日本語でわかる最新の海外医学論文|page:320

コロナのワクチンキャンペーンに効果はある?米国での反響は…

 国内でも若年層へ新型コロナワクチン接種を浸透させるため、いくつかの自治体が接種促進のためのキャンペーンを打ち出していた。その先駆けである米国ではインセンティブとして宝くじを配布し接種の向上を試みていたが、実際のところそれが有効かどうかは不明である。そこで、米・ドレクセル大学のBinod Acharya氏らは、宝くじなどのインセンティブがワクチン接種の増加に寄与するのかを調べるための横断的研究を行った。その結果、宝くじプログラムは新型コロナワクチン接種へのためらいを減らすことに関連していると示唆された。ただし、その成功は州によって異なる可能性があるという。JAMA Network Open誌2021年12月1日号掲載の報告。

早期乳がん術前化学療法、pCRは代替エンドポイントには役不足/BMJ

 病理学的完全奏効(pCR)は、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)のいずれについても、臨床試験の代替エンドポイントとして不十分であることが、イタリア・European Institute of Oncology(IEO)のFabio Conforti氏らが実施した、早期乳がんを対象とする術前化学療法の無作為化臨床試験に関するシステマティックレビューおよびメタ解析で確認された。米国食品医薬品局(FDA)は、早期乳がんの術前化学療法を検証する無作為化臨床試験において、pCRをDFSおよびOSの代替エンドポイントとすることを承認している。しかし、先行のメタ解析(試験数に限界があった)で認められたpCRとDFSおよびOSとの間の強い相関関係は、患者レベルであり試験レベルではなく、pCRを代替エンドポイントとすることについては議論の的となっていた。著者は、「今回示された結果は、pCRを早期乳がん術前化学療法の主要エンドポイントとして規定すべきではないことを示すものである」とまとめている。BMJ誌2021年12月21日号掲載の報告。

高リスク外来コロナ患者、レムデシビル早期3日間投与で入院リスク低減/NEJM

 疾患進行リスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の非入院患者において、レムデシビルによる3日間の外来治療は、安全性プロファイルは許容可能であり、プラセボに比べ入院/死亡リスクは87%低かった。米国・ベイラー大学メディカルセンターのRobert L. Gottlieb氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GS-US-540-9012(PINETREE)試験」の結果を報告した。レムデシビルは、中等症~重症のCOVID-19入院患者の臨床転帰を改善することが示唆されていたが、疾患進行リスクが高い症候性COVID-19の非入院患者における入院予防効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年12月22日号掲載の報告。

良かれと思うことも確かめてみる価値あり(解説:折笠秀樹氏)

表題の「Bah humbug!」は何だろうかと思った。チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』の中で、主人公が放った有名な言葉らしい。「当てにならない、ばかばかしい」といった意味のようだ。何が当てにならないかというと、「クリスマスカードを臨床試験の被験者へ送ると脱落が減る」だ。クリスマスカードが届くと意識が高まると思いがちだが、実はそんなことはなかったのだ。当然といえば当然。うちにも保険会社から季節のあいさつ状が届くが、開封するも、中身はほとんど読まないままにごみ箱行き。ダイレクトメールもしかり。1%でも反応してくれたら御の字なのだろう。ということは、クリスマスカードを送付しても、せいぜい1%しか来院率が上がる効果はないのかもしれない。

モルヌピラビル使用の注意点は?コロナ薬物治療の考え方第11版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、12月24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第11版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、先般特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に関する記載が追加された。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。 【4. 抗ウイルス薬等の選択】 (1)抗ウイルス薬としてレムデシビル、モルヌピラビルなど、中和抗体薬としてカシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブなど、(2)免疫調整薬・免疫抑制薬としてデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブについて記載を追加。

うつ病患者にみられる併存疾患~ネットワークメタ解析

 うつ病患者は、他の併存疾患を有する可能性が高いといわれているが、これまでの併存疾患に関する研究は、主に特定の一般的な疾患に焦点が当てられており、また自己申告のデータに依存していた。中国・電子科技大学のHang Qiu氏らは、全範囲の慢性疾患を対象とし、うつ病患者における併存疾患の調査を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2022年1月1日号の報告。  本レトロスペクティブ研究では、うつ病入院患者2万2,872例とこれに1:1でマッチした対照群の登録を行った。併存疾患を測定するために、退院記録を集計し、有病率1%以上の患者について、さらなる分析を行った。共起頻度に基づいて、うつ病患者の性別および年齢別の併存疾患ネットワークを構築し、その結果を対照群と比較した。高度に相互リンクされたコミュニティを検出するため、Louvainアルゴリズムを用いた。

高齢AF患者、リバーロキサバンvs.アピキサバン/JAMA

 65歳以上の心房細動患者に対し、リバーロキサバンはアピキサバンに比べて、主要な虚血性または出血性イベントリスクを有意に増大することが、米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが米国のメディケア加入者約58万例について行った後ろ向きコホート試験の結果、示された。リバーロキサバンとアピキサバンは、心房細動患者の虚血性脳卒中予防のために最も頻繁に処方される経口抗凝固薬だが、有効性の比較については不明であった。JAMA誌2021年12月21日号掲載の報告。

モルヌピラビル、新型コロナの入院・死亡リスクを低減/NEJM

 重症化リスクがあるワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者について、モルヌピラビルによる早期治療(発症後5日以内に開始)は、入院または死亡リスクを低減することが、コロンビア・IMAT OncomedicaのAngelica Jayk Bernal氏らによる第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験で示された。試験は約1,400例を対象に行われ、29日間の入院または死亡の発生リスクは中間解析で-6.8ポイント差、全解析で-3.0ポイント差であったという。モルヌピラビルはSARS-CoV-2に対し活性を示す、経口小分子抗ウイルスプロドラッグである。NEJM誌オンライン版2021年12月16日号掲載の報告。

心肺停止時にカルシウム投与は無効(解説:香坂俊氏)

ACLSのプロトコールには「低カルシウム血症や高カリウム血症、さらにカルシウム拮抗薬のoverdose」といった、ごく限られた状況でカルシウム製剤の静注投与が推奨されている。今回デンマークで行われたRCTでは、このカルシウム製剤の有効性をより広範囲の一般的な院外心肺停止症例で検証したが、残念ながらその結果はカルシウム製剤側に害がある可能性が高いということで(ROSC[return of spontaneous circulation]がカルシウム製剤投与群で19%であったのに対し、プラセボ群で27%[リスク比:0.72、p=0.09])、途中で試験中止が勧告されるという結果となった。

男性乳がんの予後不良因子は?

 男性乳がんは稀な疾患であるものの、近年増加傾向がみられている。認知度の低さなどから進行期になってから診断されるケースが多く、生存に寄与する因子や適切な治療戦略については明確になっていない部分が多い。韓国・忠北大学校病院のSungmin Park氏らは、国民健康保険データベースを用いた男性乳がん患者の転帰に関する後ろ向き解析結果を、Journal of Breast Cancer誌オンライン版2021年12月24日号に報告した。  本研究では、韓国の健康保険データベースを使用して、該当の請求コードをもつ男性乳がん患者を特定、男性乳がんの発生率、生存転帰、およびその予後因子が評価された。最初の請求から1年以内の手術と放射線療法の種類を含む、医療記録と死亡記録がレビューされた。その他、経済状況(≧20パーセンタイル、<20パーセンタイル)、地域(都市部、地方)、チャールソン併存疾患指数(0、1、≧2)、およびBRCA1/2(乳がん遺伝子)テストの実施について情報が収集された。

新型コロナ感染リスク、ワクチン未接種者は接種者の4倍!?

 米国の大手ドラッグストアであるCVSヘルスに所属するYing Tabak氏らは、新型コロナ感染に対するワクチン有効性を推定するにあたり、時間経過による変化がみられるのかなどを評価するため、診断陰性例コントロール試験を実施。その結果、ワクチン未接種者はワクチン接種者よりも感染リスクが最大で4倍も高いことが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号のリサーチレターに掲載された。  本研究は全米の新型コロナ検査のデータベースを使用し、2021年5月1日~8月7日の期間にドラッグストアのPCR検査で症候性の新型コロナ感染症が確認されたの特有の患者発生率を評価した。新型コロナ関連の症状(CDCの定義に準拠)、ワクチン接種状況、時期、投与回数について、鼻咽頭スワブを収集する前にスクリーニング質問票に自己報告してもらった。分析には、BNT162b2(ファイザー製)、mRNA-1273(モデルナ製)、およびJNJ-78436735(J&J製)のワクチンを使用した。また、米国での昨年7~8月のデルタ変異株の流行を考慮して、最後のワクチン接種からの経時的な症候性新型コロナ感染に対し、ワクチン接種の有効性を検査実施者の年齢、地域、暦月で調整して推定した。

NSCLCの新たなドライバー遺伝子CLIP1-LTK発見

 国立がん研究センター東病院が中心に進める肺がんの遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」が、非小細胞肺がん(NSCLC)の新しいドライバー遺伝子「CLIP1-LTK融合遺伝子」を世界で初めて発見した。また、このドライバー遺伝子変異には、治療薬としてALK-TKIのロルラチニブが有効である可能性が示されている。  試験結果は、Nature誌2021年11月14日号に掲載され、第62回日本肺癌学会学術集会では、がん研究センター東病の松本慎吾氏により発表された。  NSCLCでは、ドライバー遺伝子が相次いで発見されるととも、それに対応する分子標的薬が登場することで治療成績が著しく向上している。  とはいえ、50〜60%のNSCLCではドライバー遺伝子が存在しない。そのため、新たなドライバー遺伝子の発見と治療薬の開発が求められている。  そのような中、CLIP1-LTK融合遺伝子は、新たなドライバー遺伝子を検索するためLC-SCRUM-Asiaが行った、既知のドライバー遺伝子陰性のNSCLCを対象に行った全RNAシークエンス検査により世界で初めて発見された。

認知症の急速な進行に関する原因調査

 急速進行性認知症(RPD)は、1~2年以内に急速な認知機能低下が認められ認知症を発症する臨床症候群である。RPDの評価に関する進歩は著しく、その有病率は時間とともに変化する可能性がある。ギリシャ・Attikon University HospitalのPetros Stamatelos氏らは、RPD診断の近年の進歩を考慮し、以前の結果と比較したRPD原因となる疾患の頻度を推定した。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌2021年10~12月号の報告。  5年間でRPDの疑いによりAttikon University Hospitalに紹介された患者47例を対象に、医療記録をレトロスペクティブに検討した。

モデルナ製とファイザー製、それぞれの心筋炎・心膜炎リスク因子/BMJ

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnders Husby氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種と心筋炎/心膜炎との関連を調査する目的で、デンマーク住民を対象にコホート研究を行った。その結果、ワクチン未接種者と比較して、mRNA-1273(Moderna製)ワクチンは心筋炎/心膜炎の有意なリスク増加と関連しており、とくに12~39歳でリスクが高いこと、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)ワクチンは女性においてのみ有意なリスク増加が認められたことが示された。ただし、絶対発症率は若年層でも低いことから、著者は「今回の知見の解釈には、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種の利点を考慮すべきであり、少数のサブグループ内でのワクチン接種後の心筋炎/心膜炎のリスクを評価するには、より大規模な国際的研究が必要である」と述べている。BMJ誌2021年12月16日号掲載の報告。

オメガ3サプリメントにうつ病予防効果はあるのか?/JAMA

 米国の50歳以上のうつ病リスクを有する集団において、海洋由来オメガ3脂肪酸(オメガ3)サプリメントの長期投与によりプラセボと比較し、うつ病または抑うつ症状の新規発症や再発リスクがわずかではあるが統計学的に有意に増加した一方で、気分スコアには差がないという複雑な結果となった。米国・マサチューセッツ総合病院のOlivia I. Okereke氏らが「VITAL-DEP試験」の結果を報告した。オメガ3サプリメントは、うつ病の治療に用いられているが、一般成人のうつ病予防効果は不明であった。著者は、「今回の知見は、一般成人においてうつ病予防にオメガ3サプリメントの使用は支持されないことを示している」と結論づけている。なお、本研究は、米国の成人(男性50歳以上、女性55歳以上)2万5,871人を対象に、ビタミンD3とオメガ3脂肪酸の心血管疾患およびがんの一次予防効果を評価する無作為化臨床試験「VITAL試験」の補助的な試験で、ビタミンD3の結果はすでに報告されている。JAMA誌2021年12月21日号掲載の報告。

片頭痛に対する抗CGRP抗体の有効性と忍容性

 反復性および慢性片頭痛の予防には、いくつかの薬剤が利用可能である。どの治療を、どのタイミングで選択するかを決定することは簡単ではなく、一般的な有効性、忍容性、重篤な有害事象の可能性、併存疾患、コストなどさまざまな因子に基づいて検討される。ベルギー・ブリュッセル自由大学のFenne Vandervorst氏らは、新たに片頭痛予防の選択肢の1つとして加わったカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体に対するモノクローナル抗体の有効性、忍容性について検討を行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年10月25日号の報告。

普遍的なうつ病予防~メタ解析レビュー

 うつ病は、心身に影響を及ぼす、非常に蔓延している、しばしば慢性的に経過、治療困難、認知機能や社会的および経済的負荷が非常に大きいといった特徴を有する疾患である。がんなどの非感染性疾患では、治療ではなく予防に焦点が置かれるようになっていることを考えると、うつ病予防は、優先すべき公衆衛生上の課題であろう。オーストリア・ディーキン大学のErin Hoare氏らは、うつ病に対する普遍的に提供される予防的介入についてのメタ解析文献の包括的なシステマティックレビューを実施した。Journal of Psychiatric Research誌2021年12月号の報告。

CAR-T療法イエスカルタ、大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療に有効 /NEJM

 大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療において、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞製品アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel、商品名:イエスカルタ)は標準治療と比較して、無イベント生存期間および奏効割合を有意に改善し、Grade3以上の毒性作用の発現は予想された程度であることが、米国・H. Lee MoffittがんセンターのFrederick L. Locke氏らが実施した「ZUMA-7試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年12月11日号に掲載された。

HPVワクチン、イングランドで子宮頸がんをほぼ根絶か/Lancet

 イングランドでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの全国的な接種プログラムの導入により、子宮頸がんおよび前がん病変とされるGrade3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3)の発生が大幅に減少し、とくに12~13歳時に接種を受けた女性で顕著な抑制効果が認められ、1995年9月1日以降に出生した女性ではHPV関連子宮頸がんの根絶にほぼ成功した可能性があることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMilena Falcaro氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2021年12月4日号で報告された。

今後25年間の日本における認知症有病率の予測

敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、富山県認知症高齢者実態調査の認知症有病率データと人口予測データを用いて、日本における認知症有病率の将来予測を行った。BMC Geriatrics誌2021年10月26日号の報告。  まず、1985、90、96、2001、14年の富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いて、性別・年齢別の認知症推定将来有病率を算出した。次に、2020~45年の47都道府県それぞれの65歳以上の推定将来人口に性別年齢を掛け合わせ、合計することで認知症患者数を算出した。認知症の推定将来有病率は、算出された認知症患者数を47都道府県それぞれの65歳以上の推定将来人口で除することで算出した。また、2020~45年の47都道府県それぞれの認知症推定将来有病率は、日本地図上に表示し、4段階で色分けした。