日本語でわかる最新の海外医学論文|page:375

片頭痛の急性期治療、オピオイドは有効性示されず/JAMA

 片頭痛の急性期治療において、トリプタン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アセトアミノフェン、ジヒドロエルゴタミン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬、lasmiditan(5-HT1F受容体作動薬)による薬物療法のほか、いくつかの非薬物療法は、痛みや機能の改善をもたらすが、これらを支持するエビデンスの強さ(SOE)にはばらつきがみられ、オピオイドなど他の多くの介入のエビデンスには限界があることが、米国・メイヨークリニックのJuliana H. VanderPluym氏らの調査で示された。著者は、「現行のガイドラインでは、片頭痛の急性期治療にオピオイドやブタルビタール含有配合薬は推奨されていないが、オピオイドはさまざまな病態の急性期患者に頻繁に処方されている。今回の解析では、オピオイドは全般にSOEが低いか不十分であり、他の治療法やプラセボに比べ有害事象の割合が高いことが示された。したがって、現行のガイドラインのオピオイド非推奨に変更はない」と述べている。JAMA誌2021年6月15日号掲載の報告。

まれだが致死的な血栓症への対応・事前説明はきわめて難しい(AZワクチン)(解説:後藤信哉氏)-1407

新型コロナウイルス対策としてワクチンの普及は切り札になれると期待している。ワクチンに限らず、すべての医療介入にはメリットとデメリットがある。新型コロナウイルスワクチンの場合には、ワクチン接種によりウイルス感染の広がりを阻止できるとの社会的期待がある。しかし、個別症例にはデメリットもある。本研究は医療従事者における13万例の接種に合併した5例の血栓症の報告である。対象となった医療従事者は32~54歳で特段の疾病の既往はなかった。いずれの症例も接種後7~10日にイベントが起こっている。アナフィラキシーは接種現場で起こる。対応の準備もできる。接種後7~10日に頭痛、背部痛、腹痛などにて救急搬送されている。いずれの症例も静脈血栓が確認されている。血栓の形成部位は脳静脈洞など普通遭遇しない部位である。本研究では臨床イベントのみでなく血液検査を詳細に施行している。いずれの症例もHIT抗体と呼ばれる血小板第4因子・ポリアニオンの高い抗体価を呈した。著者は、これらの症例をワクチンによる免疫性の血小板減少・血栓症としての自発的な(ヘパリンを使用していないとの意味)ヘパリン惹起血小板減少・血栓症(HITT:heparin-induced thrombocytopenia・thrombosis)としている。HITは時に致死的な病態である。ワクチンにまったくの健常者に、ワクチン接種の1~2週に発症する。

COVID-19入院患者へのトシリズマブを緊急使用許可/FDA

 中外製薬は6月25日、同社創製の関節リウマチ治療薬トシリズマブ(商品名:アクテムラ)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用を許可したと発表した。コルチコステロイドの全身投与を受けており、酸素補給、非侵襲的もしくは侵襲的な人工呼吸、またはECMOが必要な入院中の成人および2歳以上小児がその対象となる。  今回の緊急使用許可は、4つのランダム化比較試験におけるCOVID-19入院患者、計5,500例超の成績に基づいており、酸素補給または呼吸補助を必要とするコルチコステロイド投与中の患者の転帰を改善する可能性があることが示唆された。

妊婦、子供は?各学会のワクチン接種に対する声明まとめ

 新型コロナワクチンの接種が進む中、疾患等を理由として接種に対して不安を持つ人を対象に、各学会が声明を出している。主だったものを下記にまとめた。 ■日本感染症学会 「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」 対象:全般 要旨:ワクチンの開発状況、作用機序、有効性、安全性等の基本情報 ■日本小児科学会 「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」 対象:子供(12歳以上) 要旨:まずは子どもの周囲への成人の接種を進める。そのうえで、12歳以上の子供へのワクチン接種は本人と養育者が十分に理解したうえで進めることが望ましく、個別接種を推奨する。

抗精神病薬による体重増加と臨床効果との関係

 これまでの研究において、抗精神病薬で治療中の慢性期統合失調症患者では、体重増加と精神病理学的改善効果の関連が示唆されている。しかし、多くの交絡因子の影響により、その結果は一貫していない。中国・首都医科大学のYing Qi Chen氏らは、抗精神病薬未治療の初回エピソード統合失調症患者において、体重増加が抗精神病薬の治療効果と関連しているかについて、調査を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2021年5月11日号の報告。

冠動脈血行再建術後のP2Y12阻害薬vs. DAPTのメタ解析/BMJ

 スイス・ベルン大学のMarco Valgimigli氏は、無作為化比較試験6件のメタ解析を行い、P2Y12阻害薬単独療法は抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と比較して、死亡、心筋梗塞および脳卒中のリスクは同等であるが、P2Y12阻害薬単独療法の有効性は性別によって異なり、出血リスクはDAPTより低いことを明らかにした。BMJ誌2021年6月16日号掲載の報告。  研究グループは、Ovid Medline、Embaseおよび3つのWebサイト(www.tctmd.com、www.escardio.org、www.acc.org/cardiosourceplus)を検索して、2020年7月16日までに発表された、経口抗凝固療法の適応がない患者における冠動脈血行再建術後の経口P212阻害薬単独療法とDAPTの有効性を比較(中央判定)した無作為化比較試験を特定し、個々の患者レベルでのメタ解析を行った。

医療・健康管理の無料アプリ、個人情報保護に問題か/BMJ

 オーストラリア・マッコーリー大学のGioacchino Tangari氏らは、オーストラリアのGoogle Playストアで入手可能な、Android用の無料の健康関連モバイルアプリケーション(mHealthアプリ)1万5,838種について分析し、これらにはプライバシーに関する重大な問題と一貫性のないプライバシー行為が認められたことを明らかにした。「臨床医は、mHealthアプリのメリットとリスクを判断する際にこれらのことを認識し、患者に明確に説明する必要がある」と著者は強調している。BMJ誌2021年6月16日号掲載の報告。

これから「プラグマティックトライアル」が増える?(解説:後藤信哉氏)-1408

臨床的仮説の検証にはランダム化比較試験による有効性、安全性の検証が必須というのが現在のルールである。巨額の利潤を期待できる新薬の認可承認、適応拡大が目的であれば日常臨床とは若干異なる条件におけるランダム化比較試験も可能である。しかし、循環器領域では標準治療が進歩して革新的新薬の認可承認、適応拡大を目指したランダム化比較試験の数は減少している。科学雑誌の発刊とはいえビジネスである。ランダム化比較試験が減少した時代でも臨床論文を発表して、多く引用されなければ雑誌の未来はなくなってしまう。臨床試験のコストを下げつつ、質を担保する工夫が必要となる。

コロナワクチン後に心筋炎、CDCが接種との関連性を指摘

 米国疾病予防管理センター(CDC)は6月23日、新型コロナワクチンを接種した若年層において、心筋炎などの副反応と見られる症状が、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に1,000件以上報告されていることを明らかにした。CDCは接種と関連している可能性を指摘し、さらなる調査を進めるとしている。ただ、これまでに投与されたワクチン総量と比しても発症はまれであり、COVID-19のリスクおよび関連合併症を考慮した上で、ワクチン接種を引き続き推奨する方針だ。

日本人CVD高齢者のMCI検出に対するRDST-Jの有用性

 心血管疾患(CVD)を有する高齢者では、認知機能低下が認められることが多く、このことでセルフマネジメント能力を低下させる可能性がある。しかし、軽度認知障害(MCI)を鑑別するための方法は、臨床現場で常に実行可能であるとは限らない。名古屋大学の足立 拓史氏らは、認知症の認知機能低下を簡易的に判定する検査ツールRapid Dementia Screening Test日本語版(RDST-J)を用いることで、MCI検出が可能かを評価した。Journal of Geriatric Cardiology誌2021年4月28日号の報告。

ALK陽性肺がんにおけるct-DNAのバイオマーカーとしての可能性(CROWN)/ASCO2021

 未治療のALK陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)における第3世代ALK‐TKIロルラチニブの第III相CROWN試験。バイオマーカーとしての血中腫瘍DNA(ct-DNA)の追加解析がASCO2021で発表され、早期のct-DNAの変化がロルラチニブの効果予測と関係する可能性が示された。 CROWN試験・対象:StageIIIB/IVの未治療のALK陽性肺がん(無症状のCNS転移は許容)・試験群:ロルラチニブ(100mg/日)・対照群:クリゾチニブ(250mgx2/日)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]治験実施医によるPFS、BICR評価の奏効率(OR)、BICR評価の脳内奏効率(IC-OR)、BICR評価の奏効期間(DoR)、BICR評価の脳内奏効期間(IC-DR)、全生存期間(OS)、安全性、ct‐DNAバイオマーカー

マントル細胞リンパ腫1次治療、ベネトクラクス+レナリドミド+リツキシマブが有望/ASCO2021

 未治療のマントル細胞リンパ腫(MCL)患者に対し、レナリドミド+リツキシマブ(R2療法)とベネトクラクスの併用は、用量制限毒性(DLT)を認めず忍容性は良好で、高リスク患者の治療に有望であることが示された。米国・ミシガン大学 Rogel Cancer CenterのTycel Jovelle Phillips氏が、第Ib相試験の中間解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 ・対象:未治療MCL成人患者(ECOG PS 0~2)28例

片頭痛発作を抑制する2つの新抗体製剤が承認取得

 2021年6月23日、新たな片頭痛予防薬2剤が国内製造販売承認を取得したことが発表された。大塚製薬株式会社の抗CGRPモノクローナル抗体製剤フレマネズマブ(遺伝子組換え)(商品名:アジョビ皮下注225mgシリンジ)、アムジェン株式会社の抗CGRP受容体モノクローナル抗体製剤エレヌマブ(遺伝子組換え)(商品名:アイモビーグ皮下注70mgペン)である。いずれも神経ペプチドのCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を標的とする抗体製剤で、片頭痛薬として2021年1月に国内承認を取得したガルカネズマブ(遺伝子組換え)(商品名:エムガルティ)に続く承認となった。

二次性副甲状腺機能亢進症治療薬ウパシカルセトナトリウム水和物が承認取得/三和化学

 株式会社三和化学研究所は6月23日、ウパシカルセトナトリウム水和物(商品名:ウパシタ)が、血液透析下における二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬として厚生労働省より製造販売承認を受けたことを発表した。  ウパシカルセトナトリウム水和物は、透析回路から投与できる注射剤であるため、飲水量が厳しく制限されている透析患者への負担の軽減、確実な投与が期待される。  二次性副甲状腺機能亢進症は、慢性腎臓病の進行に伴い発症する合併症の1つで、副甲状腺から副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌される病態である。PTHが過剰に分泌されると骨からリンおよびカルシウムの血中への流出が促進され、その結果、骨折や心血管系の石灰化による動脈硬化などの発症リスクが高まり、生命予後に影響を及ぼすことが報告されている。

再発/難治性濾胞性リンパ腫、CAR-T(tisa-cel)は有望(ELARA)/ASCO2021

 複数回治療を受けた再発/難治性濾胞性リンパ腫(r/r FL)における抗CD19 CAR-T細胞療法薬tisagenlecleucel(tisa-cel)の有効性と安全性を評価した国際単群第II相試験「ELARA試験」の主要解析の結果を、米国・ペンシルベニア大学のStephen J. Schuster氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。高い奏効率と良好な安全性プロフィールが示され、r/r FL患者にとって有望な治療であることを報告した。  FL患者の約20%は初回治療後2年以内に再発し、治療ラインが増えるに従いアウトカムは不良となっていくことから、新たな治療が切望されている。tisa-celは、難治性大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者において持続的奏効や良好な安全性プロファイルが示されていた。

新型コロナ感染のアスリート、無症候性心筋炎に注意

 心筋炎はアスリートの突然死の主な原因であり、新型コロナウイルスが原因で発症することも示唆されている。今回、Big Ten COVID-19 Cardiac Registry InvestigatorsのメンバーであるCurt J Daniels 氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したすべての米国アスリートを対象に、心臓MRI検査(CMR)を実施して心筋炎の発症有無を調べた。その結果、37例(2.3%)が臨床症状を有する心筋炎または無症候性心筋炎と診断された。今回の研究では、大学間で有病率にばらつきが見られたものの、検査プロトコルは心筋炎の検出と密接に関連していた。JAMA Cardiology誌オンライン版2021年5月27日号掲載の報告。

新型コロナ感染者の7割が症状持続:系統的レビュー

 COVID-19で長期持続する症状の頻度や種類、重症度についてはまだよくわかっていない。米国・スタンフォード大学のTahmina Nasserie氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の持続的な症状の頻度と多様性を調べた研究の系統的レビューを実施した結果、COVID-19の症状は一般的に感染急性期が過ぎても持続し、健康関連機能とQOLに影響を与えることがわかった。少なくとも1つの持続的な症状を経験している患者の割合は72.5%(中央値)であった。JAMA Network Open誌2021年5月26日号に掲載。

心停止後の昏睡患者の6ヵ月死亡率、低体温療法vs.常温療法/NEJM

 院外心停止後の昏睡状態の患者において、低体温療法は常温療法と比較して6ヵ月死亡率を低下しないことが示された。スウェーデン・ルンド大学のJosef Dankiewicz氏らが、非盲検(評価者盲検)無作為化試験「Targeted Hypothermia versus Targeted Normothermia after Out-of-Hospital Cardiac Arrest trial:TTM2試験」の結果を報告した。体温管理療法は心停止後の患者に推奨されているが、これを裏付けるエビデンスの確実性は低く、研究グループは大規模な無作為化試験で検証した。NEJM誌2021年6月17日号掲載の報告。

新型コロナのα株、30代から重症化リスク増/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のB.1.1.7変異株(α株[英国株]としても知られる)の感染者は、SARS-CoV-2野生株感染者と比較して、入院リスクが高く、症状もより重症となる可能性が高いことが示唆された。さらに、重症化は30歳以上に特異的な可能性も示されたという。英国・ケンブリッジ大学のTommy Nyberg氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。B.1.1.7変異株は、2020年11月に英国で発見され、野生株よりも感染力が高いため、その後は優勢な系統となった。これまで、B.1.1.7変異株は重症化しやすいことを示唆するエビデンスはあったが、死亡率との相関を示した報告は交絡因子により研究の限界があったと考えられる。BMJ誌2021年6月15日号掲載の報告。