閉経後進行乳がんの1次治療、ribociclib追加でOS延長(MONALEESA-2)/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/23

 

 ホルモン受容体陽性HER2陰性の閉経後進行乳がん女性の1次治療において、CDK4/6阻害薬ribociclibとアロマターゼ阻害薬レトロゾールの併用療法はプラセボ+レトロゾールと比較して、全生存期間が約1年延長し、新たな安全性シグナルの発現は認められないことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのGabriel N. Hortobagyi氏らが実施した「MONALEESA-2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年3月10日号に掲載された。

国際的な第III相試験の全生存最終解析

 本研究は、2014年1月~2015年3月の期間に参加者の登録が行われた国際的な無作為化第III相試験であり、今回は、主な副次エンドポイントである全生存期間の、プロトコールで規定された最終解析の結果が公表された(Novartisの助成を受けた)。

 本試験の主要エンドポイントである担当医評価による無増悪生存期間中央値は、先行解析によりribociclib+レトロゾールで優れることが、すでに報告されている(25.3ヵ月vs.16.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.46~0.70、p<0.001)。

 この試験の対象は、局所病変が確認され、ホルモン受容体が陽性で、HER2陰性の再発または転移を有する乳がんの閉経後女性で、進行病変に対する全身療法を受けていない患者であった。

 被験者は、ribociclib(600mg、1日1回、経口投与)を、1サイクル28日として21日連続投与後7日間休薬する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。両群とも、レトロゾール(2.5mg、1日1回、経口投与)の連日投与を受けた。ribociclibまたはプラセボの投与、データ解析、アウトカム評価を行ったすべての研究者および患者には、割り付け情報が知らされなかった。

 全生存は層別化log-rank検定で評価され、死亡が400例に達した時点でKaplan-Meier法を用いて要約された。無増悪生存と全生存の解析には、結果の妥当性を確保するために、階層的検定法が用いられた。

死亡リスクが24%低減

 668例が登録され、ribociclib群に334例、プラセボ群に334例が割り付けられた。全体の追跡期間中央値は80ヵ月(最短75ヵ月)で、治療期間中央値はribociclib群が20.2ヵ月(四分位範囲:7.4~45.1)、プラセボ群は14.1ヵ月(7.1~28.9)であった。データカットオフ日(2021年6月10日)の時点で、ribociclib群181例(54.2%)、プラセボ群219例(65.6%)が死亡した。

 ribociclib群はプラセボ群に比べ、全生存の利益が有意に大きかった。すなわち、全生存期間中央値はribociclib群の63.9ヵ月(95%CI:52.4~71.0)に対し、プラセボ群は51.4ヵ月(47.2~59.7)であり(HR:0.76、95%CI:0.63~0.93、両側検定のp=0.008)、12.5ヵ月の差がみられた。

 ribociclibによる全生存の利益は、治療開始後約20ヵ月から認められ、その後は持続的に大きくなった。5年全生存率はribociclib群が52.3%(95%CI:46.5~57.7)、プラセボ群は43.9%(95%CI:38.3~49.4)であり、6年全生存率はそれぞれ44.2%(95%CI:38.5~49.8)および32.0%(95%CI:26.8~37.3)だった。

 後治療は、ribociclib群の304例中267例(87.8%)、プラセボ群の317例中286例(90.2%)が受けた。後治療として、初回化学療法を受けるまでの期間中央値は、ribociclib群が50.6ヵ月、プラセボ群は38.9ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.91)、無化学療法生存期間中央値はそれぞれ39.9ヵ月および30.1ヵ月であった(0.74、0.62~0.89)。

 有害事象プロファイルは既報の結果と一致しており、新たな安全性シグナルは観察されなかった。Grade3/4のとくに注目すべき有害事象のうち、最も頻度の高かったのは好中球減少であり、ribociclib群63.8%、プラセボ群1.2%で発現した。また、ribociclib群では、Grade3の間質性肺疾患または肺臓炎が2例(0.6%)で認められたが、間質性肺疾患または肺臓炎に関連するGrade4の有害事象や死亡はみられなかった。

 著者は、「これまでにMONALEESA試験で得られた知見と今回の結果を合わせると、ribociclibによる全生存の利益は、ホルモン療法の有無、治療ライン数、閉経の状態にかかわらず、一致して認められることが示された」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 下村 昭彦( しもむら あきひこ ) 氏

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院

乳腺・腫瘍内科/がん総合内科