏らが行った「ICON8試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2019年12月7日号に掲載された。上皮性卵巣がんの標準的1次治療は、従来、カルボプラチン+パクリタキセルの3週ごとの投与とされる。一方、日本のJGOG3016試験では、dose-dense weekly PTX+3-weekly CBDCAにより、PFSと全生存がいずれも有意に改善したと報告されている。

HR+乳がんへの術後化療、ゲノム解析結果に年齢も加味すべきか(MINDACT)/SABCS2019

 ホルモン受容体(HR)陽性乳がんにおいて、多重遺伝子解析を用いた術後化学療法の適応有無の判断に、年齢も考慮に入れる必要がある可能性が示唆された。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・ブリュッセル自由大学のMartine J. Piccart氏らによるMINDACT試験の計画外サブグループ解析の結果が発表された。  多重遺伝子解析結果と年齢、化学療法の適応の関係については、TAILORx試験の2次分析からの報告がある。MINDACT試験で定義された臨床リスクとの統合に基づく解析が行われ、21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による高再発スコア(高RS;26〜100点)は、40〜50歳の女性における高臨床リスクおよびRS16~20、または臨床リスクとは独立してRS21~25に相当する可能性が示唆され、9年時の遠隔再発リスクにおける化学療法追加の無視できないベネフィットが示された。

うつ病や統合失調症リスクに対する喫煙の影響

 統合失調症やうつ病の患者では、一般集団と比較し喫煙率が高い。英国・ブリストル大学のRobyn E. Wootton氏らは、ゲノムワイド関連研究(GWAS)で特定された遺伝子変異を使用して、この因果関係を調べることのできるメンデルランダム化(MR)法を用いて検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年11月6日号の報告。  統合失調症およびうつ病に対する喫煙の双方向の影響を調査するため、2つのサンプルにおけるMRを実施した。喫煙行動についてはGSCANコンソーシアムから喫煙開始のGWASを使用し、UK Biobankの46万2,690サンプルより生涯の喫煙行動に関する独自のGWASを実施した。

知っておくべきガイドラインの読み方/日本医療機能評価機構

 日本で初となるGRADE Centerが設立された。これにより、世界とGLのレベル統一が図れるほか、日本のGLを世界に発信することも可能となる。この設立を記念して、2019年11月29日、公益財団法人日本医療機能評価機構がMinds Tokyo GRADE Center設立記念講演会を実施。福岡 敏雄氏(日本医療機能評価機構 執行理事/倉敷中央病院救命センター センター長)が「Minds Tokyo GRADE Center設立趣旨とMindsの活動」を、森實 敏夫氏(日本医療機能評価機構 客員研究主幹)が「Mindsの診療ガイドライン作成支援」について講演し、GL活用における今後の行方について語った。

肺がん治療を変えたものは?医師が選ぶベスト10を発表

 2019年12月6日~8日まで日本肺癌学会学術集会が行われた。60回目という節目を迎えた今回は、特別企画として「肺がん医療のこれまでの60年を振り返り,これからの60年を考える」と題したシンポジウムが行われた。ここでの目玉は、学会員にアンケート形式で聞いた「肺がん治療史ベスト10」。肺がん治療において画期的だったと思われる出来事をランキング形式で挙げるというこの企画、当日発表されたベスト10は以下の通りだった。

海洋由来オメガ3脂肪酸と大腸がん予防効果/JAMA Oncol

 オメガ3脂肪酸には植物由来と海洋由来があるが、本稿は海洋由来オメガ3脂肪酸の話題。米国・ハーバード公衆衛生大学院のMingyang Song氏らは、「Vitamin D and Omega-3 Trial:VITAL試験」で事前に設定された補助的研究において、海洋由来オメガ3脂肪酸(1日1g)の摂取は大腸がん前がん病変リスクの減少と関連しないことを明らかにした。ただし副次解析で、ベースラインのオメガ3濃度が低い参加者やアフリカ系米国人に関しては有益性を示す結果がみられ、筆者は、これらの対象についてはサプリメントの有益性についてさらなる調査が必要であると述べている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年11月21日号掲載の報告。

食道アカラシア、POEMの2年後治療成功率は?/NEJM

 症候性アカラシアの治療において、経口内視鏡的筋層切開術(POEM)は腹腔鏡下Heller筋層切開術(LHM)+Dor噴門形成術に対し、2年後の治療成功率に関して非劣性であることが示された。ただし、有害事象である胃食道逆流の発現頻度は、POEM群がLHM群より高値であった。ドイツ・University Hospital Hamburg-EppendorfのYuki B. Werner氏らが、欧州6ヵ国8施設で実施した多施設共同無作為化試験の結果を報告した。バルーン拡張術+LHMは突発性アカラシアの治療法として確立されているが、POEMは侵襲が少なく初期研究で有望な結果が得られていた。NEJM誌2019年12月5日号掲載の報告。

転移性脊髄圧迫への放射線療法、単回照射vs.分割照射/JAMA

 固形がん患者のがん転移に伴う脊柱管圧迫に対する放射線療法において、単回照射は5日間分割照射と比較し、主要評価項目である8週時の歩行に関して非劣性基準を満たさなかった。ただし、信頼区間の下限が非劣性マージンと重なっており、単回照射の臨床的重要性の解釈には留意すべき点もあることが示された。英国・Mount Vernon Cancer CentreのPeter J. Hoskin氏らが、多施設共同非劣性無作為化臨床試験「The single-fraction radiotherapy compared to multifraction radiotherapy trial:SCORAD試験」の結果を報告した。がんの骨転移等による脊髄圧迫は、可動性の維持や痛みの軽減のため放射線療法で管理されるが、これまで標準照射レジメンはなかった。JAMA誌2019年12月3日号掲載の報告。