日本語でわかる最新の海外医学論文|page:374

日本人高齢者における認知症リスクと音楽活動

 認知症リスクの低減のために、余暇の認知活動が推奨されている。大阪大学のAhmed Arafa氏らは、日本人高齢者における認知症リスクとさまざまな音楽活動との関連について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2021年4月6日号の報告。  日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトに参加した65歳以上の高齢者5万2,601人を対象に、縦断的データを分析した。楽器演奏、カラオケ、合唱、民謡などの音楽活動についてアンケートを用いて評価した。認知症の診断には、介護保険制度で標準的に使用される認知症尺度を用いた。Cox回帰を用いて、音楽活動に関連した認知症のハザード比および95%信頼区間(CI)を算出した。

妊婦のストレス症状、COVID-19パンデミック前後の比較

 コロナウイルス感染症(COVID-19)関連のストレスを受けている妊婦は、そうでない妊婦と比較してストレスレベルが有意に高いことが、オランダ・Amsterdam Reproduction & Development Research InstituteのSanne J. M. Zilver氏らによって明らかにされた。COVID-19ストレスの軽減を目的とする介入は、パンデミック下における妊婦の全体的なストレスレベルを減らす可能性がある。Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology誌オンライン版2021年4月26日号の報告。

閉経後の卵巣がんスクリーニング、死亡率低下せず/Lancet

 閉経後の女性を対象とした年1回の卵巣・卵管がんスクリーニングの実施は、同疾患での死亡率低下が期待できず推奨できないことが示された。卵巣がんは、発見時には大半が進行がんと診断される、依然として予後不良の疾患である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのUsha Menon氏らは、同国の卵巣がん検診の共同研究(UKCTOCS)を行い、集団スクリーニングが卵巣がん死を低下するかどうかを調べた。結果は、StageIII/IVの発生率は、スクリーニングを実施しない場合に比べ低下したものの、がん死の低下は有意ではなかったという。Lancet誌オンライン版2021年5月12日号掲載の報告。

無症候性新型コロナ感染、ワクチン完了で発生率86%減/JAMA

 イスラエル・テルアビブの3次医療センター(1ヵ所)に勤務する医療従事者について、新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の接種完了者は非接種者と比べて、2回目接種後7日超の症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染の発生率が有意に減少したことを、同国Tel Aviv Sourasky Medical CenterのYoel Angel氏らが報告した。なお、結果は観察デザインに基づく調査のため限定的だとしている。症候性SARS-CoV-2感染へのBNT162b2ワクチンの有効性については、無作為化試験で推定値が示されているが、無症候性SARS-CoV-2感染への効果については不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月6日号掲載の報告。

GLP-1受容体作動薬セマグルチドは中止により体重減少効果が消失する(解説:住谷哲氏)-1392

ダイエットでよく知られた現象にヨーヨー効果(yo-yo effect)がある。運動や食事でうまく減量できても、サボるとすぐに元の体重に戻ってしまうことが、玩具のヨーヨーの上下運動に似ていることから名付けられた。運動による筋肉量の維持を伴わずにカロリー制限だけで減量を試みると、減った筋肉量が脂肪に置換されてその後の減量が一層困難になる弊害もよく知られている。STEPは抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬セマグルチド注射薬開発を目的とした国際第III相試験プログラムである。すでにSTEP 1-3において、2型糖尿病の合併の有無に関係なく、セマグルチド2.4mg/週の投与により著明な体重減少がもたらされることが報告されている。STEP 4である本試験では、セマグルチドによる体重減少が投与を中止することでリバウンドするか否かを検討したwithdrawal trialである。

日本循環器協会が発足―予防啓発や人材育成など7つの事業を柱に

 5月10日、循環器病の新たな団体として『日本循環器協会』が発足した。代表理事に小室 一成氏(東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授)、平田 健一氏(神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野教授)を迎え、各都道府県などと連携を取ることで、患者の心不全予防の啓発に力をいれていく。  循環器病による国内死亡率は近年の高齢化に伴いがんよりも高い。また、健康寿命にも大きく影響を及ぼしており、平均寿命に対し、健康寿命は男性で8.84年、女性で12.35年も短く、国としての大きな問題になっている。そこで、2016年から「脳卒中・循環器病克服5ヵ年計画」や「脳卒中・循環器病対策基本法」が、昨年10月には「循環器病対策推進基本計画」が動き出したことで、各都道府県でも基本計画が実行されていくことになる。これまでも循環器病領域には歴史のある日本循環器学会や日本心臓財団が存在するが、いずれも患者やサポート企業、自治体との連携が限定的であったことを踏まえ、市民により近い距離での情報発信や患者・家族サポートなどの活動を行うための新たな組織が必要となり設立に至った。

米国でダパグリフロジンがCKDの適応承認/アストラゼネカ

 SGLT2阻害薬の活躍の場が拡大している。AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ)のSGLT2阻害剤ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が、進行リスクのある成人の慢性腎臓病(CKD)における適応承認を米国で取得した。適応症は、慢性腎臓病におけるeGFRの持続的低下、末期腎不全への進行、心血管死、および心不全入院のリスク低減。  ダパグリフロジンは、経口で1日1回投与の、ファーストインクラスの選択的SGLT2 阻害剤であり、心臓、腎臓、膵臓における基本的な関連性の解明に伴い、心臓・腎臓に及ぼす影響から、予防、そして臓器保護へと研究は進化している。

RA系阻害薬は、COVID-19入院患者に継続してよい?

 COVID-19入院患者において、レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬の継続有無による転帰の差はないことが、米国・ペンシルベニア大学のJordana B. Cohen氏によって明らかにされた。RA系阻害薬は、COVID-19入院患者でも安全に継続できるという。The Lancet. Respiratory Medicine誌2021年3月号の報告。  RA系阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の服用は、COVID-19の重症度に影響を与える可能性が示唆されている。世界7ヵ国20の大規模な委託病院において、前向き無作為化非盲検試験REPLACE COVID試験(ClinicalTrials.gov:NCT04338009)を実施し、RA系阻害薬の継続と中止がCOVID-19入院患者の転帰に影響を与えるかどうか、検証した。

遺伝性血管性浮腫患者の支援団体が稼働/遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム

 遺伝性血管性浮腫(Hereditary Angioedema:HAE)は、主に遺伝子変異が原因で血液中のC1インヒビターの低下などに起因し、体のいたるところで持続する腫れやむくみを繰り返す疾患である。皮膚手足、顔面、生殖器などが腫れた場合は、一見すると「じんま疹」に似ていることがあるが、強いかゆみを伴わないのが特徴だ。特にのどが腫れた場合、呼吸困難となり、生命の危険を来す可能性があり、早期の確定診断が必要だが、本症と診断されずに、日ごろの症状に苦しむ患者も多い。

2型糖尿病、「座る時間の短縮」も指導して

  身体活動に加えて、座位中心の生活習慣を2型糖尿病のリスク評価に含める必要がある。2型糖尿病のリスク低減には、身体活動の促進と座位中心の生活習慣の回避を併せた指導が重要であると、スペイン・ナバラ大学のMaria Llavero-Valero氏らによって示された。Nutrition, Metabolism & Cardiovascular Diseases誌2021年2月8日号の報告。  身体活動と座りがちな行動―。ともに独立して2型糖尿病進展との関連性が示されている。しかし、両者の組み合わせによる検証は乏しい。そのため、本研究では身体活動スコアの評価だけでなく、座位中心の生活習慣スコアも併せて評価し、2型糖尿病との関連性を比較検証した。

双極性障害におけるBMIと皮質下脳容積との関連

 双極性障害患者は、肥満の割合が高く、このことが神経構造の変化と関連しているといわれている。しかし、双極性障害患者の脳構造に対する肥満の影響は、十分に研究されていない。カナダ・ダルハウジー大学のSean R. McWhinney氏らは、双極性障害におけるBMIと皮質下脳容積との関連について、検討を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年4月16日号の報告。  ENIGMA-BDワーキンググループ内の独立した研究サイト17件より、双極性障害患者1,134例、対照群1,601例の皮質下脳容積(MRI測定)およびBMIのデータを収集した。混合効果モデルを用いて、皮質下脳容積に対する双極性障害とBMIの影響を併せてモデル化し、ノンパラメトリックブートストラップを用いて、肥満の違いによる影響をテストした。すべてのモデルは、年齢、性別、脳半球容積、頭蓋内容積、データ収集サイトにより制御した。

降圧薬で正常血圧者も心血管イベントリスク低下?/Lancet

 降圧薬により収縮期血圧を5mmHg低下させることで、心血管疾患の既往歴の有無を問わず、また血圧が正常値や正常高値であっても、主要心血管イベントのリスクが約10%低下することが、英国・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration(BPLTTC)の検討で示された。著者は、「これらの知見により、薬剤による一定程度の降圧治療は、その時点で治療の対象とされない血圧値であっても、主要心血管疾患の1次および2次予防において、治療対象の血圧値の場合と同様に有効であることが示唆される。これは、降圧治療が、主に血圧が平均値よりも高い場合に限定されている実臨床に変革を求めるものであり、降圧薬は、血圧値や心血管疾患の既往歴を問わず、心血管疾患の予防治療の選択肢と捉えるほうがよいことを示唆する」とし、「患者に降圧治療の適応を伝える際は、血圧の低下そのものに焦点を当てるのではなく、心血管リスクの低減の重要性を強調すべきである」と指摘している。Lancet誌2021年5月1日号掲載の報告。

低・中リスクのHER2+早期乳がん、術後トラスツズマブは9週投与も検討可か/ESMO BREAST 2021

 低および中リスクのHER2陽性早期乳がん患者において、術後トラスツズマブの投与期間を9週間に短縮した場合の、良好な長期結果が示された。1年間の投与が標準であることには変わりないものの、トラスツズマブへのアクセスが制限される状況やLVEF低下などで投与継続が難しい場合には、より短期間の投与が選択肢となる可能性がある。イタリア・パドヴァ大学のPierfranco Conte氏が、short-HER試験の長期解析結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。

うつ病と職場や家族のストレスに対する職場のソーシャルキャピタルの影響

 日本では、労働者のメンタルヘルスが問題となっている。公務員の労働環境は、過度なストレスを伴うことが多くなり、うつ病予防の必要性が増している。職場や家庭でのストレスに加えて、ソーシャルキャピタルがうつ病と関連していることが報告されている。敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、うつ病と職場でのストレスまたは家庭でのストレスの軽減に対する職場のソーシャルキャピタルの影響について調査を行った。BMC Public Health誌2021年4月14日号の報告。

AIが探索したCOVID-19の治療薬/日本イーライリリー

 日本イーライリリーは、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による肺炎に対する治療薬として、適応追加承認を取得した経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤バリシチニブ(商品名:オルミエント)に関するプレスセミナーを開催した。バリシチニブは関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されている薬剤。  今回のセミナーでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への適応拡大で行われた臨床試験の経過、使用上の詳細について説明が行われた。  はじめに齋藤 翔氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター 総合感染症科)が、「新型コロナウイルス感染症の病態、治療の現状と課題 JAK阻害剤の臨床的位置づけ」をテーマに、バリシチニブの臨床的な位置付けや使用上の注意点などを説明した。

食事パターンは高齢者の認知機能に関連している

 高齢者において、地中海式食事法とマインド食が記憶と言語機能に、「アルコール飲料」がワーキングメモリに関連していることが、ドイツ・German Center for Neurodegenerative Disorders(DZNE)のL M P Wesselman氏らの研究により明らかとなった。結果を踏まえて著者は、「認知機能低下率に対する栄養の推定的効果、およびアルツハイマー病(AD)リスクが高いグループへの食事介入の可能性について結論を出すには、縦断的データが必要だ」としている。European Journal of Nutrition誌2021年3月号の報告。

脳梗塞後の上肢運動機能障害、リハ+迷走神経刺激で改善/Lancet

 虚血性脳卒中後の長期にわたる中等度~重度の上肢運動機能障害の治療において、リハビリテーション療法との組み合わせによる迷走神経刺激療法(VNS)は偽(sham)刺激と比較して、Fugl-Meyer Assessment上肢運動項目(FMA-UE)で評価した上肢運動機能障害の改善効果が優れ、新たな治療選択肢となる可能性があることが、英国・グラスゴー大学のJesse Dawson氏らが実施した「VNS-REHAB試験」で示された。Lancet誌2021年4月24日号掲載の報告。  本研究は、英国と米国の19の脳卒中リハビリテーション施設が参加した三重盲検擬似的処置(sham)対照比較試験であり、2017年10月~2019年9月の期間に参加者の無作為化が行われた(米国MicroTransponderの助成による)。

新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか? (2):ChAdOx1-S(AstraZeneca)の場合(解説:後藤信哉氏)-1391

筆者はワクチン接種による新型コロナウイルス感染拡大速度低減、医療崩壊予防効果に期待している。人類を集団として見た場合には現在のワクチンには効果を期待できる。ワクチンも含めて、現在の医療の科学は個体差を考慮できる水準まで進歩していない。集団に対してワクチンを接種した結果何がどれだけ起こったかを記述するのみである。未来を予知する能力はない。ワクチン接種の結果を過去形で、しかし、速やかに公表することが大切である。

東京五輪での医師ボランティア募集、8割が否定的/会員アンケート結果

 コロナ禍で医療崩壊が叫ばれ東京オリンピック・パラリンピックの開催自体が危ぶまれる中、同競技大会組織委員会が日本スポーツ協会公認のスポーツドクターからボランティア約200人を募集していたことが明らかとなった(募集は5月14日で締切、応募総数は393人)。この募集に対して、当事者となる医師たちはどのような心境だろうかー。  本アンケートは、スポーツドクターの有資格者が多い診療科(整形外科、救急科、リハビリテーション科)かつ競技会場となる9都道県(北海道、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県)在住のケアネット会員医師を対象に実施[5月7日(金)~12日(水)]。ボランティアへの応募意向をはじめ、参加時に心配な点や募集に対して感じたことなどを伺った。

高齢の早期乳がん患者への化学療法の効果は?

 高リスクの早期乳がんでは化学療法によりアウトカムが改善されるが、高齢者にはほとんど投与されない。今回、英国・The Royal Marsden Hospital NHS Foundation TrustのAlistair Ring氏らは、高齢の高リスク早期乳がん患者の化学療法による効果を検討したところ、転移を有する再発のリスクは化学療法で低下したが、生存期間延長が示されたのはエストロゲン受容体(ER)陰性乳がんのみであった。また、QOLへの影響は大きかったが一時的だった。British Journal of Cancer誌オンライン版2021年5月10日号に掲載。